やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
切ちゃんをわっしょいわっしょいしたいけど、下地を敷いて緩やかにいきたい気分。いけるとは言ってない。
俺ガイルも終わっちゃいましたね…。言葉にしたい感動が溢れながらも二つともクロス先が完結しちゃった喜びと悲しみで崩れそうです。
side切歌
少し前…
「マム!ねえマム!絶対おかしいデスよ!なんで八幡があんな風になってるデスか!?」
「………何度も言っているでしょう。貴方達がするのは、この場所での待機。それ以外は望んでいません」
「そんな…」
エア・キャリアの中で映し出される映像に息を飲む。映像越しだというのに、その存在感、異様感が伝わってくる。八幡であった人物が性別も髪色も変わり、その他に携えるアームドギアも鞘から剣に移り変わっていた。
そしてそれは自分たちすら知っている人物に。
「…天羽奏。死んだはずじゃ…」
「調の言う通りデス!まさかまさかの幽霊さんとか、あまりにオカルティックが過ぎるデスよ!」
「…剣と鞘。対となる聖遺物が存在するとドクターが語っていたけれど、そういうことなのかしら」
ツヴァイウィング。二年も前に片割れの死によって解散した二課の装者。敵の情報だからと教えられて、歌も聞いたから知っている。このスピーカーから聞こえてくる歌声だって知ってるもの。
力強い歌で、カッコいい歌で、そりゃあ生き返った後の歌は最高の気分かもしれない。
(……かもしれないデスけど!)
……ダメだよ。その身体は八幡のデス。他の誰かのものなんかじゃない。今すぐにでも飛び出して八幡の元に行きたい。
だけどそんなのあのトンデモ幽霊が出てくる前からそうだった。八幡が正気を失ったような顔になって、それをドクターが引き起こしたのだと分かった時もマムに噛み付いた。
だけどその時もマムの命令は「待機」だけだった。八幡があんなになっても、それだけだった。
………でもマムはあたしなんかよりずっと頭がいいから。きっと何か考えがあるはずデス。きっと、絶対。だから今は、待機、しないと…。
(……だってマムが、そう言ったから)
友達が苦しんでるのに、友達が乗っ取られちゃったのに、動けない。
(…それは、ほんとにいい子なの?)
胸元のペンダントに手が伸びる。何でもできる魔法の道具は手元にあって、場所だってギアを纏えばそう遠くない。だけどそれはマムの言いつけを破ることになる。
「…大丈夫、デスよね?」
…マムを信じよう。信じなきゃ。
……きっと、大丈夫デスよね。
「…ゴフッ!」
「マム!?」
そう思った直後に、異変が起きた。マムが突然吐血したんだ。
「…マム、血が!」
「…こんな時だというのに」
誰かに攻撃されたとかじゃなく、マムの患っている病気。詳しいことは知らないデスけど、こんなに調子の悪そうなマム初めてデスよ!?
「ぐ、ぅぅ」
「これは…。二人とも!至急ドクターの回収をお願い!」
「ぇ、あの人を…」
「応急処置は私でもできるけど、やっぱりドクターに診てもらわないといけない。急いで!」
「…わ、わかったデス」
緊急事態。どうこう言っていられない事態に無理矢理に背中を押される。だけど内容はドクターの回収。マムの病気を和らげることができる、だけど八幡に勝手に酷いことをする奴でもある。
「…それから二人とも」
「どうしたのマリア?」
「……同じ場所に八幡もいるわ。だから、一緒に帰って来なさい」
「…!わ、分かってるデスよ!」
「うん、行ってくる」
…問い詰めるのもぶっ飛ばすのも全部後デス。兎にも角にもみんなを、助けないと!デス!
☆
side…
「なんとぉ、イガリマァァ!!」
遠目に見えた三人の装者。八幡を助けに行く一人とドクターを探しに行く一人。移動の間にいつのまにか蘇った幽霊さんは消え、倒れ伏す八幡の姿。
ギリギリだけど間に合った、間に合ったデス!
「八幡は渡さないデス!」
「どのツラ下げて言いやがる!お前らがそいつにやったこと、さっきの今で忘れたとでも…」
「わかってるデス!…わかってるデスけど!
……だけどこんなの!…こんなの、誰も望んでないデスよっ」
八幡を庇うように三人と相対する。だけど一人はグッタリとしていて、他の二人もさっきからの連戦で疲弊してる。
八幡が心配だけど、もちろんマムだって心配だからドクターを早いとこ捕まえて八幡と一緒に連れ帰らないといけない。調にドクターを任せ二手に別れた以上、見えてる八幡攫われちゃ意味ないデス!
………なにより!
♪獄鎌・イガリマ
♪警告メロディー 死神を呼ぶ!
絶望の夢、Death13!
♪レクイエムより、鋭利なエレジー!
恐怖へようこそ!
…ドクターがあんなの仕込んでたのなんか知らない!知らなかったデスよ!せっかく仲良くなれてきたと思ったのに、せっかくあたしもみんなの役に立ててきたと思ったのに!あんな裏切るみたいなことして!
………ここでお別れなんて嫌デスよ。まだあたし、何もしてない。何もできてないのに。この決闘の場だってあたし達が勝手に決めたことで、それが原因で八幡を取られちゃうなんて許せるわけがないデス!
♪……不条理な『未来』 叫んでみたけど、
ほんとは自分が許せないっ!
♪…すべて刈り取り、積み上げたなら、
「……やらいでか、デェス!」
肩アーマーを伸縮させ、新たな鎌を展開する。四つに増えた肩の鎌を横に広がることで脇を通らせないように。
…隙を見せたらきっと取られちゃう。射抜くような視線は八幡への想いを感じさせて、それだけ大切なのだと目が物語る。記憶をなくす前の八幡の居場所で、きっと八幡もその隣にいたのだと思う。
(……でもあげないデス。渡さないデスよ。…ずるいじゃないですか、そんないっぱい持った顔して。偽善者やれるくらいたくさん、たくさんハッピーじゃないデスか)
秋桜祭。楽しそうに笑ってて、友達だってたくさんいて。あんな楽しいお祭りが年に三回もあって。好きに歌える場所があって。学校行けて家族がいて。
それに……それに………!
(八幡のあんな顔、初めて見たっ…)
…映像越しだった。…でも見えた。赤いおっぱいさんに寄りかかってる偽善者の歌を聴いた瞬間、八幡の目が輝いた。嬉しそうだった、求めていた。あんな顔、初めて見た。
…あたし達の前じゃ、まだ笑ってもくれないのに!
「……んにゃぁあああ!!!」
♪…いますぐに just saw now!
痛む間もなくっ!
♪切り刻んであげましょう!!
「…っ、来るぞ雪音!立花を連れて下がれ!」
「分かってる!…でも一人じゃ!」
「比企谷と立花を天秤にかけるな!例え比企谷を取り戻せても、結果立花を失っては意味がない!」
「……分かってる!分かってるさ!任せるからな!」
「去る者は追わないデスが来る者は断固お断りデース!」
イチイバルのおっぱいさんの撤退を見送りながら、風鳴翼に向けて斬りかかる。ただ振り抜いても軽く受け流されるから、それを肩アーマーで補助しながら攻めかかる。
(手数で、押し切るデス!)
(くっ。意図して故の意図せぬことだろうが、こうも比企谷と並ばれると飛び技が使えない!)
一方の翼は攻めあぐねていた。相手の闘い方が比企谷八幡を守ろうとするため、翼と八幡の間に陣取る動きの為に【蒼の一閃】や【天の逆鱗】のような避けられた場合に眠る八幡を巻き込みかねない技が打てないのだ。
「……それでも救う!」
「…気に入らねえデス、そういうのぉ!」
敵にまわってる八幡を何の躊躇いもなく救うと、連れ帰ると言えるソレが。言葉の端々から記憶があったら八幡と信頼し合えてそうないいぐさが、どこまでだって気に入らない。
……八幡との間に、自分達がそれほどの何かを築けている自信がなかったから。
(……あるデスよね?きっとあたし達にも、あいつらと同じくらい!ううん、あいつらよりも強くて信じられるくらいの何かが!きっと!今はなかったとしても、きっと未来になら!)
♪信じ…合って… 繋がる真の強さを!
♪『勇気』と信じてく!そう、紡ぐ手…
♪きっと…きっと!
…まだ、大丈夫まだ飛べる!
♪輝いた『絆』だよ!
♪…さあ空に調べ歌おう!
鎌を巨大なはさみのように展開する。刺股のように、これも相手を阻みながら攻撃する方法。たかる虫を払うように、八幡から距離を遠ざけるように振り上げる。
…だけど悠長にだってしていられない。二課の装者がいつ戻ってくるとも分からないし、いつ調がドクターを見つけられるかも分からない。
互いに戦意を衰えさせないままに、交錯する刃の音が戦場に鳴り響く。
…そんな中で、戦場に人間なら縦に真っ二つにできそうな巨大な丸鋸が飛来する。ピンク色の色鮮やかなノコギリは、いつだって見慣れた相方のもの。
「調!」
「切ちゃん、ドクターがどこにもいない!シュルシャガナで近くは探したんだけど…」
「アイツどこまで足引っ張りやがるデスか!?…せめて八幡だけでも連れ帰るデスよ」
「うん、直ぐにアイツを倒そう」
「……くっ」
二対一。片や疲弊し片や万全。それも二人の方が万全ときた。二課の仮設本部は海にある。ここからギアを纏い急いでもかなりの時間がかかるのは間違いない。その間この二人を相手に、いや下手したらマリアまで出張ってくる可能性は十分にある。
……決断を、迫られる。
「…お前達は、比企谷を守ろうとしている。だがウェル博士は比企谷を人形のように扱っていた。…お前達は比企谷を、いったいどうするつもりだ?」
「……どうするもこうするも」
「大事な仲間デス。ドクターが何考えてるか知らないデスけど、問い詰めて八幡にちゃんとぶん殴らせるデス!」
「……そうか」
…目に、嘘は感じられない。二人とも比企谷を守ろうとしている。純粋な瞳を垣間見て、何故かふと先日の言葉を思い出していた。
(……信じるのって大変なんですから、か。だが彼女らが本当に世界を救おうと奮戦し、比企谷を友だと思うなら……)
…もしかしたら彼女らとも、本当の意味で手を取り合う未来があるかもしれない。雪音クリスに手が届いたように。刃を交える相手ではないかもしれないと。
(…敵を信じる、なるほど難しい。だが、立花ならそれを躊躇いはしないのだろうな。
…まったく毒される)
四つの眼差しを前に、僅かな葛藤を抱えながらアームドギアを収納する。そんな翼に胡乱な表情を浮かべながらも、二人は攻撃の態勢を緩めた。
「……ここは引こう」
「…いいの?」
「比企谷の状態も分からない。これ以上土を付けておくのは望むところではない。…頼むぞ」
「……お前なんかに言われるまでもないデス」
「…行こう切ちゃん」
訝しむように何度も振り返りながら比企谷を抱えていく二人をその場で見送る。その度に何度だって改めて追いかけたくなる自分を抑え続ける。引くと口にした手前、信じると決めた手前、してはならないと自戒を続ける。
「……信じるのって大変なんですから。…なんとも、身に染みるな」
改めて口にする。信じることの難しさを。そしてその難度を超えて信じてくれた少女への想いを馳せ、身を翻す。
また救えなかった。それでも次こそ、今度こそはと。
信頼に応える覚悟は、いつだって消えはしないのだから。
☆☆☆
side???
一方その頃。
「……ふ、フヒヒ。…こんなところにあったのかぁ」
荒れ果て、剥き出しの地面。影が掛かり人の目を遠ざける為だけのような地面。その一端。ソロモンの杖をついたウェルはソレ抱え上げた。
脈動は止まらず。聖剣の一幕に飲まれたにも関わらず原型を留めたソレを。
……ネフィリムの心臓が、鼓動と共に手中に収まった。
流石にネフィリムの心臓なしで作り上げる頭はありませんでした。テンプレと原作沿いがウリの小説ですので。
しかし俺ガイルみんなめんどくさくて可愛らしいね。玉縄とのラップバトルは何だこいつら感しかなかったけど、誰も彼もがほんとめんどくさい好き。好きしか言えない。俺ガイル周回してきます。