やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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………この小説書き始めて丸々二週間投稿しなかったの初めてかも。さすがに年内には投稿したかったので頑張った。

周回とか色々あったけど普通に年末忙しかったです。クリスちゃんの誕生日祝えなくてごめん!おめでとう!






背負える屍の数

 

 

 

inスカイタワー

 

 

 

sideマリア

 

 

 

 

 

「……」

 

 

マムの車椅子を押して歩く。硬い床は綺麗に磨かれていて、反射する鏡のように冴えない自分の顔が映り込んでくる。この階に人気はない。マムの指示でここに連れ添っているけれど、事情についてマムは何も教えてはくれなかった。

 

きっと私に教える必要のない考えがあるのだと思う。こんな事でマムを疑ったりなんてしないけれど、それでも消えない懸念。というより、納得できないことがあった。

 

 

(……アレは、何も背負えない私への見限りだったのかしら)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……数日前。マムと河原を散歩していた時のこと。切歌と調がリンカーの過剰投与により待機状態だったから、今までのことをゆっくり思い出せていた。

 

フィーネを背負えていなくて、その結果が齎したもの。もっとキチンと背負えていれば、躊躇いがなければ。そうすればこんな事にはならなかったのにと自分を苛んでいく。

 

八幡はその手を血に汚しかけ、ネフィリムが失われ、切歌と調はその身を壊し、マムはその余波で余分な苦しみを浴びた。

 

…大切な仲間に傷ついてほしくないと願いながら、その実私が一番傷つける理由になっている。

 

誰かに私の重みを押し付ければその誰かは潰れてしまう。誰かが潰れた重みはその誰かが持っていた筈の重荷を加えて私自身にのしかかる。その果ては地球を危機から救えず、無辜の命が消える未来だ。

 

失敗を重ね、失敗を見せつけられ、私は何ができるのだろう。

 

 

「…マム。今回の件ではっきり分かったわ。私の覚悟の甘さが」

「………」

 

 

…分かっているべきだった。自分の覚悟の甘さが足枷となり、計画の成就から遠のいていたことに。『まだ大丈夫』なんて言葉を、心のなかでだって言ってはいけなかった事に。

 

いつまでが期限なんて分からない。だけど立ち止まって誰かに全てを押し付けて止まるのだけは、嫌だった。

 

 

「だからマム!……私はっ」

「その必要はありません」

「今度こそフィーネをっ……。…え?」

 

 

今度こそフィーネを背負ってみせる。もう迷わずに進んでみせる。そう告げるはずだった言葉は遮られ、頬を撫でる柔風に容易く拐われた。

 

 

「貴女にこれ以上、新生フィーネを演じてもらう必要はありません」

「そんな…マム!何を言うの!?」

 

 

言葉先を摘み取られた私を前に、マムはそれどころかこの決意を全て否定するように言葉を続けた。

 

フィーネを演じるのはドクターを仲間に引き入れるため。それはドクターがいなければ計画の遂行は果たせないというマムの考えだ。誰にも、調や切歌にも告げずに私だけに託された使命。

 

現状マムの容体は良くない。今ドクターに抜けられるわけにはいかないはずだ。

 

 

「………マム」

「…貴女は、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。フィーネの魂など宿していない。ただの優しいマリアなのですから」

「………」

「フィーネの魂は、誰の器にも宿らなかった。それだけの話です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それだけ言って、マムはそれ以上を語ってはくれなかった。

 

 

「……マム。先日言ったフィーネを背負わなくていいって、あれはどういう…」

「言葉通りです。私達がこれまで行ってきたのは、テロリストの真似事に過ぎません。真になすべき事は、月が落ちてくるまでに何を成すべきか。違いますか?」

「……今の私達では、世界を救えないと言うこと?」

 

 

難解な言葉を紐解きながらマムの車椅子を押し続ける。まるで諦めのようなセリフに、胸がバクバクと鳴り続ける。

 

もう、時が来てしまったのではないのかと。フィーネを背負いきれなくて押し付けてきた報いを、受ける時が来てしまったのではないのかと。

 

背負いきれなかったから、マムが私たちに見切りをつけてしまったのではないのか、と。

 

 

「……」

「ここです」

 

 

この階の一番奥。大きな自動ドアが開き中に入る。内心の動揺を閉じ込めるように足を進めると、部屋の中は普段は会議にでも使われるのか大きなテーブルと椅子がいくつも備え付けられていた。

 

そして中には……。

 

 

「っ、米国政府!?」

「交和を持ちかけるため、私が蒐集しました」

「交和を、結ぶつもりなの?」

「ドクターウェルには通達済みです。さあ、これからの大事な話をしましょう」

 

 

マム…。いったい、何を考えているの?

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………あー、高い。めっちゃ高い。人も多い。ドクター、マムが嘘をついた形跡はない。時間も場所も合致してるわ」

『それは上々。私もスカイタワーを無意味に崩壊させるつもりはありませんので』

「さいで。ソロモンの杖使ってる時点で、ってのはあんたの耳にゃ念仏か」

『ええ。釈迦に説法というものです』

「へっ」

 

 

えー、現在地スカイタワー。…の上層部から命綱付けてぶら下がってます。シンフォギアを纏えばこんな危険はないんだが、二課に察知されるから却下だと。

 

なら大人しくマムの後をついて行けばとも思ったが、敵の奇襲で面会以前に全滅させられたら後がないとのことで却下。なんにせよドクターが言うには、マムは今回の計画の全容が収められたチップを交渉に使うらしい。

 

なので例えマムとマリアが殺される事になってもチップだけは回収する必要がある。テロリストと政府機関が聖遺物を扱ってどちらに軍配が上がるかなんて語るまでもない。シェンショウジンの出力問題をクリアできない今、唯一のアドバンテージを捨てるわけにはいかない。

 

 

(まあ、お相手が約束を守ってくれてるからいい方か)

 

 

そんなわけで潜入任務だが、事前情報通り中には米国機関の人間と思われる黒服が数人既に待機している。全員服装もサングラスも同じ。この中にお偉いさんがいるとは考え辛い。つまりこいつらは運び屋の如く、品物だけ持ってくるのが仕事なのだろう。

 

それはつまりマムもマリアの処遇なんて想像しやすい。

 

 

「…見た感じ、話し合いに応じますって雰囲気じゃねえな。物だけ貰ってやろうって薄汚さが目に見える」

『私達は既にF.I.S.を破壊し聖遺物を持ち出すという、米国政府の顔に一度泥を塗っています。面子が大事な方々からしたら私達からの都合の良い申し出など一笑に伏す程度のものでしょうね』

「そんなもんか」

 

 

ここまで分かりやすくしてくれるなら話は早い。とっとと制圧しちまうか。

 

 

「んじゃ、突入する。待つ必要ねえだろ」

『いえ、そうとは限りません。むしろこれはチャンスです』

「はぁ?ちゃんすぅ?」

『はい。ナスターシャは理想家ですが、それを貫く強さが足りなかった。英雄足りえぬ弱さが、今回のような事態を招きました。ならば一度、米国政府という最後の拠り所を完全に潰しておくべきです』

「………裏切りを見てから、ってことか。まあ、それくらいなら…」

『マリアもです。彼女はその手が血に汚れる事を恐れている。その恐れをいつまでも振り払えていない。あなたも覚えがあるでしょう。米国政府がアジトを攻め入った時に彼女は、何もしなかった』

「………。フィーネの依代だからだろ。シンフォギアを余計な時間纏う必要はない。実際あの程度なら俺が一人で対処できた」

 

 

俺が自分の手で初めて人を殺そうとした時のことを言っているのだろう。ドクターが邪魔しなければ、俺はそのまま一人の命を奪っていた。もう陽だまりに戻れない決意表明のように、生きることすらしようとしていなかった自分にはむしろ正しい行いだと思って。

 

それでも、手は生きてきた中で一度だって感じたことがない程に震えていた。

 

 

『………あなたは、どこまでも言い訳くさい。真実を知りはせずとも、予想くらいはついているとおもっていたのですが、ね』

「………なんの話だ」

『マリアの話ですよ。彼女がフィーネの依代、なんかではないという真実のね』

「………………」

 

 

……………。

 

 

『…沈黙ですか。やはり当たりはつけていたのでしょうね』

「…心当たりがあっただけだ。別に確信はなかったし、騙っていた以上米国政府の襲撃にあいつが出張らなかったのも不自然じゃない」

『お優しいことで』

 

 

マリアがフィーネの器じゃなかった。それは、別に驚くことじゃない。フィーネのリーンカーネーションシステムは遺伝子を受け継ぐ子孫がアウフヴァッヘン波形に接触する必要がある。そんな偶発的な状況で、マリアのように「シンフォギアを纏わなければ大丈夫」、なんてゆる過ぎる条件があったらいつまで経っても転生なんてできないだろうという疑問は当初からあった。

 

そしてそんな状況ですらF.I.S.で訓練のためにマリアはシンフォギアを纏っていた。俺との戦闘訓練でもフィーネに飲まれる恐怖を感じさせず、当然のように戦う違和感。

 

そして何より天羽さんに身体を取られかけたのだと、自分が自分でなくなることが怖くないのかと詰め寄られた時。あの時から、俺は確信を持っていたのかもしれない。

 

フィーネの器となったマリアと天羽奏の依代となった俺。変わらないだろうと、同じだろうと問うた時の「違う」という返答から。涙を流してまで俺を、誰かを心配するマリアなら。

 

…俺の知らない重荷を、背負っているのだろうと。

 

ちゃんと生きようとしてるんだと、勝手に思ってたんだ。

 

 

「………っ」

『…時間です。目標の現在状況をお伝え願えますか?』

「…悪い。ちょうどマムとマリアが入ってきたところだ。突入準備を…」

『いえ、撤退を。密会に予定の差異がないのなら貴方の役目もありません』

「………」

『………ここで貴方ではなくノイズによって会談が破綻する。この脅威を切り抜けるにはマリアがシンフォギアで振り払う以外ない。そうすれば…」

「…分かってるよ。それが一番、()()()()()って言いたいんだろ」

 

 

この建物を米国政府との取引場所にした時点で、此処には数多くの米国兵士がいるだろう。まさか引き取り役だけ構えて策も予備の戦力もなし、なんてのはないはずだ。

 

だがマリアがフィーネの器となっていないのならシンフォギアを振るわない理由はない。だから米国政府を退けるだけなら何の問題もないと言っていい。だが本来シンフォギアなんて生身の人間に振るうべき力じゃない。

 

俺が兵士の左腕を切り飛ばしたように、誰かを傷つけずに人を倒すなんて至難の技だ。それくらい、手加減ってのは難しい。一つのギアで戦車部隊程度なら蹴散らせる力を個人に向ける。語るべくもないオーバーキル。

 

それでもマムという守るべき存在がある以上、マリアはその手を血に汚してでも槍を振るうだろう。躊躇い、迷い、俺も感じたあの苦しみの先へ行くために。

 

さらに今回の目玉はマムだ。マムが米国政府に交和を持ちかけるという、ある種裏切りのような今回の騒動。

 

今回は事前に伝えられた。だが次回はどうだ?俺が米国政府に裏切られる前に突入して会談をダメにした場合、次は誰にも知らせずに事に及ぶかもしれない。

 

今回のすべき事は、釘を刺すことだ。もうマムがこんな事をしないようにする。その為には、演出がいる。間違った行いがどうなるか。また同じ事をしたらどうなってしまうか。失敗は成功の母。まずは失敗だと認識させないといけない。

 

ノイズに人が飲まれ、建物は壊れ、悲鳴が響き、そしてマリアが手を血に染める。

 

もう二度とこんな事をしてはならないと、マムに脅しつける。それも俺の突入では叶わないことだった。

 

 

「………」

 

 

…理屈の上では、どこまでも効率的。そんな事は、わかっている。

 

その上で俺は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………分かった。だが被害は最小限に抑え……るつもりはないだろうから、二次被害の救助はするからな」

『ま、ご自由に。既にノイズは放ってしまいましたがね』

「クソッタレが」

 

 

 

 

 

 

…その上で尚俺は、効率を選んだ。

 

止まらないなら、最大限の効率を。何も変わらない、俺の選択。

 

 

 

 

 

 

♪Builder Excalibur knight tron♪(輝く未来へ屍を背負う)

 

 

 

 

 

 

…だけど、不安にも思う。

 

 

……数えていけるだろうか。俺の背負った屍を。

 

 

 

 







未だ理性の化け物な八幡。効率と心を読んだ以上、代替案がない場合選択肢が一つになるバグ持ち。

とりあえず年内投稿!
皆様良いお年を!来年もよろしくお願いします!!!
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