やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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やっぱシンフォギアって小説だとバトルより感情ドラマの方が筆が乗る気がする。語られてない感情がいろんなところに散見してるから形にするの楽しい。

今沼ってるシャニも文学や行間読ませや暗喩とか色々あるから何気に勉強になってるのかもしれない。


帰る場所の気持ち。

「………やっぱあいつか」

 

 

虹の竜巻の発生源。過去にたった一度見ただけとはいえ、あれだけの現象を一度でも目にすれば記憶喪失にでもならない限り忘れられないだろう。

 

竜巻が収束すれば、根本の部分には膝をついた立花響が存在していた。もう一角を見れば慌ただしくドクターを引っ捕まえて撤退の準備をしていた。鞘による上空からの俯瞰なので全体像の把握は全く問題ないのだが……だが……。

 

 

「待あああちやがれぇぇえええ!!」

 

「ミサイルに乗ったミサイル女がミサイル撃ってくるぅ……」

 

 

好きに追えと言ったがたただ見逃してくれる訳でもなく、ちょいちょい………いやめっちゃ撃ってくる。話は終わってないと暗に言いたいのだろうが、どうしたもんか。マムからの通信でエアキャリアが近くまで来てるのは分かっているのだが、こいつのせいで撤退できない。

 

 

「……って、あっつ。なんだこの熱気…」

 

 

雪音の攻撃を避けながら地上近くに高度を下げていくと、不自然に過ぎる熱気が吹いてきた。暁と月読に合流しようと思っての事だったのだが、この距離でこの温度は異常だ。

 

その発生源…。

 

 

「この熱気、立花か?」

「……っ!?なんだよ、これ!あのバカの仕業か!?」

 

 

雪音も同様に異常を感知する。ギアを纏っていても感じる熱気だ。疑問に思わない筈がない。

 

しかもその発生源のあいつの胸元、まるで金属片のような物体がこびり付いている。あんな物々しい物体はあいつのギアにはなかった筈だ。

 

…明確な問題点ではある。だがそれはニ課にとってだ。俺たちにとってじゃない。ちょうどいい、この場を乗り切れる厄ネタであるならその拍子に撤退ができる。

 

その合図のように俺ではなく、立花の元へ雪音クリスがすっ飛んで行く。この隙に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「止まれ馬鹿ぁあああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を……っ!?正気かあいつ!?」

 

 

 

 

 

【full百of八lies嘘】

 

 

 

 

 

反射的に鞘を投擲していた。操作は効く、高速回転しながら雪音を追い越し目的地へと向かっていく。

 

微調整が必要だ。当てたら洒落にならねえが全速じゃないと間に合わない。

 

………目測だが、間に合う。

 

 

「きゃあっ!?」

 

 

カァン!とアスファルトを鞘が叩く音が響く。そして女の子の悲鳴も。飛ばした鞘が着弾した衝撃が黒髪の少女の身体を吹き飛ばした結果だ。それによって立花と少女の間を分かつように鞘が立ち塞がり、雪音クリスが彼女の元に辿り着く時間は十分稼げただろう。

 

遠目で見ても知らない顔だし、知らない声だ。それでも立花の誰か大切な人間だったのは分かる。分かりたくない。

 

 

「あの状態の立花に近づこうとするとか、冗談だろ…」

 

 

…ここまで感じる熱の発生源である立花。中心に行けば行くほど熱くなるのは自明の理で、その温度は想像もつかない。だが件の女子はよりにもよってその立花の元に生身で駆け寄ろうとしたのだ。

 

火の中に飛び込むようなもんだ。無事で済む筈がない。もしも止めなかったら、彼女は止まっただろうか。

 

…止まるだろう。止まるはずだ。止まる、よな?

 

…………。

 

 

「……あー、マム。今のうちに回収頼む」

『ニ課装者から距離をとりつつ合流しなさい。もしもの場合は迎撃を』

「了解」

 

 

立花達に背を向けて鞘を飛ばす。飛んでいるエアキャリアに飛び込めば、シェンショウジンのステルス機能でとりあえずは安泰だ。ドクターの回収もできたらしいので、目的は達成。むしろここからが忙しくなる、と信じたい。

 

ネフィリムの喪失がデカすぎるし、マムの容体も気になる。

 

……だから、余計なことを考える余裕なんてないのに。

 

 

(あの黒髪の子、マジで立花の所に行こうとしてたよな)

 

 

肌を焼く感覚があっただろう、目を焼く熱気を感じたろう、口を焼く渇きが染みただろう。なのにそれでも、彼女は足を進めようとした。

 

自分が尋常じゃなく傷つくであろう場面で、ただガムシャラに駆け寄ろうとしていた。

 

遠目だったからそれが正しいか分からない。いやむしろありえないだろ。大切な人だからといって、取り返しのつかない負傷を受ける場所に飛び込むだなんて…。

 

 

「………立花の友人、か」

 

 

………つい先日俺の代わりにネフィリムに喰われた立花の、友達。流石にあそこまで考えなしの妙ちくりんな奴が複数いるとは考えたくないところだ。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

side未来

 

 

 

 

 

「…響っ!」

 

 

ノイズを操る誰か。命を脅かす危険な場所から遠ざかるために走っていたのに、今はその逃げるべき危険な場所に向かって走り続けていた。

 

遠巻きでも目視できる虹色の竜巻。それが雲を薙ぎ払う姿を見て、激しい胸騒ぎが起こったから。胸がざわついて、ぐしゃぐしゃに潰されてしまいそうなくらいの不安でいてもたってもいられなくなった。

 

一緒に逃げていた友達も置いて、たった一人陸上部で鍛えた両足を全力で回した。

 

 

(嫌だ…響が遠くに行っちゃう!)

 

 

普段だったら有り得ない行動だった。響がノイズと戦ってみんなを守ってくれているのに足を引っ張るなんてしてはいけない。いつもいつも助けられているから、せめて邪魔をしちゃいけないんだって。

 

だけどこの足が、心が、響のところに行かなくちゃって、助けなきゃって叫んでる。守られてばっかりは嫌だってノイズを背に走って笑ったあの日、初めて響達の為に動けた日と同じ気持ちが駆け巡った。

 

死ぬかと思った日、大切な人の為に動けた日。だけどそんな日はあの日だけだった。たった一日だけの特別な日。

 

 

(…嫌だ。嫌だよ。一回だけなんて嫌だ。何度だって、何度だって助けたいんだよ。何度も助けられてきたから、同じくらい響。助けたいんだ)

 

 

……もう助けられない人だっているから。せっかくあの日、同じ特別な日に友達になれた彼のように。

 

 

「……響!」

 

 

走り続け、響の元にたどり着けば敵である彼女達が去っていく所だった。そして残される膝をつく響の姿。血は流れていない、だけど普段のシンフォギアでは見たことのないほど光と熱が響を包んでいた。

 

響は膝をついたまま動かない。もしかして怪我でもしたの?それだったらすぐに診てもらわないと。そうじゃなくても一目見て普通じゃないのだけは分かるから。

 

 

「ひび……っ!…熱いっ」

 

 

駆け寄ろうとするとジュッと、まるで焼かれるような音が鳴った。自分の身体が燃えてしまったのではないかという錯覚と、響の元へ落ちた木の葉が燃え尽きた音だった。

 

 

「……そんな、響…。……響!」

 

 

…葉っぱが燃える程の温度。燃えたことよりも、そんな温度の中に響が居続ける事の方が心配で。だってこんなの、耐えられるわけがない。まるで60℃のお風呂に手を突っ込んだような痛みをこの距離で感じる。

 

…だったらこの中に居続けたらどうなっちゃうの?

 

 

(助けなきゃ…。……助けなきゃっ!)

 

 

響が苦しんでる。響が辛い思いをしてる。だったら助けないと。ここには他に誰もいない。私だけだ。きっと一人ぼっちであの熱に焼かれてる。

 

一人きりになんか、させないから!

 

 

「響ぃいいいい!!」

 

 

響の元へ走り出して、まず顔に激痛が走った。地団駄を踏んで直ぐに手で防いだけど、まるで素通りするように熱が身体を叩いてくる。

 

熱い、熱い、痛い…。だけど響が…。…苦しい、響、響…。

 

 

「いま、行くから……」

 

 

呼びかけても返事をしてくれないけど、きっと声は届いてくれる筈だから。

 

…呼んだら笑ってくれて、響も私を呼んでくれて、そして私が笑顔を返す。そんな当たり前は、きっと世界のどんな場所でだってできるから。

 

…だからもう一歩。

 

……もう一歩。

 

…………袖が焼けて、もう一歩。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カァン!

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあっ!?」

 

 

 

…突然前方から身体を吹き飛ばすほどの突風に襲われた。あんな温度の中で目なんて開けていられないから、何が起きたのかは分からなかった。

 

あと十歩も進めば響のところにつけたはずなのに。あれだけ熱かった身体には、擦り傷を撫でるように涼しい風が肌に触れる。

 

 

「……何、今の。……響は?」

 

 

立ち上がって響がいた場所を見ると、霞んだ銀色の刀身らしき物体が響との間を引き裂く壁のようにアスファルトに突き刺さっている。見覚えはないがシンフォギアだろう。

 

誰のか分からないけど、あれを盾にすれば響の元に行けるかも…。

 

 

「響…」

「バカ辞めろ!火傷じゃ済まねえぞ!」

 

 

走り出す寸前に、シンフォギアを纏ったクリスに抱き止められた。

 

 

「だけど響がっ!」

「お前何考えてやがる!あのバカの馬鹿が移ったのか!?」

 

 

なんとか振り解こうとしてもシンフォギアを纏ったクリスの力には到底敵わない。それでも響が心配で、せめて何か悪い方は変わってしまっていないかどうか肩越しに覗き込む。

 

だけど巨大な刀身が邪魔をして響の頭部分しか見えない。大丈夫なの?声も上げず、身動きもしないままな響に心臓が締め付けられる。

 

せめて声を聞かせてほしい。歌を歌ってほしい。そうでなくても助けてと口にしてほしい。そうすれば私は、きっとなんだってできるのに。

 

 

(響っ!)

 

 

……だけど響は何も言ってくれない。クリス越しに見ても、変わらず熱気が顔を叩く。もしもここから進めても、またさっきと同じように燃えてしまうかもしれない。

 

 

(……やっぱり私じゃ、響を助けられないの?…シンフォギアがなきゃ、ダメなの?)

 

 

日常ではずっと私が響の隣にいられる。陽だまりだって言ってくれるあったかいお日様が、ただいまって告げてくれる。

 

…だけど響が一番響らしい場所、人助けの時に私は隣にいられない。いるのはクリスや翼さんというシンフォギアを持った人達だけ。それに嫉妬しなかったと言えば、嘘になる。

 

 

 

『未来、ちょーっと行ってくるから!』

 

 

 

…笑って出て行って、笑って帰ってくる。だけどいつだって心配してる。いつだって、最高の帰る場所であるために考え続けてる。

 

何か助けられることはないかな?

 

何か喜んでくれることはないかな?

 

何か、何か、笑ってもらえることはないかなって。

 

………いつだって想ってるのに、響が苦しんでる時に何もできないなんて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……空に、人影が映る。

 

 

…灰色で、見たことのないシンフォギアを纏って。

 

 

……目が、腐っていた。

 

 

見間違える筈がない彼を、翼さんがバイクで貯水槽を斬ることで響を助けだしても瞼に焼き付けていた。

 

…もちろん。助けられるまで何もできない自分すら、忘れることはできない。空振りから回る手に掴める物がない無力感。何も受け止められない手のひらに変わって心が切望と欲望と、そして渇きを溜めていく。

 

……誰か、誰か。こんな私でも親友を、響を助けられる力をください。こんな私でも友達を、あの夜一緒にいられなかった彼との繋がりを消さないでください。

 

…弱くてごめんなさい。誰か、誰か、神様でも、悪魔でもいいから。

 

 

 

 

私の大切な人達が傷つかない世界をください。

 

 

 

 

誰か……。誰か…。

 

 

 

 

 








…実際、どんな気持ちで未来さん響待ってたんだろ。ご飯用意しながら、授業受けながら、夜の呼び出しで先に布団に入ったけど眠れなくて部屋の明かりつけちゃったりとかしながらとか。少なくとも命の危険がある場所に送り出して待つとかメンタルの摩耗半端ないよね。

シンフォギアは戦闘以外の日常を切り取った時に見せる顔が多いからXDのメモリア素晴らしいと思う。

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