やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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赤評価に遅れたけどお気に入り1000超えで震えてる。赤評価でまた低評価爆撃が怖くなるから人間って不思議だわ。

ビッキーのCDは買えないのでitunesで買いましたがいい曲だぁ。惚れる。泣ける。泣いた。


やはり比企谷小町は重ねる。

sideクリス

 

 

 

涼しい、夜だった。朝から雨が降っていた事もあるのだろう。それでも夜は晴れ晴れと月明かりが降り注ぐ夜。そんな中をあたしは一人で歩いていた。

 

ツンと、背中の傷が疼く。ここ数日フィーネに差し向けられているだろうノイズとの連戦で身体中に傷跡ができた。手元にも振れば消える程度の金しか残っていないし、現に昼間に食べた物は全て消化されて身体は空腹を訴えている。

 

………だけど大丈夫。戦うことは慣れている。痛い事も慣れている。お腹が空くのも、一人でいるのも。……そして、誰かに繋がれた手を、振り払われるのも慣れている。

 

………慣れているのに、どうしたらいいのか分からない。何故、フィーネは私を捨てたのだろう。使えない、役立たずだから?なら何故フィーネは私を拾ったのだろう。まだ使えそうだと、役に立つかもと思われていたから?

 

……何故、捨てられたのだろう。痛みだけが真に人を繋ぐと教えてくれたのに、痛みを与えてくれたフィーネは私を容易く捨てた。真に繋げてくれたはずなのに、その繋がりは縋る間も無く切り捨てられた。

 

 

「……ああ、苦い」

 

 

心が苦い。やめてくれ。痛いのはいい。飢えるのはいい。苦しいのはいい。だけど、苦いのは、慣れてないんだ。知らないものは怖い。分からないものは怖い。

 

 

「……ああ、苦い」

 

 

立ち尽くして、苦みを噛み締めて、あたしは何をすればいいのだろう。

 

ずっと手を引かれてきた。歌で平和を作ると息巻いた両親に手を引かれて、何も聞いてくれない大人に手を引きずられ、フィーネの目的の為に手を握られた。

 

…ずっと、誰かに手を引かれてきた。手の繋がれ方だけで今の今まで生きてきたから、繋がれていない手は嫌に不安になる。

………だから…

 

 

「……なぁ、雪音。うち、来るか?」

 

 

今まで何度も差し出された優しい手を、あたしは知らないうちに掴んでいた。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

in比企谷家

 

 

 

「ここだ」

「……」

 

 

二階建ての一軒家。フィーネの屋敷に比べればとても小さい家。そこにあたしは連れてこられていた。帰る場所はない。行くあてもない。食べ物も、寝る場所もないあたしを、比企谷は不憫に思ったのだろうか。

 

……どうでもいいか。ただ前を行くその背中について行く。それがどうしようもなく、安心できたから。

 

 

「………た、ただいま」

「ん〜、おかえ………り」

 

 

家に入り、最初に出迎えてくれたのはダボっとしたサイズの合っていないTシャツを着た女の子だった。ピョンと跳ねたアホ毛が比企谷の妹なのだろうと推測できた。……まあ、正直それ以外は全く似てなかったけど。

 

 

「おおおおお兄ちゃん!?どうしたのその子!どこで拾ってきたの!?誘拐!?自首すれば罪は軽くなるよ!?」

「…誘拐じゃねえよ」

 

 

慌ただしく、疑わしく、此方を遠慮なく見回される。常識的な反応だ。考えなしについて来たが、家族に異物が混入するのを拒絶する人間など溢れている。その時は、大人しく消えるつもりだった。

 

 

「……えっと…」

「帰る場所がないんだ、こいつ。面倒見るから少しだけ置いてやれないか?」

「…あたしは猫かよ」

「………。…お兄ちゃん、何か変なことに首突っ込んでない?最近変だし、心配だよ」

 

 

妹の視線を遮るようにフォローする比企谷とその姿に違和感を抱く妹。そんな僅かなやり取りだけでも何かを察することができる二人。

 

……家族、なんだな。

 

それを見ただけで。少しだけ、苦みが消えた気がした。

 

 

「……分かった。だけどお母さん達への説明はちゃんとしなよ?」

「ああ。っても今日も遅いらしいけど」

「……なぁ。迷惑なら別に無理しなくても…」

「あ、ごめんなさい!お客さんをずっと玄関に立たせっぱなしで!とにかく中にどうぞ!お茶いれます!」

「え、あ、いや。…別にいい。無理しなくても…あたしは…」

 

 

突然ぐいと接近し、腕まで掴まれた。眩しいくらいの笑顔が、笑顔を作れる居場所が、目の前にある。その空間に入り込むことに、今更躊躇いを覚えている。

 

だが、それを気にしないような顔で、掴む手の力がつよくなった。

 

 

「……。私比企谷小町っていいます!お姉さんの名前を教えてください!」

 

 

そんな一瞬を見透かされるように微笑まれ、また一つ、距離を詰められる。ぎゅっと握られた手が温かい。見つめられる目が真っ直ぐで、堪らず目を逸らした。

 

 

「……クリス。…雪音、クリスだ…」

「クリスさん!遠慮しないで上がってください!私、クリスさんとお話ししたいです!」

 

 

 

きゅ〜〜

 

 

 

カァァッと頬が赤くなる。腹の虫が空気も読まずに鳴き声を上げれば、こんな狭い空間にいる二人の耳に届かないわけがない。逃げ出したくなるのに腕は比企谷の妹に掴まれているから逃げられない。

 

 

「……そうですね、先にご飯を一緒に食べましょう!そしたら一緒にお風呂に入って一緒に寝ましょう!両親への説明は明日兄と一緒にしますから」

「…だ、だけど…」

 

 

迷惑じゃないか?迷惑に決まってる。突然来て飯や寝床を業突く張る輩の相手をさせていいのか。後ずさる足を止められない。

 

……いっそ、強引にでも振り切って逃げてしまおうか。

 

 

「……雪音、取り敢えず飯だけでも食ってけ。その後は、またその時考えればいい」

 

 

ポンと、頭を撫でられる。

 

………ああ、ズルい。だって、こんなに温かい。

 

痛いのはいい。飢えるのはいい。苦しいのもいい。だけど苦いのは、慣れてないんだ。

 

……ああ、甘い。苦みが、消えていく。温もりが増えていく。笑顔がある。触れてくれる誰かがいる。手を引いてくれる誰かがいる。足が後ろに動かない。縫い付けられるように、足が止まってしまった。

 

 

「………おじゃま、します」

 

 

………少しだけ。もう、少しだけ。

 

………ほんの少しだけ、ここに居ることを、許してもいいのだろうか。

 

 

 

 

 

 

side小町

 

 

「……お腹いっぱいになりました?」

「……ああ、ありがとう。その、ご馳走さま」

「んふふ♪お粗末様でーす!じゃあこのままお風呂に入りましょうか!」

「えっ!?いや、いい!というか入るとしても一人で入る!」

「ダメでーす!一緒に入ってくれるまでこの手を離しません!寝床もトイレもこのままですよ、いいんですか?」

「トイレは辞めろ!分かったから!」

「やた!着替えは兄のを使ってください。母の部屋漁るわけにもいかないので適当なの見繕ってきてありますから」

 

 

二人分だった夕食を一人分増やしてクリスさんに振る舞った。ボトボトと食べ物を落としながら食べてる姿は超美少女の外見からは想像できなくてビックリしちゃったけど、それはそれで可愛らしい。

 

………正直、絶対何かあると思っている。お兄ちゃんがあんな可愛い人を家に連れてくるなんて天地がひっくり返ってもあり得ない。だからそれ相応の理由がクリスさんにはあるはずだ。

 

…だけど別にクリスさんが嫌いなわけじゃない。むしろ、目の逸らし方とか近づいた時の反応とか、どこかお兄ちゃんに似ていて温かい気持ちになりもする。…だから事情さえ分かれば協力したいんだけど…。

 

 

「……っ!」

 

 

……脱衣所で服を脱いだクリスさんの身体を見て、言葉を失った。青アザ、切り傷。無数にあるそれが隠された服の中から顔を出した。痛々しいその傷跡を隠すこともせず、クリスさんは小さく笑った。

 

 

「……出てって欲しくなったらいつでも言ってくれ。ここはお前達の家だから、すぐにでも消える」

 

 

誰かに似ている、自嘲するような笑い。誰かに似ている、諦めきった笑顔。誰に何を言われても仕方ないといった顔つきが、目に焼き付いた。

 

…この笑顔を知っている。この誤魔化し方を知っている。昔、歌が聞こえないことを信じてもらえずに遅くに帰ってきた兄の顔だ。昔、女子に告白してそれが広められ、みんなの笑い者にされていた兄の顔だ。

 

傷つくことを受け入れた目。傷つけられることを納得した目。

 

 

「……一緒に寝るんですから、今日は絶対返しませんよ!」

 

 

空元気とバレているだろうが、それでも顔に笑顔を作る。裸になったクリスさんの手を握る。少しだけ強く握りしめる。ビクッとして一回手を離そうとするクリスさん。それを拒めば、諦めたように力を抜いた。

 

…知ってる。この反応を知っている。反射のように誰かから距離を置こうとする動きも、私の知ってる誰かさんと同じだ。

 

 

「……流石に風呂場では離してくれよ?」

「うーん。あ、身体洗いっこします?」

「しねえよ!」

 

 

カラカラと笑いながら仕方なく手を離して身体を簡単に洗う。先に湯船に浸かってもらっていたクリスさんと入れ替わるように湯船に入れば、身体を洗い始めたクリスさんの身体つきが目に入った。

 

………大きい。小町じゃ一生かけても手に入らない禁断の果実が二つくらい実っている。後で触ろう。

 

…だけど、どうしても背中の傷に目が行く。

 

 

「……あんまジロジロ見んなよ」

「そんな殺生な…」

 

 

胸を押さえて恥ずかしそうに顔を赤らめるクリスさん。可愛い顔に抜群のスタイル。だからこそ、やはり背中のソレがアンバランスで仕方ない。

 

 

「……クリスさん。痛く、ないんですか?」

「あ?…ああ、痛えよ?まあもう慣れた。別に大丈夫だ」

 

 

………まただ。また、知ってる顔だ。

 

なんともない顔。強がってる顔じゃない。苦しんでる顔じゃない。本当に平然と、ソレが当然だという顔をして言う。いつだって平然と、当たり前に言うんだ。

 

 

『もう慣れた』

 

 

……慣れない。慣れないよ、私。平然と傷ついてくる姿に慣れない。我慢していることすら意識せずに接している姿に慣れない。頼ることも、助けを求めることも知らないような顔で自分を責め続ける姿に慣れる訳がない。

 

 

「……クリスさん」

 

 

湯船から上がり、未だ身体を洗っているクリスさんに抱きついた。背中に張り付き、お腹に手を回す。背中の傷が痛むかもしれない。また咄嗟に逃げようとするかもしれない。

 

だけど、むしろ痛がってほしい。そうすれば、心配できるから。

 

むしろ逃げようとしてほしい。そうすれば、また強く抱きしめられるから。

 

 

「お、お前!何を!?」

 

やはり逃げようとしたクリスさんを少し強く抱きしめる。

 

 

 

「迷惑じゃないですから。出てけなんて言いませんから。ゆっくりしていってくださいね」

 

 

大丈夫ですから。 そう付け加える。大人しくなったクリスさんに振り払われるまで、ずっと背中にくっついていた。




その後少し揉んだらしい。


こっからはクリスちゃんと積極的に絡ませたい。防人さんルート一期で行けない気がしてきた。同時進行よりは個別ルート派故か。

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