やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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八幡誕生日おめでとう!特別編書くとエタるので本編だけどね!切ちゃん的にそのうち誕生日会も書きたいね、続けばね!

翼さんの格好よさに惚れて早く曲買いたい。一ヶ月待てないんですけど!


やはり俺は初めの一歩を進み出す。

in???

 

 

 

………ずっと、助けるという選択肢を取らずにいた。

 

初めて会ったのは深夜の路地裏。ロマンチックを語るには暗く、出会いを謳うならぴったりの場所だったのかもしれない。照らし出された月光に晒された横顔が白く美しかったのを覚えている。

 

俺も彼女も、お互いのことを何も知らないで出会った最初の時。

 

 

次に出会ったのは一瞬だった。

 

聖遺物という存在を俺が知らなければ現実として受け入れていなかったかもしれないほど突発的で、偶発的。聖遺物を纏ったあいつが驚く姿は未だに目に焼き付いている。

 

ほんの少しだけ、お互いの事を知っていた故に戸惑ったあの時。

 

 

そして三度目。

 

どちらも踏み込まない、踏み込ませないという不文律を自然と浮かべた日。二度目の行き倒れを呆れ、彼女の涙から目を逸らしたあの日。どちらも近づこうとしない関係。

 

だけどそれはノイズへの戦いに向かう彼女の背中を見て、俺が助けるなんて烏滸がましいという事実を認めてしまった時だった。

 

 

……四度目。

 

何故か家に誘うという、一歩近づいてしまった時。彼女が一歩逃げるという形で、また無関係の顔見知りという関係へ戻った。

 

……いや。彼女は逃げ、俺は追わなかった。無関係を変えようとはどちらもしていなかったから、結局関係は変わっていなかったのか。それでも知ることが出来たことはある。

 

 

 

 

 

………なんとなく、理解していた。彼女は、雪音は人を拒絶していない。いや、仕切れていないというのが正しいか。初めて俺が会った時も、小日向と会った時も、そして小町と会った時も。近づくなオーラを纏いながらも、嫌がるのではなく戸惑う形でコミュニケーションを取っていた。

 

その理由も彼女の経歴から見て間違いないだろう。幼少の頃から紛争地帯なんて場所に行き、囚われていた人間のコミュニティは想像するに容易い。周りの環境は分からないが、フィーネとやらに引き取られてからの友人もいないと思える。いたら二課に情報が入ってるだろうし、友人なら現在の雪音を一人にはしないだろう。

 

……つまり雪音は交友関係の築き方が幼少の頃と変わらないのだ。裏切られることや傷つけられる事もなく、関係そのものを築いていない状態。幼稚園で初めて他の人間に混ざるレベル。そこが俺との大きな違い。俺レベルになれば拒絶される前に離脱し、話しかけられる前に寝たふりをする。この歳になるまで培ってきた人との付き合い方だ。…まるで成長していない。

 

しかし雪音はまだそんな経験もしていないはずだ。ただ知らないことに恐怖し、裏切られることに恐れている。

 

 

 

………それなら俺ができることは、きっと初めの一歩を歩かせることなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「………探したぞ、雪音」

「……………比企谷」

 

 

さあ、初めの一歩。おてて繋いで一緒にやろうか。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

in二課回想

 

 

 

 

「………とまあ、こんな感じでいこうと思う」

「いいと思う!」

「………小日向、どう思う?」

「私もいいと思うな。たぶん、クリスには一番必要な事だと思うから」

「ねえなんで私の反応は無視するの!?」

「いや何も考えてなさそうだし…」

「いいと思ったのは本当なのにー…」

 

 

いや全部言い切る前に肯定されれば何も考えてないと思っても仕方ないだろ。話すたびに「へー」「ほー」「ほへー」とかしか言わない。下二段活用系女子かよ。ただの日本語不自由なだけだそれ。

 

 

「………ただ、なぁ…」

「?なにか不安があるの?」

「いや不安しかないんだが。…これをやるのが俺でいいのか、正直迷ってる」

 

 

雪音を助けよう、助けたいと動いてきた。しかし俺が動こうと喚こうと成功しなければ意味がない。俺がいない事で成功するなら今すぐこの場を去るし、俺がいなければ成功しないならいくらでも身を粉にしても動こう。

 

…今は調整の段階だ。方法は決まったが、俺以外がやった方が成功率が高いのではと思う。コミュ力お化けの立花ならグイグイゴーゴーと距離を詰められるだろう。右に同じで小日向なら立花との不和を解決できた今、雪音の事情に踏み込めるかもしれない。さらに言えば小町は初対面で既に雪音に大きく近づけていた。実は成功率一番高いんじゃねと思うくらいに。

 

なら、俺は?コミュ力がないから口は回らない。踏み込む勇気を貰ってもそこから雪音の手を引くことが出来るのだろうか。

 

 

「………。私は、むしろ適任は八幡しかいないと思うよ?」

「私もそう思うなぁ」

 

 

……そんな俺の懸念は、二人によってばっさり切り捨てられた。

 

 

「………は?いや、俺だぞ?」

「うん、だからだよ」

 

 

戸惑う俺の手を立花が包み込んだ。

 

 

 

「………ね、八幡くん。クリスちゃんが一番辛くて、一番助けて欲しくて、一番怖かった時に。助けてあげたのは、八幡くんなんだよ?」

 

 

 

包まれた手に動揺する暇も無いくらい立花の言葉が耳に入り込む。強く、強く実感のこもった言葉だ。悲痛の入り混じる暗い共感。気づけば小日向すら表情を暗くしていた。

 

 

「……立花?」

「そういえばさ、前に奏さんと翼さんに助けられたって話ししたの覚えてる?」

「あ、ああ。ツヴァイウィングの二人がライブ会場でノイズから守ってくれたっていう…」

「あれ、続きがあるんだ」

「………響」

「大丈夫」

 

 

二人の顔が歪み、包まれた手にも力が入ってくる。

 

 

「………っ、私ね。あのライブの後学校でいじめられてたんだ。サッカー部のキャプテンだった男の子があの事件で死んじゃって、何でその子じゃなくて私が生き残ったんだって」

「……っ!」

「それが全校に広まっちゃって。教科書捨てられたり、家に石投げられたりして。ほんとに、本当に辛かった時があったんだよ」

「響っ…」

 

 

………開いた口が塞がらない。思い出すことすら辛いだろう出来事を、下手くそな笑顔で覆い隠そうとする立花。それを苦しそうに見つめる小日向がそれが事実だと如実に証明する。

 

……なんで立花はこんなタイミングで、そんなことを伝えてくるのだろう。

 

 

「でも大丈夫!私が一番辛くて苦しくて怖かった時、ずっとずっと未来が側にいてくれたんだ!一人じゃ絶対逃げ出したくなるときだって、大切な人が側にいてくれれば乗り越えられるって分かったから!」

 

 

小日向を抱き寄せ、今度は満面の笑みで誇ってみせた。感謝の気持ちを、友愛を、親愛を。言葉にするのが憚られるほどの笑みで見つめてくる。

 

 

 

「だから八幡くん!クリスちゃんを助けてあげて!助けて欲しい時に誰かが助けようとしてくれる、側にいてくれる。手を伸ばしてくれて、手を握ってくれる。誰かを助けるのに、それ以上のものはないって私は知ってる!怖くて怖くて泣いてる時には、繋いだ手だけが紡ぐものが絶対にあるから!

 

 

だから、手を伸ばすことを躊躇わないで?」

 

 

 

小日向を抱きしめるために離されていた手を、改めて差し出される。辛い過去を生き、辛酸を飲まされながらも立花は人助けをする。この手は今までも何度も差し伸ばしてきた手なのだろう。

 

手を伸ばしてもらう喜びを知っている、側にいてくれる大切さを知っている、手を握ってくれる尊さを知っているのだと。立花はイジメによる辛さを相手にではなく、同じ辛さを持つ者へと向けている。

 

………きっと誰もが手を取ったわけでは無いだろう。振り払われた手は間違いなく立花を傷つける。それでもへいきへっちゃらと笑い苦しんで、今もまた手を伸ばす。

 

 

……振り払えるわけがない。伸ばされた手を、少し強めに握り返した。

 

たったそれだけで笑顔が更に輝いていく。

 

 

「………お前ってモテそうだよな」

「へ、急にどうしたの?」

「いや、何となくな」

 

 

きっと中学時代に出会ってたら告って振られてたな。そしたら俺も村八分か。それも悪くなかったかもな、八幡だけに。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

inーー

 

 

 

「………何の用だ。あたしは今は別に行き倒れちゃいないんだが?」

「別に行き倒れてるところを狙ってるわけじゃねえよ」

 

 

雨風を防げて誰もいない場所。風化した建物の一角に陣取ってる雪音に近づいていく。だが今回は今までで一番警戒されている。そりゃそうか、こんな建物。狙ってでもなきゃ誰もこない。そういうところを狙って雪音も寝床にしてるはずだ。だからここに辿り着けてる時点でどこかの機関にいるだろうと予想されてると見るべきだろう。

 

それが二課だと当たりをつけられていることも。

 

 

「………いつからだ?」

「あん?」

「いつから、あたしに目をつけてやがった…」

「……目をつけたことなんてねーよ。初対面の時はお前のことなんて知らなかったし、次に倒れてた時や家に呼んだ時には俺二課辞めてたしな」

「………ならなんでここにお前がいんだよっ」

「今日二課に戻って協力してもらった」

「ふざけてんのか!?」

「実際そうなんだから仕方ないだろ…」

 

 

いやまあ、うん。正直俺もふざけんなと言われると思ってた。だってお前とあってる時だけ俺は二課の人間じゃないとか言われたら怪しむもの。新たな変態かと思われても仕方ない。

 

……だけど今回は引き下がれないんでな。背中を押され、手を引かれ、進む以外無くなってしまった。

 

 

「………なら結局何の用だ!二課の力使ってまで、あたしに何の用がある!?」

「…そうだな、大事な話だ。究極的に言えば、二課も関係ない。俺とお前の話をしにきた」

「あたしと、お前の話?」

「ああ」

 

 

気づかれないよう、深呼吸をする。手足の震えるような錯覚すらあるが、それを強く拳を握って抑えこむ。

 

………ああ、よく考えればこんなこと初めてだ。無理だと思っていたものに手を伸ばすなんてこと、したことがなかったから。

 

だけど俺を友達だと言ってくれた奴らがいる。手を伸ばすのを怖れるなと言ってくれた奴がいる。そいつらの勇気は、まだ俺の手に残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………雪音。俺の、友達になってくれないか?」

 

 

汗まみれで、震える声で手を差し伸ばす。これが手の差し伸ばし方を知らない俺の、初めての一歩だ。

 

 




ようやく八幡に言わせることができた…。満足しそう。

マリアさん、歌でもちくしょう言い出してるのにカッコいいのなんなん?好き。

あとネタを考えれば考えるほど切ちゃんがヒロインムーブし始めてヤバイ。可愛すぎない?

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