やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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そのまま八幡回だと思った?残念響クリ回でしたー!

ここで入れないとタイミング逃すので。


やはり想いは拳で伝えるモノ。

side………

 

 

 

(みられた…。見られた…!未来に見られた!)

 

 

クリスの襲撃を受け、巻き込まれた親友のような被害者を出さないようにクリスを引きつけるように駆けていた響の頭の中は絶賛混乱中だった。未来に流星群の動画を見せてもらい、そしてある日言ってしまったのを思い出す。『未来に隠し事なんてしないよ』と自分に隠し事をしたくないと言ってくれた親友に、現在進行形で隠し事をしている自分が吐いた言葉が呪縛のように身体を蝕んでいく。何故、どうして、こんな広い世界の中で運命は未来と私をあの場所に導いてしまったのか。あのタイミングで襲われなければまだ、未来に気付かれずに済んでいたのに…!

 

 

「………未来。……っ!」

 

 

 

 

【NIRVANA GEDON】

 

 

 

 

圧縮されたエネルギー弾が頬を掠めるように通り抜け目の前の木々を巻き込みながら爆発する。鬼ごっこ終了のホイッスルの代役を務める轟音が響き渡るが、それに反応する声はない。二課のサイレンが鳴り渡り住民は避難し、ここは住宅街から程遠い。戦う場所としては及第点の場所だった。

 

 

(……比企谷っ。…関係ない!私にはもう、関係のない話だろうが!)

 

 

だが響も、そしてクリスも内面はとても戦う状況ではなかった。たった一回、ほんの数十分。それだけの時間話しただけの関係だ。友達なんてものからは程遠く、知り合いを名乗れるほど知り合ってもない。本当にただ一度会っただけの関係だ。

 

 

(口の中が甘い…!思い出し甘味ってか?…クソ、なのになんでこんなに苦い!?)

 

 

あいつの顔を見た時に思い出したのはどうしようもなく甘いあのコーヒー。人生は苦いからコーヒーくらいは甘くていいなんて馬鹿馬鹿しいことをしたり顔で言って見せたあいつから渡された物。

 

そして次に思い出すのは未だ消えない頭を撫でられた温もり。痛くない、辛くない、苦くない、ほんの僅かな接触。そんな小さい事すら思い出してしまった。だけどそれが今はとても苦々しい。なんでこんな所で会っちまったんだ!

 

 

(あいつは…比企谷はあの鈍臭い奴の知り合い、いや友達なのか?あの馬鹿が名前を呼んでいた女と一緒にいたなら可能性は十分に…)

 

 

たった一度だけしか会ってなくても、恩を受けた事は忘れていない。年齢も同じくらいの相手だ、厄介事に巻き込んで悪かったという気持ちもある。…だがそれより何より、あの鈍臭いのと仲がいいかもしれないというのが気に入らない。

 

だってずっと、憎悪を抱く程あの馬鹿が嫌いになっている所だったんだ。フィーネに気に入られ、完全聖遺物をあっさり起動させ、友を持ち、仲間を持ち、家族も繋がりもどこまでも見せつけられて、両手に溢れるあいつと空っぽの両手を見比べて、何も思わないわけが無いだろう!

 

 

「今日こそ連れてってやる!大人しく寝そべりな!」

「クリスちゃん…!私は…」

「お前の事なんかどうでもいい!何も知らない相手に、語る言葉なんてあるものかよ!」

 

 

力のままに鞭を振るう。木々をなぎ倒し、空気を切り裂き、音速へと届く威力をぶちまけていく。今はこのむしゃくしゃを何処かにぶつけたくて仕方がなかった。それがこいつ相手なら申し分ない。回避され続ける鞭だとしても、振るい続けていることに少しの充足を得ていた。

 

 

「ハッ!鈍臭ぇのが一丁前に!」

「鈍臭いなんて名前じゃない!」

 

 

嗜虐心の赴くままに鞭を振っていたクリスだが、唐突に大声を出されてその手が止まってしまう。それを逃さず、響は大声を出し続けた。

 

 

 

「私は立花響、15歳!」

 

 

 

「誕生日は9月の13日で血液型はO型!身長はこの間の測定では157cm!」

 

 

 

「体重は…もう少し仲良くなったら教えてあげる!」

 

 

 

「趣味は人助けで、好きなものはごはん&ごはん!」

 

 

 

「後は、彼氏いない歴は年齢と同じ!!」

 

「………な、何をトチ狂ってんだお前…」

 

 

 

一息に言ってのける響にただ呆気にとられるクリスは気圧される訳ではなく一歩退いた。というかドン引いた。

 

だが、響もただトチ狂ったのではない。覚悟を胸に、想いを言葉に、最速で最短に真っ直ぐに一直線に、ソレを今ここで伝えなければいけないと思い至ったのだ。

 

今日未来にこの姿を見られてようやく分かった。あの日、未来に隠し事をしたくないと言われた日。私は『隠し事がある』と未来に言うべきだったんだ。隠して逃げて避け続けて嘘を吐くのではなく、言いたくても言えないけれど、それでも大好きだと言わなくちゃいけなかった。

 

言葉にしなければ伝わらない。だけど言葉にすれば理解できるなんて傲慢なのかもしれない。それでも伝えて伝えて伝え続けなきゃ届くものも届かないから。だからただせめて胸の想いをぶつけなくちゃ!

 

 

「私達はノイズと違って言葉が通じるんだから、ちゃんと話し合いたい!」

「なんて悠長、この期に及んで!いつまで戦さ場で馬鹿なことをほざいてやがる!」

「話し合おうよ!だって、言葉にすれば人間はきっと分かり合える!」

「……っ、うるせぇ!」

 

 

だがあまりに遠慮ないそれは、時に相手の心に触り過ぎて傷つける。劣等感に苛まれている人間相手にその対象から性善説の綺麗事を押し付けられることは、僻み羨望嫉妬に悪意を増幅させる引き金足りえる。

 

真っ直ぐな目だ。きっと真剣に言ってるんだろう。信じきっているんだろう、それが正しいのだと。そんな姿を見れば見るほど、クリスの心の炎がガソリンを飲み干すように燃え上がり続けた。

 

 

話したら聞いてもらえる環境にいた奴が偉そうに!

 

言葉にしたら頷いてもらえる奴が正しいと信じきった顔しやがって!

 

話す相手がそばにいる奴が訳知り顔で!

 

 

 

「………分かり合えるものかよ人間が。そんな風にできているものか!」

 

 

 

話したら無視される環境にいた相手に上から目線で!

 

言葉にしたら拳を振るわれる相手に正しい事したような顔で!

 

話す相手がただの一人もいない奴相手にしたり顔で!

 

 

 

「気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ!分かってもいないことをペラペラと口にするお前がぁ!」

 

 

人の琴線を殴りつけてくる目の前の存在に、悪意が殺意に変わり果てる。出来もしないことを、理解してもいないことを、ただ正しいはずだと言葉にされる事が我慢ならない。

 

 

「……お前を引き摺ってこいと言われたがもうそんなことはどうだっていい!お前をこの手で叩き潰す!今度こそお前の全てを否定してやる!」

 

 

 

 

 

【NIRVANA GEDON】

 

 

「吹っ飛べ!」

「私だってやられる訳には!…ぐっ!」

 

 

 

ネフシュタンの鎧から放たれたエネルギー弾は響に食いつく様に襲いかかる。完全聖遺物から放たれるエネルギーに拮抗せんと受け止める響に、クリスはもう一発のエネルギー弾を解き放った。

 

 

「持ってけダブルだ!!」

 

 

響を襲っていたエネルギー弾に重なる様に撃たれたソレは、接触と同時に爆発を引き起こした。たった一発でも干上がる様な攻撃を二発分。たとえ完全聖遺物を即座に起動できるほどのフォニックゲインを放つギアだとしても完全聖遺物には及ばない。粉々にしてしまったかもしれないからフィーネの命令を果たせなかった懸念もある。だが、きっとこれでいい。

 

 

「………。お前みたいなのがいるから、あたしはまた…」

 

 

フィーネに頼られるのはあたしだけでいい。いやそうじゃなくちゃいけない。だってそうじゃないとまたあたしはまた独りぼっちになってしまう。今の居場所は絶対に、手放すことはできない。

 

 

 

「………ぉぉおおおおおお!」

「っ!」

 

 

だがそんな思いも爆発による土煙の中から上がる咆哮に掻き消される。爆風の中心地にいたはずの響はその手に圧縮されたエネルギーを包み込みながら此方を見据えてくる。

 

あれが何なのかは直ぐに理解できた。ギア特有の能力を具現化し、そこを基軸とした力を発揮する特殊武装。つまりはアームドギアを形成するためのエネルギーだ。それを使う事でこちらの攻撃と相殺してみせたのだろう。それだけでは飽き足らず、響はそのエネルギーを拳に包み込んだ。

 

 

「この短期間でアームドギアまでモノにしようってのか…!させるかよ!」

 

 

もう何度も相対しているからこいつの成長速度の異常性は理解した。戦えるようになる速度は速く、フォニックゲインの高まりは異質で何をしでかすか分かりゃしない。この上アームドギアまで構えられたら本格的に目にたんこぶが出来てしまう。だからなんとしても阻止しなければ。響の顔面目掛けて鞭を振るう。とにかく集中を削ぎさえすれば…。

 

 

バギィィ!!

 

 

「なんだと!?」

 

 

そんな腑抜けた考えがいけなかった。甲高い、金属同士が擦れ合うような音が響き渡る。なんと振るった鞭を完全に見切られ、両肩から伸びるソレを二つとも鷲掴みにされてしまった。

 

伸縮自在な鞭とはいえ、切り離してまた再生とトカゲのような芸当はできない。繋がった体の一部を相手に渡してしまうような愚行は、急激に引き寄せられる感覚。響が掴んだ鞭を力任せに引っ張る事によって咎められる。エネルギー弾を放つ際に地から足が離れていたのも要因となり引き寄せられたクリスは腹の中心に叩き込まれる響の一撃を余すとこなく味わう羽目になった。

 

アームドギアを形成するエネルギーを拳に蓄え、エネルギーをそのまま打ち込むその殴打はクリスの身体を貫くように捉える。雷を喰らい、雷を握り潰すように握られた拳から放たれる一直線の想い。

 

 

それが、初めて届いた。

 

 

 




物理的に。

元祖殴り愛感がしてとても好きです。
君が!話し合うまで!殴るのをやめない!ではなく一回殴って対話に入った響は良い子ですね?

Stand up! Ready!!好き。
初見アニメで裸になろうしか耳に残らなかったけど聞いたらかっこよかった思い出の曲。

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