やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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愛の重い未来さん好き


やはり小日向未来は立花響の親友である。

in学校

 

 

「……さて比企谷。遅刻した言い訳を聞こうか」

「…木に登った猫が降りられなくなってて…」

「それを助けていたと?」

「助けてた女の子に絡まれてたら遅れました」

「ギルティだ」

 

 

ポコンと教科書で叩かれる。正直全然痛くないのだが、この教師から感じる憎悪だけはゾクゾクする。いやほんと怖い。遅刻のことはそんな怒ってなさそうと判断していたが早計だったか?

 

 

「ちっ。入学初日から女子とイチャイチャ自慢とは。まったく最近の若いもんは…羨ましい」

 

 

あ、違った。怒りとかじゃなくてこれジェラシー的なアレだ。黒髪ロングに中々のおもちをお持ちの美人教師だが、きっとこの教師は独身だったり独神だったりするのだろう。すげぇシンパシー。主に結婚出来なさそうという意味で。

 

 

「まあ一度目だ。今回は見逃すが次回からはせめて連絡くらいしろ。担任の先生も心配してただろう?」

「ええ、まあ。在校生はともかく新入生の遅刻は前代未聞だそうで」

「そういうことだ。まあ同じ説教を二度も三度もというのもアレだ。ほら、HRに必要な書類だ。入学式前に配られていた分のあまりだから一通り揃っているだろう」

「うっす」

 

 

書類の束を受け取り、大して長くもなかった説教の場である職員室から出て行く。教室までの道のり、というか校内地図も書類に存在しており、教室までの道のりをゆっくりと歩く。

 

「………」

 

そして目的地、開け放たれていた1-Fの教室の扉を静かにくぐり座席の確認をしてその席に着く。

中心よりやや後方の席は待ち人来ずと言いたげに広々とその空間を主張している。ハローハニーと椅子に腰を落ち着けて辺りを見れば、入学ぼっちを避けんがため周辺にいる異性同性かまわず話しかけて回るクラスメイトたち。

…この光景は中学と変わらないんだな。

一通り眺め終わった俺はイヤホンと本を取り出し、入学ぼっちの確定演出をかますのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「新入生のいいところって入学式の半ドンだよなぁ…」

 

 

まあ半ドンといっても昼ごはんも挟んだので間もなくおやつの時間に差し掛かるところではあるのだが、これから授業やら何やらが始まればこんな早く帰れることはあるまい。

 

 

「この数少ない暇な時間を噛み締めて、精一杯だらけなければ」

 

 

リビングにあるソファに倒れ込み、座布団の1つを丸々占有しながら眠りこけている我が家の愛猫カマクラをサワサワする。起きている時は中々寄ってこない気まぐれちゃんだが、寝ている時はまあまあ触らしてくれる。勝手に触っているともいうが。

 

 

「……よしよし、愛い奴よのぅ」

「……ぶにゃぁ」

 

 

テシッと尻尾で手を弾かれてしまった。

まだ眠りが浅かったのか、不機嫌にふんすと鼻を鳴らして再び夢の中へと飛び込んで行く。きっと眠ろうとしてる時に小町に突撃!隣のお兄ちゃんと叩き起こされた時の俺と同じ気持ちなのだろう。

 

 

「……俺も寝るか」

 

 

時間の有効活用。読書にゲームにお昼寝などなど。やることが沢山あるったらありゃしない。勉強は……まあ、そのうちやるさ。数学以外。

きっと明日から大変な日々が待っている。「では出席番号順に自己紹介してー」「では隣の人とペアになってー」「ではウェーイwww」なんて嫌なイベントばかりだ。特に一番最初の自己紹介。

鬱だ…寝よう。

 

 

prrrrr!!

 

「留守です」

 

pi!

 

 

ふう、危ない危ない。携帯電話が急にかかってきたから咄嗟に通話終了してしまった。あまりに流れるような切断だったので、これは相手に居留守(?)がバレた可能性が高い。

てか相手誰だ?

 

 

履歴:比企谷小町

 

 

…あかん奴や。

 

 

prrrrr!!

 

pi!

 

「る、留守です?」

「は?何言ってんのお兄ちゃん。さっきも電話切ったでしょ、怒るよ?」

「や、まじすみません」

 

 

妹様が激おこぷんぷん丸である。やはり直接電話を切ったのがよくなかった。留守電サービスまで粘った後「ごっめーん!寝てたー!」といい感じの言い訳をかますべきだったな。八幡反省!

 

 

「…で、なんだよ」

「ああそうそう。今日ってお母さんもお父さんも帰ってくるの遅いんだって。だから折角の入学式だし外食でもどうかなーって」

「ああ別にいいけど。どこで食う?」

「サイゼ!」

「オーケー、30秒で支度する」

 

 

外食といえばサイゼ、学生の味方である俺オススメの店を選ぶとはさすが小町わかってる。貴重なフリータイムを外出のためになんぞ使いたくはなかったが、可愛い妹の頼み+サイゼなんてされたらもう我慢するしかないじゃないか。全力でチャリで走るぜひゃっほう!

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

inサイゼ○ヤ

 

 

 

 

「………小町ちゃんや、相席なんて聞いてないんだけど」

「相席じゃなくて私が呼んだの!朝は忙しくってゆっくり話せなかったからね!」

 

 

数少ない癒しの地。意気揚々(いきようよう)にHeyYoYoと我らがサイゼにたどり着き、妹のアホ毛を見逃すことなくその先に近づいて行く俺の目に映り込んだのは二人の女子生徒。

一人は見たこともない黒髪女子にもう一人はなんか今日会ったばかりな気がする木登り系女子によく似ている。いや気のせいだよね?いくらなんでも今日会ったばかりの人とその日の内にご飯食べるとかそんな…。

 

 

「八幡くんお疲れ様ー!入学式どうだった?私こっぴどく怒られたよー!」

「こんにちは。初めまして、小日向未来です。朝は響が迷惑かけちゃったみたいで…」

 

 

朝と変わらず素面(しらふ)でウェーイ系のテンションを保てる立花と酒癖の悪い旦那さんを持つ嫁さんみたいな女の子が普通に挨拶してきた。なんだろう、なんというか普通に可愛い系の子だ。立花のように会って一日の相手…ですらなく、会ってすらいない相手に会いに来る子には見えない。恐らく立花に無理矢理連れてこられたのだろう。

…ご愁傷様です。ここは(ねぎら)いのひとつでも…

 

 

「…ええっと、うす」

「ごみぃーちゃーん…」

 

 

そんな哀れみの視線で蔑まないでほしい。俺は精一杯やったんですよ!でも仕方ないじゃないですかぁ!知らない人+殆ど知らない人相手になんて話したらいいかなんて分からないんですよ!

 

 

「はぁ。改めまして、兄の比企谷八幡です。ぼっちで捻くれてて色々不良品ですが仲良くしてやってください…」

「否定できない…」

「否定しないんだ…。でもほら!八幡くんも今日入学式で新しいクラスメイトもできたわけだし!一人くらい仲良くなれそうな人がいたんじゃ…!」

「いや俺今日学校で教師以外の人と喋ってないし…」

「……あ〜、いやうん!八幡くん、私たちと友達になろうよ!」

「俺はいいんで妹と仲良くしてやってくれ」

「サラっと断られた!?」

 

 

コミュ力パワーに押しつぶされる前にスタコラサッサだぜ。コミュニケーションを拒否することに関してぼっちの右に出るものはいないと心得よ!私は拒絶する!

 

 

「というか、私と響さんはもう仲良いよ?」

「うんうん、今日集まったのも小町ちゃんと話してたら意気投合しちゃったからだし」

「私は遅刻したけど友達ができたって、放課後急に連れ出されてビックリしちゃったけどね」

「ごめんね〜未来〜。でも付いてきてくれてありがとう!親友の紹介をせずに私は語れないからね!」

「人助けが趣味の変わった子、で響の紹介は十分なんじゃない?」

「それはひどいよ未来ぅ…」

「それじゃあ明るくてまっすぐ、とか?そういう点じゃあ小町ちゃんと響って少し似てるかもね」

「これが類は友を呼ぶというやつですかね!風鳴翼が好きなところとか特に!」

「ねー!もしかしたら一晩中語れちゃうかも!」

 

 

女が三人寄れば(かしま)しい。そしてとても(やかま)しい。だけどギャハハという感じがないせいか不思議と不快ではない。この場の不快指数を上げている俺がいなくなればここは小さな楽園になれるかもしれない。百合の千本桜が咲き乱れる可能性が微レ存。

 

 

「ふふ、比企谷くんはあまり小町ちゃんと似てないんだね」

 

 

キャイキャイと人気アーティストの話題で盛り上がりまくる二人を尻目に今度は俺の方に話を振ってきた。ニコニコしながら相槌を打ち、親友を弄りつつも初対面の相手との交流を恙無(つつがな)く行なっている。

ははーん、さてはこいつもコミュ力お化けだな?喋りまくる奴はコミュ力お化けだー!あまり喋らない奴は訓練されたコミュ力お化けだー!

……まあコミュニケーションを拒否するのは簡単だが、妹の話題だしな。千葉の兄妹としてここは少し乗っておかねば。

 

 

「まあ自慢の妹だからな。どこに出しても恥ずかしくない。どこにも出さないけど」

「あはは、比企谷くんて小町ちゃんが大好きなんだね」

「……シスコンとかじゃなくてそういう言い方されるとなんかあれだな。というかそっちこそ立花のこと好き過ぎだろ。普通誘われたからって知らない人との食事とか嫌だろ?」

「そう?響が仲良くなりたいって思える人となら別に構わないけど…。実際、小町ちゃんも比企谷くんもいい人じゃない」

 

 

で、でたー!リア充的(都合の)いい人!初対面でも知り合いでも使える万能ワードですよ奥さん!基本「比企谷?誰?」って扱いされてる人間からするといい人でもまあまあな高評価なのが悲しい。

 

 

「……初対面の相手にいい人も悪い人もないだろ」

「そんなことないよ。響から聞いたよ?小町ちゃんは響のこと心配して遅刻しそうなのに一緒にいてくれて、比企谷くんは響が落っこちちゃった時に助けてくれたって」

「…いやあれは流れで…。それに一回いい事したからって善人ってわけでも…」

「そうかな?私はそうは思わないな」

 

 

元から浮かべていた笑顔をさらに深め、小日向はこちらを真っ直ぐに見つめる。見透かされるようで、見抜かれているようで…。それでも…。

 

 

「友達とか、家族とか。好きな人を助けるんじゃなくて、知らない人を自分から助けられる人がいい人じゃないわけないよ」

 

 

…本音を、ぶつけられている。

………なんだよ。やっぱりコミュ力お化けじゃないか。隠さないで、その上で真っ直ぐ会話を繋げられる。変に心地いい空間を作られてしまい、どうもまあ、力が抜ける。

 

 

「………って、私は思うな」

「…そーですか」

「うん!」

 

 

眩しいくらいの笑顔を向けられ、どこか諦めの感情を抱きつつ視線を逸らす。こうも慣れないことが連続で起きるとどうにも喉が渇いて仕方がない。よく考えたら席について何も注文してなかったな。

 

 

「………なんか頼んでいいか?」

「もちろん。

あ、でもその前に…」

 

 

スッと懐から携帯端末を取り出す。

 

 

「番号、交換しよ?」

「………仰せのままに」

「え、あ、私がやるんだ…」

 

 

………ああ、ほんと困った。

小日向には勝てる気がしない。なら今は流されよう。携帯を直接手渡され戸惑っている小日向を見られたし、多少はやり返しただろう。小さい男と笑いたければ笑えばいい。きっとその扱われ方が、分相応ってやつだ。

 

 

「……あっ!未来ずるい!八幡くん、私とも交換しよー!」

「まーたこの兄は…。でも新しい嫁候補がぐふふ…」

 

 

ぶ、分相応なのだ。




一期は登場キャラ少ないからバンバン出さないと。

歪鏡・シェンショウジン好き

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