やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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0評価二個貰って昔の一個消えたんですけど仕様ですかね?前作もあった気がする。爆撃垢は消えるのかな?


そんなことより連日投稿してる作者凄い。これがXV効果か。多分もう続かない。


やはり雪音クリスは手を遠ざける。

sideクリス

 

 

 

「……風呂、上がったぞ」

「……お、おう。そうか」

 

 

風呂から上がり、抱きついたり触ってきたりする比企谷の妹から逃げ出してリビングに戻る。リビングのソファーでテレビを眺めている比企谷から借りたジャージは男女差のおかげで息苦しくなる事もなく、久しぶりに息苦しくない空間へ訪れることができた。

 

 

「……って髪濡れすぎだろ」

「しょ、しょうがねえだろ!お前の妹があれやこれや弄ろうとしてくるんだから!」

 

 

言われて肩にかけていたバスタオルで乱暴に髪を拭く。もう夜だ。結んでない髪の毛がわさわさと好き勝手に唸り、バスタオルをまた肩に戻した時には髪はグシャグシャになっていた。

 

 

「……」

「……んだよ?」

「……いや、別に」

「……?」

 

 

何か言いたげにこちらをチラリと見てはテレビに戻しまたチラリとこちらを見る。視線が下に向いてるのが気になるが、別段気にもならないのでどうでもいいだろう。

 

手で一回髪を払えばボサボサで視界を遮っていた髪の毛は後ろに流れる。突っ立ってるのもあれなので比企谷の隣に腰を落とす。ギョッとしたように少し距離を離す比企谷を横目に、膝を抱えてあたしもテレビを眺めた。

 

…やっていた映像にはノイズが出現したというニュースばかり。ここ最近のノイズはフィーネがソロモンの杖を使って大量発生させていたので、被害は少ないだろうが一般人の恐怖は大きいだろう。

 

………結局、こうしてフィーネに捨てられている時点であたしがソロモンの杖を起動させるために費やした半年間は無駄になったわけだ。あたしの目的は今も昔も変わっていないのに、状況だけは刻一刻と変わっていく。

 

ノイズ。シンフォギア以外の対抗手段のない、手中に収めれば世界にだって絶対的有利を取れる対人兵器。それは間違いない『力』だった。争いを無くすため、他の力を持った人間を全部ぶっ飛ばせば人類は軛から解放され、世界は平和になるとフィーネは教えてくれた。

 

……だけど実際は、敵も一般人も関係なくノイズによって灰の山が出来上がるばかり。何一つ、あたしの望んだ世界を作り上げてはくれなかった。

 

 

「……こんなはずじゃなかったんだけどなぁ」

 

 

溜め切れず、つい口から溢れる。死んだような目をしている自覚があるくらい、自分の現状に憂いが現れる。本当ならフィーネと共に世界を一つにしているはずだった。もしもあたしがあのバカに負けなければ、しっかり任務を遂行できていれば…。

 

………いや、結局見捨てられていた気がする。今はもう、フィーネを信じることができなくなっていた。チラリと隣を見る。すると同じタイミングでチラリとこちらを見た比企谷と目が合い二人して目を背ける。

 

………ずっと、ずっと苦かった。痛みによって繋がる絆は心の苦みを強くして縛り付ける。逃げないように、離れないように、逆らわないように。フィーネに首輪をつけられるような繋がりは、いつも苦く苦しい強烈なものだった。

 

…だけど隣の比企谷は深くもなく、親しくもない相手に、甘い、甘い関係を見せてくれた。苦味がほぐれる、痛みを忘れさせる。甘くて温かい繋がり。そんな関係に尻尾を振ってついて行きたくなるのは、あたしがそちらの方が好みだからか。

 

……何より、子供でありながら助けてくれたから。大人は信用できない。余計な事ばかりでいつも何もしてくれない大人。比企谷は本人にとって余計な存在であるあたしを助けてくれた。そこに、繋がれてもいいと思える温かみを感じてしまう。

 

……もしもここで、あたしが比企谷に泣きついたらどうなるだろう。助けてくれと、救ってくれと、抱きつきながら泣いたらどうなるだろう。

 

その手を取ってくれるか、それとも振り払われるのか。その禁断の果実に手を出して見たくなる。甘いのか苦いのか、届くのか届かないのか。抱えていた腕が疼いてくる。縋って泣きじゃくって吐き出したくなる。

 

……きっと、隣にいるのが比企谷だから。何度も何度も、苦しんで倒れて、こんな一番助けて欲しい時にすら手を差し伸べてくれた比企谷だから。

 

……この手を、伸ばしたくなる。

 

 

「……ひき…」

「やー!遅くなっちゃった!クーリスさーん!お布団の準備できましたよー!」

 

 

声に反応して浮かびかけた手がビクッと元の位置に戻る。それと同時に正気に戻った。

 

 

……今あたしは何をしようとした?

 

 

膝を抱えていた腕にさっきより強く力を込める。だめだ、何考えてんだあたしは。比企谷も、その妹の小町も一般人だ。あたしが戦っているのは一般人が容易く死ぬ世界。それを、あたしはよりにもよってあたしが頼ろうとした?シンフォギアなんて力を持っているあたしが?

 

 

………バカかあたしは。

 

 

「あれ?クリスさん…って髪!ちゃんと拭いて整えてって言ったじゃないですか!あぁボサボサ!せっかくサラサラの髪してるのに。せめてドライヤーかけますよ!さっき逃げなければやったのに…って。クリスさん?」

 

「……ん?ああ、なんでもない」

 

 

……ああ、本当にバカだった。ここはダメだ。この家はあたしの足を止めてしまう。優しくて温かくて、座り込んでしまう場所だ。

 

……そりゃそうだ。比企谷と小町は家族だ。家族を亡くしたあたしが、家族という存在を思い出してしまわないわけがないだろうが。

 

昔の話だ。ずっと小さい頃の話だ。それでも、パパの手もママの優しさも覚えてる。だけど違うんだ。ここはあたしの居場所じゃない。あたしがいちゃいけない場所なんだ。

 

 

「ほーら!こっちですっ」

「引っ張らなくても行くって」

 

 

……明日、ここを出よう。できるなら今日にでも出て行った方がいいのだけど、多分逃してはくれないだろうから。先に寝かせて、先に起きて、出て行こう。

 

…何も返せない、何も与えられないあたしだけど。

 

だからきっと、側にいないことが一番の恩返しになるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!」

「……なんだよ」

 

 

明朝、薄っすらと太陽が昇りきっていない時間帯。いつもなら夢の中で気持ちよく寝ている時間帯だというのに、今日は小町に叩き起こされた。

 

 

「クリスさんがいないの!」

「……あぁ。出てったか」

 

 

寝ぼけ頭で脳は回転しないがなんとなくの状況は理解できた。昨日の小町のなつき具合だ。出て行くと言っても絶対に逃がさないだろう。あれやこれやと口を回して泣き落としして雪音を留めようとするのは目に見えている。だから気づかれないうちに出て行ったというところか。

 

 

「なんでそんな落ち着いてるの!?」

「まあ、だいたい予想はついてたからな。ちゃんと昨日のうちにコンビニのパン小町の部屋の前に置いといたし大丈夫だろ」

「……クリスさんが出てくって知ってたの?」

「知らん。もしかしたらって思っただけだ」

 

 

元々強気で警戒心の強い奴だ。俺はまだ数回会ってて少し慣れてきた可能性もあるが、パーソナルスペースの広い人間がずっとこの家にいるとも思えない。

 

……しかし俺の答えに小町は納得していないらしい。眉を引きつらせて睨む姿は寝起きにはキツイものがある。

 

 

「……ねぇ。クリスさん、何があったの?」

「さあな」

「ちゃんと答えてよ!」

「だから知らない。俺も細かい事情なんて聞いてないんだ」

「はぁ!?なんで!?」

「人様の事情に遊び半分で踏みこめるわけないだろ」

「お兄ちゃんそれ本気で言ってんの!?」

 

 

小町の怒りのボルテージは上がり続ける。だがそんなこと言われてもどうしようもない。俺にどうしろというのか。雪音の悩み辛みを聞き届け、じゃあ俺がなんとかしてやると嘯けばよかったのか。

 

……そんなことはできない。無関係の人間が勝手に踏み込んで、解決もせずに踏み荒らすだけ踏み荒らして消えて行く。

 

それは侮辱だ。一人で戦ってる人間の、一人で争ってる人間の意思に後ろ足で泥を引っ掛ける最低の行為だ。雪音は助けを求めていない。今までも俺が勝手にその場凌ぎの手を出しただけだ。

 

これ以上、雪音の事情に踏み込める領域に、俺はいないんだ。

 

 

「ああぁぁあもう!お兄ちゃんもクリスさんも!なんでそうやってめんどくさいの!?」

「め、めんどくさいって…」

「お兄ちゃん知ってる!?クリスさんの背中痣だらけだし傷だらけだった!絶対普通じゃないじゃん!なんで知らんぷりできるの!?」

「……事情があんだよ」

「〜〜〜〜〜もう!知らない!」

 

 

ドタドタと小町の部屋から何かを引っ張りだすような音。イラついたようなうめき声。それも少しすると収まり、バンッと扉を叩きつけるようにパジャマから着替え終わった動きやすい服装になった小町がいた。

 

……っておい。

 

 

「…どこ行く気だ?」

「クリスさん探してくる!」

「バッ、おま、辞めとけ!」

「……ッ!」

 

 

明確に、敵意すら纏うような睨み。だけど小町をこのまま行かせられない。相手は二課と敵対する聖遺物を使う、一般人なら容易く死ねる技術を平然と振るう相手だ。その相手と仲違いした雪音の近くに行けば、どうなるかなんて火を見るよりも明らかだ。

 

 

「…雪音の傷を見たなら分かるだろ。ああいうのが平然と起こる問題だ。お前がちょろちょろしても何もできない」

「……っ。そんなの…!」

「……そもそも。雪音に助けてって言われたわけでもないだろ」

 

 

…そう、言えるわけがない。一般人に助けを求める。それは異常で、血みどろの世界に巻き込むことだ。それを防ぐ為に親友と仲違いした奴らを知っている。力があるから、頼らないし頼れない。

 

 

 

「お前のは、余計なお節介だ」

 

 

 

手を伸ばそうとしても届かない。雪音はそんな残酷ができる奴ではないだろう。どこか子猫を思わせる、寂しがりやで強がりな少女だ。強がって苦しんで、そしていつも倒れている。

 

……助けたい気持ちはある。だけど力不足な俺じゃ意味がない。小日向とのいざこざが終わり、ようやく立花も雪音の問題に取り組める。雪音が立花の手を払いのける可能性もあるが、雪音は既に元の居場所を離反している。つまり助けるためのピースは着々と揃っているわけだ。

 

…ごめんな小町。だけどここは冷たい言い方でも止めさせてもらう。

 

 

「……だから、ってあれ?」

 

 

絶対に小町を止めて見せると意気込んでいたのに、既に目の前から小町の姿が消えていた。正確には玄関に座り込んで靴を履き替えてる。え、止まる気配が少しもないんだけど。

 

 

「いや話聞けよ!」

「聞いたよ。クリスさん探してくる」

「聞いてねえだろ!」

「……お兄ちゃんもクリスさんも、我慢する立場の話ばっかり、勝手なこと言わないで」

 

 

本当に少しも止まる気配がない。既にドアノブを開けて薄明輝く暁の世界へ向かっている。その背中が、何故か大きく見えた。

 

 

 

 

「……我慢してるのを見てるこっちは、心配してるの。何もさせてもらえなくて、何もできなくて。だけど、ずっと!心配してるんだから!」

 

 

 

 

バタンと、光が途切れる。

 

……クソっ、まただ。なんで俺は誰かの背中ばっかり見てるんだ。

 

 

「……っ。クソッ!」

 

 

また俺は、遠い背中を追いかけながら玄関の扉から飛び出した。




依存ガールクリスちゃんと頑固ガール小町ちゃんを書きたかった一話。最近読むより書く方が多い気がする。

八幡の喋り方違う的な指摘受けたし原作また読まねば。
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