やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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おかしい、ただの繋ぎ回の予定だったのにラブコメの波動を感じる…。

前回投稿前に感想返せなくて申し訳ないです。今回難産ちゃんだったのでこれを言うのも少しかかりましたが。


やはり俺に悩みなど解決できない。

あの後、結局俺は何も言えなかった。立花の友達で居られないと泣き咽ぶ小日向に掛けられる言葉を見つけられず、小日向が部屋から出ていくまでろくな言葉を発することも出来ずにいた。

 

結局今日一日入院?のような宣告を言い渡されたので真っ暗な天井を見上げながらひたすら頭だけが動き続けている。

 

 

「………何してんだ、俺」

 

 

自分を責めるべきではないと思う。これは立花と小日向の問題で、俺が手を出すべき問題では無いはずなのに。なのに頭の中がざわついている。

 

小日向の涙に触発されたのでは無い。何もできない自分への自己嫌悪、でもないと思う。たぶん、見ていたくなかったのだ。互いを思い合う立花と小日向が衝突し、そして離れていく姿を。

 

…何度も、何度も思った。

 

 

立花(小日向)のやつ、どんだけ小日向(立花)が好きなんだよ。

 

 

立花と小日向、二人揃って会うことは殆ど無かった。だいたいいつもどちらか一人でもう一人はいなかったというのに。それなのに、いつもいつもお互いがお互いの話をしていた。立花は小日向の自慢話ばかりするし、小日向はいつも立花の事で悩んでいた。

 

誰に憚ることなく互いを親友と呼び、見せつけるように互いを思い遣る二人に俺は何かを見出してしまったのかもしれない。俺には遠過ぎて、眩し過ぎて、それを得る事は出来ないであろう物を。極自然に、二人で握り締めるように掴んでいた物を。

 

 

『本物』を、二人に幻視していたのだと思う。

 

 

ソレが目の前でひび割れていく姿に、俺が耐えられないのだ。友達でいられないと言った小日向に、だとしても立花の思い遣りを感じざるを得ない。小日向にシンフォギアを見せた時にごめんと言った立花に、多大な罪悪感が感じられた。

 

何度考えても結論が変わらない。

あいつらどんだけお互いが好きなんだよ。小日向が今回悩んでいるのも立花が心配なせいだ。暫くすれば元どおりに……戻る、と思うが…。

 

 

コンコン

 

 

「…?どうぞ」

「お、おじゃましま〜す」

「立花?」

 

 

グルグルと思考の無限ループに囚われそうなところを悩みの片割れ、立花の出現によって一時的に解放された。というか…。

 

 

「いや何時だと思ってんだよ」

「ご、ごめん来るの遅れて。未来に色々説明しなきゃと思ってたんだけど…」

「……」

「どうせまた嘘つくんでしょって怒られちゃって…。あ、あはは…」

 

 

…さては小日向のやつ泣いてすっきりしたせいか怒りがぶり返したパターンか。小日向って怒ると怖いの典型タイプだし、しかも継続するとみた。メディカルルームにいる時は立花が怪我をする恐怖が勝っていたが、実際無事な立花の姿を見たら怒りが上回ったというところか。しかも立花はこの性格だ、絶対後ろめたさ全開でビクビク接しようとする姿が目に浮かぶ…。

 

 

「そ、それで八幡くんが倒れたって師匠に聞いてたからお見舞いをと…」

「明日でいいだろ」

「………今日は、寝れそうにないかなって…」

「……そうか」

 

 

…俺はお悩み相談所じゃないんだが。実際前回の相談者を無言で帰宅させたばかりなのでその無能さは折り紙つきだ。なんていらない折り紙。

 

 

「ごめんね?倒れた人のところに夜行くなんて良くないって分かってはいるんだけど…どうすればいいか分からなくって」

「いや別にいい。倒れて寝まくったせいで全然眠くないしな」

「そか。よかった」

 

 

扉の前でわちゃわちゃしていた立花はそれを聞いて腰を落ち着けようと思ったのか、小日向が座っていた椅子に座った。だが座ってもどこか落ち着かないのかキョロキョロと視線を彷徨わせたり髪の毛をくしくし軽く弄ったりと慌ただしい。

 

 

「………」

「………」

 

 

無言の時間が続いていく。眠れない、気不味い、後ろめたい。そんな思いで立花はここに来たのかもしれないが、残念ながら俺は特に立花に対して話すことが見当たらない。さっきも思案したと思うが、小日向と立花の問題に進んで首を突っ込むべきではないという思いと、俺自身が何をしたらいいのか分からないという点に尽きる。

 

 

「……ねえ八幡くん」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八幡くんとクリスちゃんって友達なの?」

「え、何でその話?」

 

 

びっくりした。小日向関連で何か言われると思ってたのに突然の雪音方面の話題転換にかなりびっくりした。ビックリ幡である。

 

 

「ほら今日八幡くんとクリスちゃんお互いに呼び合ってたから。友達なのかな〜って」

「違うな。友達じゃない」

「そ、即答…」

 

 

友達なんかじゃない。むしろ無関係まであるのだが、出会った状況が状況だ。簡単に忘れるには印象深過ぎてどうにも忘れられない相手だった。退っ引きならない事情があるのだろうと思ってはいたが、まさか二課と敵対関係にあるなんて思わないじゃん。助けちゃったよ、裏切りにならないよね?雪音のことを教えてくれなかった二課が悪い。まあ本部に顔出しもしないから情報共有してないのが悪いのだけれど。まあほら、あれだ。秘匿性を重視した結果という結果論的なあれ。

 

 

「……まあ、なんて言えばいいやら。生き倒れていたところを助けたというか…」

「クリスちゃんが、生き倒れ…?」

「ああ。ちょうど流星群の日だった…」

「……っ」

「…………あっ」

 

 

顔が歪んだ立花を見て、ここまできてようやく繋がった。風鳴翼の活動休止の時期、立花が流星群を見れなかった時、雪音が倒れていた時。その全てが重なっていた。それならば展開の過程は分からないが、風鳴翼と雪音クリスが共倒れに近い形で終局したというのが分かる。そしてその場に立花も居ただろうことも。

 

………なんだこいつ。どんだけ面倒ごとに巻き込まれれば気が済むんだ。風鳴翼と衝突していたことはある程度回復したらしいが、結局命懸けでノイズと戦っていることは変わりない。そこに小日向との不和が生まれ、雪音との衝突。風鳴翼の戦線離脱まで加わっていたら……。

 

その小さい手に、いったいどれほどの苦悩を握りしめているのだろう。

 

 

「今日ね、クリスちゃんともっとちゃんと話し合いたいって思ってぶつかってみたんだ」

「…敵じゃなかったか?」

「敵だとしても、同じ人間なんだよ?だったら話し合ったらきっと分かり合えるよ」

「おまえやば…すごいな」

「今やばいって言おうとしなかった?」

「お前やばいな」

「言った!はっきり言った!」

 

 

会話をするたびに思うけど立花やばい。何がやばいってマジやばい。苦悩お悩み抱えながらさらに茨の道を突き進もうとしてるのが本当にやばい。敵だとしてもと当たり前に言ったが、その敵は同じ聖遺物を纏って襲ってくる相手だ。そんな相手に話し合いたい、わかり合いたいと本気で言える立花のやばみがヤバタニエン。何考えてんだろうこいつ。べーっ、まじべーわ。

 

 

「いや、やっばいわ。ほんとやばい」

「い、一度ならず三度も…」

「話し合いとかわかり合いたいとか、もっと自分に余裕がある時にやればいいだろ。少しは自分に気を回せよ」

「ま、回してるよ!未来とこれからどうしようかなーとか、クリスちゃん大丈夫かなーとか」

「どうしようで止まってる時点で余裕がカケラもないんだが」

「た、たしかにちょっと悩んだりもしてるけど…!でもクリスちゃんも、なんか…困ってそうだったから…」

 

 

だから、と拳を握りながら。逸らしていた視線をまっすぐに此方に向けた。

 

 

「困ってる人がいたら、敵だったとしても助けたいよ…」

 

 

……到底理解できない。きっと話のスケールは俺が思うより大きいはずだ。日本政府、ノイズ、自分の手には有り余る大きな社会問題も含むその中で、尚も敵と手を取り合いたいと本気で思える思考が本気で理解できない。

 

……だけど、それと同時に小日向なら理解できるのかもと思った自分もいる。やはり立花には小日向が必要不可欠だ。危なっかしくて、猪突猛進の立花の事を支えて理解できる人間がいなければいけないと思う。二課から立花を支えろと言われているが、もう分かり切ってる。無理だ。小日向にやってもらわないと意味がない。

 

しかし今の小日向は立花との接し方が、もう、何というか、ヤケにでもなっているのだろうか。可愛さ余って憎さ百倍とか高校生のうちから昼ドラ展開をおっ始めないでほしい。ただでさえノイズ殲滅とかいう怪獣映画に混じって歌って戦う魔法少女番組が始まっているというのに、そこに雪音というバトル漫画が入り込んだと思ったらラブコメまで始まるなんて情報量が多過ぎる。何がしたいんだこのリアルは。

 

 

「……はぁー」

「な、何でため息?」

「なんかもう、あれだな。優先順位付けるべきだ。小日向の問題を解決するか雪音の問題を解決するか。それを決めないと何もできないだろ」

「うぇえぇ…。優先順位って言われても…。未来とは直ぐにでも仲直りしたいし…でもクリスちゃんも向こうの人達と揉めてたみたいで心配だし…」

 

 

しまった、あまりに第三者の意見過ぎたか。本人からしたらどれも最優先の問題だというのに。これではただ問題をごちゃごちゃにしてしまうだけだ。何もできないから停滞して悩んでいるのに、これ以上立花に考えさせるのは悪手か。

 

 

「……立花、じゃあ逆だ。悩み事を何も考えない方に考えるんだ」

「考えない方に考える?」

「灰色の脳みそのない奴が考えても閃きのアイデアなんて出てこない。ならいっそ全部一回忘れろ」

「忘れろと言われても忘れたくても忘れられないというか、部屋に戻ったら未来がいるから絶対思い出しちゃうというか…。それにクリスちゃんも脳裏に鮮明にこびり付いてるというかで、その…」

「いや記憶を失くせとまでは言ってない。ただ今はタイミングが悪いんだよ。小日向には秘密がバレたばかりで怒りが持続してるから話し合うには時期が悪い。雪音の事も二課なら名前が分かったら身元とかの調べも付けてるだろうからもうすこし情報があったほうがいい。つまり今は解決に動く時期じゃないんだ」

「な、なるほど。言ってる事全然分からないけど八幡くん天才?」

「お前が馬鹿なのは再認識した」

「な、なにおう!?」

 

 

ちなみに出まかせの天才ではあると自負してます。合ってるか分からない事をそれっぽく言うのは得意だ。まあそれっぽく話せる相手がいないから試したことないけど。

 

 

「で、でも!私だけ何もしないなんて…」

「立花」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頑張り過ぎだ」

 

 

前屈みにやる気を見せる立花の頭を押さえつけるように撫でる。立花が頑張っている、そんなことはみんな知ってる。子供のように真っ直ぐで、子供のように理想へ走る立花を抑えようとは思わない。だけど無理は祟るし我慢は募るばかりだ。頑張って頑張って、それで立花が潰れてしまっては意味がないだろう。

 

撫でられて縮こまった立花を力を緩めもう一度軽く撫でる。

 

 

「………ぁぅ」

「あんま気負うな。立花が頑張り過ぎなくても、二課の人達も頑張ってくれてる。小日向だって、怒ってるかもしれないが立花が嫌いになったわけじゃない」

「………うん」

「今まで大変だったのによく頑張ったな。今日だけ、明日だけでもいいから、少し肩の力を抜いとけ。そんなんで、バチは当たらない」

「…うんっ…」

 

 

最後の涙ぐむような声で、俺は立花に向けていた視線を天井に向けた。ほんと、禄でもないお悩み相談室だ。相談に来た相手を全員泣かすなんてヤブもいいところだ。

 

そのまま立花を撫でていた手も引っ込めようとすると、それは立花の両手に包まれるように止められた。

 

 

「……ごめん。もうちょっとだけ、ここに居ていいかな?」

「…お好きにどーぞ」

 

 

立花の頭の上で所在無さげな手が再び立花の頭に着地する。俺の腕と立花の手で顔は見えないが、声だけでその顔が涙に濡れているのが分かってしまう。一度、二度とまた立花の頭を撫でていく。命懸けの日々、苦悩の日々。そのうちの僅かでも休めるようにと優しく撫でていく。俺ができる僅かな動作、そんなものに揺れるほどの毎日を立花は送っているんだ。

 

………少しだけ。もう少しだけこのままでいよう。そして明日、立花が笑っていられるように、俺ができる何かを始めよう。

 

空っぽの胸に、ありったけの勇気を込めて。




響可愛い。ほんと可愛い。

YouTubeのシンフォギアようやく推しが見れてとても嬉しい。初期のツンツン調と切歌めちゃ好き。

FLIGHT FEATHERS好き。2番の全てが奏さんとの繋がりを感じてほんと泣けるの好き。好き。



以降蛇足。見なくていいよ。


実は感想に返信した次の0時に投稿をするのを心掛けていたので、感想をくれた人には大体次の投稿が分かるようにして自己満足に浸っていたのにそれを忘れてしまう失態を許せなかったので自己告発します。申し訳ないです。
これからもこの仕様を続けていくのでいつまでも返信がなければエタったなこいつと蔑んでください。前作もそんな感じで止まってます。

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