やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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XV今夜放送開始ぃ!書かないわけにいかないだろう!楽しみだ!

感想評価に多大な感謝を。一、二発低評価爆撃されてもオレンジ維持できるようになりました。赤は諦めてるのでオレンジ維持できるよう頑張ります。


やはり俺のーーはまちがっていない。

暗い、暗い、いつかの何処か。真っ暗な世界で地べたに俺は座り込んでいた。

 

小日向の背を見つめ、立花の背を見届けた。その終わりに辿り着いたのは独りぼっちの路地裏。焼けるのど、冷たい地面、荒れる息だけが今の俺の存在を教えてくれていた。

 

 

「………どこだここ」

 

 

ふと、目が開いた。暗かったのは目を閉じていたからで、飛び込んできた光景は薄暗い壁一色。本当に自分が今何処にいるのか分からないくらいだ。

 

 

「………ようやく起きたか」

「…………風鳴司令」

 

 

あたりの情報を仕入れていれば、自然とその大きな身体が目に入った。壁にもたれて立っている風鳴司令を見るに、どうやら俺が起きるのを待っていたようだ。

 

 

「…とりあえず、よく頑張ったな。君のおかげで一人の少女は救われた」

「…………はっ。救ったのは立花ですよ。俺は、何もしてないです。…何もできてないですよ」

 

 

よくよく考えれば町中の監視カメラの映像を得ている二課の存在があるんだ。今回のように俺が小日向を追いかけて場所を叫ぶよりも二課に状況を報告し、立花を小日向の元へ誘導してもらった方が効率が良かった。

 

つまり、俺は余計な事をしてしまったわけだ。

 

 

「…………失敗しました。小日向の通信機には気づいてたから、大体の位置を伝えて二課に監視カメラで小日向を追ってもらうべきだった。俺より小日向の方が足が速いから最悪見失ってた可能性もあります。無い体力振り絞るよりも無い頭を少しでも働かせるべきだった」

 

 

全てが終わって振り返れば何もかも失敗している。ただの結果論に甘んじて、後悔なんて余裕をこいていられる。何かができると自惚れていた。

 

 

「………失敗しました。小日向に頼られたから小日向を助けないといけないと思った。でもあの場面なら俺は小日向に失望されたとしてもおばさんを請け負うべきでした。ノイズが他にもいるリスクがあっても既に捕捉できてるノイズの元に立花を向かわせるべきだった」

 

 

あの時は近くでノイズ騒動があった。だから立花に動けないおばさんを任せることを迷わなかったと思っていた。だけどその考えは今だから浮かんでいる事だ。あの時は『小日向を助ける』以外考えていた記憶がない。だから小日向を立花に任せ、おばさんを俺が診ているという選択肢を消し去っていた。

 

…そっちの方が小日向の助かる可能性が高いのに。

 

 

「…失敗しました」

 

 

譫言(うわごと)のように口からその言葉が吐き出る。仰天しながら目を覆い隠してしまう。薄暗い明りの逆光で風鳴司令の顔も見えやしない。でも今俺が暴れないでいられるのは誰かがそばにいてくれるおかげだ。誰かがいるだけで理性がまだ俺を抑えてくれる。

 

 

「…………失敗、か」

 

 

静かに瞑目していた風鳴司令が小さく呟いた。チラとそちらを見れば突き刺さるような真剣な目が俺を射抜いている。その目があまりに真っ直ぐで、逃げるように目を背ける。

 

それと同時にザッザッと近づいてくる足音。それは逃げる事を許さないように耳に飛び込んでくる。だけど立ち上がる気には到底なれない。ただ、項垂れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失敗なんてしちゃいない。君は頑張った」

 

 

 

ガシッと頭を掴まれるような感触。そして、そのゴツゴツとした形が嘘のように優しく撫でられた。巨大な異物感、なのに不思議と心地いいそれは不快感を蹴り飛ばすように柔らかく動いていた。

 

 

「な、にを…?」

「君は未来くんを助けるために、走り、叫び、全力を出した。だったらそれは正しい!」

「…だけど実際、もっと効率の良い方法が…」

「……いいか八幡くん。

 

 

 

 

 

…誰かを助けたい。その気持ちに、失敗なんてものはないんだ…」

 

 

………力強い風鳴司令の言葉が、聞いたことがないほどに優しい。気がつけば顔が上がっていた。あげた先には司令の顔、射抜くような視線はなく、迷子を見つけたような表情で見つめられていた。

 

 

「………君は未来くんを救おうとした。身体が頭より先に動くくらい必死にだ。そして身体が動いた後でも未来くんを救うための方法を考えていた」

「…………」

「……無論、完璧ではなかったんだろうよ。思い返せばもっと良い方法が見つかる。あの時こうしてればが、その時なんで浮かんでこなかったか不思議なくらい湧き出るもんだ」

「………」

「だが忘れちゃいけない。君は救おうとした。助けようとした。そこだけは、否定しちゃあいけないんだ」

「…………よく、分かんないです」

 

 

………実感のこもった言葉だ。それは多くの人達を救ってきた人間だからこそなのだろう。だけど、だからこそわからない。今まで誰かを助けたことなんてなかったから。誰かを救いたいと思った事も無かったから。

 

 

「………よく分かんないんですよ。なんで小日向をあんなに助けたいと思ったのか。自分でも…」

「…君は、君と小日向くんはどういう関係だと思う?」

「…………知り合い?」

「はっはっは!それであれだけ必死になれるなら大したもんだ。いや、響くんの時もそうだったから強ち間違いでもないかもしれんな!」

「…いつの話っすか。あと痛いです」

 

 

どこがツボになったのか、バシバシと肩を叩かれる。恐らく言われているのは初めて立花がシンフォギアを纏った夜の事だろう。思い返せばあの時もただ背中を追って走っただけだったか。

 

 

「…………友達、とは思わないか?」

「友達いたことないんで…」

「そうか…。それなら分からないかもな」

「ええ。いっそ何処からが友達なのか定義してくれればいいのに」

「………ああ、まったくだ。関係を言葉にできるのに、その関係を定義できない。複雑なもんさ」

 

 

…少し、意外だった。快活で明るい、社交的な司令が関係についてぼやくのを想像できなかったせいだろうか。

 

 

「……俺がこんなこと言うのは意外か?」

「…ええ、まあ。司令ならみんな仲間、みたいに言うのかと」

「おう、言うとも。二課の奴らはみんな仲間だ」

「………相手がそう思ってなくても、ですか?」

「…………。…ああ、例え相手にとって俺たちが敵でしかなかったとしても、それでも大切な仲間だ」

 

 

…………やはり、違和感がある。まるで誰かがそう思っていると確信してるような言い草。そうでもなければ『敵』なんて言葉を使わないだろう。

 

…そもそもだ。敵だと思われている相手を仲間と憚らなく口にする。それは想像するだけで苦しくなる。

 

 

「………それってキツくないですか?」

「…ああ、キツいな。だとしても、そいつになら裏切られてもいいと思うくらい、大切に思っている。その結果、自分が傷つくなんてのは分かりきってるのになぁ」

「……裏切られても、いいくらい?」

「…………。…君はどうだ、八幡くん?裏切られてもいい、傷つけられてもいい、それでも一緒に居たいと思う人はいないか?」

「…………一緒に居たい人、ですか」

 

 

 

……。

 

 

 

『……それでも、一緒にいたい。私だって戦いたいんだ』

 

 

 

………最初に、小日向が浮かんだ。

 

 

 

『……ごめん。もうちょっとだけ、ここに居ていいかな?』

 

 

 

………次に、立花が浮かんだ。

 

 

 

…裏切らないと確信している人ではない。傷つけないと確信している人ではない。

 

 

 

裏切られてもいい人。傷つけられてもいい人。

 

 

 

 

 

…………それでも、一緒に居たい人。

 

 

 

 

「……いないなら、それでもいい。もしいたり、これから現れるようなら、生まれたままの感情を隠さないことだ。例え、相手を傷つけることになってもな」

「………その相手を傷つけない、ってことは、無理なんですかね?」

「…悲しいことにな。人間は存在するだけで誰かを傷つけるもんだ。厄介なことに、生きていても、死んでいてもな。関われば傷つけるし、関わらなければそれはそれで傷つく人間もいる」

「…それ、どうしようもないじゃないですか」

「……人間の厄介なところさ。その癖、どうでもいい相手には傷つけた事すら気づかない。だからイジメや差別が平然と起きちまう」

 

 

…ああ、たしかに。虐める側は基本自分達で完結している。靴を隠せばそこで終わり。机に落書きをすればそこで終わり。ただ行為が終わればそこまで。

 

…だからあいつらは知らない。隠された靴を探す独りの時間を。放課後誰もいない教室で必死に机を擦る夕日の寂しさを。

 

……だって、どうでもいい相手だから。目にも気にも止めないのだ。

 

 

…………なら逆に、大切な相手なら、どうだろう。

 

 

 

「…なら逆に、大切な相手なら過剰に傷つけたように感じません?」

「……ああ、感じる。相手を見て、相手を知った時、相手が傷つくことも分かる。だから自覚が必要なんだ。誰かを大切にするということは、誰かを傷つける覚悟をするということだとな」

「…………」

「だからって悲観ばかりすることはない!傷つけ傷ついて磨いた絆なら、どんな物より煌めくさ!」

「…………そんなもんですかね」

「さあな。その答えは、自分で見てみるといい」

「見てみるって…?」

 

 

キッと、小さなブレーキ音が鳴った。黒塗りの車は幾分見慣れた二課の車で。司令を迎えに来たのだろうか、なんて感想は扉が開かれた瞬間消え去った。

 

 

「……立花に、小日向」

 

 

車から降りた二人は……なんていうか、グシャグシャだった。髪はボサボサだし土で汚したのか顔はちょっと黒っぽい。泣きじゃくった後なのか、目元も荒れている。

 

 

…………だけど、ああ、生きてる。二人とも、地に足つけてしっかり生きている。

 

 

「…………よかった」

 

 

自然と、口から溢れた。生きててよかった、助かってよかった。ただ、安心した。だけど、それでも謝りたかった。もう少し、負担を減らせたかもしれなかったのに。もう少し、早く助けられたかもしれないのに。

 

 

「…………小日向。悪かっ……っ!?」

 

 

それなのに、そんな言葉すら遮られる。二つの影が、真っ直ぐに俺の懐は突っ込んで来たからだ。

 

 

「八幡くんっ!」「比企谷くんっ!」

 

 

 

 

 

声と共に、抱きしめられた。

 

 

 

 

 

立花と小日向、二人の体温が伝わってくる。

 

……温かい。ああ、本当に生きている。ノイズに襲われた時は死ぬかと思った。走り出した小日向を見送った時は死んでしまうかと思った。だけど今、こうして二人とも元気に生きている。

 

…羞恥心が湧き出るけれど、ほんの少しだけ胸の二人を抱き寄せる。独りが、二人と合わさり三人へ。それが無性に心地よく、何かが溢れるように満たしていく。

 

…この湧き上がる感情がなんなのかは分からない。だけど間違いなく俺は思った。

 

 

 

 

『この二人と一緒にいたい』。

 

 

 

 

この気持ちだけは、『本物』だと信じたいから。

 

 

 

…やはり俺のーー(友達)は、きっと間違っていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんにせよ、無事で良かった」

「八幡くんも無事で良かった!通信機から急に声が聞こえてびっくりしちゃったよ」

「私を追いかけて響に知らせてくれたんでしょ?友里さん達が比企谷くんがあんな大声出せるなんて、って驚いてたよ?」

「そ、そこら辺はノーコメントで…」

「凄かったんだよ!通信機から聞いたことないの声量でね!」

「立花、待て、ステイ。それ以上掘り返すのは辞めろ…」

「えー、私聞きたいなぁ」

「勘弁してください未来様…」

「…………ふふ。今度しっかり聞かせてね。

 

……ね、八幡♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー☆

 

 

 

 

「あら〜、青春って感じねえ」

「ああ。なんとも微笑ましいな、了子くん」

「んふふ。せっかくだしね、記念に一枚、撮っときましょうか」

 

 

 

 

 

 

パシャッ

 

 

 

 

 

 

 

「…………いい笑顔ね」

 

「ああ。……三人とも、な」




蛇足・飛ばしてどうぞ






メモリア獲得『独り、二人、そして3人』
響&未来とのメモリアル

[PS]心属性のHPを5%上昇

《一緒にいたい。その気持ちを自覚した八幡。そのための一歩を、独りではなく三人で踏み出した》





個人的に絶対踏破したい八幡とシンフォギアメンバーのメモリアル。その一つです。とりあえずメンバー全員とのメモリア獲得を目指して書いて生きます。メモリア決まってないメンバーもいるけど…。


響&未来『独り、二人、そして3人』Get!
クリス『温もりについた嘘』
翼『???』
マリア『二人で歌う独奏曲』
切歌『ダイレクト・レター』
調『???』


………壁コンビィ!
……まあそのうち思いつくでしょう。調は後一歩。翼さんは全然。
後悔としては学生時代に絵の練習をしていなかったことか…。頭のイメージをアウトプットできないのは苦しい。

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