やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

114 / 122


シャニマスのコミュが強すぎてあっちの創作欲が下がっていくから、逆にいい作用してるかもしれない。

その分こっちは進んでる気が、しなくもない。


やはり俺は俺が大事ではない。

「……ナスターシャ教授の容体は安定。急激に悪くなる事もないでしょう。一休みしたところで、早速本題に入りましょう」

 

 

撤退後、ドクターがマムへの処置に取り掛かる事数時間。顔色も戻り生気を纏ってみんなの前に現れた。やはり頭がパッパラな事以外はドクターは優秀なのだろう。

 

そんな優秀なドクターは、更なる成果を持ってきたらしい。全員集まった所で、妖しく脈動する球体をモニターに映し出した。

 

 

「…そいつは?」

「これは苦労して持ち帰ったネフィリムの覚醒心臓です。必要量の聖遺物を餌と与える事でようやく元の出力に戻りました」

「………つまり?」

「つまり、フロンティアの封印を解くシェンショウジンと制御する為のネフィリムがようやく揃ったということですよ!」

 

 

心臓だけでいいのか…。だけどあの暴飲暴食なネフィリムをそのまま制御する必要がないというのは、中々な利点なのかもしれない。

 

 

「そしてフロンティアの封印されたポイントも、先だって確認済みです」

「マムと一緒にあたし達が行ったところデスね」

「そうです!既に出鱈目なパーティーの準備は整っているのですよ!後は私達の奏でる協奏曲に、全人類が踊り狂うだけ!」

 

 

奇声を上げて喜びを表現するドクター。目に写る狂気は止まることなど忘れてしまっている暴走車ようだ。ブレーキなんて高等なもんついてはいないのだろう。

 

 

「……一応確認なんだが、フロンティアってのは世界を救うために起動するんだよな?」

「…ええもちろん。来たる脅威、それらを打ち払う英雄。その映える我々の舞台となる場所こそ、フロンティアなのです!」

「………」

「…近々計画を最終段階に移しましょう。ですが今は暫く休ませていただきますよ」

 

 

マムの言葉と退室を最後に一旦話は終了した。マムだけじゃなく俺たちもさっさと休むべきだろう。今日は一日中ドクターを探し回り、ドクターも昨日からの行進で疲労している筈だ。それを全く感じさせないのはネフィリムの心臓という逸物を持ち帰れた故の興奮だろうか。

 

少なくともドクターのおかげでフロンティア計画のブレはだいぶ無くなったと言っていいのだろう。心臓だけで使えるのかと言う疑問はあるが、その問題を無視して準備は整ったとは言うまい。

 

…問題は、今のところないと言っていい状態まで来た。だがここからの行動は恐らくアドリブが必要になってくるだろう。確証の薄い疑念だが、困ったことに視野が広がった。

 

「生きる」と決めた。そうである以上、月の落下は絶対に防ぐべき障害となった。ならばその絶対の障害は何か。頭が回り始める。

 

 

(…まあ、ドクターだよな)

 

 

きっとドクターと俺たちでは、思い描いている未来予想図は違うものだろう。英雄願望があるドクター、そして世界を救いたい俺たち。世界を救う英雄だなんて子供の頃なら誰でも憧れたかもしれないような姿を実現できる。そして月の落下なんて事象である以上、世界中の人間の目に触れる。承認欲求の権化からしたら堪らない場面だろう。

 

だからこそ、そんな()()()()()()をドクターが逃すはずがない。つまり……。

 

 

(…ドクターは一回、月を落とそうとするはず。いや、落下させると考えるべきだ)

 

 

落下し始めたタイミングでフロンティアを操作するのか、それとも別の方法で意図的に月を落とすのかは分からないが、ドクターがフロンティアを使って月が一般人が気づかないまま落ちなくなって「はいおしまい」なんてストーリーで満足することはないだろう。

 

確実に危機的状況、あるいは破滅的な状況を作り出そうとするはず。

 

 

(…どうにかその辺りで介入しないとな。フロンティアの操作方法を確立できれば……)

 

 

…切り捨ててもいいんだが。

 

………。

 

 

「……はぁ。俺も休むわ。んじゃ……」

「待つデス!」

「うん。八幡も、ドクターも」

「「?」」

 

 

退室しようとしたところを暁と月読二人に呼び止められた。俺もドクターも意味が分からずに二人を見ると、何故かうげぇとでも言いたげな顔を返された。

 

 

「……なんだよ」

「なんだよじゃないデスよ!なんで平然としてられるんデスか!?」

「ドクターが八幡を洗脳したこと、終わってない」

「「……あー」」

 

 

あったなーそんなの。正直その後の天羽奏やらの方が印象強くて頭からすっぽ抜けてたわ。ドクターもドクターでネフィリムの心臓持って帰るのに夢中で忘れてたわーみたいな顔してるし。

 

…いや、別に気にしてないんだけどな。あん時は実際立花に助けられて頭がうまく回ってなかったから、世界を救うために必要なネフィリムを守るには俺より操られてた俺の方が守れそうだったし。

 

その結果天羽奏の歌声に、「生きる」と思えた自分がいる。ドクターのやったことは正直クソだが、それがなければあの歌声を聞くことはなかっただろう。そこだけはむしろ感謝してるまである。

 

それにもしあの歌を聞いていなければ、ドクターに裏切られたことに思うところを浮かべる事もない。なんせ元々俺は裏切り者だ。最初から最後まで、仲間ではない身。その対価に文句を言える立場になんていないのだから。

 

 

「………だとよ?」

「そうですね。先日は大変失礼しました。この通り」

「ん、おう」

 

 

軽く頭を下げるドクターの謝罪を受け入れる。心はカケラも籠っていないが、ポーズだし問題ないだろう。

 

 

「これでチャラってことで。俺はシャワー浴びて寝るけど…」

「ちょちょちょい!待つデスちょっと!?」

「八幡…」

「…なに、なんだよ。その責めるような目なに?悪いことした気になるからやめて?」

 

 

事態についていけていない暁はともかく、悲しそうな目でじーっと見てくる月読の目は心にくる。悪感情は面と向かってなら鞘の能力を使わなくてもある程度は察知も理解もできるが、それ以外のナニカを混ぜられると途端に分からなくなる。

 

責められているようだが、責められるようなことはしていないはずだ。ドクターが非道だというなら責めるべきはドクターだし、謝罪を受け入れたことであるならそちらに至っては責められる所以が無い……はずだ。

 

目を逸らして原因を探っていると、月読が袖を掴み見上げてきた。

 

 

「…八幡。八幡まで誰かになっちゃうのは、嫌。マリアの中のフィーネも、八幡の中の天羽奏も今は大丈夫かもしれないけど絶対じゃない。………心配」

「……。マリアはともかく、俺は問題ねえよ。天羽奏が出てくるって分かった以上、ドクターもアレは使えないだろ」

「ええ。蛇が出ると分かっている藪をつつく趣味はありません。望まれるのであれば譲渡しますよ。破棄するも良し、何かの為に持っておくのもお好きに」

「考えとくわ」

 

 

黒い端末状の機械をドクターから受け取り懐にしまう。複製品があるかもしれないが、ドクターの言う通りコレはドクターからしたら自爆スイッチだ。厄介な代物の量産はしていないだろう。

 

逆に俺からしたら、もしもの時や何かしらの時に天羽さんを呼べるトリガーになり得る。いや自分をセルフ洗脳とかジャンル的に望みたくないからするつもりもないんだけど。

 

…それでも、月読の言及は終わらない。

 

 

 

「…八幡は、怒ってないの?勝手に洗脳されて、自分じゃない誰かになっちゃって。……怖くないの?」

 

「………」

 

 

 

 

「…………………。…自分が、大事じゃないの?」

 

 

 

 

………ようやく、何を問い詰められていたのか分かった。

 

本来なら、俺は怒るべきだったのだろう。洗脳なんて漫画でも映画でも日本じゃありふれていて、それは画面を通した先にある遠い場所にある近い現象。

 

だけどそれを自分の身に受けるなら話は別だ。自由を奪われ、体を操られ、尊厳を踏み躙る行為が降りかかる。

 

それは怒るべきであり、反発するべきであり、糾弾して問い詰めて報いを受けさせるべきものであると。例えそれが自分に降りかかったものでなかったとしても、それを看過すべきではないのだと。

 

 

「…………」

「私は、大事。八幡が大事だよ?傷ついてほしくないし、一緒にいたい。八幡は、違うの?」

「………そう、だな」

 

 

…自分が大事、とは、言えなかった。「生きる」と決めた。だけど心で思うだけで変われるほど人間は単純じゃない。自分が心配や同情を送られる人間だと思えるほど、綺麗に生きてきてはいない。

 

立てば嘲笑、座れば陰口、歩く姿は比企谷菌の名を欲しいがままにした愚か者。果てには世界を破壊する為に世界を救おうとする異分子だ。

 

…どこでも良かった。俺は、いつかのどこかで、俺を裏切ってくれる場所に行きたかったから。期待がなくて、信頼がなくて、想いも何もない場所に行きたかったから。

 

…くしゃっと、月読の頭を軽く撫でた。

 

 

 

「俺は俺が一番大事だよ」

 

 

 

…その点、ここはダメだ。期待するような目が、信じようとする目が、心配なんて想いが向けられてしまう。だからこうして、迷いと一緒に嘘が出る。

 

俺のことは俺が一番知っている。

 

勘違いしちまうんだ。俺に優しい奴はみんなに優しくて、俺を話しかけてくる奴はみんなにも同じように話しかけてる。どれ一つだって俺にだけ特別向けられるものはない。なのにそれを俺は特別に感じてしまうおめでたい人間だ。

 

だから自制が必要なんだ。勘違いしない為。特別な何かだと思わない為。

 

 

「……八幡」

「いい加減終わりだ。続けるにしてもまた明日な。歩き回って疲れてるから、寝かせてくれ」

「………うん。おやすみ…」

「おやすみデース…」

 

 

…F.I.S.に行き、暁や月読やマリアと関わり。そんな長い時間は経っていない。だけど彼女らは距離を測り、言葉を交わし、迷い迷いで近づいてくる。

 

人の想いは冷静に受け止めなければいけない。ちょっと優しくされたから「こいつ俺のこと好きなんじゃ…」と勘違いして告白して振られるのはお互いにロクなことじゃない。

 

そしてそれは自分の心も同じことだ。自分の心が何を求めているのか、自分が何をしたいのか、何を成すべきなのかを、吟味して確認して知る必要がある。

 

俺は俺が大事なわけじゃない。だけど俺は「生きる」と決めた。だとしたら俺が大事じゃない俺は、何のために生きるのだろう。

 

理由が必要だ。理解が必要だ。寝て起きて食って寝るだけじゃない、何かが必要だ。

 

 

「………はぁ」

 

 

ため息一つ、歩きながら思考した。

 

大事じゃない俺を、心配する奴らがいる。大事じゃない俺を、助けた奴がいる。それを知らないふりをするのは簡単で、俺はその感情を望むことはできない。それが優しさや親切心からではなく、もっと別の感情に起因するものならだとするなら尚更のこと。それは、人の弱みにつけ込む行為だから。

 

 

 

 

………だから、もう一歩くらいは、踏み込んでも、いいのだろうか。

 

 

 

…月読達にも。

 

………そして、立花達にも。

 

 

 

 








八幡から矢印出させるの難しいのぉ…。響で揺らがせて奏さんに背中を押させて調にダメ押しさせてようやく…。

まだ先が長いぞー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。