やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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FGO!XDU!バディファイト!バンドリ!やることが多い!

ちなみにこの小説は読者全員が全曲の全歌詞を網羅してると思い込んで書いてます。違和感ないようにはしてますが、歌詞盛り盛りで突っ込んでるのでご了承を。


手の繋ぎ方

「……ありがとう。でも悪い、比企谷。…あたしは、お前の友達にはなれないよ」

 

 

………友達になりたい。そう告げ手を差し伸ばした返答は、優しい笑顔と共に空を切った。泣きそうな顔、否。むしろ感涙に咽ぶような顔で言われてしまった。

 

嬉しそうだ。本当に嬉しそうだ。何が嬉しかったのかは分からない。友達になろうと言ったこと、手を差し伸べたこと、それとも傷ついて欲しくないと言ったことだろうか。それが判別できない程の笑顔で、雪音は右手を後ろに隠した。

 

差し伸ばした手を取らないという意思表示。その心に何を思って拒絶を示したのか、俺には分からない。そもそも、俺自身自分の心を理解できているのか、ここに来て疑い始めてしまった。

 

 

『…ああ。ただ、傷ついて欲しくないだけなんだ』

 

 

雪音にぶつけた本音で、嘘偽りない言葉だった。雪音の過去に同情したのではない。苦しく苦い人生を歩んで来たからと言って、他人の人生を憐れむなんて醜悪なことをするつもりはない。雪音に自分の過去を重ねたわけでもない。失敗だらけの俺の過去、失敗することすらできなかった雪音の過去に共通点などない。そんなもので理解した気になるのはただの自己満足にしかならないから。

 

……なら俺が雪音に望んだものは、やはりソレなんだ。『傷ついて欲しくない』。たったそれだけの思いで、俺はここで雪音と話している。

 

 

『………あぁ。あまいなぁ…』

 

 

………忘れるわけもない。おばさんの家でコーヒーを飲んで浮かべたあの悲しい笑顔を。笑ったところを殆ど見たことがない。…たった一本の、安いコーヒーで笑えるのに。いつだって雪音は傷を負いに進んでいく。

 

 

「……そうか」

 

 

…友達になれないという答えに、これ以上何を返せばいいのだろう。そも友達なんて存在がつい最近まで空想のおとぎ話と同レベルだった人間だ。

 

星を見て、仲違いに奔走し、ノイズまで巻き込んでの果てにできた友達と呼べるもの。だがそんなもの一般的な友達であってなるものか。むしろそんな関係ばかりならリア充の八割は命を落としている。つまり例え友達が出来たとして、俺は友達作りという項目においてやはり落第点を掲げたままなのだ。

 

 

「……ああ。だから、そういうのはこれっきりにしてくれ。何度も寝床暴かれるのもアレだしな」

「……雪音」

「…余計なお世話だけどさ、お前二課抜けた方がいいよ。…なんつーか、合ってねえよ。そういうの」

 

 

薄く笑って雪音が言う。貶めるような意味でも、拒絶するような意思も感じられない。ただ心配してくれている事だけがわかる言葉。だけどそれを受け入れるわけにはいかなかった。

 

 

「……無理、だな」

「……なんでさ」

「お前を探せなくなる」

「………はっ。ちょせえな。好きにすればいいけどよ」

 

 

渡したコーヒーを口に入れて一息つけば、雪音はもうこちらを見ることはなかった。きっとそのコーヒーが空になってしまえばまた何処かに行ってしまうのだろう。だから残り数分のうちにその足を止めなければならないのに。

 

 

「……先に言っとく。次お前が来たら、私は逃げるぞ。ギア纏ってすぐ逃げる。何度も来るならその度に逃げるからな」

「…何でそこまで…」

「あたしに構ってんなよ。お前の妹にあのバカ。あの子に人気者とか、もっと構うべき相手がいるだろ?あたしは大丈夫だ。フィーネとケリをつけて、世界を平和にしてやる」

 

 

そう一つ宣言をして飲み終えたコーヒーの缶を床に置いた。…ああ、タイムアップか。この瞬間にできることは何だろうか。ほんの少しでも頼ってくれれば、あとは二課に支えられている身として雪音にバックアップを受けさせてもらえる。フィーネという黒幕の存在が浮上した今、雪音の過去を顧みれば未成年という事実も踏まえて最悪でも重要参考人として保護されるだろうし、数少ないシンフォギア装者として二課に所属することもできるだろう。

 

……もし、フィーネとやらとケリがついたとして、雪音はどうするのだろう。金があるようには見えない。頼る相手も、頼れる場所もない。シンフォギアがあると言っても四六時中纏っていては二課に捕捉され、纏わなければ何気に優秀な警察のお縄になるのも時間の問題だ。むしろよく今の今まで無事に生きてこられたと不思議に思う。

 

…ああやっぱり、雪音をこのままにしておけない。世界を救うと豪語したその背中には、それで傷つく自分の姿を映してはいないだろうから。

 

 

「……また来る」

「逃げるって言ったろ」

「手を差し伸ばすのを躊躇うなって言われたんでな」

「……差し伸ばす相手、間違ってるよ」

「……」

「……」

「…またな」

「……」

 

 

背を向け雪音から出口へと足を進める。寝床を暴いた以上雪音はこの場所を出て行くだろうが、強引に訪れたのはこちらだ。帰るのはこちらから、行くのもこちらからだ。もちろん諦めるつもりもない。逃げるというなら何度でも、何度でもこちらから手を差し伸ばせばいい。

 

……だけど、やっぱり、キツイな。手を掴まれないのも、手を差し伸ばすのも。

 

…それでもいつか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諦めないでよバカァ!」

 

 

 

「は?…っ!?」

「な、おまっ…っ!?」

 

 

ガッ!と叫び声と一緒に建物の一室に入り込む人影が飛び込んで来る。

 

いや、飛び込んで来るだけでは飽き足らず俺の腕を強引に掴んで引っ張った。その先は雪音がいる場所で、振り返れば雪音の驚いた顔と共に、掴まれた手の先に温かい何かが繋がれていた。

 

……雪音の手が、繋がれていた。

 

 

「……お前…」

「…小町…おま、なんで」

「…なんでじゃないよ。どっちも相手が手を掴むの待ってたら、繋がれるわけないじゃん。無理矢理でも掴まなきゃ、繋がるなんてできないよ」

 

 

…そう、下手人は小町。俺の手を引き、雪音の手を掴み、そしてその二つを無理矢理に繋げた。慣れない人肌に反射的に手を離そうとしていた俺、そして雪音の手を絶対に離さないと言わんばかりに両手でがっちりと包み込んでいた。

 

………妹が何をしようとしているのか分からない。だけど掴めなかった手が、この手の中にある。

 

ほんの少しだけ、力を込めて握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

sideクリス

 

 

 

 

 

………この状況はなんだろう。比企谷の手は振り払ったはずなのに、気づけば小町が腕を引いて比企谷の手と繋がれている。触れた手のひらの温度が慣れなくて、咄嗟に手を引こうとしたのにそれが押しとどめられる。比企谷と繋がれた手を包み込む両手があたしを逃がしてくれない。あたしより小さい両手で、あたしの届かない場所へ手を引いてくれた手が何より大きく見えた。

 

…逃げられない。だからこの手の温もりからも逃げられない。強引に手を引くことはできないし、この手をどうすればいいかも分からない。

 

………気のせいだろうか。手を繋ぐ比企谷の力が、少しだけ強まった。まるで手を繋ぎ直すように。

 

 

………ああ、そっか。あたし、『繋がれた』ことは何度もあったけど、『繋ごうとした』ことって全然なかったな。…いや、繋がれたのではなかったのかもしれない。

 

…ただ、『掴まれた』だけか。引き摺ることを、繋ぐとは言わないだろう。引っ張ることを、繋ごうとするとは言わないだろう。

 

……じゃあこの手は。…この『繋がれた手』は。

 

 

 

 

 

ギュッ

 

 

 

 

…力を入れて、『掴み』返した。

……いいや、『繋ぎ』返した。

 

 

 

…ギュッ…ギュッ…

 

 

 

一度、二度と力を入れて『繋ぎ返す』。それに答えるように、向こう側から力を込められた。離さないように、掴むように。

 

…………『繋ぐ』ように。

 

 

 

 

 

………………グッ!

 

 

 

 

…もっともっと、強く強く握る。手の中にある温もりを逃さないように、手の奥まで伝わる全てを受け入れるように。今あたしは、目の前の相手と繋がっている。手を繋いでいる。

 

 

「……ああ、全然違う」

 

 

…掴まれるのと全然違う。引き摺られるのとも、引っ張られるのとも全然違う。なんでだろう、手を掴まれる事は何度もあったのに。優しさで手を繋がれることも、つい最近無かったわけじゃないのに。

 

 

 

 

 

 

……繋ぎ返すだけでこんなにも違うのか。

 

 

 

 

 

…こんなに自分の手は力を込められるんだ。こんなに人の手はあったけえのか。こんなに…こんなに溢れ満ちていく。光が…力が…魂をぶっ放すように熱が込み上げる。

 

…気づけば掴まれていただけの片手じゃ足りないように、あたしの両手が比企谷の手を包み込んでいた。それだけじゃない。瞳から涙がこぼれていく。それでも涙を拭う手が足りないから、床に水滴の跡が付けられていくのを止められない。

 

心の高まりに頭が追いつかないまま、呆然と手を繋ぎ続ける。

 

 

「……雪音」

「……っ!」

 

 

それでもいつか時は動き始める。いつのまにか小町は包んでいた手を離してあたしと比企谷の姿を見守っている。急に羞恥心が湧き上がり、また振り払うように手を引こうとする。

 

 

 

 

………手が、離れなかった。

 

小町の手でもう引きとめられてはいないのに、あたしと比企谷だけで繋がっている手が離れてくれない。…繋ぎとめられている。それはあたしじゃない。なら、その答えは…。

 

 

「……雪音。次とか、またとか、やっぱなしだ」

 

 

…引きとめているのは、比企谷しかいなくて。痛いくらい強く握られているのに、それが痛みと感じられないくらい動揺してる。

 

 

「……改めて、何度も言う」

 

 

本人目の前に比企谷は深呼吸で息を整えた。整えたはずの息が唾を飲み込んだせいでまた乱れては深呼吸を繰り返す。それが二度、三度と繰り返される空間。

 

…それを裂いたのは、たった一言。

 

 

「……お兄ちゃん、頑張って」

「……ああ」

 

 

………そっか。それも、『お願い』か。最大限の家族からのエール。眩しい愛に、断ったはずの問答に力を貸すように。あたしはまた、手をグッと繋ぎ返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺の、友達になってくれないか?」

「…ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

………こんなはずじゃないのに。目の前の勇気が眩し過ぎて、差し伸ばされた手の繋がりが強すぎて、つい認めちまった。

 

…眩し過ぎるその先が、ほんの少しだけ見えてしまった。

 

…繋いだ手を離さずに行かなくちゃわからないソレを。

 

…繋がれたんだ。繋いだんだ。

 

…その先を、あたしの目で確かめたい。

 

 

 

 

 

 

 

繋いだ手だけが、紡ぐものを。




蛇足




メモリア獲得『繋ごうとする手』
クリスとのメモリアル

[PS]力属性のCTD10%上昇

《掴まれる、繋がれるだけだった手。クリスが初めて繋ぐために踏み出した手が紡ぐものは、とても温かい…》


響&未来『独り、二人、そして3人』Get!
クリス『温もりについた嘘』Get!
『繋ごうとする手』Get!
翼『???』
マリア『二人で歌う独奏曲』
切歌『ダイレクト・レター』
調『無くしたプログラム。その名前は…』


いつからメモリアは一種類だと錯覚していた?
予定にないメモリアが増殖することもあります。あと内容がくどかったりした時は背中を蹴り飛ばす人が現れたりします。小町とか。
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