やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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数時間の間非公開になってて申し訳ないです。歌詞使って消されたら仕方ないと思ってたけどコード打てば使えたんですね。初耳でした。反省。

しかしなんでこんなにクリス回が多いのか。未だろくに絡めてない防人だっているんですよ!


今から、ここから

side翼

 

 

 

 

♪Imyuteus amenohabakiri tron♪(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

 

司令からの通信を受けスカイタワーに辿り着いて見たものは、空を埋めつくさんばかりの飛行型ノイズ。そこから落とされるノイズもあれば空を飛び此方へ飛び込んでくる物もいる。

 

 

「……ふっ!」

 

 

【蒼ノ一閃】

 

 

 

空へ向けて斬撃を飛ばす。ノイズを切り裂きながら超巨大ノイズに肉薄するも、勢い足りずに消え去った。この物量ではもう一度やろうと同じだろう。空を飛ぶ手段を持たない此方の戦力では厳しいと言わざるを得ない。

 

 

「……上を取られるのがこうも戦い辛いとは…」

「翼さん!私達もヘリで上から…!」

 

 

先行してヘリよりノイズの上から奇襲を仕掛けた立花と合流する。ヘリであればノイズの上を取れる。だがこの数、その上操作されているノイズ相手にヘリは……。

 

 

 

ドゥン!!

 

 

 

「ヘリがっ!?」

「……っ!よくもっ!」

 

 

考えるまでもなく、立花を連れてきたヘリがノイズの攻撃によって四散させられた。もし今から新たなヘリを寄越されても同じ結末を辿るだけだろう。ならば今は戦線を維持する以外になかった。

 

 

「臆するな立花。防人が後ずされば、それだけ戦線を下げることになる!」

 

 

未だ聞こえる周囲の悲鳴。ノイズがスカイタワーで暴れ始めてからそれほど時間が経っていない今、避難が終わっていない人達もたくさんいる。少なくとも避難が終わるまで後退の二文字は防人として刻むわけにはいかない。

 

 

(……しかしこの数は…)

 

 

…二人では厳しい。そう弱気になりそうになった時、空を駆けるノイズの一角が炭と消え去った。

 

…銃撃音。

 

 

「……雪音」

「……ふん。こいつがピーチクパーチク喧しいから、ちょっと出張ってみただけ。あたしは好きにやらせてもらうからな!」

「ちょっと!」

 

 

通信機に文句をつけた雪音が話す時間も惜しいとばかりにノイズの殲滅に走り始めた。

 

縦横無尽の遠距離射撃。高精度でありながら高火力。この場において最適解とも言える性能をもったシンフォギア装者が現れたのは正直心強い。

 

……心強い、が。

 

 

「……やはり超大型ノイズを倒すには至らないか」

 

 

無尽蔵に排出されるノイズが壁となり雪音のガトリングやボウガンも届かない。飛行機能のないこの三人では個々の力ではどうしてもあの超大型ノイズには届きえないのだ。

 

 

「……雪音!」

「っ、なんだよ!気安く…」

「ならばソネット。力を貸して欲しい」

「……っ!」

 

 

戦場で敵として相対した相手。同じ敵を相手にしている今だとしても、共に肩を並べるのは難しいかもしれない。

 

…それでも、ただの日常を共有した者同士なら。あのただ笑い合えた時間を過ごした相手ならば、伝わる何かがあると確信している。

 

だってあの時間で、私は前に進めたんだから。

 

 

「……。あたしは、雪音クリスだ。…ソネットじゃない」

「…ああ、だからあの日。共に街を歩いたのはやはり雪音クリスだ。肩を並べたのも、共に歌を歌ったのも雪音、お前だ」

「……っ。気づいてたならなんで言わない!敵だったんだぞ!?敵同士だった奴らが、そう簡単に分かり合えるなんて…っ!」

 

 

ペルソナを被った相手では分かり合えないと、雪音はそう言いたいのか。だがそれを知りつつ私は受け入れた。刃を交える相手ではないと信じたんだ。だからきっとできるさ。

 

 

「……できるよっ!」

 

 

…少なくとも私よりも早く、私よりもお前を信じている者がここにはいる。

 

抗う雪音の手を包み込み、優しく笑う立花。呆気にとられ手を振り払うことも出来ない雪音を見て確信する。悩み戦い、刃を交えてなお共に進むことができるのだと。

 

 

「……私ね、どうしてアームドギアが出せないのかってずっと悩んでた。いつまでも半人前は嫌だなーって。でもね、今はもう思わない」

 

 

独白する立花の片手が伸ばされ、私もその手を握る。伝えたい思いがこの手に集まっているように、強い意志が宿っていたから。考える前に、受け入れていた。

 

 

「この手に何も握っていないから、こうして二人と手を握り合える。仲良くなれるからね!」

 

 

グッと握られるその手は、優しく強く暖かい。戦場を駆ける私には考えた事も無かった考えだ。

 

……左手には立花の手が。右手にはアームドギアである剣が握られている。…うん、だけど違う。今私が握るべきなのは…。

 

 

 

ガッ!

 

 

 

右手にあった剣を地に打ち立て手を離す。私の覚悟を、戦場で離すなんてどうかしているのかもしれない。倒すべきノイズが居て、守るべき人がいる中で武器を手放しているのだ。戦士にあるまじき自殺行為に価する。

 

…ああそれでも、この手で握るべきなのは。

 

 

「……雪音」

 

 

空いた手を雪音に差し出す。剣ではない、雪音と手を繋ぐこと。今はきっとそれが一番、私が()()()()()だ。

 

 

「……っ」

 

 

雪音の手が控え目に浮く。握ってもいいのか迷うように、触れるのを恐れるように揺れ動く。

 

…それが一瞬引き下がった瞬間、咄嗟に雪音の手を掴んでしまっていた。

 

 

「……っ!?こ、このバカに当てられたのか!?」

「そうかもしれない。…きっと貴女も」

「……冗談だろ」

 

 

振り払われてしまったが、悩むくらい繋ぐ可能性を見せてくれた。それだけでも充分だ。初めの一歩があれば、これからきっと仲良くなれる。

 

 

 

 

《オォォォォン!!》

 

 

 

 

………無粋な。いや、むしろ好機か。

 

 

「……親玉を潰さないとキリがないな」

「だったらあたしに考えがある。あたしでなきゃ出来ない事だ」

 

 

歯を見せ笑う雪音に目を向ける。自信の程が滲み出ているようだ。

 

 

「イチイバルの特性は長射程広域攻撃だ。ギアの出力を引き上げつつも放出を抑える。行き場のなくなったエネルギーを一気に解き放てば…」

「…だが、その間は無防備になる。四方をノイズに囲まれている今、危険過ぎる」

「……それも、私達がクリスちゃんを守ればいいだけのこと!」

 

 

………言い切ってくれる。それも立花らしい。

 

雪音が身を切り、立花に迷いもない。なら乗らない理由があるはずもない。

 

打ち立てていた剣を手に取り構える。振り払われた手だとしても、そこにはたしかに雪音の手を掴んだ事実がある。それがまた一つ、私に力をくれた。

 

 

「……雪音」

「んだよ?」

「貴女はもう少し、自分のしたいことをしてもいいと思うわ」

 

 

……少しの間だけだったけど、雪音の性格も分かってきているんだ。勝気で喧嘩っ早いのに臆病で遠慮しがち。分かってはいるが、もう少しだけ立花のように振舞ってもバチは当たらないだろうに。

 

力を貸してくれた事の感謝と、手を振り払われた小さな仕返しを込めて。理解していない雪音を置いて、ノイズの群れへ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

sideクリス

 

 

 

「貴女はもう少し、自分のしたいことをしてもいいと思うわ」

「……はぁ?」

 

 

それだけ言い残して風鳴翼がノイズの群れへ切り込んで行く。先程あのバカが言った通り、あたしの準備が整うまでの時間を稼ぎの為に。

 

…それだけなら黙って行けばいいものを。そう思わざるを得ないが、頼まれてもいない事を引き受けたことでチャラにしてやろう。何より、これは間違いなく夢への第一歩。歌で世界を、その始まりの歌なのだから。

 

 

…思い切り歌おう。

 

 

 

 

繋いだ手だけが紡ぐもの♪

 

 

 

 

♪なんでなんだろ?心がぐしゃぐしゃだったのに

 

 

♪差し伸ばされた温もりは嫌じゃなかった…

 

 

 

 

 

歌を歌うたび、力が溢れていく。きっと進むべき場所が、目指すべきものがはっきりしたからだ。

 

……嫌いじゃなかった。あのバカや風鳴翼と遊ぶのだって。初めてのライブで音の海に包まれるのだって、嫌じゃなかった。そこが叶えた夢の先にあるような気がして、ずっとそこに居たいとすら思ったよ。

 

………したいこと。したいことか。あたしは歌で世界を平和にしたい。パパとママの夢を引き継いで、今度こそその夢を叶えたい。それがきっと、あたしのしたいことだ。

 

…だけどなんでアイツは今そんな事を言ったんだろう。アイツがあたしの夢を知ってるはずもない。もし知ってても、やはり今言うにはタイミングが違う気がする。

 

………したいこと。…もし、もしもだ。このまま、普通に先に進んで。未来を生きて。当たり前の平和が生きれるのなら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪今から、ここから、いつでも…

 

 

 

 

…笑ってもいいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

相手を見下して牙を剥く笑いじゃない。涙を飲んで無理矢理引攣らせる笑みじゃない。当たり前に、突然溢れてしまって、涙が出るように笑ってしまう。

 

……そんな風に笑ってもいいのかな。許して、もらえるのかな?

 

パパやママ。あいつらにも…。

 

あたしのこれからを、信じてもらえるのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「託した!!」」

 

 

「……っ!なんてタイミングだよ」

 

 

 

歌で力が溢れ出る。臨界点に到達するこの熱さ。だがそれすら心地いいくらいの、言葉だけで信頼を投げつけられるように背を叩かれた。

 

……こんなことされたら…

 

 

「あたしも引き下がれねえじゃねえかっ!」

 

 

 

 

【MEGA DETH QUARTET】

 

 

 

 

背中に大型ミサイル四機。さらに腰部のパーツには小型ミサイルに両手にはガトリングを携えた。二人の奮闘でノイズに襲われることもない。だから襲い来るノイズを無視して超大型ノイズとその軌道を邪魔するノイズだけに集中できる。

 

 

……撃つ、撃つ、撃つ。

 

……放つ、放つ、放つ。

 

 

行き場を無くしたエネルギー、ガトリングやミサイルに乗せられてそれらが空のノイズ達を喰い千切って行く。

 

そして最後に、大型のミサイルが三体の超巨大ノイズを撃ち抜いた事で供給が打ち止めになった。

 

 

「……やった、のか?」

「たりめーだ!」

 

 

残された空には灰の雨が浮かび、この場の勝者が三人の装者であることを告げるファンファーレのようだ。

 

 

(………敵同士だったのに、なんでだろうな)

 

 

この三人で勝てたことが、素直に嬉しい。力を合わせられたことが、そのために歌えたことが。そして何より……。

 

 

(……あたし、笑ってんな)

 

 

自然と浮かぶこの笑みこそが、先を向けたのだと教えてくれるようで。

 

 

(…したいこと、できたかな?)

 

 

 

分かりきった疑問で、また一つ笑みが浮かんだ。




また一つ書きたかった瞬間が文字にできた…。
毎回何か後書きに書きたかった事があった気がするけど、書き終わると頭の中すっからかんで何書けばいいか分からない…。

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