やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
一期って10話から13話まで同じ日なんだよなぁ。戦闘シーンはカットしたいけど心情は書きたいジレンマうごご。
………ここ最近は色々な事が起きた。ノイズ関連、二課関連。何故か始まったリア充的な休日に人生初ライブまで成し遂げてしまった。これはもうリア充だと言っても過言ではないのではないだろうか?いいや過言ではないだろう。
…だが、もし過言ではなかったとしても。普通のリア充ですら体験できない経験をしているならば、その人間を俺はなんと呼べばいいのだろうか。
「……すまないな比企谷。学校帰りだというのに付き合ってもらって」
「…いえ、別に…」
現在進行形でトップアーティストの隣を歩いている人間の事をなんと呼べばいいのか、自分が自分でわからない。前から思ってたけどこの人トップアーティストなのにフットワーク軽い、軽くない?
「道すがら車やバイクで通ることはあってもこうして直に行ってみる事が無くてな。比企谷がいてくれて助かるよ」
「そうですか…」
今日学校は半ドン、雪音も何故か朝からいないし小町は一日授業。たまの平日ぼっち日和だと思ったのだが、偶然出会った風鳴先輩との遭遇が全てを変えてしまった。
…主に寄り道という方面に。
「立花に言われたからな。この目に映る世界は私の知る世界だと。なら知ってる世界を理解していないのはもったいないでしょう?」
そんな理由で世界不思議(じゃない)発見のお供としてご同伴に預かる事になったわけだ。みんなで遊んだ高台からの景色を見て、知っている世界と認識を改めた風鳴先輩。
高いところからは景色がよく見える。だけど近いところからはもっとよく見える。そんな当たり前を感じるために学校帰りや仕事の合間に世界を知り始めたのだと。
「……そういえば、私のライブはどうだった?」
「よかったんじゃないですか?大声で叫んでる人もいれば泣いてる人もいましたし」
「そうか。私はあの歌に今の自分の全てを込めたつもりだ。両翼は揃わなくても、片翼だけでも世界へ飛んで見せると歌えたと思っている」
「………まあ、それが伝わったかは最後の歓声が物語ってますよ」
「あら、褒めてくれてるの?」
「…事実を言ってるだけですよ」
「ふふ、貴方にも聞かせられればよかったんだけどね」
そう言いながら風鳴先輩は手元のイチゴクレープに齧り付き、俺も買いたてのチョコバナナクレープを頬張った。
風鳴先輩の後をついて行った場所は、本当にただの寄り道だった。今のように買い食いができる場所、ひっそりと立つバイク屋。最近オープンしたばかりの本屋や、風鳴先輩を大きく張り出した老舗のCDショップなど。
目的もなく、当てもなく。ただ街を進んでいるだけなのに俺の知らない姿がどんどん溢れてくる。それだけじゃない。知り得ない、想像もつかなかった風鳴先輩の姿も俺の目に代わる代わる入り込んでくる。
可愛らしい服に「動きにくそう」と目を細め、バイク屋ではよく分からない部品に目を輝かせていた。本屋で刀の手入れの本を買ったかと思えば、CDショップの人気コーナーでは聞いたこともないのか首を傾げる。
そんな姿に、つい笑ってしまう。
「……何よ?」
「いえ、楽しんでるようで何よりだなーと」
「…そうね。私、甘いのも結構嫌いじゃないみたい」
「甘いのでしたらマックスコーヒーを……」
「残念、もし好きでもそんなには飲めないわ。これでもトップアーティストだしね。体重管理とかもあるから」
「よくそういうの聞きますけど大変そうっすね」
「そうでもないわ。細かいところは緒川さんがやってくれるしね」
「……相変わらずなんでもできる人なんすね」
忍者で特異災害解決に関係してて、トップアーティストのマネージャーしてるのに食事やら体調管理までしてるなんて何者だよ。いや忍者か。アンブッシュしても軽く流されてオジギされそう。
「……緒川さんには昔から助けてもらってるわ」
「頼りになる人が近くにいてくれて羨ましいです」
「あら、人のこと言えるの?」
「……?と言いますと?」
「貴方のことも色々聞かせてもらってるわ」
俺のこと?何か伝わるようなことあっただろうか。そも風鳴先輩が俺を気にかけるほど親しくした記憶はないんだが。
「立花からはあの子が落ち込んだ時に励ましてくれたと聞いたし、司令からは雪音を救おうと奔走したとも聞いているわ」
「……成り行きですよ。その場にいたのが俺で、何かできたかもしれなかったのが俺だっただけです」
「………そう。貴方は成り行きでも、人を救えるのね」
……救う。そんな簡単に言われる言葉じゃない。立花が小日向のことで落ち込んでいる時も、雪音が一人で彷徨っている時も、俺ができたのはただその場に崩れ落ちないよう支えようとした結果だ。
…手を引っ張るなんて俺にはできない。何せ親友なんていない、友達を自分から作るなんて考えもしなかった人間だ。先達なんて物には程遠い。進んでる人間の、その背中を僅かでも押せれば万々歳な人間に、救うなんて言葉は似合わないだろう。
「……買い被り過ぎですよ」
「…そうかもね。私も実際何があったかは分からないわ。でも今立花は明るくなって、雪音も変装していたとはいえ笑っていた。その過程には、きっと君がいる」
「……」
「今回はダメだったけど、いつかは君に私の歌を聴いてもらいたいと思ってる。その時は、また来てくれる?」
「……ええ、是非」
「………楽しみにしてるわ」
そう言うと、止めていた足を動かして進みだす。何処へともなく行っていたはずなのに、気づけばリディアンからさほど遠くない場所は辿り着いていたらしい。まだ日も傾いていない時間帯だが…。
prrrr!
「「っ!?」」
……だが、このままゆったりとさせてくれるほど優しい世界ではないらしい。
☆☆☆
『飛行タイプの超大型ノイズが3体、いえもう1体が出現!』
「……合計4体。すぐ駆けつけます!」
無線から届いたのは、初めはただの報告だった。新たな情報『カディンギル』と呼ばれる塔がフィーネにとって重要なものであるという。天を仰ぎ見るほどの塔、それがすでに完成している。それによってなにかを成そうとしていると。
そんな最中、情報が流れ出たのを察したかのような超大型ノイズの出現。それもきっと、偶然ではないのだろう。
「聞こえたわね。超大型ノイズ、それも4体。貴方は直ぐにでも避難を…」
「…………いえ、俺も動きます。リディアンに近いここからなら走れば直ぐに着ける。そこから何かサポートできないか司令に従います」
「……そう、分かった。無理をしないでね」
「…先輩も」
ここで風鳴先輩に時間を掛けさせるわけにもいかない。俺にできることはただでさえ少ない。邪魔にならないよう、なるべく助けになれるよう、動かなければいけない。
青い髪を靡かせて戦場へ向かう背中はライブの時とはまた違う強さがある。だがそれは戦う強さを持つ者の強さだ。シンフォギアを持たない時点でその背中に追いつけない。だからこそその背を支えようと二課の人々のように可能性を探る。
「…まずはリディアンに向かう。あとは……」
携帯に伸びる手が少しばかり躊躇いを覚える。巻き込んでしまうことに、この手にない物を持つあいつに縋っているような気になる。
だけどこの街には守りたいものがある。誰かに縋ってでも守りたい世界がある。きっとリディアンに着いて俺にできるのは避難誘導や避難民の気を紛らわすのが精々。それも大事な仕事だ。
…それでも、守れたかもしれない可能性を捨てたならきっと後悔してしまうだろう。
prrr!
自分の家へ電話を掛ける。雪音は携帯を持ってないから連絡手段が限られているからだ。だけど掛けている間、誰も出なければいいと思う自分もいる。メールを送った次の日に言われる「ごめーん、寝てたー」というお決まりの文句を期待してしまっている。
朝からいなかったから今もいないんじゃないか。家にいるけど寝てしまって電話に気づかないんじゃないか。いや、出たとしても小町かもしれない。少し早いが家に帰ってる可能性だってある。そもそも電話に出ないかも……
「……は、はい。ひ、比企谷ですが…」
………そんな願いも虚しく、電話に出たのは間違いなく雪音クリスだった。たどたどしく慣れない性を名乗って慌ててるのが電話越しでも分かった。
「……雪音か?」
「…ん?ああ、八幡か。どうかしたか?」
電話の相手が俺だと分かって安心したのか声から硬さが抜ける。家で寛いでいただろうか。それとも休んでいたか。話を逸らそうとする口を縫い止め、単刀直入に切り込んだ。
「……雪音、頼みがある」
「…なんだよ、改まって」
「今超大型ノイズが4体も街の上を飛んでる。これが自然災害ってこともないと思う。つまり…」
「フィーネか…」
察しが良くて助かる。カディンギルとやらを守りたいのか、それとも別の狙いがあるのかは分からない。だが今まで散発的なノイズしか発生させてこなかった相手がここまで大きく動く以上、人手がどうしても欲しい。
「……だから…」
「あー分かったよ!あたしも戦えってんだろ?ったく、お前も同じこと言うんだな」
「……俺も?」
「あーなんでもない、こっちの話だ。いいよ、あたしもやっと頭が纏まったんだ。一曲派手に歌ってやらあ」
想像したよりもあっさり受け入れられ、雪音のモチベも低くない。それどころか何か決意したように前向きで。俺がなにも言わなくても駆けつけてくれそうな頼もしさが感じられた。
「……そうか、じゃあ…」
「あ、待った八幡。一ついいか」
「ん?ああ」
「♪ーーーーーーーー」
「……?おい、どうした?」
「…………今の、聞こえたか?」
「は?何が?」
「………やっぱ聞こえねえか」
………急に黙り込んでその上何言ってんだ?それとも何か聞き逃してしまっただろうか。
「……すまん。聞こえなかった。もう一回…」
「……八幡!」
「……どうした?」
「あたしさ、夢ができたんだ。こんなあたしにも、叶えたい夢が見つかったんだ」
「……」
「…いつか聞かせる。絶対、絶対あたしの歌を聞かせてやる。それで、それでさっ!」
気持ちが先行して吐き出したい言葉に迷い続ける雪音の言葉を待ち続ける。でも、そんな僅かな言葉すら明るさが伝わる。見つけた夢、そこへの希望が伝わってくる。
「〜〜〜っ!………絶対だ!」
pi!
「……切れてる」
…言いたいことだけ言って一方的に切られてしまった。緊急事態だから早く行動しなくちゃいけないのだけど…。
………気になる。雪音は何を言おうとしていたんだろう。いや、雪音だけじゃない。風鳴先輩も、俺に歌を聞かせたいと言っていた。
…歌の力を届けるためか、それとも…。
「……ま、楽しみにしとくか」
何を思って何を考えているのか。そんなことは直接聞けばいい。言いたくなければそれでも構わない。今はただ目の前のことに集中しなければ、それすらも叶わないのだから。
俺は緩めていた速度を戻し、リディアンまでの道を急いだ。
シンフォギアって不穏な幕引き多くてリアルタイムだとビクビクしますよね。小説でやると区切り多くて不穏感が出しづらいんだよなぁ。
まあなんにせよようやく一期の終わりが見え始めた!