やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
ようやく幕間回や筆休めが終わって書きたいものを書き始められた感。
ライブ当日
「……人、人、人。浮かれた群スズメかよ」
「しかもこれ全部風鳴先輩のライブ見に来てる人ってんだから凄まじいよな」
「私達もその一人だけどね。遅れてる響以外…」
「こんな時に用事で遅れるなんて響さんも付いてませんねえ」
風鳴先輩のライブ当日、渋る雪音の対処は小町に任せてやってきましたライブ会場。指定席なので入場の時間を入口解放から少しずらしての来場だったが、まあ人が多い。サイリュームを買う店に至っては長蛇の列が開演時間まで途切れることが無いのではと思うくらいの量だ。
「……はあ、いるだけで疲れそうだ。さっさと席行くか」
「待ってよお兄ちゃん!サイリューム!あれ買わないとライブに来たとは言えないよ!?」
「え、あの光る棒そんな価値あんの?」
「知らないけどみんな振ってるし!必要必要!買いに行こう!」
「あ、だったら私がみんなの分買ってこようか?全員で並ばなくても…」
「ダメですよ未来さん、甘やかしちゃ。ん〜、それならこうしましょう!私とお義姉ちゃんは飲み物を、お兄ちゃんと未来さんはサイリュームをお願いします!それなら効率よく買い物できますしね」
「わかった。それで良いよ」
…流れるように役割分担を決められてしまった。正直盛り上がれる自信がないから席で大人しくしていたかったんだが。あと人混みに酔ってる雪音を引っ張るの辞めてやれ。グロッキーだぞ。
「それじゃ、行こっか」
「…ああ、そうだな」
行くなら行くでさっさと行かないと開演に間に合わないかもしれない。いや流石に捌けるだろうが、わざわざ招待されて遅れて見始めるのも後味が悪いしな。
「そういや立花はまだ来ないのか?」
「今さっき終わってすぐ向かうってメールが来てたよ。もう、響ったら」
「相変わらずで安心するけどな」
締まらない部分が立花らしいと言ったらあれだが、プラスとマイナスの部分がハッキリしてるのはとても人間らしい。まあこんな日に用事があるのはついてないと言わざるを得ないが。
「……てかあの棒ほんと何のためにあるんだ?」
「ライブだし参加してる一体感とか?」
「そんなもんか」
だらだら話していれば時間とはあっという間に過ぎていくもので、気がつけばサイリュームを手に客席にたどり着いていた。既に飲み物を買い終えて客席にへたり込んでる雪音と、楽しみを抑えきれない小町も一緒だ。
「おまたせ」
「あ、お兄ちゃん。ありがとー!」
「一人一本でよかったか?」
「うん、大丈夫!よーし、これ持って楽しもう!」
「あ、あたしもう疲れた…」
「始まってすらいないのに…」
装者のように戦ってる人間は体力が多いイメージだったが、どうやら雪音はそのタイプとは違うらしい。しかしへにょりとしながらも帰ろうと言わないあたり何やかんや楽しみにしているのだろう。
……むしろ問題は俺だ。すっげえ帰りたい。
いや、分かる。うん分かるとも。多分これから途轍もなく盛り上がる。俺の考えや気持ちとか全部放置して盛り上がるに決まってる。トップアーティストと呼ばれて多くの人達が押し寄せる会場だ。惹き寄せる魅力があるからこそ人は集まる。
だからこそ場違い感で死にたくなる。あのカラオケルームの拡張版と考えれば、また歌の聞こえない世界に嫉妬してしまいそうだ。
「………」
……まあ、口には出さないが。
「楽しみですね!翼さんの生ライブ!ああっ!待ちきれない!」
「ほんとだね!私も実際に会場で見るの初めてなんだ!」
「あの人の歌ねぇ。こんな会場で聞く価値あんのかよ…」
隣で既に盛り上がってる人間の邪魔をするわけにはいかないしな。キャイキャイとこれからのライブに想いを馳せてる二人に、ようやく回復したのかじっと未だ誰も登っていないステージを見つめる雪音。
それだけじゃない。時間を何度も確認する者。早く振りたいとサイリュームを握る者。一緒に来た人間に抑えきれない期待を語る者。多種多様の想いを前に風鳴先輩は歌を歌うのだ。
…ならその想いの一つ、立花は何を思うのだろう。未だ空席を作る空間を見ながら夢想する。
二年前このライブ会場で一万人を超える人間が亡くなった事件、その被害者でありながらその後を引くイジメ問題。守られ助けられ、乗り越えてなおここは立花にとって因縁の場所であるはずだ。
だが人助けの力であるシンフォギアを纏う原因にもなり、ツヴァイウィングと縁を結んだ場所でもある。プラスの気持ちとマイナスの気持ち。そのどちらも合わせ含んだこの空間。複雑な想いの宿る場所。
……それを理解していない風鳴先輩ではないと思うんだが…。
「……何考えてんのやら」
あとそろそろ始まるけど立花間に合うのか?
☆☆☆
side翼
「……みんな、来てくれただろうか」
舞台裏で衣装を身につけ、椅子に座りながら思いを巡らす。同じ学校であったり快く見に来ると言っていた小日向や立花に小町はともかく、比企谷や雪音は来てくれるだろうか。チケットを押し付けてしまったのは少々強引だった自覚もある。来てくれなかったら、それも仕方がないとは思う。
「………それでも、見てもらえるといいな」
二年間止まったままだった時間がようやく動き出したことを肌で感じる。そのきっかけとなったのがあの子達なのか、それとも奏と同じ
…変わったのか、それとも変えられたのか。
何が要因かは分からない。それでも思い出したんだ。歌に血を流し、平和な歌を歌い、誰かと共に歌うことで思い出した。
…私が、こんなにも歌が大好きだったことを。
…だから片翼でも歌おう。両翼揃ったツヴァイウィングは、どこまでも遠くへ飛んでいける。両翼揃わぬ片翼でどこまで飛べるのか。その果てを見てみたい。
「本番、お願いします!」
「……はい!」
これは第一歩だ。みんなへ歌おう。風鳴翼が歌うのは、
ウォオオオオオオ!!
………歓声と共に音楽が流れる。かつてオレンジ色に染まっていたサイリュームは衣装と同じ青色に変わっている。会場を埋め尽くす人から発せられる熱気がまだ歌ってもいないのに押し寄せて来る。
この全ての人たちが私の歌を聴きに来てくれている。その為だけに来ている。戦場に歌う戦士の曲ではなく、歌女とある私の歌を聴きに来ている。
『今日みんなで遊んだ場所も、遊んでないところも全部翼さんの知ってる世界です。昨日に翼さんが戦ってくれたから、みんなが今日暮らせている世界です』
………ああ、そうだな。忘れていたよ、立花。
『…だから、知らないなんて言わないでください』
………ああ、知っていたとも。目の前にある人々の輝きが、私や奏が守っていた世界だったんだな。理解できなかっただけで、理解しようとすらしていなかっただけで、ずっと目の前に広がっていた、戦いの向こう側にある世界。
………私は、そこでも歌いたい!
♪FLIGHT FETHERS
ウォオオオオオオ!!
歌が始まる。歌を紡いでいく。歌を伝えていく。
覚悟の歌だ。決意の歌だ。旅立ちの歌だ。
…片翼の歌だ。私の歌だ。風鳴翼が歌う歌だ。
幾十と成してきたライブよりも手に力が入り、歌に命を乗せていく。今まで手を抜いていたわけではない。それでも何かが違う歌だと自分でもわかるくらい感情が歌に伝わっていく。歓声は連なり、光が溢れて止まらない。
……みんなは聞いていてくれているだろうか。この光のどこかで、この歌を受け取ってくれているだろうか。私は今日、ここで過去を乗り越える。その決意を、友であるみんなに聞いていて欲しいんだ。
誰かのために歌いたい。知らない誰かの為に歌いたい。だけどようやく、その誰かに自分を加えることができた。心を殺さず、感情を失くさず、人として歌う覚悟ができた。
そして何よりも、
そのために…っ
♪片翼の羽根と…
聞いてくれ。奏、立花、小日向、比企谷、小町、雪音。そして叔父様や二課のみんな。ここへ来てくれた観客に……!
♪
前を向こう!上を向こう!その為に歌うと私は誓おう!
比企谷!歌が聞こえなくとも見ていてくれ!
雪音!歌が嫌いでも聞いてくれ!
立花、小日向、小町!私の歌を聴き続けてくれたなら、これからの私を信じてくれ!
二課のみんな!これからの未来も私の歌を支えて欲しい!
歌が好きなんだ。大好きなんだ。この身を剣と定めてなお人として歌いたい歌がある。片翼を失ってすら、歌いたいと願う心がある。
……そしてこの歌を、もっと多くの人に伝えたい気持ちが芽生えた。私の歌を好きだと言ってくれる人がいる。私の歌で救われたと言ってくれる人がいる。
もっと、もっと多くの人に。それこそ世界中に向けて歌ってみたい。言葉が通じなくても、歌の力を信じてみたい。
………ああ、不思議だ。剣であればいい、防人であればいいとずっと思っていたのに。
一歩踏み出しただけで未来が広がっていく。なりたい自分が増えていく。
………許してもらえるだろうか。目の前で聞いてくれる人達に。
………許してもらえるだろうか。奏と違うステージへ向かうことを。
………許してもらえるだろうか。
[許すさ、当たり前だろ?]
…聞こえるはずのない声。それでも、温もりがこの胸に響いてくる。それを包み込んで、それも合わせてまた歌を歌おう。
私の全部が歌になる。歌の全部に私がいる。だから全力で歌を歌おう。
それが私の生ききる力だと。胸を張って言えるように。
空へ…。
ライブの日に何かが起こるなら、プラス方面の何かがあってもいいじゃない。
無印:ノイズが現れ1万人と奏死亡
G:ノイズを操るアイドル大統領現る
GX:SPは死に、トップアーティストの服が剥かれる。
AXZ:ライブなし
XV:十万人死亡
………ミラアルクちゃんやり過ぎ。ノーブルレッドはやり過ぎたけどいい死に場所をもらった。