やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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亜種空想樹を伐採したので投稿。

今回は幕間回一気に。六割原作まんまだけど大事なのでね。






脈動

side未来

 

 

 

 

「そんな…響が…」

「ああ。体内のガングニールが響くんを蝕んでいる。このままシンフォギアの使用を続ければ、遠からず死に至るだろう」

 

 

響が二課のメディカルルームに運ばれ、治療を受けている間。弦十郎さんにモニターを使って響の現状の説明を受けていた。

 

響の体内を蝕む色合いは人の中にあるべきじゃない。だけどたしかに響の中にある。あの時の身体中を燃やされそうなくらいの熱、あと一歩進めば取り返しのつかない状態になっていたかもしれない事実が現実を直視させる。

 

 

「響は、治るんですよね?」

「……現状、響くんを治療する算段はない。…それでも我々は響くんの心が最も落ち着く場所で過ごす事こそが、進行を遅らせる最善であると考えている」

「…最も、落ち着く場所?」

「ああ。それが君の隣だと、俺たちは思っている。これ以上響くんが苦しまないよう、君が響くんを助けて欲しい」

「私が、響を……」

 

 

私が響を、助ける。そんなの当たり前。

 

…だけど、その為の力が私にあるのか分からない。空っぽの手に守れる力がどれほどあるのか。誰かの為に優しい拳を振るい、誰かの為にその身を投げ出せる響。私の太陽。

 

 

(…ううん。だからこそ、守らなきゃ)

 

 

これ以上響を戦わせない。響が戦わなくてもいい世界で、一緒に生きるんだ。シンフォギアを纏えなくたっていい。戦わなくても良いんだって。

 

……ただ、一緒に居たいから。

 

 

「…………あの」

「ん?どうした?」

「八幡、生きているんですか?」

「………。唐突だな」

「…あの時、空を飛んでいるシンフォギアを見ました。あれは、八幡でした」

「…確信を得ている以上、隠し立てする意味はないか。此方としても些細を確認している最中ではあるが、現状分かっているのは彼は記憶を失い世界を相手取るテロリストグループに加担している」

「記憶を…。それにそのテロリストって、もしかしてマリアさん達の?」

「その認識で構わないだろう」

 

 

忘れられないライブ会場での宣戦布告をしたマリアさん。そして学園祭に乗り込んできた調ちゃんと切歌ちゃん。その仲間に八幡もいる。

 

………つまり、死んでない。生きている。

 

…生きてる。

 

生きてる。

 

たったそれだけの事実が頭の中をようやく満たしてくる。見ただけじゃ信じられなかった姿。

 

響のことで既に十二分のリソースを割いていた脳領域に、新しい情報の濁流が流れ込んでくる。

 

 

「……生きて、いるんですよね?」

「その点に関しては間違いない。響くんにクリスくん、翼も直接相対を果たしている。…戦闘によって、だが」

「それを、教えてもらえなかったのは…」

「………死んだはずの人間が、かつての友に刃を向けている。それもテロリストの仲間に名を連ねて。こんな事実を知られる事なく、彼には戻ってきて欲しかった」

「弦十郎さん…」

 

 

優しさも思いやりも感じるけれど、それでも教えて欲しかったという想いは消えない。だけどそれを塗りつぶすように、生きていてくれたことに喜びを抑えられなくて。

 

 

(…助けなきゃ)

 

 

八幡が消えた後に胸にできたぽっかりと空いた穴。失くした筈の絆を、きっともう一度繋ぎ直せる。

 

…響がもう戦わなくても良い世界を。八幡が生きていける世界を。

 

もう一度、助ける為に動くんだ。

 

私だって、守る為に戦いたいから。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

side切歌

 

 

 

 

 

「んー!楽しい楽しい買い物も、こうも量が多いと面倒な労働デスよ」

「…仕方ないよ。過剰投与したリンカーを抜き切るまではおさんどん担当だもの」

 

 

買い物袋を二人共が両手に引っ掛けてスーパーを出る。元々リンカーを投与した後は体内洗浄が必要になる。だけど今回はいつも以上に時間がかかるから、暫くはギアを纏えないお使い係になっていた。

 

マリアは外に出られないし、マムやドクターは忙しい。八幡も病み上がりみたいなものだ。

 

 

「………ふぅ」

 

 

………横から小さく漏れる溜息に目を向ける。

 

いつも活動的とは言えない調だけど、最近はいつにも増して元気がない気がする。少し気怠げでぼーっとしている姿がやけに危なっかしい。

 

 

「…調!持ってあげるデス!調ってばなんだが調子が悪そうデスし…」

「……ありがとう。でも平気だから」

 

 

力無く笑う調。元から頑固なところがあるからこれ以上求めても応えてはくれないかな。

 

 

「…だったらちょっと休憩していくデス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいない工事現場のような場所。鉄骨や資材が山ほどあるけど、人目につかず、それでいて座るにはピッタリの段差もある。帰り道の途中だからちょっとの寄り道としてもグットなポジション。

 

そこで調と一緒にさっき買ったばかりの菓子パンを頬張る。

 

 

「あむっ、モグモグ。にしても、八幡にもドクターにも困ったもんデス!ドクターはやらかすデスし、八幡もあんな事されたのに気にしないなんて。どうかしてるデス」

「………うん。そうだね」

「…フィーネの器として施設に集められた私達デス。自分ではない誰かになってしまう恐ろしさを結果としてマリアに全部押し付ける形になってしまっても、その怖さは少し分かるデス。だからマリアを助けたいデスし、八幡だって似たようなものなのに…。……もっと、八幡には八幡を大事にして欲しいデスよ」

「………………うん」

 

 

最後の一口を口の中に放り込んで、隣を見る。どうにも食事が進んでいないようで手の中にはまだ封を開けてもいないパンが存在していた。

 

 

「………調!?」

 

 

…それだけじゃなく、調の額には大きな汗が浮かんでいた。呼吸も荒く、顔も赤い。普段涼しい顔をしている分、余計にその差異が目立った。

 

 

「まさかずっとその調子だったデスか!?」

「…だい、じょうぶ。ここで休んだからもう……っ」

 

 

…フラッと、立ち上がった調が風に流されるように上体を揺らした。

 

立ちくらみを起こした身体が支えを求める。咄嗟に調が虚空に手を出した先には、手のひらに収まるには一回り大きい鉄パイプの束が立てかけられていた。

 

…此処は工事現場だ。鉄骨や鉄パイプが山ほど並べられているが、気をつけていれば弾みで転がったりはしない。一つ一つに相応の重量があるから、触れた程度では動かない。

 

…そんな場所に、覚束ない足取りで調は意識を失いながら倒れ込んだ。

 

 

「調!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

カランカラァン!と、騒音が鳴り響く。

 

調が倒れ込んだ鉄パイプが工事現場の足場を叩き、その衝撃に釣られるように上階にある資材までもが調やあたしに向かって落ちてきた音だ。高さと重さを考えたら、一つでも当たれば身体を痛める物体が十数個同時に落ちてきたのだ。

 

 

「…何が、どうなってるデスか?」

 

 

………それなのに、あたしにも調にも傷一つない。

 

奇跡が起きて一つも当たらなかった、とかではない。

 

あたしが調を抱えて降り注ぐ鉄骨を避けた、とかでもない。

 

だって鉄骨は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「これ…なんで…」

 

 

反射のように、落ちてくる鉄材を拒絶するように空に伸ばした腕。その手の先。ピンク色の障壁が、バリアのように展開されていた。

 

物理法則を無視するかのような波紋が障壁の表面を駆け回る。明らかに埒外の存在。聖遺物を操るシンフォギアでも見たことがない現象を、あろうことかあたしが生身で使っていた。

 

だって調はあたしの腕の中で意識を失っていて。ならこの目の前の異常事態を起こしたのはあたししかいない。だけどこんな力をあたしが持ってるなんて知らなかった。

 

だってあたしは普通の人間で…。こんな魔法みたいなことできなくて。

 

もしも…。

 

もしも本当にコレをあたしがやれるとしたら………。

 

 

 

(………ふぃー、ね?)

 

 

 

リーンカーネーションシステムなんてトンデモをやらかすフィーネ。そんな奴ならバリアやビームとかだってちょちょいと出してしまうかもしれない。

 

 

(……でもフィーネはマリアに宿った筈じゃ)

 

 

ぐるぐると混乱するように回る頭だけれど。

 

そのどれも、目の前の現実を否定してはくれなかった。

 

 

 

「…ひょっとして。ひょっとしてあたし、だったデスか?」

 

 

 

ドクン、と。心臓が跳ねた音がした。

 

 

 

「フィーネが宿った器って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side………

 

 

 

 

 

「……再検査でも数値は安定。年齢の割に大した胆力です。それとも、振り絞った気力でしょうか?」

「………」

「そう怖い顔をしないでください。後は戦力が整うのを待つばかり。我々の作戦は順調に進んでいるのですから」

 

 

エアキャリアの一室。そこではドクターウェルとベッドに寝かされたナスターシャの二人が静かな会話を交わしていた。ナスターシャの体調管理の一環であり、ドクターウェルの求められている役割でもある。

 

しかしこの一室の二人の表情は実に対照的だった。ドクターウェルは隠しきれない喜色の笑みを浮かべているのに対し、ナスターシャは普段から冷たく見える顔に皺を増やしていた。

 

 

(私は、あの子達にまで…。いったい、いくつの罪を負わせようとしていたのか)

 

 

エアキャリアに戻ってきた切歌と調。オーバードーズによる副作用に苦しむ子供達を見て。フィーネを背負いきれずその葛藤に苦しむマリアを見て。必要があるなら、自分すら傷つけて進もうとしてしまう八幡を見て。

 

 

(…優しい子達。そんな子達に重荷を括り付けるなんて…)

 

 

自分が余りにも愚かな間違いをしていたと、今更ながらに気づいてしまったから。

 

 

 

 

「…そういえば。一度独断を働いたとはいえ、ご相談をしとこうと思うのですが」

 

 

 

 

悔恨に浸るナスターシャを気遣う機能など取り付けていないドクターウェル。眼鏡の奥に渦巻く暗い光を滲ませながらナスターシャへ目を向けた。

 

 

「…なんでしょう?」

「我々はシェンショウジンとネフィリムの確保に成功。後はフロンティアを浮上させることができれば作戦を遮るものは、精々が二課のシンフォギア程度。フロンティアの機能を使えば撃退は難しくはないでしょう」

「………何が、言いたいのですか?」

「おや。お分かりいただけない?それとも惚けているだけでしょうか。頃合いだと申し上げているのですよ。ネフィリムを用いた時は失敗しましたが…」

 

 

クイッと眼鏡を押し上げ、笑みを歪めた。

 

 

 

 

「此処らで比企谷八幡の処分を、と進言したのです。当初の予定通りに、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 









切ちゃんのところもう少し掘り下げようかと思ったけど、混乱しながら進めた方が良さそうな気がしてあっさりめ。また暫く原作のままになりそー。

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