やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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何故か新年初書きをpixivの突発で捨ててきたけどこっちでは初書きなので初投稿です。今年もよろしくお願いします!

二年目に突入する前にGを終わらせたいと思ってたけどたぶん無理です。無印にかかった話数の倍既にGの前とG本編で使ってるのです。くどい文章書き連ねてるけど全話読んでくれてる人ほんと感謝。今年も頑張ります!






やはり彼女は槍を立てる。

sideマリア

 

 

 

 

 

マムと共に米国政府のエージェント達が待つ会議室に入り、後ろに控える。フロンティア計画に必要なデータを渡し、交和を結ぶのだと言うマム。

 

しかしその話し合いは、データチップを渡した瞬間にあっさりと破綻した。

 

 

「…っ!これいったい、どういうつもり!?」

「………。初めから話し合う気はなかったと言う事ですか」

 

 

チップを受け取りしまった途端、全員が懐から拳銃を突きつけてきた。

 

敵対行為、なんて言っている暇もないくらいの危機。

 

 

「必要な物は手に入った。後は不要な物を片付けるだけ」

「ふざけた事を…」

「おっと。あなたが歌うより遥かに早く、銃弾は命を奪いますよ」

「…っ!」

 

 

余裕綽々な米国政府と比べて、あまりにも拙い現状。マムの車椅子も私のガングニールも装着して戦うにはほんの少し隙ができる。装着時のエネルギーフィールドを貼るところまでいければ銃弾など物の数ではないけれど、それではマムが危険すぎる。

 

 

(……くっ。わざと動いてマムから注意を逸らす?…まだ私はこんなところで死ぬわけにはいかないのよ)

 

 

燃え盛る炎の中で誰かを守る為に歌い続けたセレナ。そんな眩しい妹の影すら踏まないまま終われない。

 

…だってまだ、何もできてない。世界を救える程の大人になれたと言ってあげたい。誰かを纏めて守れるくらいの姉になれたのだと伝えたい。

 

………。

 

……だから、なんとかなる。

 

そんな憧れを、まだ、口に出せてもない。

 

 

「………っ!」

「では……。っ、なんだ!?」

 

 

グッと、体に張り巡らせた神経が縮む気がした。

 

空気が歪む、この世界の物ではないような異物感。窓の外から、天井から、まるで目の前の物質を嘲笑うかのように、奴らは平然と現れる。

 

 

「ノイズ…」

 

 

位相差障壁の調律がなされず、半透明のまま人を殺す為に生み出された兵器。それは銃撃を無害としながら、当たり前のように人を灰に変えてしまう。

 

……そう、あっさりと。血を撒き散らすことすらしない。圧倒的な、『力』。

 

力、ちから。

 

例え自らの勢力にソロモンの杖があったとしても、誰かを殺すための力を振おうなんて思わなかった。その誰かを殺す力は、守ろうとする誰かを殺める禁忌。

 

だけど……。

 

だけども……。

 

銃器を持った人間に素手の人間が敵わないように、核兵器を持った国に持たざる国が敵わないように、ノイズを持った人間に銃器を持った人間は敵わない。

 

確かな『力』を持った私達が、その扱い方を誤るばかりに被害が出続ける。

 

それは、この被害は、私のせいだ。

 

辺りから悲鳴が聞こえる。外のノイズがスカイタワーを貫き破壊し、そして。人を殺す声。

 

 

「…守れるはずだった、声だ」

「マリア…」

 

 

…まだ間に合うだなんて。フィーネを背負いきれなかった私の逃げ道が、どうしてまだあると思ってしまったのだろう。

 

…………。

 

 

 

 

 

 

 

♪Granzizel bilfen gungnir zizzl♪(溢れはじめる秘めた熱情)

 

 

 

 

 

 

 

……私は、何の為に。

 

…誰の為に、歌ってきたのか。

 

 

 

 

 

 

 

♪烈槍・ガングニール

 

 

 

 

 

♪……()が為にこの声、鳴り渡るのか?

 

♪…そして()が為にこの(うた)は、在ればいいか?

 

 

♪……もう何も失うものかと決めた!

 

♪想いを重ねた奇跡よ!運命(さだめ)を蹴散らせぇ!!

 

 

 

 

 

 

悲鳴がつん裂く。炎が立ち込める。力が、力が振るわれている。

 

中途半端だった決意、世界救済を棚上げしようとしていた自分自身の未熟。どれもこれもクソ喰らえだ。

 

力があれば世界を救える。力がなかったらただ他の人間の力により蹂躙されるだけだ。

 

銃に負けない、国に負けない、悪意にも、この先に待ち構える世界破壊にすら負けない力があれば。

 

 

(……私のせいだ)

 

 

…だからこれは、私のせいだ。

 

 

「いたぞ!撃て!」

「………一般人をっ!」

 

 

避難する一般人に構わず発砲する米国政府の弾丸で、通りすがりの一人が血を流して息を引き取る。

 

…これもだ。力があれば、消えるはずのない命だった。

 

 

「私のせいだっ」

 

 

もっと力があれば!力を振るう覚悟があれば!誰かを傷つけてでも使命を全うする決意があればっ!

 

 

 

 

「……全ては、フィーネを背負いきれなかった私のせいだっ!!!」

 

 

 

 

…槍を振るった。人に向けて、殺すつもりで吹き飛ばした。その一振りで、肉が潰れる感触と共に鮮血が頬を濡らした。

 

 

(恐れるな、恐れるな!血に汚れる事を恐れるな!)

 

 

強化されたシンフォギアの一撃は、ただの蹴りでも致命的になり得る。それでも振り抜き人を蹴り飛ばす。今度は壁を、床を、血痕が染めていく。

 

 

 

 

 

 

♪鼓動打つ命達、戦うその背に…

 

♪独奏―カデンツァ―の、あるがまま!束ねよ愛を!

 

 

 

 

 

 

…迷っていた罰なのかもしれない。セレナの想いを継いで、誰かを守るはずだった自分の中途半端さへの重い罰。

 

知らなかった。誰かを傷つけるのがこんなに苦しい事だなんて。

 

知らなかった。誰かを殺すというのがこんなに辛い事だなんて。

 

この罪この重さ、全てを背負わなければ世界を救うなんてできやしない。世界を相手取り、世界全てを敵に回してでも世界を救う未来のためには。

 

………ああ。

 

…嗚呼。

 

 

 

 

 

 

「………ぁぁああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪……絶対に負けられない!戦いがあるのだ!

 

♪世界よ(うた)え!… 明日を(うた)え!

 

 

♪やがて知る未来は、千年後も変わらず…

 

♪夜明けのヒカリの空へ…

 

 

♪皆に幸、あれ……

 

 

 

 

 

 

………歌声が、霞んでいく。それでも、もう間違わない。血に汚れる事を、力を振るう事を、例え力で弱者を虐げることになっても。

 

目的のためなら!

 

 

「もう迷わない!最短距離で駆け抜ける!」

 

 

スカイタワーから脱出する。その為にノイズな米国政府を相手取っている暇はない。だからスカイタワーの頂上からシンフォギアの出力で一気に離脱する。

 

槍を天に、マントでマムと自身を包み込む。壁や天井なんてシンフォギアの一撃に耐えられる物ではなく、当然のように道を開けた。力に屈するように、当たり前に目的地まで私達を運んでくれた。

 

 

「マム。しっかり捕まってて」

「………ええ」

 

 

……スカイタワー上層部の展望台。元は人で賑わっていただろう場所は見晴らしのいい空中の瓦礫と化していた。機械に溢れ、下はノイズが蠢いている。原型を崩すのはそう遅くはないだろう。

 

……だから目に入った。

 

 

「………え?」

「…っ」

 

 

…ノイズの破壊で機材が燃え、瓦礫に埋もれる展望台。そんな中に、女の子が座り込んでいた。頬を涙で濡らして、階下を見下ろす少女。

 

ノイズに襲われて避難し損ねた一般人。今は悪いけどわざわざ1人の為に力を貸してあげるほど優しくはなれない。

 

……と、思っていたけど。

 

 

「………死にたくなければこい!」

「…はい!」

 

 

自然と、手を差し伸べていた。

 

瓦礫の中、燃える炎、その中の少女。まるで昔のセレナを思い出させる不思議な既視感。黒髪で短く、オシャレな服装。身長も違えば髪の色もその目に宿す輝きもまるで違う。

 

だけど彼女には、まだ生きようとする熱を感じた。悲しみに折れない強さを、嘆きに屈しない温かさを。

 

 

(…救える命を救うのも、また力の使い方なのかしら)

 

 

立ち上がり此方に駆け出す少女をマントのうちに収める。両脇に守るべき人を抱えて、空を飛ぶ。

 

 

「口を開かないでね。舌を噛むわ」

「…(はい)」

 

 

守りきれずに零れ落ちた沢山の命。手の届く場所にあった命はたった二つだけ。

 

守り切れたその重さは、不思議と軽かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………マリアの撤退を確認。マムと………なんかもう一人も一緒で」

『もう一人?』

「見覚えがある。確か、立花響のツレ?分からんけど。生身じゃ火傷必須な高温立花に突っ込もうとした変な奴」

『………ほう、彼女ですか』

 

 

通信機越しに現在の状況をドクターに伝えながらノイズ退治と取り残された人達の救助を進める。暁と月読がドクターを迎えに行った時に見た光景。その時にドクターも顔を覚えていたのか、当たりをつけたようだ。

 

ネフィリムに喰われかけた俺を庇う立花のように、命張る度胸があり過ぎる女の子だったので嫌に記憶に残っている。

 

 

「……。んじゃ、俺も撤退するわ。ノイズの処理も八割終了、さっき立花響が下に落っこちてくの見えたし後は二課におまかせだな。スカイタワーも一先ず逃げ遅れた人は見た感じいないし」

 

 

…手遅れだった奴はいるけれど。

 

 

「………」

 

 

壁や床に血の跡。血が出てるってことはノイズじゃない。傷跡も銃創がなく、しかも見覚えのある黒スーツだ。だとしたら、誰がやったのかは語るべくもないだろう。

 

 

(………血に汚れる道を、選べたのか)

 

 

自分の手を見て、血の色を幻視する。左腕を切り飛ばした男を、最後の一歩を踏み出せなかった自分を、未だ背負った気になって中途半端な心持ちの自分がいる。

 

割り切ったつもりで、言い訳を自分にし続けている。

 

………生きるって、難しいな。

 

 

「………ぅ」

「…!生きてるのか」

 

 

…血は出てるし腕も折れてそうだが、確かに息がある。だがここに置いておいたらノイズに殺されるか建物の崩壊に巻き込まれるかもしれない。

 

七人。数は多いがシンフォギアを纏っているからそこの問題もない。米国政府の人間だがここで助けようが見捨てようが、この状態では暫く病院行きだ。問題はないだろう。

 

 

「生かしても殺しても同じなら…」

 

 

…助けても、構わない。

 

命を選別できるほど偉くなったつもりはないが、死ぬかもしれない場所から遠ざけるので勘弁してほしい。

 

 

「……よっと」

 

 

背負い、窓から飛び降りる。窓と言ってもノイズの襲撃でガラスも割れた風通しのいい窓だけど。

 

落下しながら途中で鞘に足を乗せて減速を図る。下を見れば立花響がシンフォギアを纏っている。押し付ければノーとは言わないだろう。

 

なるべく黒服の人たちに負担をかけないよう落下地点を目指す。

 

…と。

 

立花が、シンフォギアを解除した。

 

 

「……何考えてんだあのバカ!?」

 

 

 

 

 

 

【full百of八lies嘘】

 

 

 

 

 

 

空からノイズが無防備な立花目掛けて襲い掛かるのを、鞘を飛ばして灰に変える。上の階層のノイズは大体処理したが、むしろそっちだけだ。地上や下階層はこいつがどうにかすると思ってただけに、まだ数がいる。

 

 

「おいバカ!どうしたんだよ!?」

「比企谷!これもお前達の仕業なのか!?」

「遅え!後これデリバリー!持ってけ、まだ生きてるが負傷してる!てか立花(こいつ)どうしたんだよ!?」

 

 

同タイミングで現着した雪音クリスと風鳴翼に黒服を投げ渡す。

 

風鳴が負傷者を運び雪音がノイズの露払いに残ったが、肝心の立花は未だ放心するように膝を折っていた。

 

 

「全部、全部お前らがまたソロモンの杖で起こしたことかよ!?」

「ノイズはそうだが、こいつは別件だ!よ!」

 

 

いつ銃弾が飛んでくるのか分からないので、地に足つけて鞘を飛ばしながらノイズを狩る。雪音もノイズが先決だと分かっているのか空の敵を次々払いながら怒鳴ってくる。

 

 

「………」

「………」

 

 

…改めて立花の様子を見る。放心して、全身の力が抜け出たようだ。

 

………いや、何考えてんだ。二課が来たんだ、さっさと撤退しないと面倒になる。構ってる暇があるなら早く消えるべきだ。

 

 

「………っ」

 

 

………………………。

 

必要、ない、はずだ。

 

……それでも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………だから、もう一歩くらいは、踏み込んでも、いいのだろうか。

 

…月読達にも。

 

………そして、立花達にも』

 

 

 

 

 

 

 

……気の迷いだ。時と場所を選べ。いやそもそも敵に踏み込むってなんだよ。そんな機会があるわけ……。

 

…………そんな、機会…。

 

…………。

 

 

「…………。…なに、どうしたんだよ」

「………八幡くん。未来が…」

「………っ」

 

 

 

……虚な目が、俺を見る。

 

…縋るような目で見るな、敵なんだぞ。

 

…頼るような目をするな、敵なんだぞ。

 

…信じるような目をするな。なにより、怖いから。

 

 

 

「…誰だよ」

「……私の、陽だまりなの。落ちる私を、助けようとしてくれたのに…。私、助けられなかった」

「…………」

 

 

……落ちる。……落ちる?上にそれらしい人はいなかった。

 

施設は崩れてたし爆発したりもしたから絶対ではないが…。

 

…………………まさか。

 

 

「……そいつ、黒髪?」

「……ぇ、うん」

「白いリボン付けてたりする?」

「…うん。なんで…」

「………ああ、そうか」

 

 

……奇縁、いや。腐れ縁、いや。

 

………………いや。

 

 

「………生きてるよ、そいつ」

「……え?」

「生きてる。死んでない。だから、あー、なに。

………そんな、頑張り過ぎんな」

「………八幡くん」

「じゃあな」

 

 

残り少ないノイズも片付く。装者の追っ手が着く前にその場を離れた。

 

空を飛んで、異様なむしゃくしゃ感に首を振る。

 

 

「………なんで会う度、こんな感情になんだよ。

………くそっ」

 

 

 





感情的なまま理性的なこと考えようとするマリアさんと理性的なまま感情が滲み出る八幡を同じ話に詰めると混乱する。

原作名シーンだし未来さんと響視点も次あたりに、たぶん入れる。難易度高くなかったら。アニメと違って情報を切り取らないと別々に進められないから小説って難しい。
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