やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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転職終わってようやく職場に慣れてきたのでまたちょこちょこ書いていこうと思います。もう四ヶ月も経ってんのか…。早い…。働きたくない…。


やはり俺は打算を読む

コンコンッ

 

 

「マム、起きてるか?」

「……その声、八幡ですか。ええ、どうぞ」

 

 

月読と別れた後、少し時間をおいてマムの元へ向かった。今病気によって体調を崩しているマムはメディカルルームで一人体を休めている。他の面子が眠ったのをわざわざ確認したのは面倒だったが、なるべく話すなら早いうちがいい。

 

ドクターが企み事を終える前に、せめて下準備は済ませておきたい。フロンティアに関する情報が足りてない、フロンティア救済の方法の理解が浅い。

 

 

「うす。寝てたか?」

「いいえ。不思議と、寝付けずにいましたから」

「そうか、ならちょうどいい。話がある」

「………。貴方は、ドクターの側に着いたと思っていましたが」

「状況が変わったからドクターに協力したし、状況が変わったからマムに協力を仰いでるだけだ。マムの思うようにしてたら計画が破綻しただろうし、ドクターを思うがままにさせたらまた計画が破綻する」

「そうですね…。彼がこのまま、ただ救済を目指すことはないでしょう」

「だろ?だからフロンティアが浮上したら手を貸してほしい」

 

 

マムからしたら何を都合の良いことを、と思うかもしれない。だが既にマムは自分の勝手を起こして失敗している。理屈や善悪を無視して手を伸ばすのは絶好の機会だ。

 

 

「……。貴方は、未来を見ているのですね」

「……?」

「……………。私は、目を逸らしていました。未来からも、現在からも。…そして貴方やあの子達からすら目を背けていた」

「フロンティアが起動できなかった話か?それならドクターがなんとかするだろ。連れてきた誰かさんを使って」

「いいえ…。違いますよ、八幡。私が言っているのは、あの子達に血に汚れる道を強いたこと。そしてその道標に、貴方を選んだことです」

「………意味が分からん」

 

 

血に汚れる道というのは、現在マリアが陥っているように人を殺してしまう道。世界の為にと、誰かの為にと嘯いて騙されやすいアイツらを唆したということだろう。

 

だがマムの立場でそれが間違っているとは思わない。テロリストとして、聖遺物という異端技術を振るう者として、命を脅かす存在を相手に優しさ甘さは邪魔になる。ならばそれらの感情を排せるように後戻りが出来ない場所に放り込むのは正攻法だ。

 

……現に、マリアは覚悟の一歩を踏み出している。

 

 

「……パヴァリア光明結社に支援を頼ると同時にシンフォギア装者が協力すると聞いた時、私は確信していました。私達とは別の、何か違う企みがあるのだろうということは」

「………」

「しかしそれでもそれは私たちにとって破格のプラス要素になり得ました。シンフォギア装者が一人増える。その真価は数値以上の戦略的価値になりうるであろうこと、いざという時に容易に切り捨てれること。そして何よりも……」

「………」

「………何よりも、あの子達より先に血路を開く先人になるであろうと」

「…。なるほどな。アンタはあいつらに、俺が誰かを殺す姿を見せたかったわけだ」

「そのとおりです」

 

 

…ようやく得心がいった。

 

疑われていたこと自体は別に驚かない。切り捨てられる算段だったこともいい。むしろ捨て駒のように前陣を任されることで動きやすい部分も多いし、現に俺はドクターとの切り捨て合戦の土俵にいる。むしろマムがその考えを暴露したことでマムが俺を切り捨てようという考えを改めている可能性は高いことがわかった。

 

その理由がアイツらへの思いやり故か、それとも俺への失望故かは知らないが。

 

 

「あの子達は、とても優しい。優しすぎるほどに」

「だな。マムの教育が良かったんじゃないか?」

「……。厳しく、辛く関わってきたつもりです。それでもあの子達から優しさが消えることはなかった。それではいけないと思っていました。世界を救う、その為に優しさは不要だと」

「その優しさを捨てさせるきっかけにしようと思った相手は予想よりも役立たずだったようだけどな」

「……いいえ、違いますよ八幡。効率的にと、世界救済の為にと私達と共に歩み続けた貴方を見続けてきました。シンフォギアを振るい、かつての友から掛けられる声を聞き、進み続けてきたからこそ分かります」

 

 

…言葉を切り、血色の悪そうな顔を浮かべながら。

 

マムは、薄らと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「あなたもあの子達と同じくらい、優しかった」

 

 

 

 

 

………。

 

…向けられる瞳から目を背ける。

 

 

「………冗談だろ。俺は米軍の人間を殺そうとした。スカイタワーではマム、アンタやマリアが危険に陥ることが分かりきってても介入しなかった。それどころかついさっきここの指揮権からマムを引き摺り下ろしたばかりだろうが」

「全ては世界救済の為。貴方は私なんかよりずっと、その志を貫いている。ここに来たのがその証拠です。未来を信じ進み続ける強さが」

「………勝手に俺に期待すんな。ここに来たのはアンタの力が必要なだけ。そうじゃなきゃ失脚した奴のとこになんて行かねえよ」

 

 

まるで決めつけるかのように語り倒すマムを語気を強めて遮る。

 

俺のことは俺が一番分かっている。それはたとえ記憶を無くしたとしても、この心を決めているのは、覚悟を決めているのは、誰あろう俺以外にいない。

 

…だから、知っている。

 

この行動も、この言葉も、このあり方さえも。

 

所詮俺未満の、偽物なのだと。

 

 

「………。そうですね、分かりました。貴方の要請を受けましょう。これからの協力を」

「………どーも」

 

 

そう、欲しいのは協力だけ。それ以外はいらないんだ。

 

………イラつく。無性に漠然と、俺の背景をある程度察しているのにそれを無視して暖かく見守るような目が。弱々しく横たわりながら力強く笑うその口が。

 

 

「…あんた、ぶっ倒れる前より顔色がいいってのはどういうことだよ」

「さあ?存外、私自身も柵に絡み付かれてたのかもしれません。私自身の、そしてあの子達というもっと大きな…」

「………。もう終わったみたいな口振りだな。ついでにもう一人、新しい厄介ごとに巻き込まれた一般人もいるってのに」

「そうですね…。彼女を連れ帰ったドクターがこの先どう動き出すのかはわかりません。しかし停滞はありえない」

「その点だけはほんと優秀なんだがな…」

 

 

意欲だけでは無い。知識だけでは無い。ここまでのアドリブ力はほんと頭が上がらないほどにドクターは動いている。そんな中でマリアはドクターのやり方に賛同し、月読と暁は未だ道を決めかねているとはいえマムへの不信感とドクターの舌先が合わさればこれからどうなるのか分かったもんじゃない。

 

そうなった場合絶対的に手が足りなくなるのは目に見えてるので追加戦力が欲しいところなんだがな…。

 

 

「………最悪の場合、二課と接触した方が都合が良くなるかもな」

「今までの彼女達の反応から、助力を得られる可能性も充分あるでしょうね。連れてきた彼女も二課の装者の友人のようですし」

「そこが接触できるポイントであり、接触を避けたいポイントでもあるんだがな」

 

 

そう、マリアの連れ帰った黒髪の少女は間違いなくあの立花の関係者。それだけ見れば否が応でもこちらへの接触は慎重になる。なんせあっちから見ればただの人質。事情を知っている人間ならフロンティアを浮上させるためのシンフォギア、シェンショウジンを纏わせる適合者として回収したと推測できるが知らない二課にとってはマジでただの誘拐だ。

 

その認識を覆さないままあの子を助けたくば言うことを聞けと、二課を脅しつけるのも悪くない。が、賭けてもいい。絶対にドクターはやらかす。間違いなくシェンショウジンの牙が二課に向くようにする。しないわけがない。

 

その場合脅しつけた反発の余波で肝心のフロンティア浮上後の助力が受けられない可能性が高くなる。それならいっそドクターを完全に悪者にして立花達に泣き落としを敢行したほうがまだ成功率が高そうだ。

 

だが俺が泣き落とししたとして、ならあの子を返して!と言われても「計画が遂行できないのでできません」などと言えば助力を得られるわけもない。世界はいつだって等価交換か押し売りか略奪なのだ。なんて夢のない世界。

 

 

「………いずれにせよ、フロンティアが浮上しないと話にならねえな」

「土壇場の知恵比べ。厳しい戦いになるでしょうね」

「そんなの最初からだし、今もだしこれからもだよ。目に見える厄介ごとに見えない厄介ごとのオンパレードだ」

 

 

ほんと、F.I.S.に来て安息の時なんかまるでない。マリアに月読、暁にマム、特大爆弾のドクターにネフィリムにフロンティア、二課の装者や天羽奏や月の落下。どれからとっても面倒で厄介で手のかかる大問題だ。

 

そんでもって俺は最初から記憶喪失。その上で二課とかつて知り合いだったとかどんな確率だ。人間関係のしがらみなんて俺自身関係をまるで築いていないというのにその厄介さを思い知らされている。

 

…………その厄介さを、立花のような不可解さを、天羽奏のような圧倒さを、解き明かせたらどれほどいいか。

 

…そんな難題だらけの未来で、俺は生きていけるのだろうか。

 

 

「八幡…」

「…なんでもねえよ。やらなきゃいけないからやる。それだけだ」

 

 

首元で揺れる黒いシンフォギアのペンダントを握りしめる。目に見えて、手に触れられて、確かにここにある強さの証。使い手次第でどうとでも化けるだろうこの聖遺物に振り回されて背を押された。

 

 

「………」

 

 

耳を澄ませても、歌は聞こえない。

 

道標になんてなりはしない。まあほんとに記されても世界を壊す道筋になるわけだけど。

 

 

「………話はそんだけだ。俺はもう戻るぞ」

「ええ。おやすみなさい、八幡」

「…おう」

 

 

穏やかな視線に見送られ、一人エアキャリアの通路を進む。

 

 

一歩ずつ、一歩ずつ、未だ終わらぬ未来を進む。

 

 

行き止まりには、まだ着かない。

 







まず自分が書いてたイメージ思い出さないといけないところから始まりましたどうも作者です。執筆断ちしてたんでほんと久しぶりに書いたら手が進まなくて驚きました。勘を取り戻して頑張ります。

投稿期間は未定です。わからん。
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