やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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いつ切られるかも分からない小説だし伏線は分かりやすくしといたぜ。


やはり比企谷八幡は何もできない

【♪◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️】

 

 

 

 

♪〜〜♪♪〜

 

 

 

………歌が聞こ……えない。いやメロディが流れているのは分かるけどそれが聞き取れない。子供の頃からのように歌だけが聞こえないというわけではなく、まるで遠過ぎて上手く聞き取れない状態とでもいうのか。

 

 

♪〜…?ーーー!

 

 

……あれ?止まった。というかなんだこれ。辺りは真っ暗だし体も動かないくせに何かが聞こえる状態だけが理解できる。いや正直理解できないんだけど。何これ。

 

 

ーー!ーーーー?ーー。

 

 

歌はもう聞こえない。今度は誰かが叫んでいる声が聞こえ…ない。歌と同じ、俺の耳にまで音が入り込んで来ていないのだ。

 

 

ーーー。ーーー、ーーー!

 

 

誰だ、ほんと。俺、あんたの事知らないんだけど。目の前で見たこともない人が、ただなにかを言っている。読唇術も心得てないぼっちで申し訳ない。人間観察が趣味でもそこまで極めてないんすよ。

 

 

ーーー。

 

 

……何か、何か読み取れないか。延々と無視を続けるのも辛いものがある。何か一つでも情報が、単語が読み取れれば…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つ、ばさ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

inメディカルルーム

 

 

 

「………知らない天井だ」

「もう、起きたてでふざけないでよ…」

「……小日向か」

 

 

人生で一度は言ってみたいセリフナンバーワンを堂々と宣言できた喜びに浸る暇もなく隣から非難を浴びた。隣を見れば行儀よく座っている小日向がこちらを心配そうに見ている。そしてそこまできてようやく自分が眠る前の状況を思い出せた。

 

 

「…あー。無事だったのか」

「………ふん」

「え、なんで怒ってんの?」

「………二課の人達から大体の話聞いたよ。比企谷君も協力者で、響のこと知ってたんだってね」

「………ああ。全部知らされたからここにいるのか」

 

 

さっき知らない天井と言ってはみたが、実を言うと知ってる天井だったりする。ここはリディアン地下のメディカルルーム。前に櫻井女史にメディカルチェックを受けさせられた時にこの部屋であちこち調べられたのだ。……思い出しても恥ずかしい。お嫁にいけない。お嫁にいけないから小町に養ってもらわないと…!

 

 

「………なんで、教えてくれなかったの?」

 

 

話を一旦区切るつもりだったが、小日向は逃してはくれないらしい。まあそれもそうか。涙を浮かべるほど立花について悩んでいて、それを話した相手がその立花について隠し事をしていたのだ。最も欲しい情報を持つ人間に相談し、その情報を意図的に伏せられていた。問い詰めたくもなるだろう。

 

 

「機密だからな。情報漏洩は禁止どころか下手すりゃ犯罪だ。一般人を協力者にしてもらったのにそいつが違反とか笑えないだろ?」

「分かってる!……分かってるよ、でも…」

「……立花のことだろ?隠し事が苦手なあいつも、流石に隠し通さなきゃいけないって思ったんだろうよ」

 

 

……というか、俺も何も思わないわけじゃないんだ。予期しない形で小日向がどれだけ立花を想っているのかを知ってしまった負い目もある。だがそれと同時に、立花が装者としての悩みを抱えていることも知っていたんだ。

 

右で聞いて左に流すなんて出来やしない。誰よりも立花の事を知りたい小日向が居て、誰よりも小日向に知られたくない立花が居た。その二つを天秤に掛けなければいけなかったから、傾いた方に口を閉ざした。どちらとも関係があり、どちらとも関係が深くない俺だからこそその秘密を話すわけにはいかなかったんだ。

 

 

「……それだけ?」

「ん?」

「………私が怒ってるの、それだけだと思う?」

 

 

ジッと、真剣な目で見つめられる。先程までの非難の眼差しとも違う。懇願、それに似たような雰囲気を感じる。立花、ではなく俺に何かを求められているような、そんな気配だ。

 

しかしそう聞かれても思い当たる所が特にないのが現状だ。立花がシンフォギア装者でノイズと戦っている事、そのきっかけとなった事件やその日時も聞いているだろう。というか小日向が気になっている大抵の事はあの優しい大人達のことだ。小日向と立花の関係も知っているはずだから特別措置で全てを教えていると考えて問題ないはず。

 

なら後は立花に隠し事されたくないと流星群を見た日に言っていたからそれについて怒っているのだと思ったが、それだけではないという。

 

…わからん。

 

 

「わからん、降参だ」

「ナゾナゾじゃないんだけど…」

「立花がシンフォギアのこと隠してたことじゃないんだろ?」

「それも怒ってるけどね…」

「………。それ以外、ノイズと戦ってる事は…」

「知ってる」

「シンフォギアを纏うきっかけの事件のことは…」

「それも聞いたよ」

「流星群が立花と見れなかった事ですかね?」

「それも二課の人に呼び出されたんでしょ?聞いたよ全部」

「じゃあ何に怒ってんだよ…」

 

 

女心と秋の空、は誤用だから違うけれど読めないことには変わりがない。もしかしたらそもそも俺の与り知らないところで小日向の機嫌が損なわれた可能性だってなくもない。立花のことだ、シチューにご飯を突っ込んで小日向がマジギレしたとか……ないかな、ないね。立花ならご飯はおかずでご飯が主食だしな。

 

 

「………。なんか、凄くどうでもいいこと考えてそうだけど響のことじゃないからね?」

「え、じゃあ俺関与してないじゃん」

「…………」

「…憐れまないで欲しいんだけど」

 

 

冷たい目で見られるのは慣れてはいるけど慣れたから大丈夫なわけじゃないんだ。呆れたようなため息と「まあ比企谷君だもんね」と悲しい納得のされ方を見せられるこっちの気持ちも考えてくれ。

 

 

「……言えない理由があって、言わない理由があったとしても、友達に隠し事されてたらショックだよ」

「だから立花のことなら…」

「響じゃなくて、比企谷君のこと」

 

 

そう言われて思考が止まった。とも…だち?そういえば気を失う前も友達が云々言われてたような記憶が…。俺と小日向が、友達?比企谷と小日向がトモダチ…。

 

 

「………え、比企谷?誰?」

「何変なこと言ってるの。バカ、八幡」

「八幡は悪口じゃねえだろ…」

「……比企谷君が協力者なら、私も協力者として手伝えたかもしれないじゃない。そしたら、私も、もっときっと…」

 

 

悲痛な顔を浮かべて唇を噛み締める小日向の姿から天井へと視線を逸らす。もっときっと、何かが出来たかもしれない。立花が小日向にシンフォギアや二課について話していたら、二課の協力者となった小日向は立花のサポートに執心したことだろう。互いが隠し事をする必要が無く、今まで通りに笑っていられたのかもしれない。

 

 

「………手伝えてたらもっと立花の役に立てたかもって?」

「……。う、うん。そうだよ、だって私は…」

「…立花もそうだったけど、お前も案外嘘下手だな」

「嘘って…」

「…なぁ。実は立花が隠し事してたってとこ、別にそんなに怒ってないんじゃないか?」

「………っ」

 

 

天井を見つめたまま、驚いたように此方を向く小日向から更に視線を切るように顔を背ける。

 

ずっと気になってはいた。小日向の気持ちを無視すればだが、立花は今回の件について非はないと言ってもいい。国絡みの機密で、小日向を守る為に嘘の秘密を晒した。それが分からない小日向ではないだろう。では、小日向は何を考えているのか。そんなもの、考えるまでもない。

 

 

「……まあ、ただの勘だけどな」

「……怒ってる。怒ってるよ。だって、響が戦ってるのを見て、響がノイズと戦ってるって知って…!私は、すっごく……!」

「怖かった、か?」

「………うん」

 

 

そう、考えるまでもない。立花が()()()()()という二年前の事件が原因と聞かされた時。シンフォギアがあったから良かったものの、ノイズに襲われて立花がまた()()()()()と聞いた時。死にかけた立花が今もなお死んでしまうかもしれない戦いに赴いていると聞いた時。どう思うかなんて決まってる。

 

【怖い】しかないだろう。

 

死と隣り合わせの立花がいて、傷を作り、嘘を吐き続けたという事実。立花が隠していた嘘が暴かれ、その実態が小日向を安心させるどころか不安を促進させるものでしかなかった。

 

溜めこめと、受け入れろと、ただの高校一年生に『君の友達が人助けのために命懸けで戦ってるから応援してね!』なんてどの口下げて言えるというのか。真実を知った今小日向がこうして怒っているように見えるのは、抱えきれない不安を扱いきれていないからだと思う。大き過ぎる不安は、そのまま心配に繋がってしまうから。

 

 

「………ねえ比企谷君。…怖い、怖いよ。響がまた大怪我しちゃうんじゃないかって凄く怖い。死んじゃったらなんて想像もしたくない…」

「……」

「…頑張ってる響が好きで、真っ直ぐな響が好きで…。なのに私、今の響を応援できそうにない…!」

「…小日向」

「響は響らしくいてって、自分で言ったのに!人助けは一番響らしいことなのに、それが堪らなく嫌だなんて…!」

 

 

部屋に小日向の泣き声が広がっていく。不安や恐怖が溜まっていた涙を押し出していく。

 

 

「…こんな私じゃもう、響の友達でいられない…」

 

 

泣き噦る少女が一人と寝そべった男が一人。俺はただ小日向の涙から目を背け続ける。泣いている小日向に、何をしていいか分からない。励ましの言葉も気の利いた言葉も出てこないのに、余計な事ばかり出てくる口を噛み締める。

 

俺はいったい、何をしてるんだろう。

 




未来かわいい。



YouTubeで放送中のタイムリーな書きやすい話だった。でも作者の語彙が薄汚れてて書きにくかったです。

始まりの歌好き。
独奏ーひとりーきりの歌では調べには遠く、をこの小説で使いたくて仕方ない。

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