やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
実際ソロモンの杖持ちのクリスにこの時点の響勝てないんじゃないかと書きながら考えてた作者です。
side…
「いーくしゅ!」
「……豪快ね」
「くしゅん。うぅー、もしかして私誰かに噂されてる?ノイズの来る日も来る日だし、私呪われてるかも」
「そうかもね」
「否定してくれないんですか!?翼さぁ〜ん」
「変な事言ってる暇があるなら、この程度のノイズ一人で片付けられるようになりなさい。ノイズに逃げられて被害が増えたら私たちが出張る意味がないわ」
「は〜い、仰るとおりです…」
今日も今日とてノイズを倒すことに専念しているが、それでも気分は上がってくれない。今日は本当なら未来と一緒に流星群を見る約束をしていたのだ。それが直前も直前になっての中止。この日の為に課題を終わらせ、提出時間が過ぎても受け取ってもらえた涙の結晶を作り上げたというのに。
その上今日現れたブドウのようなノイズは人を襲うのではなく、背中のブドウを爆発させてあからさまに此方を翻弄していた。結局少し遅れて到着した翼さんが切り捨てたのだが…。
「……それにしても変なノイズでしたね。まるで私達から逃げてるみたいな…」
「ええ。逃げている、もしくは…」
【蒼ノ一閃】
翼さんが突如剣を振りかぶったと思ったら蒼ノ一閃を茂みに向けて振り抜いた。茂みや周りの木ごと根こそぎ切り裂かれると思いきや、それは直前で切り捨てられた。
「……そう、もしくは
……そう、私達を襲ったのは、人間の女の子だった。
「貴様…その鎧は……」
「へえ、あんたこの鎧の出自を知ってるんだ?」
「…っ!二年前、私の不手際で奪われたものを忘れるものか!何より、私の不手際で奪われた命を忘れるものか!」
少女はまるで見せつけるようにヒュンヒュンと音が鳴るようにムチを振るう。それに合わせるように翼も剣を構えた。
一触即発、翼の目がまた以前の時のように淀んでいく。この鎧は二年前の罪の象徴。この鎧を起動するために開催されたライブで奪われ、この鎧のために発生した戦いによって奏は死に陥った。それを目の前にする残酷は、しかして己の心を弾ませていく。
「…翼さん!待って!待ってください!相手は人です、同じ人間ですよ!?」
「「
「「……」」
「……どうやら、貴方と気が合いそうね」
「だったら仲良くじゃれ合うかい!」
パァン!と豪快な音を立てて伸びたムチは翼を襲っていく。鋭い身のこなしで避けたり受け止めたりしているが、出力で劣っているのか逃げの一手を取るばかりだ。
(翼さんを狙ってるなら私が行けるはず!私も役に立たなきゃ!)
鎧をまとった少女が此方に警戒を割く様子はない。舐められている、というよりもロクに戦えないのを知られているのかもしれない。だけど、だとしても…。
「うぉおお!私だって!」
「へっ、ほんと分かりやすい。鈍臭いのがいっちょまえになぁ!」
「うそっ!?こっちに…ガハッ!」
少女が背を向けた時に殴りかかるも、まるで見えているかのように翼さんを襲っていたムチが返す刀で此方にその脅威を振るって来た。ノイズの攻撃とは違う、此方に狙いを済まして読み合いが発生する戦い。だがそれはどこまでも響に経験不足なものだった。
「……痛ぁ」
「人と戦うのが嫌なんだっけ?ならこいつらでも相手してな!」
受け身も取れず吹き飛ばされる響に向けて、少女は新たな聖遺物を振るう。そこから光が飛び出て、それが地面についた途端にあるものが生み出された。
「ノイズ!?それも操られて…!?」
「たくらんけ相手にゃ御誂え向きだろうよ!」
少女が聖遺物を振るうたびに増えるノイズは、どういうことか響だけを狙いつけるように迫ってくる。最近は戦えるようになってきたとはいえ、まだ翼に大部分を任せている状態だ。この数をどうにかできるかは怪しいところがある。
「………私を相手に気を取られるとは!」
だがこの隙を見逃すほど、防人の剣は
【 炎 鳥 極 翔 斬】
両手に炎を纏った剣を携え、空翔ぶ鳥の如き速さで両翼を振るう。防ごうとムチを構えるが、それは余りにも遅すぎた。ネフシュタンの鎧に十文字の彩りを加えるように、二振りの剣が突き刺さった。
「…やった!」
「…いや、これは…」
剣で確かに切り裂いた。だが、構えられたムチがいつのまにか翼の足を絡めとり、剣が刺さったままの状態で空中に打ち留められていた。
「お高く止まるな!」
絡められたムチを無理矢理振り回して翼を投げ捨てる。地面に叩きつけられ地を這う翼の顔を、転がされた先に移動した少女が踏みつけた。
「のぼせ上がるな人気者!誰も彼もが構ってくれるなどと思うんじゃねえ!」
(…これが、完全聖遺物のポテンシャル…。それも力に振り回されるのではなく、使いこなしているのか…!?)
ビキ、ビキビキと少女の鎧が音をあげる。それと共に少女に苦悶の表情が浮かぶが、なんということだろう。鎧に空いた裂傷が時を巻き戻すように再生していく。これがネフシュタンの鎧。驚異的な再生能力は不意を打った翼の一撃をも無かったことにしようとしているのだ。
「……くっ。…繰り返すものかと、私は誓った!」
「ああん?……はっ。この場の主役と勘違いしてんなら教えてやる。
「なにっ!?」
「先輩風吹かしてこの有様。鎧も仲間も、アンタにゃ過ぎてんじゃないのかい!」
「……だとしても…」
【千ノ落涙】
「チッ!」
天より降る剣で頭上の少女を追い払うが、戦況は変わらない。立花と二人で挑んだとして、埋まるには大き過ぎる差。ネフシュタンの鎧にノイズを操る聖遺物。賄いきれない戦力差に敵の目的が立花響である事実。このままでは二年前と同じ、またこの身では何一つ守れないという運命を背負わされるしかない。
(……そっか。これが、奏の見ていた最期の風景)
勝てないと分かる眼前の勢力。後ろには立花響。その上あの時の立花響は死に体だったと聞く。つまり奏は自分の身がボロボロであり、しかも助かるかどうかも分からない人間を守るために、あの歌を口にしたわけだ。
(ダメだな。こんな時でも、奏のことを思い出す。出来損ないの剣が出来なかったことをやってみせた片翼の勇姿。そして…)
身体を起こし、切っ先を少女へと向ける。
「……吹かせられなかった風を、
戦意が喪失したのではない。むしろ、轟々と吹き荒れるように上がっていく。覚悟を決めた戦士の目で、風鳴翼は立ち上がっていた。それを間近で受けた少女は、それが何を意味するかを汲み取っていた。
「……まさか、歌うのか?絶唱…」
その鬼気迫る姿に戦慄する。手負いの獣は恐ろしい。生きる為にその身を捨てる動物は恐れることを知らない。だが手負いの人間は、知恵がある故にまた違う恐ろしさがある。
人は生きる為に殺すことを厭わなくなり、そして。
(今から止める?いや一旦引く?だけどあいつを連れて帰るのがフィーネの命令。それをせずに撤退なんて…)
「翼さん!大丈夫ですか!?」
二人の睨み合いが続く中、ようやく響がノイズの第1波を片付けて近づいてくる。
「……ふっ!」
「…っ!」
少女が伸ばすムチを翼が払い上げ、打ち返す。
「……はっ!」
「……ちょせぇ!」
それに合わせて翼が短刀を投げつければ少女はそれを振り払う。互いに交戦の意思を示し、再び武器を構え合う。立花響だけが、翼の後ろで立ち尽くしていた。
「…あの!翼さん…」
「下がっていなさい」
「ですけど…。私やっぱり…」
「……相手を傷つけることを躊躇えば、全てを失う事を受け入れるのと同義よ」
「………」
「だけど、いい機会かもしれないわね」
「…え?」
突然の返答に翼を見て、ようやく響も翼がいつもとナニカが違うと理解する。何が違うかわからない。だけど、まるでそれはかつての奏のように見えてしまっていた。
「……翼、さん?」
「覚悟を構えろと、貴方にそう言い続けてきたわ。だからこれは私の餞別」
「つばっ…」
「目に焼き付けなさい。防人の生き様、覚悟を見せてあげる!」
♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪
♪Emustolronzen fine el baral zizzl♪
♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪
歌が、響き渡る。風が音の通り道を明け渡すように、周辺はただ一人の歌に支配された。
美しく、儚く、研ぎ澄まされた、最期の歌。
「……天羽々斬の絶唱は、人ならざるモノを断ち切る神の剣。今この地にて、我が運命を斬り捨てよう!」
細く蒼々と煌めく剣は収束した力で悲鳴をあげる。ただ一太刀、対象を絶つことのみに特化した絶唱は、心の臓を掴むようにネフシュタンの少女に刃を向けた。
「ぐっ!クソッタレが!この場は引いて…っ!?」
絶唱を前に尻尾を巻こうとするも、今更遅く。先程弾かれた短剣が少女の影を深々と突き刺していた。
【影縫い】
「………ぁ」
【一閃】
少女の歌には、血が流れている。
早くアニメで翼さんのギア絶唱来ないかな。来たら書き直すのに。
でも一番気になるのはアガートラーム。無限軌道の斬撃はシュルシャガナだし何する絶唱なんだろう。
あとここでふんわり考え事たぁ度し難ぇ!を入れるタイミングが見当たらなかったのが心残り。
獄鎌・イガリマ好き