やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
ニューサンタは錬金術師の方々でしたね。プレラーティとても好みと言わざるを得ないお腹と背中。ナイスクリスマス。
更新遅くて申し訳ない。まだ暫く原作沿い、といえるのかな?
………暗い海をエアキャリアで駆け抜ける。マリアを操縦席に、暁、月読、マムにドクター。俺を含み全員がこのコックピットに集まっていた。
「…随分夜更けに動くんだな、わざわざ全員集めて。火急の用でもあるのか?マム」
「…ええ。私たちの、大事な話です」
空の旅と言っても暗いし景色も余り変わらない。だが海の上に用事だなんて早々あるもんじゃない。しかも言葉尻がやけに重い空気を感じさせる。
行き先の予想はつく。フロンティア、俺たちの計画の最終計画地点。この時期この時間帯に向かうところなんてそこしかない。それはいい。問題は何をしに行くかだ。
まだ暁も月読もリンカーによるオーバードーズはなくなってない。フロンティアは巨大基地の如き聖遺物故に、起動してしまえば計画が白日の元に晒されるのは間違いない。その場合二課の装者との戦闘になるのは想像に固くない。それはマムもわかってる筈だ。
しかし起動以外でフロンティアに何かアクションを取れるかと言われるとそれもノーだ。一体何の為に…。
「着きました」
「……やっぱ目的地はフロンティアか」
「マリア、滞空を」
「オーケー、マム」
シェンショウジンのステルス機能をオフにし、その場に滞空する。マリアは理由を聞かされているのか、直ぐに搭載されたシャトルマーカーまで射出した。
シャトルマーカーとは、言うなれば光を屈折させるファンネルのような物だ。シェンショウジンの輝きをシャトルマーカーによって折り曲げ、フロンティアの封印を施されたポイントに照射することでその聖遺物を復活させる鬼門の一つだった。
…まさか本気でフロンティアを浮上させるつもりか?
「…長野県皆神山から出土したシェンショウジンとは鏡の聖遺物。その特性は周囲を屈折させて景色に溶け込む鏡面迷彩と、古来より伝えられる魔を祓う力」
「エアキャリアに搭載されたステルス機能に、封印を解く力ね」
「ええ。聖遺物由来のエネルギーを中和するシェンショウジンの力を持ってして、フロンティアに施された封印を解除します」
そう言うと、マムがコックピットに存在するハンドルを手に取る。流れからしてシェンショウジンの光を射出する機能だろう。
「お待ちください。フロンティアの封印が解けると言うことは、その存在を顕にするということ。全ての準備が整ってからでも遅くないのでは?」
「心配は無用です」
ドクターによる当然の懸念が一蹴される。こうまで一貫されると、考えなしと切り捨てるわけにもいかないのだろう。言っちゃあれだが、マムはこのグループの中心だ。手足俺たちの頭脳ドクター、胴体マムみたいな。かなり頭脳寄りだが。
はっきり言って無視して切り捨てるにはその存在も知能も大き過ぎる。
「リムーバーレイ。ディスチャージ」
もう止める者はいない。セットされたシェンショウジンのシンフォギアペンダントに光が宿る。機械的に幾らかの増幅を可能とし、射出する寸前まで最大限のチャージを行う。
「発射」
紫色の光が一筋。中空へ伸び、屈折して海に突き刺さる。
暗くて見えないがシャトルマーカーによるものだろう。
「………おぉ。これで遂にフロンティアの封印が解け……解け………っ!」
鼻息荒く興奮するドクター。それに応えるように海から光による物ではない泡沫が現れる。それは数を増し、見ているだけでブクブクと音が聞こえるほど。
フロンティア浮上の兆し。
そしてそこから更に巨大な影が──
………………………。
…………影、が?
……。
「……封印が、解け、ない?」
「フロンティアが浮かんでこない、だと?」
待てど暮らせど海底から浮かび上がるものなど泡ばかり。シェンショウジンの放出を切ってからはその泡すら消え去った。後に残るのはただただ暗い海を眺める俺たちの視線のみだ。
「出力不足です。如何なシェンショウジンの力といえど、機械的に増幅した程度ではフロンティアに施された封印をとくまでには至らないということ」
「…。貴方はしっていたのか。聖遺物の権威である貴方が、この地を調査に訪れて何も知らないなど考えられない。この実験は、今の我々ではフロンティア復活には程遠いと知らしめる為にっ!…違いますか!?」
…珍しく息を荒くして問い詰めるドクターに、マムはむしろ淡々と会話を繋いでいく。
…………。
…いや参ったな。ほんとにどうしようか、コレ。前途多難どころか、最初から実行不可能というのは幾らなんでも予想外だ。計画通りにいかないのが世の常だし、事実ライブでのネフィリム起動失敗やネフィリムの喪失なんてゲームオーバーものの失敗をアドリブで乗り越えてきた。
ようやくネフィリムのあれやこれやが片付いたと思ったら今度はシェンショウジンか。
………。
機械的に増幅した程度では、とマムは言った。つまりそれ以外のもっと出力の増すアプローチを仕掛ければ問題はなくなる。なんせ今回の作戦そのものは、かつてフィーネが企んでいたものを流用したものだから根本的に遂行は可能な筈だ。
例えば最大出力をシェンショウジンが発揮しても封印が解かれない、なんてことはないとみていい。なら別のアプローチとは何か。これは簡単だ。誰かにシンフォギアとしてのシェンショウジンを纏わせればいい。フィーネだけが使える裏技でもあればお手上げだが、今は楽観論で考えよう。
しかしその楽観論ですら、言うは易く行うは難し。当てがねえ。F.I.S.のレセプターチルドレンの中にシェンショウジンを纏える人間がいたなら、この作戦に組み込まれているだろう。それがいないということは、適性のある人間がいなかったということ。
…………。
…ここまで来てこれか。
「………これからの、大事な話をしましょう」
そう締めく括り、ドクターと共に別室を向かうマム。
その背を俺は、ただ黙って見送った。
(…さて、俺はどうするべきか。計画を止める、または他の組織に任せるってのは確実性に欠け過ぎる。自分の手で果たすのがどうしたって最上だ。…つまり)
じっと、二人が入っていった部屋を見つめる。
(選択肢は一つか)
☆☆☆
side…
「……どういうおつもりですか?」
「先程見せた通りです。先の災害に対抗するには、我々は余りにも無力です」
子供達を抜きにした大人同士の策謀の場。壁に寄りかかりナスターシャを睨みつけるドクターウェルとその視線を正面から受け止めるナスターシャ。
ドクターウェルとしては到底受け入れられるものではない。この計画は自身を英雄へと引き上げる一世一代の大舞台。他の役者が大根だろうが舞台セットが壊れようが手を変え品を変え成功への道筋を作り出してきたのだ。
それがここに来てこの始末。話を持ちかけてきた側であるナスターシャが、舞台の幕を下ろそうとしているのだから。
「納得できるはずが無いでしょう。それにここで計画を頓挫させてその先は?帰る場所も行く場所も我々にはありません。そう、フロンティアという新天地以外には!」
「…それについては考えが。米国政府への通信手段については廃棄していない連絡先があります。唯一我々に残る小さな繋がりです」
「……。米国政府にこちらの持つ異端技術の提供…。貴方もまた、力に屈すると」
「…技術供与による協力体制を交渉する手筈です。心身朽ちた身であれど、私の有する異端技術への権威は消えてはいません」
フロンティア計画による人類の救済。それはナスターシャの描く理想の夢であった。しかし理想家の描く絵は所詮現実には叶わないと悟ったのだ。
フィーネの残した智慧と技術を受け継ぐF.I.S.の聖遺物研究者として求めた夢。しかしそれは人の思惑と不足の事態に振り回され続けた。現地に訪れて初めて理解できた現実の理不尽さ、己の見通しの甘さ。そしてなにより、子供達にすら自分の理想に巻き込み苦しめ続けた事実に。
「米国政府とて月の落下については把握している。であればそれを阻止したいのはあちらとて同じ。協力を拒否されることはないでしょう」
「…………」
「現状、これ以上私達が打てる手段はありません。ただ無駄に時間を消費し、全てを手遅れにするわけにはいきません。…了承していただけますね?」
「……………………。…この計画の要は貴方ですからね。それが決定なら、従いますよ」
「ありがとうございます」
腹の底ではグツグツと感情を煮えたぎらせながらも、ドクターウェルは了承の返答を返した。
諦める、なんて考えはいつだって彼の中には毛先一つ程だってありはしない。野望欲望、人たらしめる欲が一際強いのすら英雄の条件であるのだと自負しているからだ。
「話は終わりです。私は休ませてもらいます」
「……ああ、最後に一つ」
「…なんでしょう?」
車椅子を止めて耳だけを傾けるナスターシャ。それに含み笑いを忍ばせながらといかけた。
「このタイミングでこの事実を伝えたのは、
どちらでも良いのですが、とは付け加えず。見計ったようなタイミングでの今回の暴露。
確かにここで計画が頓挫すれば彼の処遇を決める必要は無くなる。敵であろうが味方であろうが、米国政府が手がけるなら必要最低限以外の介入はできなくなる。それでもなお処分を強硬したところで、ただ周囲への信頼が下がるだけ。得がない。
それでも聞いたのは、ただの嫌がらせだ。
「…………関係ありません。時が来たから、そうしたまでです」
「それは失礼を」
見てない相手に一礼して、退室を見送る。慇懃無礼な態度にお怒りになる人でもないが、まるで芝居を立てるように静寂を待った。
「……さて、どうしたものか」
ナスターシャが消えて一人になり、静かに頭を回し始める。
本当に甘い、甘過ぎだ。ナスターシャも、誰も彼もが愚か者だ。
「僕以外の人間が、英雄になれはしないというのに」
現実は思った通りなど進まないのは当たり前だ。艱難辛苦が立ち塞ごうと直向きに諦めない、
停滞しようが混迷しようが歩みを止めないものに奇跡は起こる。
「奇跡が頑張った報酬なら、僕にこそ…っ」
….その手に掴み取る事をやめはしない。
そもナスターシャと米国政府との協力関係など破綻するに決まってる。あの利権に意地汚い米国政府が一テロリストの要求を飲んで仲良しこよし、だなんて事態を受け入れないだろう。
理想を捨てようとしながら現実を見ないなんて、どうしようもなく愚かだ。表面上米国政府との協力を受け入れた以上、日時は把握できる。そこに闖入者としてノイズを送り込み破談させる。そこまではいい。
だがもしそこでナスターシャを失えば、残りの装者達がフロンティア計画の続行に協力することは無くなってしまう。それは計画の途絶と同義と考えていい。
(どうにか、保険を残したいですね。ナスターシャを失わないよう動くのは仕方ないとして、最悪亡くなった場合でも使える力が……)
思案していると、突然部屋の扉が開かれた。一人の空間に現れた相手を見て、ドクターウェルは小さく笑みを浮かべる。
お誂え向きの、協力者だと。
「話があってきた」
「ええ。私も是非にと思っていたところですよ」
入ってきたのは比企谷八幡。音もない静寂の中。
二人が笑い、向かい合った。
「協力しようぜ」
「協力しましょうか」
処分されると思った?何故か協力体制に入りました。
…信じられるか?こいつら前話と前々話にお互い切り捨てる算段してたんだぜ?面の皮熱盛りかよ。さすがに処分から協力早すぎる感あるけどそうじゃないと処分されちゃうしね。一応これに絡めてエピは入れます。
蛇足なんですけどシャニマスが供給過剰過ぎて創作意欲が低迷してるの良くないわ。供給不足くらいな方が創作が捗る気がする。栄養不足だから栄養を自分で取る的なアレ。書き始めは確かにそうだった。シンフォギア成分不足で筆を取っていつの間にか100話。先は長い。