やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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なんかようやく中盤って感じがしてきました。13話しかないのに内容の密度が濃過ぎるんだ。

といっても今回は完全繋ぎで。それぞれの小さな胸のうち。


やはり、みんなの想いはすれ違う。

「………んが?

 

 

口から空気が抜けるような感触共に目が覚める。それと同時に歌やら天羽奏やらやわらかおっPのこととかが頭を巡る。マジでなんだったんだろうあの謎空間。

 

ボケーっと天井を眺め、周囲に軽く視線を向けるとマリアと俺と同じように寝かされているマムがいた。

 

 

「ーーー♪」

 

 

………壁に背を預け、目を閉じて延々と口パクをするマリア。この状態は見覚えがある。きっと彼女は歌を歌っているのだろう。眠りについた俺とマムへの子守唄だろうか。

 

…歌ってくれるそれを聞けないことに、大変申し訳なくはあるけれど。

 

 

「………」

 

 

俺が起きたことは気付かれてはいないようなので、もう一度目を閉じる。ネフィリムや立花響に天羽奏と、破天荒な一大事を終えた後だし後少しだけ、五分だけ。

 

 

「……聞こえますか?私です」

「……?」

 

 

……おや、残念。もう一人もお目覚めか。マムの方から聞こえる機械音にマムの声。つい先程まで寝ていたはずなのに随分と声に芯がある気がする。

 

 

『も、もしかしてマムデスか?えと、えとデスね。待機中のあたし達が出歩いてるのはデスね……』

「分かっています。マリアの指示でしょう?」

『マムの容態が見れるのはドクターだけ。でも、連絡が取れなくて…』

「分かりました。では見つかり次第連絡を。ランデブーポイントを通達します」

『了解デス!』

 

 

元気な暁の返事を最後に通信が終わる。マムの容態やら寝かされていたマムやら、どうやら俺のいない間に色々あったらしい。

 

 

「………なに、緊急事態か?」

「八幡、目が覚めたのね」

「ん、まあな。あいつらは?」

「ドクターを探しに行ってもらってるわ。マムの調子が随分悪くて…」

「ドクターいねえのかよ…。んじゃ俺も行くわ。暁と月読がどこら辺探して回ってんのか教えてくれ。違う方を探しに行く」

 

 

通信に問題がないなら人海戦術が一番だろう。寝起きとはいえ体に不調はない。走って回るくらいなら十分だ。

 

 

「……いえ、八幡はもう少し休んでなさい。戦って疲れているでしょう?」

「別に問題ない。身体も丸々健康体だ」

 

 

肩を回したり腰を捻ったりしてパキパキと鳴る身体を動かす。疲れの蓄積もなければ腕も取れないし痛みもない。若さ故かそれとも天羽さんが気遣ってくれたのか。

 

なんにせよ、寝てるだけの住人になるには万全過ぎる。

 

 

「…………。…八幡、もう少し自愛をなさい。覚えていないかもしれないけれどあの瞬間。あなたはあなたじゃない人間に姿も心も塗り替えられていたのよ?」

「覚えてるよ、天羽奏だろ?それに今は問題なく動ける全然大丈夫で…」

 

 

 

「大丈夫じゃない!」

 

 

諌めるような張り付けるような、そんな言葉を使っていたマリア。だが最後には叩きつけるような怒声が部屋の中を埋めた。

 

…………なんだ。なんだよその目は。

 

 

「あなたは!自分が自分でなくなることが怖くないの!?昨日までの自分が、明日には違う誰かになってることが!きっかけはドクターの仕業かもしれないけれど、その入れ替わりが永遠になるかもしれないことが!」

 

 

肩を抑えられ、寝ていたベッドに座り込む。射抜く視線は至近距離から突き刺さる。

 

…だけどその目はなんだ。その全てを何一つ理解できないような目は、いったいなんなんだよ。

 

 

 

 

「……それは、フィーネの器となったお前と何が違うんだよ」

 

 

 

「…っ!」

 

 

 

俺の言葉がマリアに刺さるように、肩に込められた力が抜けていく。

 

それだってそうだ。むしろ誰かに成り代わる姿を見たのなら、お前が真っ先に思い浮かべる事象だ。マリアがフィーネに成り代わるのが嫌で戦う暁や月読がいる。レセプターチルドレンの中で誰よりも、お前がその恐れと戦っているはずだろう。

 

 

 

 

「お前も変わらない、フィーネっていう自分じゃない奴に成り変わる可能性を受け入れて今ここにいるんだろうが。中身は違えど、俺とお前の何が違う」

「……違うわ。…全然」

 

 

振り払わずとも落ちていく手を眺め、立ち上がりその横を抜ける。

 

後ろから聞こえる声だって、力なく空気に溶けるだけ。

 

出口に向けて止まることはない。止まる必要もない。必要なのはさっさとドクターを回収してマムの容態とやらを改善してもらう事だ。

 

 

「マム、通信機持ってくからあっちがドクター見つけたら知らせてくれ」

「……ええ、分かりました」

 

 

…それに死ぬつもりも、天羽さんには悪いが身体をあげるつもりもない。歌を聞いて背を蹴られた今、俺なりに生きると決めた。

 

とりあえず目先としては、ネフィリムが亡くなってしまった事についてか。世界を救う、目的もそれだけは変わらない。

 

偽物だらけの今の俺だ。それでも生きる場所は、聞こえなくても歌の満ちる場所に居たいと願った。

 

 

その未来のために、進む以外の選択肢はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………違うのよ八幡。あなたと私とじゃ、全然…」

 

 

 

 

……崩れ落ちるような音に混じった声は、耳を掠るだけで届く前に掻き消された。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

sideナスターシャ

 

 

 

 

「………違うのよ八幡。あなたと私とじゃ、全然…」

 

 

泣き崩れるマリアの背に、ただただ胸を締め付ける。

 

 

(私はこの優しい子達に、いったい何をさせようとしていたのか)

 

 

計画を始め、紆余曲折ありながらもここまで来た。否、来れてしまった。ネフィリムの起動、シェンショウジンという聖遺物、自分の病気と戦いながらもまるで問題ないかのように歩んできた。

 

本来ならここまで来ることすら奇跡に近いものだと自覚している。それも血に汚れた手は、それに持つべき躊躇いのないドクターのみによってしか行われていない。

 

マリアも、八幡も。その瞬間に近しい時があったにしろ、子供達は誰も殺さずに進んできた。本来だったらライブ会場で、米国政府の襲撃で、ネフィリムを放った戦いで、優しい子供達はその瞳の輝きを涙で濡らすはずだった。

 

()()()()()()()()()()()()()。世界を救うのに優しさなど不要で、どこかで全員その優しさと訣別すべきだと思っていた。それでこそこの世界へ羽ばたく歌声になる。

 

………せめて最期の瞬間までに、と。

 

そのためにマリアにフィーネが宿ったことにして、ドクターを仲間に引き込んだ。もちろん最大の理由は、自分の身体をあの子達の旅の最後まで待たせる為。それでも道徳と倫理の崩れたドクターの近くにいれば、それに引き摺られるのではないかと。

 

 

(…ですが、それが本当に正しいことだったのか)

 

 

()()()()も、それが理由だった。

 

この世界救済の作戦は成功しない。その理由を私だけが知っている。

 

フロンティアの起動。それに必要なシェンショウジン。その輝きは無垢にして苛烈。しかしてそのカケラは不完全。フロンティアを浮上させるにはあまりに力不足だった。ギアペンダントを機械によって人工的に出力を引き上げるのでは、どう足掻いてもフロンティアは動かせない。

 

 

……それでもパヴァリア光明結社との接触に成功して、唯一あの子達に外の世界を見せられる可能性だった。小さい頃からただひたすらにF.I.S.に縛られ続けたあの子達に、私が死ぬ前にできるほんの僅かな罪滅ぼし。

 

独善的でも計画的に。ただ逃すのではなく、大層なお題目を掲げてテロリストの真似事に手を染め、フロンティアにネフィリムにシェンショウジンに月の落下にと形を積み上げてきた。

 

 

(…ですが、これもここまでですね)

 

 

シェンショウジンの出力不足はもちろん、ネフィリムすら失った。これ以上テロリストの真似事を続けるには、もはやかける足も無くなってしまった。

 

 

(…優しい子達。マリアに切歌に調。…そして八幡)

 

 

重い身体に、不思議と軽くなる気持ち。終えるべき終局を見定め、その道筋を手繰った。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

side調

 

 

 

 

 

「やー、まさかマムが通信に出るなんて思っても見なかったデスよ」

「うん。大丈夫そうでよかった」

「早いとこドクターを見つけて帰るデスよ!」

「うん」

 

 

手を繋いで切ちゃんと一緒に街中をかけていく。もう朝日も登っていてカディンギル跡地も探し終わってしまったから、今は街中に繰り出している。

 

走り続けて足は痛いし、朝から何も食べていないからお腹も空いた。だけどマムの元にドクターを連れて行くために休んでいられない。

 

それに……。

 

 

「それにしてもみんな困ったもんデスよ!ドクターは連絡もよこさないし、八幡もグースカ寝たままだし」

「…うん。八幡、すぐに目が覚めるといいんだけど」

「きっと大丈夫デスよ!それに覚めなかったらドクターを締め上げて付きっきりで看病させるデス!」

 

 

隣を見れば明るく笑う切ちゃん。いつだって太陽のように笑ってて、いつだって私を守ってくれる優しい君。じーっと見つめていると、切ちゃんもこちらを見てニコッと笑う。それに微笑み返せば、また二人で前を向けた。

 

…それだけでよかった。今もこれからもF.I.S.の頃と同じに切ちゃんの隣で笑っていて。だけど痛くて苦しくて悲しいばかりのF.I.S.から抜け出せたから、もっともっと切ちゃんの笑顔が見たくなった。

 

マリアも難しい顔をすることが増えたけど、今も優しい顔を向けてくれる。八幡は全然笑わないけど、それでも自然とみんなの一人になっていた。マムも相変わらず厳しいけど、いつも私達じゃ追いつかないくらい難しいことを考えてくれている。

 

 

(それなのに、なんでこんなに不安になるんだろう?)

 

 

みんながいつも通りの顔をして、それでも外に出てからどんどん変わってしまっているから?マムが私達を悲しげに見つめていて。マリアが影で膝を抱えていて。切ちゃんが八幡の記憶がないことを八幡以上に気にしてて。八幡に至っては突然別人になっちゃって。

 

みんなが知られていないと思っていることも、じーっとジーーッと見ていると気づけてしまう。進もうともがいて、みんながたくさん悩んでいる。

 

 

……じゃあ、私は?

 

 

…強い力を持つ人たちに虐げられる世界が嫌で。月が落下するのをただ待つだけの人達を救いたくて。

 

それよりなにより、フィーネの器となったマリアの手助けがしたくて。大切な人だから一緒にいたいし支えたい。

 

………でも、私の変化はそれだけなの?

 

本当は私も……

 

 

 

(……進みたい?)

 

 

 

………。

 

 

 

「…………進めない」

 

 

 

…。

 

 

(……変わりたい)

 

 

 

…………。

 

 

「……………変われやしない」

 

 

 

 

自問自答は悩むまでもなくて。切ちゃんに聞こえないくらいの声でも、本心は否定の言葉だけを口から吐き出した。変わる自分が想像できない。進める自分が想像できない。

 

…一人じゃなにもできない臆病者が、前に進もう、変わろうだなんて。

 

 

「…?調、どうかしたデスか?」

「ううん、なんでもないよ切ちゃん」

 

 

大好きな切ちゃんと繋ぐ手に力が入る。

 

私は変われなくていい。進めなくてもいい。ただ隣で君が笑ってくれればいいの。

 

だけど世界は意地悪だから、切ちゃんが笑えない時だってあるのも知ってる。そんな時でも無理して笑ってしまうのも知ってる。そんな時でも私が笑えるような世界を作ろうとしてくれているのを私だけは知っているから。

 

せめて、君が泣かない世界に。

 

もしも切ちゃんを泣かせる世界が立ち塞がったら、その時は……。

 

 

 

 

 

…私がそんな世界、切り刻んでみせるから。

 











なんでマリアさんすぐ泣いてしまうん?まあ二期はだいたいそんなだったけど。嘘が重なって隠しきれなくなるところが一期の響を連想させたり。

というか原作マム。シェンショウジンの出力不足知ってるし、何度もテロリストの真似事言ってるけどどれくらいの勝算だったんだろう。考察と妄想は捗るけど動くにはあまりにリスキーな気も…。

調可愛い。悩んで止まってまた進んでね。
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