やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
翼さんのCD発売、正直めちゃめちゃ楽しみで。買ってすぐ聴いて泣いて。もう………ね。ずるいよね。ほんと好き。
9話見てから聴いた人で泣かない人はいないでしょあれ。逆に9話見てからじゃないと威力が少し下がるかも。
in公園
デート。男でも女でもとりあえず浮かれ気分にさせてくれる年齢関係なしのラブコメ的イベント。しかしデートにはプランが必要だ。どこに行く、ここで昼休憩、締めの店はここ。行く前にはウキウキと考えてしまうものだ。
……そんなこといいから成り行きで行こうぜ。そう思ってしまうのは俺がそういう体験に恵まれていないからか。そもデートと銘打っても結局は小町同伴で遊びに行くだけ。慣れないとはいえ小町に任せればオールオッケー万事解決。
…………の、筈だったのに。
「………おい。…おいおいおい!なんで、なんであいつがあそこにいるんだよ!?」
「俺が知るか!俺も集合場所しか知らされてねえよ!」
…俺と雪音は集合場所に着く前にピンチに陥っていた。集合場所は近くの公園の橋。家からそこまで遠くもなく、それでいて緑もあり遊戯施設の店舗集にも近いそこは集合場所としては申し分ないだろう。ちなみに雪音には変装用の古いメガネを着用させてる。度は入ってないが、太く赤い
…まあ小町が少し用事があって、先にそこに行って欲しいと言われたので雪音と共に向かったまではいい。この三人で行くなら家から直接どこかに行けばいいと思わなくもないが、小町の決定にわざわざ否を唱える程ではないとスルーした。
…その結果。
「………なんであの人気者がっ」
…まさに俺たちが向かおうとしていたその場所に、イッケイケのコーディネートでグラサンを引っ掛けた美女が堂々たる振る舞いで立っていた。あれで変装のつもりなのか見る人が見れば隠す気ねえだろと思えるほど、風鳴翼という人間は目立っていた。こちとら木の陰で必死に息を殺してるというのに。
いや、有名人がいようと目立ってようとそれはいい。問題はここに雪音もいるということだ。フィーネとの離別や現在宿無しの生活をしていることは知っているだろうが、まともに正対するのはマズイ。立花や小日向には成功の旨をメールしたので大丈夫だとは思うが、風鳴先輩は唯一マズイ。
「………よし、逃げよう」
「お、おう。なんだその無駄にかっこいい顔。かっこいい事言ってるのかと勘違いしたぞ」
「雪音の処遇とか正確に分かってないし、雪音の意思もまだちゃんと聞いてないしな。今二課に拘束されるのは困る」
「………そう、だな。あたしも、色々しっかり決めないといけないよな」
…そう、雪音の処遇は決まってない。今は二課にしばらくの間比企谷家で保護することを了承してもらい、フィーネの問題を解決した後で改めて雪音の未来を決めるという話になった。というか司令がそう打診してくれた。現在地が分かっているだけでも十分、なによりノイズを自由に使役する存在に雪音という既に人に危害を加える危険性の少ない問題に手を回しきれないというのもあるらしい。
……つまり、それまで雪音を守るのは当たり前ということだ。
「…ま、あんま焦んなよ」
軽く頭を撫でてやれば赤くなる姿に笑みが浮かぶ。とりあえず今はここから離れるのが先決だ。
…カッ
雪音の頭から手を離そう…として失敗する。あれ、手が雪音の頭から離れない。雪音が手を掴んでるわけでもない。というか、あれ?体が動かない。力を入れても震えるだけで自由が効かない?
【影縫い】
「………なにしてるのよ貴方達」
「……いやあんたが何してんだ!?」
気づけばいつのまにか風鳴先輩がすぐ後ろにまで近づいていた。おかしい、百メートルくらいの距離はあったし木に隠れてたのに。というかほんと体が動かないんですが…。
「………あの、これ解いてくれません?」
「ええ。あまり怪しい真似は辞めてよね」
そういうと風鳴先輩は地面に突き刺さっていたシャーペンを引っこ抜いた。するとガチガチに固まっていた体が嘘のように軽くなる。…シャーペンでいいのか。忍者怖ぇ…。
「………風鳴先輩って忍者の末裔とかなんですか?」
「緒川さんに教わっただけよ。私はただの防人だから」
「ただの防人…」
…いや呑気に話してる場合じゃなかった。俺の体を盾にするように隠れている雪音の存在がバレないように逃げようとしてたのに、これだと意味がない。
…てかやっぱ変装してようがなにしようが、この銀髪が分かりやす過ぎてバレてる気がする。頭隠して髪隠さず。フワフワ揺れる銀髪を俺の体一つじゃ隠しきれるわけもなく、風鳴先輩がジッと俺の後ろを見つめている。
「………」
「……え、えーと」
何か、何か言わなきゃ。むしろサヨナラしたいけどさっきみたく陰縫いされたら逃げ切れない。こんな時小町がいたら風鳴先輩に纏わり付いてその隙に逃げられそうなのにっ。
「お兄ちゃーん!」
「こ、小町!……こまちぃ?」
地獄に女神、待ち侘びた声を背中に受け嬉々として振り返れば、自分の目を疑った。
たしかに小町が走ってきている。だがそれだけじゃなく、後ろに二人ばかし知った顔が並んで走ってきていた。
「はぁっ、はぁっ。つ、翼さーん!」
「………立花に小日向、だと…」
……新たに増えた刺客に必死に背中に隠れる雪音をどうしたものか。正直近くて背中が柔らかいんだけど。もうこれ逃げられねえよなぁ。
「お、遅れてすみません!」
「…ふぅっ。予想できてるかもしれませんが、響のいつもの寝坊です…」
「小町もモーニングコールしたんですが、予想より手強かったみたいで…」
小町の言ってた予定ってそれかよ。ってことは小町はここにこいつらが来ることを知ってたってことだよな。
「………で、なんで小町が立花と小日向連れて走ってきたんだ?」
「なんでって?一緒に遊ぶからに決まってるじゃん。…きゃー!本物の翼さんだー!握手とサインくださーい!」
…こ、こいつ。自分が何したかまるで自覚なくはしゃぎやがって…。そういや小町にあの場所のこと教えたのはこの二人だったな。つまり雪音関連でこいつらも知り合いだと小町が読んで遊びに誘ったってことか…。
「………なあおい。実は二課の策であたしを拘束する為の演出じゃないだろうな?」
「…それはない、はずだ。そもそも小町は二課のにの字も知らない無関係者だぞ」
「それでこうもピンポイントに釣ってくるのか!?」
「…バカが一番怖いな。どうする、帰る?」
「当たり前だ!こんな奴らと遊んでられるか!あたしは家に戻るからな!」
雪音が背中に張り付いてるので小声で話せているが、既に立花に雪音がロックオンされてるあたり逃げられるか怪しい。
「………ねえねえ、八幡くん」
「な、なんだ?」
「さっきから気になってたんだけど、もしかして後ろの子って…」
ひょいひょいと覗き込むように雪音の顔を見ようとする立花と必死に俺を盾にする雪音の戦いが始まった。…うん、やっぱ変装意味ねえよな。
「………やっぱりクリ…」
「ひ、比企谷!」
「……え?」
「あ、あたしは比企谷…ソネット!…は、八幡の従姉妹なんだ!今日は八幡とあそ…で、デートに来ただけで!ほ、ほら行くぞ八幡!」
顔は背中に、腕は前に回すように雪音が俺を引っ張り始めた。というか後ろに歩き始めた。全員キョトンとしてるし、小町も不思議なものを見る目でこちらを見つめている。俺も雪音が何言ってるのか全然分からないんだが…。
「………何言ってんだお前」
「ご、誤魔化さないとだろ!?」
「俺と従兄弟とか色々無理筋が過ぎないか?髪の毛とか」
「他に思いつかなかったんだよ!」
必死に引っ張っているが後ろ向きでそんなスピードが出るはずもなく、あの高速コミュ力お化けの立花からは逃げられない。俺の腹に回されてる手をいい事に、その上からガッチリ雪音の手を包み込んだ。
「ソネットちゃんって言うんだね!私は立花響、15歳!これからみんなで一緒に遊ぶからソネットちゃんも来ない?」
「い、行かねえよ!」
「そんなこと言わずにー!今日小町ちゃんや八幡くんも含めた皆んなで遊ぶの楽しみにしてたんだよ?」
「ならあたしは要らないだろ!」
「そんなことないよ。私はソネットちゃんと仲良くなりたいって思ったから。一緒に遊べたら凄く嬉しい!」
ギュッと立花の手に込められている力が強まるのを感じる。知っている、優しい手だ。逆に雪音の手からは力が抜けていく。顔を背中に押し付けられているからどんな顔をしているのかは分からないが。
「ね、未来と翼さんもいいですよね!?」
「………うん、ソネットがいいなら私も一緒に遊びたいな」
「…そうね。私は同世代の友人が少ないから。一人でも増えるなら喜ばしいことだ」
「小町はもちろん賛成ですよ、お義姉ちゃん!」
……余計な事をと思った小町の計らいも悪くないのかもしれない。雪音の別人発言もここに来て悪い方向に進んでいない。恐らく雪音の変装なんてバレバレだ。だって顔隠してるから眼鏡見えてないし。つまり全員理解して尚、雪音の友達になると言ってくれている。これからのことを考えるなら、雪音が頼れる人間としてこの中の一人でも多く認められるなら…。
「………なあ、今日一日だけならいいんじゃないか?」
「は、はぁ!?本気で言ってんのか!?」
「あいつらも気付いてないみたいだしな。ただ、遊びに行くだけだ。敵対しないし、二課とかも関係ない。俺も全然経験ないけど、同年代で遊びに行くのは普通らしいぞ?」
「………。〜〜〜!」
ゴネるように奇声をあげたと思ったら腹が一瞬勢いよく締め上げられた。というかまだ雪音は腹に手を回してるし、立花はその手を握ってる。なんだこの状況。俺を介さずにやれよ。主に俺の腹の為に。
「…………今日だけだからな」
「やったあ!楽しみだね!」
「楽しみなもんか!」
バンザイしながら小日向にハイタッチまでかます立花には呆れるが、やはりこういう時に進んで手を取ってくれる立花の存在は心強い。
「………ま、楽しめよ。ソネット?」
「………ばか」
XDUでは立花クリスになってたのでこれ最強じゃねと、ネタとしていただいた。あのストーリーも一枚絵が最高だったなぁ。
翳り裂く閃光復刻してるのでやってない人是非。グレビッキーの魅力はもちろん、クリスのお返し自己紹介だけで泣けるよ。
補足だけどソネットはクリスのお母様の名前です。