やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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いつも誤字報告や感想評価ありがとうございます。なんかもう励みにしかなってません、すばら。

基本4000前後にしてるから話の流れが遅い遅い。

クリスの苦悩数日後から始まります。


やはり日曜日に予定があるのはまちがっている。

最近、ノイズの大量発生についてのニュースをよく目にする。なんせここ数ヶ月で一定範囲(リディアン周辺)にのみノイズが高頻度で暴れているのだ。国民の恐怖を煽るのには十分な事態だろう。だが発生地点についてのニュースはあまり報道されることはない。事態が事態なのでニ課による情報封鎖が万全なのだろうが…

 

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん!大変、大変だよ!あの風鳴翼が過労で倒れちゃったって!」

「……ああ、まあトップアーティストなら気苦労も多いんだろうな」

 

 

しかし、全てを隠しきれないこともあるのだと思う。半端に事情を知っているせいで、小町が騒ぐより前に風鳴翼が倒れたというニュースを携帯で見たときはまさかと思ってしまった。過労死ではなく過労なので生きてはいるだろうし二課という国の機関がある以上医療設備も最先端、俺が事実を知ったところで変わるものもないので気にするだけ無駄である。あるのだが。

 

 

「ねえ聞いてる!?ねーえー!」

「あー聞いてる聞いてる。五月蝿いくらい聞こえてるって」

「もう!お兄ちゃんにはこの胸に蔓延る複雑な気持ちがわっかんないかなぁ。もういい!こう言う話はお兄ちゃんより響さんと…」

「今立花にその話するのはやめとけ」

 

 

事情を少し知っているせいか、咄嗟に小町を制止してしまう。だってあのお人好しが風鳴翼に何かあったとして、それを気に病まないということは多分ありえないだろう。そう、俺が事情を知ったところで何も変わらない。何かを変えるのなら、それは当事者達がすべき事だ。無関係の人間が興味本位で気に病むような横槍を入れるわけにはいかないだろう。まあ案外本当に過労で倒れただけの可能性もなきにしもあらずだが。というかトップアーティストで装者で高校生って詰め込み過ぎじゃない?そりゃ倒れもするよ。

 

 

「………なんで響さんと話しちゃダメなの?」

「あー、いや、ダメっていうか。ほら、あいつ課題の期限がー!って騒いでたから邪魔しないほうがいいかな、と?」

「お兄ちゃんがそんな気遣い出来るわけないでしょ」

 

 

し、辛辣。いや確かに普段なら課題が終わらなくて騒いでるリア充がいたら人知れず鼻で笑って優越感に浸るところだが、俺もほら、なに?偶の偶にはもしかしたら心配するなんてことがあるかもしれないでしょ?それを立花にするとは思えないけど。素で課題忘れそうだし。

 

 

「えーとだな、なんつーか…」

「…………はぁ。まあいいよ。お兄ちゃんに免じて辞めといたげる」

「…サンキューな」

「まったく、素直じゃないお兄ちゃん持つと苦労するよ。……で、普段お兄ちゃんって響さんとどーんな話をしてるのかなって!小町ちょっと気になっちゃうところなんだけど!」

「いや別に大したこと話してないから。ご飯時報だったり小日向自慢だったり、へーふーんほーんで終わる会話ばっかだな」

「うわっ。二度とライン送りたくなくなる反応トップスリーみたいなことしてる」

「ガチトーンのうわっ辞めてくれ」

 

 

だって唐突に『ご飯アンドごはーん!』とか『未来とフラワーに行ってきたー!』みたいなラインが送られてくるばかりなのだ。あいつ俺の連絡先呟きアプリと勘違いしてないか?どう反応すればいいか分からないのでへーとかよかったなで終了させても悪くないと思う。

 

 

「しっかし適当に言っただけだけど響さんと連絡とってるんだね。響さん友達多そうだしお兄ちゃん忘れられてるかと思ってた」

「それな、俺もそう思いたかった」

「ごみいちゃんめ…。でも嬉しいんじゃないの〜?お兄ちゃんの携帯に家族以外のメッセージがピコーン♪と…」

 

 

 

ピコーン♪

 

 

 

「「あ」」

 

 

なんというタイミング。画面を落としていた携帯を持ち上げる小町の目の前でラインのメッセージが受信された。ここで俺は一つ思うのだが、世間では既読無視についてちょくちょく話題に上がることがあるだろう。しかし中には既読つけない無視もある。それを推進している機能が、この画面に最新メッセージが表示される機能によって行われる。既読無視は相手に不快な思いをさせてしまうかもしれないが、最新メッセージをロック画面で確認することで話題の重要性を吟味し、既読を付けずに内容だけ把握できるのは画期的な方法だ。既読さえ付かなければ『あれ?既読がつかない。今忙しいのかな?』なんて考えにもなることだろう。

……しかし、しかしだ。この機能にも欠点がある。普段まったくならないのであまり気にする事もない欠点だが、それは通知が来た時点で自分以外の人間が携帯を所持している場合その内容が第三者にダダ漏れになるという不具合だ。

 

 

 

 

: 小日向未来 :

『おはよう比企谷くん。今日って暇かな?

もしも暇だったらお買い物一緒に行かない?』

 

 

 

 

………この場合、第三者となるのはもちろん小町なわけで。それも携帯を確保されているので奪い返すことも出来ない。というか小日向さんや、あなた別に俺にそこまでラインとか送ってこない勢だったじゃないですか。いや流星群見た日から少しずつ増えてたりはしてたけど、なにもこのタイミングで送ってこなくても…。

 

 

「お、おおお!お兄ちゃん!事件だよ!警察だよ!ホームズだよ!」

「落ち着け、何はともあれ落ち着け。警察はやめろください」

 

 

このタイミングなら小町がラインの内容を見るのは確定的に明らか。しかもちょうどその話をしてたのできっと気分は『噂をすれば響さんからのメッセージかな?』みたいな気軽なノリで見たのだろう。そして見てみれば小日向からのお誘いメール。小町は興奮しまくりだ。我が妹ながらおっかない。

 

 

「…とりあえず携帯返せ」

「おぉ、返信するの?デートなの?今夜はお赤飯!?」

「いや日曜に出掛けるとかありえないだろ。断りのメールを…」

「『分かった。暇だから大丈夫だ』っと…」

「おい、こら。なに人のライン勝手に返してる。てかロックかけてたよな?」

「お兄ちゃんのロックが小町の誕生日だってことくらいお見通しだよ!お父さんもそうだったし」

「親父ェ…」

 

 

蛙の子は蛙というか、ヒキガエルの遺伝子というか。普段は母ちゃんや小町の尻に敷かれているが、こういう所ではやはり親父は俺の親なのだと実感してしまう。もっと他のところで実感したい。いやむしろしたくない。社畜の血は途絶えさせなければ。俺は専業主夫になるんだ。

 

 

「というか断るってそんな勿体無いことしちゃダメだよ!」

「いやでもなぁ。日曜だよ?一日中グータラゴロゴロしても怒られない日に何でわざわざ疲れなくちゃいけないんだよ」

「バカ、ボケナス、八幡。女の子とのデートってのはね、休日を生贄にしても確保すべきボーナスタイムなんだよ!特にお兄ちゃんみたいにモテない男にとっては!モテてるならともかくモテざる者の贅沢は許されないよ!」

「モテないから疲れるんだよそのボーナスタイムは…。あと八幡は悪口じゃねえぞ」

「とーにかーく!オシャレして、集合時間より早く、目の濁り取って、行って来なさい!」

「最後は無理だなぁ」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

in公園

 

 

 

 

「ごめん、待った?」

「いや、そんなには」

 

 

結局小町から携帯を奪い返せずあれよあれよと予定が決まって、俺の午後の休日がお亡くなりになることが確定した。欲しいのは日常雑貨でそこまでの荷物にならないらしいので荷物持ちにもならない俺がいる価値を切に問いたいところであります。

 

 

「…でも意外だったな。比企谷くんのことだし断られるかと思ってた」

「断ろうと思ってたんだが、タイミング悪く小町に携帯奪われててな。追い出された」

「あはは。小町ちゃんらしい」

「意外といえばなんで俺を誘ったんだ?立花とか三人組とか誰かしら他にもいただろ?」

「………うん。今日は、ね」

 

 

会話中に僅かに曇った顔は、明暗の差はあれど流星群の夜に見たのと同じ、どこか寂し気なもののようだ。ということはまた立花と何かあったのだろう。婦妻喧嘩が激し過ぎやしませんかねこの二人。二課の仕事が仕事だけに仕方ない気もするが、もうちょっと構ってあげて立花。仕事に忙しい旦那(立花)を寂しがる嫁(小日向)ってなんて百合げー?嫁かよ(キマシタワー!)。

 

 

「……実は響と一緒に行こうと思ってたんだけどね。急な用事が入ったって断られちゃった」

「ついに困ってる人を直感で探せるようにでもなったか」

「それだけだったらいいんだけどね。……響、今日お風呂で体見たらあちこち傷だらけなんだもん。何か大変なことに巻き込まれてないかって、心配だよ」

「………そうか」

 

 

俺が立花の戦う姿を見たのは数える程だが、人を殺す為だけの兵器と評論家に言われるだけあって容赦なく襲いかかってくる。シンフォギアがあるとはいえまだ素人の立花が毎回無傷というわけにはいかないのだろう。というかさらっとお風呂で体見たとか言ったんですけど一緒に入ってるんですか入ってるんですね!?男子高校生の心が一撃ですよこれ!

 

 

「……ん?いやそれ俺誘った理由になってなくない?」

「え?」

「立花と出かけようとしたってのは分かったけど、あの三人衆とかそれ以外にも小日向なら出かける友達いるだろ?」

「……そうだね。なんでだろ?」

「なんでだろと聞かれても…」

 

 

コテンと首を傾げたと思えば、ん〜と唸りながら考え込んでしまった。実は小日向が立花みたいな考えなしなだけなのか、それとも思った時にスデに行動は終わっている系女子なのか。なんにせよこれで俺じゃなくてもいいやになったらお役御免で休日が帰ってくるかもしれない。

……まあ、それはそれで。

 

 

「なんでか、はよく覚えてないけど…」

「けど…?」

 

 

「一人じゃ嫌だなって思ってたら、どうしてか比企谷くんが浮かんで来たから、かな」

 

 

おかしいよね?と小さく笑う小日向から視線を逸らすように横を見る。多分じゃなく、今の俺の顔は赤くなっているに違いない。こんな男子なら言われて見たい言葉にランクインしそうなセリフを天然でかましてくる小日向に告白して振られるまであるが、既に嫁の妻がいるから大丈夫、勘違い。ちくせう立花め。

 

 

「………行くか」

「ん?」

「買い物、行くんだろ?せっかくの日曜なんだし時間は有効的に使わないとな」

「そうだね、行こっか」

「………おう」

 

 

照れ隠しで歩き出せば後ろから跡を追ってくる足音がする。少し速度を落とそうかと思ったが、あとほんの数秒待ってほしい。赤みが引くまで、僅かであろうと試行錯誤をしようとしては失敗する。そして余計な事を考えれば、普段考えないことを思考してしまう。

 

浮かぶのは、罪悪感。いったいいつまで小日向を騙し続けられるのだろうか。だって本当ならここにいるのは立花のはずだ。小日向の可愛さに惑わされるが、俺の立ち位置は立花の代替品(スペア)。他人の立ち位置に割り込んでいるに過ぎない。だから、これはきっと偽物だ。本物に戻すべきなのだ。方法は簡単。小日向に立花の秘密を明かすだけでいい。俺みたいな一般人が二課の協力者擬きなんてことやれているのだから小日向にできない道理は無いだろう。むしろ立花のフォローを積極的に行ってくれる、いい協力者の出来上がりだ。

 

 

「…なあ小日向」

「ん?なあに?」

「………」

 

 

………そんなこと、俺以外の人間も分かっていることだ。だけどそれをしないのは小日向を巻き込まない為に他ならない。命がけの仕事に力のない人間が入り込めば、危険を回避する術を持たない小日向の被害に加えて立花にも影響を与えるはずだ。何より立花が小日向に無関係であって欲しいと願っているから、今もこうして小日向は一般人として呑気に買い物に勤しめている。

 

 

「いや、何でもない」

「なにそれ」

「悪いな」

「いーよ。じゃああそこから回ろっか」

「はいはい」

 

 

……この買い物が終わったら立花に連絡してやろう。過程がどうあれ、あいつなら羨ましがるだろうから。

 




何故?どうして?未来さんの好感度ばかりが上がってく。戦闘しないから奏者よりも話が作りやす過ぎるんだな。



手紙好き。明るくてアホっぽくて可愛くて健気なのが全部伝わるの最高じゃないデスか!?

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