やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

33 / 122
はっぴーばーすでーのうたが重い…。なに、こんなに色々設定やら重み出して今期で纏まるの?大丈夫?劇場版する?


やはり二人の周りは明るい。

inリディアン

 

 

 

「頼む、雪音を助けるのに力を貸して欲しい」

 

 

小町の『お願い』を聞いたその時から、こうすると決めていた。正直何故自分であいつらに頼ると言ったのかは分からない。解決するためにはこうするしかないと思っていたからか、それとも他の理由だろうか。

 

小日向と立花。二人をリディアンにある二課行きのエレベーターの前に呼び出している。既に二課の協力者という立場を捨て去っている時点でもし他の人間に見つかれば不法侵入だ。それでもここを選んだ。

 

 

「は、八幡くん?な、なんで土下座…?」

「………」

 

 

そう、本気を出す。小町にそう言ったからには本気を出す。俺が本気出せば土下座も靴舐めも余裕でできる。したいわけじゃないが。

 

………正直、直接頼めば二人とも快諾してくれるんじゃないかという想像もした。立花は雪音を助けたいと言っていたし、小日向も行き倒れた雪音を見ている。頼めば人の良い二人ならきっと笑って受け入れてくれるのだろう。

 

…だからこそ自制しなければならない。無軌道で無制御な信頼は甘えだ。二人の優しさに縋ってはいけない。二人の親切心に甘えてはいけない。

 

彼女達の優しさは自然なものかもしれない。人助けを自然と行える優しさ、親切心。それがあることを俺は知っている。だがもしもそれが優しさや親切心からではなく、もっと違う何か別の感情に起因するものだとすればなおさらのこと。それは人の弱みにつけ込む行為だから。友情や想い。そんな綺麗なものを汚してはいけない。感情の処理は適切に。彼我の距離は適当に。

 

……だからこの土下座(ポーズ)も、きっと張りぼてなのかもしれないが。

 

 

「ね、八幡。顔を上げて?」

「………」

「…私頼まれる時は目を見て欲しいな」

「…こうか?」

「………。首の角度が足りない、かな」

「俺の首これ以上曲がらないんだけど」

「土下座を辞めてって言ってるの!」

 

 

………どうやら俺の本気はお気に召さなかったらしい。これ以上の本気って靴舐めるくらいしかないんだけどどうしようか。てか小日向さん俺の呼び方変わってない?いつから立花の呼び方に似せて来たの?立花好き過ぎない?

 

 

「び、びっくりしたぁ。珍しく八幡くんからメール来たと思ったらいきなりだもん」

「私も。改めて二課の人達にご挨拶しなきゃと思ってたらこれだもん。昨日の今日で八幡に土下座されるなんて思わないわよ」

「いや、まあ俺も思ってなかったけど。ちょっと色々あってな」

 

 

結局正座したまま昨日から今日のことをある程度伝えていく。雪音のこと、小町のこと、『お願い』のこと。

 

頼みごとをする立場だ、これ以上雪音のことは隠しきれない。初めて行き倒れた雪音と出会った時、聖遺物を纏った雪音を見た時、小日向に呼ばれた先で二度目の行き倒れた雪音を見た時、その夜に雪音を家に誘った時、小町が予想以上に雪音を気に入った時。

 

そして今日の朝、小町に雪音を助けてと『お願い』された時の事を。

 

 

「………八幡、女の子をそんな簡単に家に誘うんだ。…ふ〜ん」

「あー。なんか初対面がアレだったからなんか捨て猫みたいな感覚が拭えなかったというか…ほら、女の子が寒いところでお腹を冷やしたら大変というか…」

「でも意外かもー。クリスちゃん誘っても家に来てくれないと思ってた。八幡くんに誘われたら来てくれるんだね!」

「そうね、好感度はバッチリって感じ?」

「ねえ、なんで小日向はさっきから俺を見る目が冷たいの?」

 

 

立花はしっかり聞いているようでなんか的外れな感想を言ってるし、小日向は小日向でジトーっとした目で見てくる。ちょっとゾクゾクするな、心地よくはない。

 

 

「………もちろん、私達は協力するけど。でもまずは二課の人達に頼んで見たほうがいいと思うけど。私達だけじゃまずクリスに会えないんじゃない?」

「そうだよね。クリスちゃん今どこにいるんだろー。お腹すいてないかな?」

「…まあそれも含めて、な。てか俺もう二課の協力者じゃないから出来ることが少なくてな…」

 

 

二日前に手放した物がすぐ必要になる。半端に足を突っ込んで半端に引き抜いたせいでとても歪な状態に陥っている。二人に協力を頼んで二課とのパイプ役や雪音との対話という俺にできないであろう大部分を丸投げする気でいた。コミュ力おばけ×2なら雪音もタジタジになっていけるのではないかと。なんなら小町も連れて包囲網作ってもいい。完璧。

 

 

「だから雪音の事情を知りたい。後はなんとか…」

「………ねえ、八幡」

「…なんだ?」

「もうちょっと、自然に頼ってもいいんじゃない?二課の人達もクリスを助けたいってちゃんと言えば協力してくれるんじゃ…」

「……もう既に頼り過ぎてるくらい頼ってる。二日前に勝手に辞めて、お前に立場押し付けて、必要になったから元に戻してくださいなんて、都合が良すぎるだろ」

 

 

小町の『お願い』じゃなかったら一日中町を駆け巡って雪音を探してる。その後二人に頼んで雪音の問題解決に勤しんだかもしれない。それがどんなに効率が悪くても、自分で捨てた居場所だ。本来なら二課に頼るという選択肢は浮かべちゃいけないものだった。

 

だがそんな俺の小さなプライドなど、小町の涙の前に意味がなくなっていた。だからこそ、小日向と立花に。そして二課の全職員に土下座して何かしらの形で恩を返すと決めたのだ。

 

 

「………じゃあさ、なんで私達にはすぐ頼ってくれたの?こう言っちゃあれだけど、八幡が頼ってくれるなんて思ってなかったから」

 

 

そんな決意を他所に、小日向は心底不思議という顔で尋ねてくる。といってもそれは当たり前でもあるのか。正直俺自身こうしてちゃんと頼ってるという事実を疑問に思っている。

 

……まあ、理由を付けるというなら。

 

 

「………妹にと、とも、だちを頼るって言っちまったから、な。妹に嘘はつけないし、あー、協力してくれると…」

「…………………」

「………あー、無理なら…」

「………ううん。絶対協力する」

「うぇぁっ!?」

 

 

ジト目を意地でも解かなかった小日向が、何故か一瞬で瞳を輝かせて手まで取って来た。あ、いい匂い柔らかい。いや違う。え、なに?

 

 

「………初めて友達って言ってくれた。ずっと誤魔化されてたから、すっごく嬉しい」

「………さ、さいで」

 

 

この界隈では俺が友達って言うと過剰に反応するブームでも起きてるのだろうか。そういや小町も友達を頼るって言ったら「お兄ちゃんにと、と、とも、ともだだだち!?誰!?エア友達!?おめでとう!?」みたいな反応されたっけか…。しんみり気分とか消えたから別にいいけどさ。

 

 

「…っていうか立花がさっきから静かだな」

「そういえば…。響も喜ぶと思ってたんだけど…」

 

 

 

 

 

 

「ほーんとですか師匠!やったぁ!ありがとうございます!」

 

 

随分静かと思ってた立花。いつのまにか通信機片手に誰かと話していた。師匠。師匠?二課で師匠。何かを教えてもらってるとして、なんだ?

 

……忍法か。

 

 

「はっちまーんくーん!師匠にさっきの話ししといたよ!協力してくれるって!」

「話早過ぎない?いやまあありがたいけど…」

「それがね、まだ完全に二課の協力者を辞めるための手続きが終わってないから、そのまま二課のお仕事続けられるんだって!もう酷いよ八幡くん。私八幡くんが二課のお仕事断ったと思ってたのに。でもこれから一緒にいられるね!」

「とりあえずお仕事って単語を今すぐやめてくれ」

「なんで!?」

 

 

…しまった、つい反射で。お仕事お仕事言われるとお仕事したくないセンサーに引っかかるんだ。

 

…それにしても、都合が良すぎる気がする。いやむしろ一般人の出だから情報管理的に慎重になるため日数がかかるのか?それとも…初めから戻ると思われたとか?

 

いや、都合がいい方向に転んでるんだ。考えてマイナス方向に行くのは悪手か。

 

 

「………まあ、なんだ。さんきゅ、助かった」

「いひひ。そうでしょー。もっと褒めてよほれほれ〜」

「もう、響ったら。調子に乗り過ぎ、はしゃぎ過ぎ」

「えー、いいじゃーん。なんならこの間みたいに撫でてくれてもいいんだよ〜?」

「…はいはい。今度現物支給でなんかやるから」

「立花響は報酬を要求します!小町ちゃんにするみたいにほらするっとサラッと!」

「なんだそのテンション…」

 

 

………立花にはご飯奢ればいいかと思ってたんだが当てが外れたか。いやむしろ安上がりだからいいのか?

 

…実際立花は人助けで感謝されることはあっても褒められることは少ないのだろうか。だいたい度が過ぎて怒られることも珍しくないらしい。猫助けて入学式遅刻する奴だし。

 

…まあ、こんな時くらいはいいか。

 

 

「……ほれほれ」

「うぇひひ。なんかちっちゃい頃思い出して好きなんだよね〜これ」

 

 

わしゃわしゃと髪が崩れない程度に撫でてやる。少し顔を赤らめてるが、存外気持ち良さそうで何よりだ。頼まれて撫でた上嫌な顔でもされたら心が折れるところなので意外とギリギリである。

 

…にしても小さい頃か。親とかに撫でられてたりしたんだろうか。

 

 

「んふふ♪…あっ、ねえ未来も…ふひっ!?」

「あ?どうし…ぴっ!?」

 

 

そんなぼんやり空間に気を取られていたせいか、隣の修羅さんに気づかなかった。分かりやすく言うと未来さん笑顔でニッコニコである。激にこキラキラ丸なくらい笑顔。背筋が凍りそうなレベルで。

 

…そうだ、嫁の横で旦那に手を出す泥棒猫とか殺戮対象でしかないぞ。案外すいすい話が進む現状にテンションが知らずあがっていたのかもしれない。

 

………や、殺られる!?

 

 

「………響。ダメだよ?」

「み、未来?ど、どうしたの?」

「………響。ダメだよ?」

「え、えっと〜」

「………響。ダメだよ?」

「未来が怖いよー!」

 

 

自然な動作で立花から引き剥がされ、小日向が立花を撫でくりまわしてる。わたわたしてる立花も別に嫌がっているわけではなく、程なくして笑って受け入れていた。百合百合しいいつもの二人で少しばかり笑えてくる。昨日まで喧嘩していた気配などカケラもない、親友のあり方。

 

 

「………八幡も。メッ」

「あ、はい」

 

 

ベーっと舌を出す姿が宝物を抱えた少女のようでまた笑ってしまう。自然にくだらない話をする。あまり経験がないので確証はないが、これがいつも通りを一緒に過ごすという事なのだろうか。

 

………もしも。もしもここに雪音がいたとしたら。

 

……きっと、それはそれで笑っているのだろう。ここはあの寂しがりやが寂しくないくらい、明るい場所だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみにこの間撫でた時って?」

「忘れてなかったか…」




三期の親父さんに撫でられてフニャッとしてる響超好きなんですよ。
てかだんだん未来さんが393になってきた気がする。うちは未来さんがウリなのに(適当)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。