やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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エルザちゃん可愛い。そして切調の技相変わらずエグい。エグくない?拷問道具じゃなくなったけどあれ実際やったら処刑道具よ?

筆休めというか幕間回?ただ遊ぶだけ。


やはり歌の聞こえる世界には届かない。

「………よっ、ほっ」

 

 

軽快な声を出しながらソネット……もとい雪音が銃を撃つ。並み居る敵をバッタバッタと打ち倒す芸当は見ているこちらも感嘆の声を上げてしまうほどだ。

 

 

「………とっ、たっ、ちょせぇ!」

 

 

……ちょっと?隠す気ある?

 

 

「………ラスト!持ってけ全部だ!」

 

 

 

 

 

 

 

【Congratulation!】

 

 

 

 

ゲーム画面にデカデカと賞賛の文字が浮かび上がる。よくあるゾンビを銃で撃つゲームを遊んでいたのだが、完全に雪音の独壇場だった。

 

 

「ソネットちゃんすごーい!全部クリアしちゃった!」

「はっ、ちょろいちょろい」

 

 

貴方すっごく楽しんでますね?いやいい事だけども。結局雪音ではなくソネットという名で通すことにしたらしい雪音は文句を言いつつも普通に遊んでいた。

 

ショッピングで着せ替え人形にされ、映画に涙し、ゲーセンでははしゃぎまくる。完全に巷のJKである。マジモンのJKである立花や小日向の隣にいれば違和感もなく周囲に溶け込んでいた。

 

 

「………ふっ」

「目線が親みたいよ?」

「……風鳴先輩は行かないんですか?あいつら車ゲーで勝負始めましたけど」

「初めて来るところだから。見てるだけでも楽しいわ」

「そっすか」

 

 

イッケイケのコーディネートからも見えるが、相当楽しんでいるらしいトップアーティストだ。この人も雪音と同じで娯楽というものに時間を費やした事がないとの事。娯楽品に囲まれて生きている自分には想像できない世界にいるとはいえ、楽しむことにそれほどの違いはないだろう。この人も買い物に笑い映画に泣き、ゲーセンで楽しむ只の人なのだ。

 

 

「………そろそろ聞かせてくれないかしら?あの子のこと」

「小町の可愛さなら語れますが」

「誤魔化さないで。雪音クリスのことよ」

 

 

…まあ、分かっちゃいたが誤魔化されてはくれないよな。むしろ結構遊んでから言及してくれた辺り誤魔化されてくれていたのだろうか。

 

 

「………別に話すことも無いんですがね。ほんと、ただ遊んでるだけです。小町がアホな引き合わせした偶然ですよ」

「…信じられないわ」

「不信がられるのは慣れてます。まあ言及するにしても最後にしたらどうです?こんな機会滅多に無いんでしょう?あいつも……先輩も」

「………そうね」

 

 

…俺が歩く場所は変わらない。団体があればその最後尾につく。今だって前にいるべき風鳴先輩が後ろに来ているに過ぎない。

 

…だが風鳴先輩にも見えるだろう。一番後ろは前を進む人達の姿がよく見える。立花も、小日向も、小町も、そして雪音も。笑顔を浮かべているこの瞬間を、風鳴先輩の目に写しているはずだ。それを壊したく無いから、風鳴先輩も受け入れてくれたのだと思う。

 

 

「………ところで、比企谷はこういう遊び場には慣れてるの?」

「場所には慣れてますよ。基本ぼっちですけど」

「あら。なら貴方も『こんな機会滅多にない』んじゃない?」

「………見てるだけでお腹いっぱいです」

「………まあ、な」

 

 

目を向ければ…

 

 

「………あっ!こ、このバカ!崖側で甲羅とかふざけんな!」

「ふっふっふ。勝負は非情なんだよソネットちゃん!」

「………あ、青甲羅」

「…待って!今私が一位なんだよ!?み、未来なら見逃してくれるよね?」

「………えいっ」

「あーーー!」

「ごめんね響。お先に」

「小町もお先でーす!」

 

 

…姦しく、仲睦まじい。

 

 

「負けたーー!未来酷いよぉ〜」

「勝負は非情、なんでしょ?」

「お義姉ちゃんもドンマイです!」

「…このバカとの足の引っ張り合いして時間食っちまった、くそっ」

「もう一回!勝てるまでもう一回!」

「私もこのまま引き下がれっか!」

 

 

………平和だ。ここにいる人間がノイズと戦っているなんて嘘のように平和だ。

 

 

「翼さんも一緒にやりましょー!協力して未来や小町ちゃんを倒しましょう!」

「ひき…八幡も来い!纏めてかかるぞ!」

「………仕方ないわね」

「…これそういうゲームじゃねえから」

 

 

だがどれだけ楽しくても現実は残酷だ。明日から、いやもしかしたら今すぐにでも戦いが始まるかもしれない。だからこの瞬間だけでも思う存分楽しんでもらおう。

 

 

 

「………これ、何?雷かしら?」

「ちょっ、なんてモン取りやがる!?」

「待って翼さん!今使われたら落ちちゃう!」

「………使えば全員に攻撃できますよ」

「お兄ちゃん一人だけスター取ってるからってぇ!」

「………せい」

「「「あああああ!!!」」」

「………あれ?落ちたら目の前にゴールが…」

「ショートカット…だと…」

 

 

…おかしい、小日向に勝てない。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

inカラオケ

 

 

 

「……お兄ちゃん。やばいよやばいよ!つつつ、翼さんとカラオケだよ!?こんなことあっていいの!?」

「………落ち着け。俺も別の理由でテンパってんだから落ち着かせろ」

「だめだこのお兄ちゃん…。お義姉ちゃーん!小町に平穏をくださーい!」

「だぁーこんなところでくっつくな!」

 

 

………やばい。どうしようやばい。いや風鳴先輩というトップアーティストのカラオケに同席できるというだけで、一般人からしたら金を撒いてでも欲しいポジションであることは理解してる。だがそれよりも俺が心乱している理由がある。

 

 

「はぁぁ。凄いよ未来!私達トップアーティストとカラオケ来てる!」

 

 

………この小町と同じ、風鳴先輩萌え萌えキュンな立花がいるカラオケ。歌が聞こえないカラオケとか何を楽しみにするんだと思うが、ただ一人歌が聞こえる人間がいるなら話が別だ。櫻井女史に立花なら頼めば歌ってくれるだろうと言われていたが、いざじっくり聞ける場面が訪れると緊張してしまう。

 

 

………パないの。

 

 

 

 

 

♪恋の桶狭間

 

 

 

 

 

「………なん、だと?」

 

 

周りが盛り上がってる中意気揚々と渋い曲がカラオケルームに入り込んで来た。今時のJKってアップテンポでジャンジャカした曲ばかりだと思ってたが…。流行りの曲とか知らんけど。

 

 

「…一度こういうの、やってみたかったの」

 

 

照れるような顔をしつつも自然に前のスペースに出るあたりこの人は歌手なんだなと、余計な事を考えたり。拳を握りノリノリで歌っているのだが……聞こえん。シュールオブシュール。トップアーティストの口パクとか喜ぶやついるのだろうか。

 

……いや、それも俺だけか。俺以外の全員が前で歌う風鳴先輩に目を奪われている。ファンである立花や小町はもちろん、小日向や雪音まで聞き惚れるように注目している。

 

………こういう時に乗れないのはいつものことだ。小さい頃から歌が聞こえないこの耳。原因が分かっても歌が聞こえる事を許してはくれない残酷をただ受け入れるしかない。

 

…目の前で歌われるたびに、他の歌も聞きたくなってしまう。立花の歌を聴いてしまったから。

 

目の前で沢山の歌が流れていく。風鳴先輩の勢いを失くさない勢いで小日向と立花がデュエットし、小町が雪音を引っ張り一緒に歌った。風鳴先輩が歌うたびに全員が注目し、雪音が歌うたびキャーキャーと可愛いコールが鳴る。俺も立花が歌う時にはじっくり耳に刻み込んでとなんやかんやで楽しんでいた。

 

 

「……ねえ、八幡くんは歌わないの?」

「歌える曲がない」

「翼さんの曲とかは?」

「ちゃんと聞いたことなくてな」

 

 

………そして暫くした時、予想してた状態へ入った。カラオケとは歌を歌う場所。既に俺を除く全員が何曲か歌っている。小町が気を利かせて俺の順番を飛ばして曲を入れてくれていたが、時間が経てば一曲も入れていない人間に目が向くというものだ。

 

…歌が聞こえないというのは、もう受け入れた。だけど今ここで伝えるのはみんなが盛り上がってる空気を壊してしまいかねないという躊躇もある。

 

……いや、今更か。全員が俺を見て不安そうな顔をしている。普通なら「みんな盛り上がってるのに一人だけテンション低くてマジ萎えるんですけどー」と言われるところだが、こいつらの場合「自分達だけ楽しんじゃってたかな?」となってしまうのがとても辛い。

 

…ああならむしろ、ここで教えといたほうがいいかもしれないな。

 

 

「………あー、なんつーか。俺生まれつきで歌が聞こえないんだよ。BGMみたいな楽器の音は聞こえるんだけど、歌だけさっぱりでな」

「え…。それって聖遺…」

「不思議な病気ね」

 

 

一般人である小町の前で聖遺物の事を話そうとする立花を風鳴先輩が遮った。というか小町以外聖遺物について知ってるので、話したほうが状況を認知してもらえるだろうという読みだったのだが。

 

 

「それで医者とか()()()人に診てもらったけど解決の目処がつかなくてな。そのまんまって感じだ」

「………そうだったの」

「悪いな、空気悪くして」

「別に貴方のせいじゃないわ。…でもそんな空気でもなさそうだし、あと一曲歌ったら出ましょうか」

 

 

…まあ案の定明るい系女子組がなんか暗い顔に変化してしまっている。カラオケという歌を歌うという場所がなお一層俺の症状に余計な影をつけてしまってるせいでもあるが。

 

だからその分も相まって風鳴先輩の気遣いがありがたい。気を使いつつも歌をもう一曲歌って空気を少しでも軽くしようとしてくれたのだろう。

 

 

「………さて、最後の一曲だけど。ご一緒願えるかしら?」

 

 

……そう思っていたのも束の間。風鳴先輩がマイクを雪音に向けて差し出した。

 

 

「………な、なんであたしが」

「貴女の歌を聴いて、歌ってみたくなったじゃダメかしら?」

「そ、それにあたしとアンタの知ってる曲なんて……」

「………そうね、これなんてどうかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

ORBITAL BEAT

 

 

 

 

 

「………正気か?」

「ええ、本気よ。貴女と私で、歌いましょうか」

 

 

……もうマイクを差し出すなんて柔らかい雰囲気じゃない。態とらしく投げ渡し、雪音も喧嘩を売られたような顔でマイクを掴み取る。

 

…たしかにもう俺の耳が云々という空気が吹き飛ばされている。しかもよくよく曲を見れば歌い手が『風鳴翼』と『天羽奏』のツヴァイウィングの曲らしい。

 

……敵対しているはずの相手にかつての相棒の曲を共に歌おうとする。相棒を忘れていないという皮肉にも見える。逆に友へと歓迎しているようにも見える。

 

…だが雪音と歌を通わせようとする風鳴先輩は、少しだけ柔らかい顔をしていた。

 

 

 

「………」

「………」

 

 

 

睨みつける雪音と笑みを浮かべる風鳴先輩が並び、軽快な音楽が流れ出す。風鳴先輩が歌い出し、追従するように雪音が音を紡いだ。

 

風鳴先輩が力を込めるように姿勢を取れば、雪音は自分の声を誇るように胸を張る。先輩の勝気な笑みを雪音が受ければ、余裕綽々と言った笑みでそれを返して歌が続いていく。それに感化されるように小町に立花、小日向までもが体でリズムを取り歓声を上げる。

 

……ああクソ、羨ましい。見てるだけじゃわからないんだ。楽しんでいるのは先輩の顔を見れば分かる。息がぴったりなのは雪音の刻むリズムが物語る。歌が素晴らしいのは三人の観客が伝えてくれる。

 

…そんな部屋の中で、たった一つの空間だけ熱が遮られてしまっている。そのどれか一つだって理解できない存在が自分だというのが忌々しい。

 

……いつか。いつかもしも奇跡が起きたなら。あの遠い世界を、俺も感じることが出来るのだろうか。

 

 

 

…長い時間。たった一曲の筈の時間が終わるまで、俺はその世界をただひたすら眺めていた。

 




シンフォギアで不満なところ1。翼クリの歌が一曲しかないとこ。もっと、もっとくれよぅ!

てか最近感想返信遅くて申し訳ない。期間は変わらなくても筆と妄想が進んでモチベは高いです。だから余分な話がズイズイ入ってくる。

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