やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
いつだって、執筆に翳りなく。
(展開に)詰まるこの手には君(作者)を殺す(エタらせる)力がある。
人は周りの環境によって変化するという。良識的な人達に囲まれている人はその人も良い人格を築き、非常識な人達に囲まれているとその人も非常識に染まっていくのだとか。
だがその変化にも比率が存在するはずだ。親密な人間からはよりその人の人柄を見て、影響を受ける。逆にあまり親しくなくてもマイナス方向に強烈な人が身近にいると『この程度なら大丈夫』と少しずつ非常識に傾いてしまうこともあるだろう。つまり身近に誰もいないぼっちこそ真の個性、自分らしさを体現していると言っても過言ではないのではないだろうか。
いや違う。話がズレた。俺は小日向と立花のイザコザを修復するために頭を回していたはずなのに、気づけばぼっち最強論をいつものように証明していた自分が恐ろしい。
「……まあ何はともかく、小日向をどうにかしないとな」
結局あやすように立花が泣き止むのを待ち、一通りスッキリしたのか目や顔を赤くしながらもそそくさと立花が帰宅していった後。俺はとりあえず頭を可能な限り動かしながら考えていた。
しかし自分にできることをやろうと思ったは良いものの、やれることがあまりない。先程も述べたが人に影響を与える比率を上げるには、強いプラスかマイナスの親密度が必要になる。だが俺はぼっち、影響を与えないエコでクリーンな人間なので俺が右往左往して仲を改善させるのは難しい。仲を悪くするのなら幾らでも方法はあるのに。
……つまり何が言いたいのかというと、やはり小日向に影響を与えるのなら立花をおいて他にいないということだ。だが小日向は今立花を遠ざけようとしているのは立花の反応から分かった。
…大好きなくせにツンデレなんて発症しやがって。これが『くそっ…じれってーな。俺ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!』って気持ちなんだろうか。俺がいくと場が凍るのでやらないけど。
「……俺はやらない。だから立花にやってもらおうか」
まあ、許可が出たらだけど。時刻は朝の6時。少しばかり早いかもしれないが、善は急げ。寝てたらごめんなさい!
鞄に入っていた通信機を取り出し、スイッチを入れた。
「すみません、朝早くに。司令、ちょっとお願いがあるんですけど…」
☆☆☆
放課後
「……急に電話してきたと思ったら、何でこんなところにいるの?」
「色々所用があってな」
「…比企谷くん、リディアンは女子校だよ?」
「別に女子校だから来たわけじゃないから。その怪しい変質者を見る目やめろ。本部から出てきただけだから」
学校をズル休みして朝から仕込みやら司令への頼み込みやらを済ませ、俺は小日向を二課本部の入り口まで呼び出していた。
「……それで?不審者じゃない比企谷くんは何しに来たの?」
「……まあ、とりあえず乗ってくれ。あ、手すりちゃんと捕まれよ?」
飛び出る手すりを握り、小日向も握ったことを確認してからエレベーターを起動させる。突然下に急速降下を始め、不意をつかれた小日向の小さな悲鳴を耳にポケットの通信機を弄ぶ。
たった数ヶ月程度の付き合いだったこの通信機とも今日でお別れとなる。その許可も朝司令に貰っている。このエレベーターに乗るのもきっと今日で終わりになるだろう。
元々巻き込まれて二課の協力者やら立花の補佐やら、名前だけの立場を飾っていたがここにもっともっと、俺なんかより適任な人間が存在している。だからこそ、躊躇うことなく実行に移せる。
……俺がやろうとしている事は誰も望んではいない事かもしれない。巻き込みたくないという立花に、立花に戦って欲しくないと願っている小日向。その二人の意思を二つとも踏み躙って、俺は二人の仲を修復する。卑屈に陰湿に最低に、善意と好意を利用するのだ。
「こっちだ」
止まったエレベーターから降りて廊下を進んでいく。進む先はメディカルルームではない、小日向にとって未知のエリア。なので戸惑い気味についてくる小日向を尻目に足を進める。
「あら、来たわね」
「ええ。忙しい中すみません、友里さん」
「いいのよ別に。司令からも頼まれてるしね。そちらが小日向未来さん?」
「あ、はい。ここって…」
「特異災害対策機動部二課のモニタールーム。昔のデータや映像を観れる部屋だ」
壁に寄りかかり待っていてくれた友里さんに挨拶し、連れてきたモニタールームに入る。そこには巨大画面や大量の椅子が並べられ、作戦会議やら司令が休憩中に映画を見るのに使われている。たった三人で入るには少しばかり物々しい装いに小日向は終始戸惑っていた。
「……えと、何で私ここに連れてこられたの?」
「順に話す。…ところで昨日聴き損ねたけど、協力者の俺の話とかも聞いたか?」
「う、うん。一般人の協力者で、響のメンタルケアを頼まれてたって…」
「……まあ後者はろくにできてなかったがな。違う学校で異性、関係性や距離も近いわけじゃない俺には無理な話だった」
そう、小日向という親友がいるから俺は何もする必要が無いと思っていた。だけどあの日。立花に相談を受けた時に小日向であろうと、いや小日向だからこそ相談できない事があったのだと思い知った。つまり初めから間違っていたのだ。だから…
「だから、後は適任者に任せることにした」
「…………待って。もしかして比企谷くん」
「ああ」
……察してくれたようで何よりだ。
「小日向。これからはお前が二課の協力者、立花のメンタルケアをやれ」
ポケットから通信機を取り出し、小日向に差し出す。この特別性の通信機は二課に所属していた証であり、本部に顔を出せない俺の自覚を促すものでもあった。
…だがそれもここまでだ。立花と同じ学校でルームメイト、同性で親友である小日向の方が間違いなく立花の役に立つだろう。例えこの選択が立花の望んでいない、小日向を危険に巻き込むことになっても、だ。
「……無理、だよ。今の私に響のサポートなんて…」
「昨日はもし協力者だったら、って言ってただろ。そのチャンスが、今来ただけだ」
俯き胸を抑える小日向に冷たく声を掛ける。頭の中は自己嫌悪でいっぱいだ。だって誰も言わないであろうと思っていたセリフを、一日経たずに俺が言ってるんだ。『君の友達が人助けのために命懸けで戦ってるから応援してね!』と、
「でも…だって…。私言ったじゃない、響を応援できないって…。響がまた怪我をするかもしれない、死んじゃうかもしれないのに…」
「………それでも、立花は戦い続けるぞ?」
「……」
「だって、それが一番『立花らしい』ことだからな」
「………っ!」
敵とも分かり合いたいと立花は言った。シンフォギアを纏う前から少女を救う為に走り続けた立花がいた。ネジの外れたように人助けをする立花が、例え小日向に頼まれたからと人助けを辞めるだろうか。
……それは、ないだろう。頑張り過ぎるほど自分らしく、らしくあることが強さだと体現するような行動力は、きっと止められるものじゃない。もし小日向と和解できなくともきっと立花は惑い迷い苦しみながら、ノイズに向けて拳を振るう。そして敵である人間にも拳を振るいながら、手を差し伸べていくのだろう。
「………小日向。お前は、立花の親友だろ?」
戦い続ける立花のために……
「立花の頑張りから、お前が目を背けるなよ」
その度に頑張り過ぎてしまうあの馬鹿のために、俺は小日向に呪いをかけていく。
これは慰めなんかじゃない。前に進めない小日向の背を押すものでもありはしない。ただ逃げられないように、例え自分の恐怖を偽ってでも立花の親友で居続けろと、小日向の良心に付け込んでいるに過ぎない。
親友は戦っているのに、お前は何もしないのかと。親友を助ける方法が目の前にあるのに、お前は手を伸ばさないのかと。親友は頑張り続けているのに、お前は頑張ることすらしないのかと。
………これが、呪いではなくてなんだと言うのだ。
「…………響」
胸の前に重ねていた手が、僅かに動く。それはゆっくりと俺の手に握られている通信機に向けて、親友を助ける為の力を得る為に伸びてくる。
俺の方から握らせるようなことはしない。強制しては小日向に逃げ道を与えてしまう。それに小日向がこれを拒絶した場合には、また新しい方法を考えなくてはいけない。
……こんな時でも善意になり得ない打算で動いてしまう自分は、きっとノイズに蹴られて地獄行きだろう。閻魔様に土下座する準備は出来ている。まあそれでも、地獄の底に連れて行かれるのは確定だ。
「………後は任せた」
「比企谷…くん」
「このモニタールームには今までの映像、立花のこれまでの映像が全部揃ってる。ここに来てからの立花のほぼ全部だ。許可取ってあるから好きに見てくれ」
「………」
「友里さん。小日向のことお願いします」
手にある通信機を強く握りしめる小日向から目を逸らし、俺は踵を返した。権利を渡し罪状を受け取ったなら、もうここは俺が居ていい場所じゃない。二課の協力者じゃなくなり、女子校の敷居内にいる理由はなくなった。
「………悪いな」
「……………え?」
溢れ出た何かから逃げるように、モニタールームを後にする。
友里さんには小日向に立花の映像記録を見せてもらえるよう頼んである。立花の頑張りの軌跡を、言葉ではなく映像で見せることで小日向のやる気を上げてもらえるようにと。映像の編集は藤尭さんが半日かからずでやってくれたし、朝の6時に電話した司令も文句ひとつ言わずに協力してくれた。それどころか俺に協力者として残っても問題ないとまで言ってくれた。
……だが、俺は何も返せずにここを去る。無責任に仕事を押し付け、我儘で大人の仕事を増やした人間が、これ以上貰うなんて許されるわけがない。
何かを返せるほど大人ではなく、何かを成せるほどの力もない。押し付け、縋り、寄生していく俺に出来ることは、ただ全てが上手くいくよう願うことだけ。
「………」
男は黙って背中で語る。くたびれ、色褪せ、情けない背中を世話になった二課本部へ見せながら、俺は出口へと歩き出した。
三期のマリアさんの「だから目を背けるな!」は格好良かったのに、なーんでこんなにイメージが変わるのか…。
死灯・エイヴィヒカイト好き。
初見友達の家で見てて「(響の)枕硬そう」って言ったら怒られた思い出の歌。パヴァリア組いいよね…。
あ、暫くエタる予定はないです。