やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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シャニにFGOのイベントにと誘惑多いけど書くことは辞めません。書き続けるのを諦めないで!

ロストソング二章も来たしこっちもモチベ上げていきます。


正義を信じて、握りしめて

side響

 

 

 

 

 

紡がれる旋律。重なる音階。聞き知った歌詞。

 

 

…絶唱。それが、調ちゃんと切歌ちゃんの口から今まさに歌われている。

 

 

「…ダメだよ。リンカー頼りの絶唱は、使用者の命をボロボロにしてしまうんだ!」

 

 

叫ぶけれど、そんな言葉を耳に入れてくれはしなかった。燃え上がる体の熱を頭に過ぎる熱量が上書きしていく。

 

同じ歌。同じ歌詞。そして、同じ命。

 

この歌を歌うのはいつだって、命懸けで何かを守ろうとする人の願いだった。

 

 

 

 

 

♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪

 

 

 

 

 

 

ライブ会場で絶唱を歌った奏さんは、後ろにいる観客(私達)を守る為に。自分が死んでしまうことが分かっていたはずなのに、その命を歌と変えた。

 

 

 

 

 

♪Emustolronzen fine el baral zizzl♪

 

 

 

 

 

クリスちゃんとの戦いで絶唱を歌った翼さんは、その命を散らした奏さんの覚悟。そして翼さん自身と私へ覚悟という道を照らし守る為に、片翼の死因である怨歌を歌ってみせた。

 

 

 

 

 

 

♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪

 

 

 

 

 

 

了子さんとの戦いでカディンギルの一撃を止める為に絶唱を歌ったクリスちゃんは、それこそ世界を守る為に命を歌い上げた。人の夢、人の未来、その全てを守り抜いたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

♪Emustolronzen fine el zizzl♪(高く奏でる明日の調べ)

 

 

 

 

♪Emustolronzen fine el zizzl♪(戦場に刀鳴咲き誇る)

 

 

 

 

♪Emustolronzen fine el zizzl♪(月の下、命は淡く雪のように)

 

 

 

 

 

 

 

………だけどみんな、その後は傷だらけになったり死んでしまったり。誰かの為にと叫んだその歌は、代償とばかりに使用者を蝕んでしまう。

 

それを知ってる。私は知ってる。きっとその歌声は止めることなんてできなくて、誰かの為になら強くなれるその覚悟を私だって持ってる。

 

それでも……。それでも…っ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『偽善者』

 

 

 

 

 

 

 

 

…誰かを守りたい。誰かを助けたい。この手を伸ばして救える誰かがいるのなら、迷わずに手を差し伸ばしたい。

 

善とか悪とか、馬鹿な私には分からないけど。それでもこんな私を、そのままでいていいと言ってくれる人達がいるんだ。

 

 

 

 

 

 

♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪

 

 

 

 

 

 

♪Emustolronzen fine el baral zizzl♪

 

 

 

 

 

 

 

♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪

 

 

 

 

 

 

 

♪Emustolronzen fine el zizzl♪(胸に響き、いつか世界に満ちるまで)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……誇りとか、覚悟とか、世界には命以外にだって誰かが守ろうとしているものがたくさんある。きっと調ちゃんや切歌ちゃん、マリアさんに八幡くんにだってそれは同じだ。

 

だけどその為に争って傷ついて、誰かと繋がる両手で命を擦り減らすなんて間違ってる。

 

 

 

「はぁぁぁあああ!!」

 

 

 

善とか偽善とか、悪とか世界とか。難しいことは全然分からない。だけど!

 

私が握っているのは善悪なんてそんなカッコいいものじゃない!ワガママで不恰好で不完全で、いつだって迷いながら助けられながら!落としそうになったって誰かと一緒に確かめ合ってきた!

 

 

 

 

信じて握った、私の『正義』だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

Set Harmonics(セット ハーモニクス)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…本当なら、手を繋ぐ事で負荷を抑えることができるS2CAトライバースト。自分だけじゃなく相手からの協力があればこそのとっておき。だけど例えすぐさま振り払われる手だとしても。

 

 

(…この瞬間、この一瞬、あの子達を守れるだけの歌声を私にくださいっ)

 

 

吹き荒れ狂う絶唱を発動しうるフォニックゲイン。それを手を繋ぐ特性を持つガングニールの手で掌握、調律を行なっていく。

 

相手の協力を得られない強制的なエネルギーの徴収、それどころか手を繋ぐことすらない非接触による運用。それによる負荷をその一心で受け止める度に体内の熱は爆発的に上昇していく。

 

近くの雑草は燃え、足元のアスファルトすら焦げ臭く煙をあげ始める。空気すら陽炎のように周囲を揺らがせる。

 

……そして胸に痛みが走る度に、命をかける度に、頭に過ぎった。

 

 

(……ネフィリムに左腕を食べられた時。私、聞こえてたんだから)

 

 

思い出したくもない、あの痛み。あの絶望感。だけど絶対に忘れられない言葉だけは、脳に焼き付いて離れない。

 

ネフィリムに八幡くんが食べられそうになった瞬間。寸前。ガムシャラに飛び込んだあの時に、八幡くんの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

『………まあ、いいか』

 

 

 

 

 

 

ーーーーー。

 

 

 

「ぉ、ぉぉおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

(…良くない!!)

 

 

 

 

 

「はぁぁぁあああ!!」

 

 

 

 

 

片腕に集めたフォニックゲインの全てを調律、収縮して空に解き放つ。それは虹色の竜巻となって誰にも触れずに空を呑んだ。

 

歌声は遠く、だけど胸に焼きつく。この腕は、誰かを守る為にあって。この命だってきっと、何かを助ける為にあると信じてる。

 

大切な命を、誰かに与えられる優しさを。まあいいかなんて言葉で消させない!誰かの為に歌える調ちゃん達の歌声を、こんなところで消させるもんか!

 

 

 

 

「………はぁっ、はぁっ!」

「…私達の絶唱を……」

「取り込んだ、デスか?」

 

 

 

 

………熱い。頭の中がぐちゃぐちゃになりそうなくらい、熱い。胸が溶け落ちてしまいそう。だけど目の前を見れば血を僅かにも零さずにいる二人がいる。

 

…ああ、よかっ(熱い)た。ほんの少しだ(熱い)けど手を繋げた気(熱い)がする。……でもどうし(熱い!)よう。

 

 

 

 

……熱くて、堪らない。

 

 

…熱に飲まれるように、意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

side調

 

 

 

 

吹き荒れる破壊のエネルギーを抱え込み、解き放った立花響に目を奪われる。

 

理解不能な行動だった。今のエネルギーを此方へ向けて放てば、私達はなす術なく終わっていた。なのにせっかくのフォニックゲインを空へ無駄遣いするどころか、今の行為で激しく消耗している。

 

肌を切る熱に浮かされるように、既にあいつは膝をついている。まさに隙だらけの状態だった。

 

 

『………二人とも聴こえて?』

「…マム?」

『すぐにドクターを連れて戻りなさい』

「マム…でも…」

 

 

…立花響を見る。絶唱を奪い、絶唱を束ね、二人がかりでも圧倒するパワー。そんな奴が今、隙だらけで目の前にいる。

 

 

「…今ならコイツを」

『高速で接近する反応を三つ、此方で検知しています。恐らく天羽々斬とイチイバルに八幡でしょう。あなた方もリンカーの過剰投与による負荷を背負っています。此処は引きなさい』

「……分かったデス」

 

 

もう一度彼女に視線をやり、空中に現れたエアキャリアへ帰投する。膝をついたあいつに追撃される事もなく、撤退は最終的にとてもあっさりとした物になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

inエアキャリア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あっさりと。とてもあっさりと。拠点であるエアキャリアの中で身を落ち着かせることができていた。負担に揺らぐ事も、満身創痍で逃げ帰る事もなく、だ。

 

 

「…………身体、思ったりなんともない。絶唱を口にしたのにデスか?」

「………まさか」

 

 

…少し考えなくてもわかるくらいに、悪い要素ばかりの筈だった。リンカーの過剰投与に絶唱。普通に考えてリンカーがなければシンフォギアを纏うことすらできない私達。

 

それなのに絶唱という諸刃の剣を抜きながらも体の調子を確認してみれば、痛みに呻く事もなければ副作用で血が出る事もない。

 

……そこに理由を求めるのなら、答えは簡単だった。

 

 

「…あいつに、助けられたの?……どうして、私達を守るの?」

 

 

絶唱を掠め取った立花響。もしもその時に絶唱の負荷すら奪い取ったのだとしたら。その結果があの熱と、最後に膝をつくことになった理由なのだとしたら。

 

 

「…意味が、分からない」

 

 

彼女の介入なく絶唱を口にしていたら、それこそ私達は平然とこうして話すことはできていなかったと思う。オーバードーズに身体を蝕まれながら、絶唱の負荷でボロボロになったままベッドに運ばれていたはずだ。

 

 

「………偽善者」

 

 

 

 

『私はただ困ってる人を助けたいだけでっ、だからっ!』

 

 

 

 

 

……意味が、わからない。理解できない。敵同士なのに争う必要がないと言い、争っている相手の傷すら抱え込んで奪い取ってしまう。

 

躊躇いなく命を張って見せ、綺麗事を行なっている。

 

……そんなの。まるで、御伽噺のヒーローみたいで。

 

 

(……大丈夫。私は、私達は、正義のために動いてる)

 

 

例えドクターが卑劣で外道な手を使っていても、それは月の落下を止める為で。ソロモンの杖を掲げているのは、世界中の人々を騙している力を持った奴らと対等に戦う為。

 

テロリストであろうと、正義の為に悪の道であっても進んでいる私達は、間違ってない、はずだ。

 

 

(…世界を救う。それが、マムが言った事だから)

 

 

痛みを知らない人間に、痛みに打ちのめされてきた人間は救えない。痛みを知っている私達だから、世界を相手にだって戦える。これは私たちにしかできない事だ。

 

……分かってる。分かってるから。

 

…目が眩んだだけ。自分が体験したから、少しオーバーに感じただけ。目の前の二人を助けるなんて、これから行う世界中の人たちを救う事と比べたらなんてちっぽけ。

 

それに敵を助けるなんて愚かな事。お互いの正義がぶつかったなら、力を持つもの同士なら戦って自分の正義を貫くべきだ。

 

 

(…………本当に、意味不明)

 

 

後ろを振り向けば、もうエアキャリアのハッチは閉まっていて何も見ることはできない。ただ焼きついたようにあの偽善者の姿が脳裏に過ぎるだけ。

 

敵を助けて、自分は傷ついて。意味不明で理解不能。F.I.S.ではそんな人居なかったし、外に出てからだってそんな変な奴は居なかった。

 

…だから錯覚だ。珍しい物が良いものに見えてしまう、そういう類いのものに違いない。切羽詰まっただけの勘違いだ。

 

 

 

 

………あの手に、あの拳に、あの偽善者の瞳に。

 

 

 

……心の何かが溶かされかけただなんて。

 

 

 

…そんなの、ありえない。

 

 

 

 




まさか虹の竜巻が三回も空に上がるとは思わなかった。一回目はともかくね。アニメだとあっさりだけど小説だと心理描写したくなるのは仕方ない。ちゃんと少しずつ進んでるから許して。

八幡の描写も頑張らねば。
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