やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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なんでこの小説は自分が書かないと更新されないのか、悩み続ける作者です。寝てるだけで続きが書き上がらないのたぶん世界がバグってる。書くのは楽しいんですけどね。


やはり不意に彼は巡り会う。

side翼

 

 

 

 

「………ガングニールの、侵食?」

「ああ。響くんと融合している胸のガングニールが、響くんの体を蝕んでいる。腕を捕食されるという最悪の事態から、こんな産物が見つかるとはな…」

 

 

二課本部の司令部での映像。そこで立花のメディカルチェックの結果の一部が映し出されていた。完全な状態とは程遠い、心臓部から広がるように異常部が広がっていた。

 

ネフィリムに腕を捕食され、結果暴走。その結果何故か捕食された筈の左腕が再生していた。だが理屈なき結果はありえない。その理由がそれだった。

 

 

「聖遺物との融合が進めば、それだけ人の身から遠ざかる。その聖遺物に近づき過ぎれば、人に戻れなくなる。その結果が…」

「…立花の左腕の再生であり、このカケラであるということですか」

 

 

手元にある小さな金属片を眺める。ガラスケースに保存されたコレは、立花の体組織の一部であるらしい。人の身に相応しくない固く煌めく金属。

 

それが立花の体から構成されたと。

 

 

「先の暴走が、我々の知り得ない情報を見つけ出した。身に纏うシンフォギアとしてエネルギー化と再構成を繰り返してきた結果、体内の融合深度が進んだんだ」

「生体と聖遺物が一つに溶け合って…」

「適合者を超越した響くんの爆発的な力の源だな」

 

 

アームドギアを形成するエネルギーを使った無茶振りな攻撃や、一撃特化の破壊力。あらゆる過去が、繋がっていく。

 

 

「……この融合が立花の体に与える影響は?」

「…遠からず死に至るだろう。そうでなくてもこれ以上の融合が進んでしまったら、それはもう人として生きていると言えるのか」

 

 

……侵食され続ける立花。このまま続ければ壊れてしまう。止めるためには、その先へ進ませぬ為に、私は何ができるだろう。

 

 

「……これ以上、立花を戦わせるわけにはいきません。降りかかる火の粉は、全て防人の剣で払って見せます」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………しらみ潰しなんだよなぁ」

 

 

通信機を懐にしまって太陽燦々な街並みに繰り出したはいいものの、当然あてはない。というかあったらもう暁達が見つけているだろうし。

 

だがドクターに行くところなんてあるのだろうか。無一文だし白衣で目立つし、そもあれから半日以上を飲まず食わずだ。生きる先がない場所に行く人じゃないだろうから、この街の中にはいるとは思うんだが…。

 

 

「シンフォギアを纏う訳にもいかないしな」

 

 

二課に捕捉されるし飛んでるところを見られたら大騒ぎだ。「親方!空からヒキガエルが!」なんて声が聞こえたら手からアームドギアが滑るかもしれない。見せてあげよう、ラピュタの雷を!

 

むしろドクターがさっさとソロモンの杖でノイズ発生させてくれれば、その反応を追って居場所も特定できるんだがな。もちろん二課にもバレるが数の上では三VS三+ノイズでこちらが優位。さらに立花のやつは直ぐに復帰してこない可能性もある。

 

 

「……ま、行くか」

 

 

足を進めながらドクターを探す。キョロキョロと辺りを見回すのは素人。顔は前を向きながら、前から来る人を左に避けながら右方確認。ついでにチラリと左方確認。前に人がいなければ左右へ目を向ける。趣味が人間観察なのは伊達じゃない。

 

いずれにせよ動きがあればマムから連絡が来るだろう。それまではひたすら街中の探索を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……するしかないよな。それに腹も減ったな。飯も済ませとくか。どこにしよう、サイゼかな?サイゼだな。むしろサイゼしかないまである。記憶がなくてもサイゼへの思いは消えなかったらしい。この気持ち、まさしく愛だ!

 

サイゼへの思いを確認しながら目の前に突っ立ってる女の子を避ける。なんか視線が俺の方に向いていた気がしたが、勘違いしてはいけない。こういう時に軽々しく反応すると「は?誰アンタキモいんですけど」と、見知らぬ誰かを妹扱いしちゃう可哀想な人になる。

 

だが今回は難易度イージーだ。呼び方がお兄ちゃんな時点で俺である選択肢が消えるからな。むしろいつも消えてるまである。バニッシュメント・ディス・ワールド!…キャロルかな?

 

というか誰かを呼ぶ時「おーい」とか言うのやめてほしい。俺に話しかけてんのかと思っちゃうだろ。わたくし自意識過剰系男子ですの。

 

 

「……ねえ、待ってよお兄ちゃん!」

 

 

…うるせえな。早く返事してやれよどこぞのお兄ちゃん。もしかしなくてもお前ら千葉の兄妹だろ。行き過ぎ兄妹愛で結婚式挙げちゃう世界に戻れよ。すれ違った妹さん結構可愛かったしきっと兄貴の方もイケメンなんだろうな。目が腐る遺伝子が憎いぜ。

 

 

 

ガシッ!

 

 

 

「っ、と!?」

「…待ってって、言ってるでしょ」

 

 

アホなことを考えながらドクターを探していると、不意に力強く腕を掴まれてる。二課の新しい刺客だったりするんだろうか。

 

…恐る恐る振り返る。そこには中学生くらいの少女がいた。ぱっちり開いた目に、何故か涙を浮かべながらこっちを睨みつけている。放課後の時間帯だったのか、制服をきっちり着こなしていた。そして何より……。

 

 

既視感のあるアホ毛が、頭のてっぺんで揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

side小町

 

 

 

 

 

「………誰?」

 

 

……腐った目を向けられながら、訝しむような警戒するような視線を受けながら、当たり前のように発せられた言葉を受け取る。

 

 

(……ほんとに、忘れちゃったんだ)

 

 

滲む涙と一緒に翼さんの言葉が真実だと知る。それと同時に、やっぱり生きてた喜びが湧き上がった。

 

この声を知ってる。生まれてからずっと聴いていた声だ。

 

この顔を知っている。生まれてからずっと見てきた顔だ。

 

この目を知っている。光ってる時から腐るまでの成長過程まで見てきた。

 

そして………。この目を知っている。

 

 

…………初めて会った人に、向ける目だ。警戒して、距離をとって、あわよくば逃げようとして。全身を見渡すような仕草に、掴まれている腕から意識を逸らそうとする会話。

 

その全部が、私に教えてくれる。

 

 

「……やっぱり、お兄ちゃんだ」

「いや人違いだ。俺の妹がこんなに可愛いわけがない」

「ほらやっぱり」

「えぇ…、今の判定要素あった…?」

 

 

ちょっとキモい否定の仕方だって、大事なお兄ちゃんの証だった。というか家族のこと忘れてるのになんでそういうことは覚えてるの?バカなの?

 

 

「…いや、え、なに?そう言う感じのお店の人?俺金ないんで家族とかそういうのは記憶の彼方から消え去ったというか……」

「………名も無き神」

「…………………………え"っ?」

 

 

 

 

「…一人野球一人サッカー一人テニス、告白した次の日に黒板で全バレ、転校した子に出した手紙がお兄ちゃんにだけ来なかった、小学校の給食のカレー溢してからあだ名が加齢臭、むしろその前がヒキガエルから更にカエルになってた、クラス演劇で好きな子ヒロイン自分主人公の台本作った、バリアの効かない比企谷菌、修学旅行で好きな子の写真を買おうとしたけどそれがバレて……」

 

 

 

「分かった!俺の妹がこんなに可愛い!だから辞めて!?」

 

 

…羞恥心と後悔を混ぜ返しような顔で蹲るお兄ちゃんを見下ろす。いや記憶忘れてるって聞いたからどれかヒットするかなとは思ってたけど、ほんとどーしようもないことばっかり覚えてるなこの人。

 

 

「……なんでそんなことは覚えるのに小町達のことは忘れちゃうの?」

「…………俺が知るかよ。てかお兄ちゃん相手に黒歴史全部抉ろうとするの酷くない?」

「お兄ちゃんの黒歴史なんて小町全部なんて知らないし。話してくれたのと噂になってたことだけだよ」

「マジか。ならアレはバレてないのか?…いや記憶無くなる前に言ってた可能性が…でもあっちは流石に言えるメンタルはないはず……」

「うわぁ…」

 

 

目の濁りが最後に見た時よりも酷くなってたから心配していたけど、それでもやっぱりいつものお兄ちゃんで。ブツブツ言いながら一層目を腐らせている。

 

…ほんとに、ダメなお兄ちゃんだ。

 

 

「まったく。小町だから大丈夫だけど、そういうの外じゃ辞めた方がいいよ?キモいし」

「キモいの時点で俺が大丈夫じゃないんですが…」

 

 

…それなのに。こうして自然と話せる当たり前が嬉しくて。寂しい気持ちが消えてって、流れ切ってもいいくらいの涙がまた瞳に溜まっていく。

 

 

「……ぐすっ」

「…!?」

 

 

………もう、いいよね?こんなに我慢したんだもん。ちゃんと話しかけて、無理矢理にだって妹認定させて、こんな気持ちになったって我慢したんだもん。

 

死んだかと思った、あんなに綺麗なお姉ちゃん候補みんなほったらかしにして何してんのって思った、世界一可愛い妹だって世話するごみいちゃんがいなくなったら寂しいんだからねって思った、次世代型ハイブリッドぼっちとか言っても家族は別枠なのはお兄ちゃんも分かってるでしょって思った。

 

 

…知ってたけど、やっぱり小町はお兄ちゃんのこと大好きなんだって思った。

 

 

全部全部伝えたいのに。喉が掠れてしゃっくりが出て口がうまく回らない。…そんな私を見る目も、ただ戸惑うだけで終わってしまう変わってしまった兄がいた。

 

…だけどほんとに、我慢の限界。覚えてなくてもいいから、小町だって分からなくてもいいから、ほんの一瞬でいいから。

 

……思い切り抱きしめさせて。

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃああああああああ「…っ、と!」ああああん!!」「ぐほぁ!?」

 

 

 

 

 

 

……戸惑い立ちすくんでいた兄に突撃をかます。それでも人避けスキルは健在で咄嗟に避けて見せたお兄ちゃんに、さらにもう一歩踏み込んで腹にタックルしながら抱きしめた。

 

 

「え、な、ばっ、ちょ!?」

「お兄ちゃんだ……ほんとにお兄ちゃんだっ!」

 

 

背中に手を回せば慣れ親しんだ猫背、鼻を鳴らせば慣れ親しんだ匂い。だけどさっきの突進を避けられたことでやっぱり嘘ついてるわけじゃなく、忘れられてしまってるのも伝わって。

 

…というかあんな中途半端は避けが小町に通用するなんてお兄ちゃんなら思わないし。

 

 

………………そっか。

 

 

……忘れちゃったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えぐっ、ひっく…」

 

 

 

 

 

 

 

………遅い。遅過ぎるよ。分かったとか本当だったとか、言葉の上だけでは取り繕って。やっぱり薄皮一枚剥けたらすぐこれだ。実感するのが遅過ぎるんだよ小町は。

 

信じたいけど疑っちゃうのは、残念だけど性分みたいなもので。その上で信じたいと願っても、願いは積み重ねた性格に敵わない。

 

 

…だけどそれすら敵わないくらい、私はお兄ちゃんの事を知っていた。

 

 

反応も仕草も、目線や距離感だって誰よりも理解してる。一緒に暮らして、一緒に生きてきたんだもん。誰よりも身近で、誰よりも心を開いていた。

 

 

「………っ!」

「…まあ、その、なんだ。…悪い」

 

 

…だからこんな撫で方一つだって、違いに気づいちゃう。遠慮がちで、控えめで、恐る恐る触れるような撫で方。もっと雑で強めだったソレとは全然違う。それでも揺れる手は暖かくて、どうしようもなく安心してしまう自分が恨めしい。

 

 

「…ばか」

「………」

「ぼけなす…」

「………」

「………八幡」

「八幡は悪口じゃねえだろ…」

 

 

口から漏れ出る悪態への反応に、目の前の服に涙と鼻水を擦り付けながら少し笑ってしまう。このまま触れていれば、この数ヶ月分の喪失感を埋められるのかな。

 

…もう一度、鼻から大きく息を吸う。

 

きっとお兄ちゃんは、またどこかへ行ってしまうだろうから。掴んでいても、抱き締めていても、お兄ちゃんは()()()()()()()を受け入れはしないから。

 

だからもう少しだけ。あわよくばこのままずっと。事情を聞いて戻ってくれることを願って。

 

私は兄の服に枯れない涙を擦り付けた。








小町出すか出さないかで一週間悩んでました。クッション挟むかむしろ後半纏めてドーンかでグダグダと。というかほんとシンフォギアに無駄なシーンが無すぎてどんどん自分の脳味噌突っ込まないと全部流される。

…………自分で書いた小説って自分が読みたい話だから、度々中々なクリティカル食らうんだけど、意図して書いてることを全部理解できちゃうの精神に悪いなって読み返してて思いました…。自分の小説読んで泣くムーブ楽しい。
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