やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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FGO イベント中は更新止まるね、仕方ない。

基礎知識
板場→まるでアニメじゃない!
寺島→ナイスです!
安藤→キネクリ先輩!

なんで主人公が推理力高くなるのか分かった。凄く文字数いける。ちぃおぼえた。


やはり『人助け』はまちがっていない。

時は少しだけ遡る。

 

 

 

風鳴先輩と別れ、雪音との電話を終えてリディアンまで辿り着いた。碌に付いてない体力が少しばかり悲鳴を上げているが、それも今戦っているだろう三人に比べれば大したことはないだろうと飲み込んで足を動かす。

 

誰もいない職員用の玄関をくぐりエレベーターに乗ればそこは二課の本部が待ち構えている。そこの長い廊下を早歩きで指令室まで急いだ。

 

 

「失礼します」

「…ん、おお。八幡くんか」

「何かできることがないかと思って…」

「そうか。今はまだない。…が、この後必ずある。その時には君にも手を貸してもらいたい」

「…この後?……はい、分かりました」

 

 

指令室では立花達の戦いの様子がモニタリングされている。巨大なノイズを相手に苦戦している姿だ。しかしそこに俺の出番は無い。ならこの後、そう司令が確信する場面があるはずだ。

 

……そもそも、カディンギルの情報が手に入ってからノイズが出現するのが早すぎる。そしてあの日、小日向と立花が和解したあの日。司令が零したあの言葉。

 

 

『例え相手にとって俺たちが敵でしかなかったとしても、それでも大切な仲間だ』

 

 

…真っ直ぐで、傷つくことが分かっていてなお語ったあの言葉。確証なく司令が敵だなんて言葉を二課の人達には使わないだろうから、二課に内通者が居るのは確定なのだろう。

 

………そう認識して、辺りを見回した。

 

 

「……櫻井女史はいないんですね」

「…………ああ。遅れるらしいな」

 

 

………遅れたのは、司令の反応だった。切り込まれると思っていなかったからか。それとも現実として敵と回っている誰かに気を回しているせいだろうか。

 

…ああ確かに、考え始めれば彼女ほどの適任はいないのかもしれない。天才科学者を自称し、それに恥じない成果をもたらしているほど聖遺物に対する理解が深い。二課の内情の奥深くまで精通している立場。その頭脳と立場があれば二課に気付かれずにカディンギルという塔を作り上げるのも難しく無いのかもしれない。

 

 

「………」

 

 

…そんな人間が、あれほど分かりやすくシンフォギア装者を一箇所に集めるだろうか。シンフォギアを作ったのは櫻井女史であるなら、その介入が厄介なのは承知しているはず。なのにわざわざそこがカディンギルだと教えるようなものだ。

 

……逆に、逆にだ。今ノイズが発生している場所が囮だとしたら、本命はどこだ?一番高い塔のような建物が東京スカイタワー、今狙われている建物だ。ならそれよりも低い塔?

 

…いやそもそも東京スカイタワーは数年前に開業した日本の電波塔じゃ最新のものだったはず。そこ以外で最近建てられた巨大建築物は無かったはずだ。

 

…………………。…そもそも、技術があっても塔なんて物を一人で建てられるわけがない。いやそんな聖遺物があれば別だが、そう都合よく行くだろうか?

 

……………。

 

 

「…司令。二課って、というかこの本部って作られたのいつ頃からですか?」

「どうしたんだ急に…」

「…いえ、少し…」

「………二課が設立されたのは十年前。ここはその数年後に作られているはずだ。それがどうかしたか?」

 

 

………塔、塔。いや、今は塔がどうかはどうでもいい。カディンギルって名前の建築物。そして櫻井女史に関わりがあって、一人だけではなく人員を使えるもの。さらに聖遺物のような異端技術が組み込まれていても問題視されないような場所。

 

…………そんなの、二課本部(ここ)しかなくないか?いや、塔の前提条件を入れるならむしろ…。

 

 

「………ノイズが出てるなら、避難は始まってますよね?」

「また唐突だな」

「…ここの上、リディアンも避難はしてますか?」

「…いや、ここはしていないはずだが」

 

 

………ここは東京スカイタワーから充分距離がある。逆に言えば東京スカイタワーからすぐにたどり着ける場所では無いということ。

 

 

 

 

「…上の人達をすぐ避難させるべきです」

 

 

 

…もしもこの場所こそがカディンギルそのものであるならば。

 

……間違いなく、リディアンが狙われる。

 

 

 

 

《ヴゥーー!ヴゥーー!》

 

 

 

 

「っ!?ノイズの出現パターンを検知!場所は………地上!リディアン敷地内です!」

 

 

 

そんな予想を裏付けるように、警報が無慈悲になり渡った。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

《オォォォォン!!》

 

 

 

 

…外でノイズの声が鳴り響く。何かが壊れる音、何かが崩れる音。ノイズによってリディアンの平穏が侵されていくのを肌で感じてしまう。

 

 

「………まだいたか。急いで避難してくれ!あっちで纏まってる人達がいるからそこについていけばいい!」

「…は、はいっ」

 

 

残念なことに授業が終わって少し経ってしまっている。まだ結構な人数が教室内にいたクラスはいいが、何人かは校舎に散らばってしまっている。

 

二課の制服の上部分だけを学校の制服の上に羽織って避難誘導をしているが、正直生きた心地がしない。一歩進むたびに足が竦み、一歩進むたびにノイズの声で足が震える。

 

…それでも足が動き続けるのは、こんな恐怖を前に進み続ける奴らを知っているからだろう。ノイズを前に、例え力がなくても進んでいる人間を知っている。

 

立花はシンフォギアが目覚める前だって子供の手を引いてノイズから逃げ続けた。フラワーのおばさんはノイズを前にしても、他の手を掴んで命を救ってみせた。小日向は「私も戦いたい」と、その勇気を示し走ってみせた。

 

いいや、あいつらだけじゃない。既に特異災害対策機動部一課が兵器を揃えて対抗している。今だって外の人達がノイズの足止めの為に命を懸けているんだ。

 

…今を戦っている人間がいる。それが分かるだけで、誰かが命を助けようとしている事実に背を押される。

 

 

「……あと見回ってないのはどこだ?」

 

 

…この学校は広い。校内放送と共に避難できたならいいが、パニックや現実を受け止められずその場に残ってしまっている人が何人かいる。そういう人達の避難誘導をするために走っているが、俺だって死にたくはない。誰もいない校舎でノイズに襲われる間抜けになるのは避けたいところだ。

 

…だが誰か残っている校舎から早々に退散することもできない。ハリボテの気概だが、あの大人達と同じ服を着ているという事がそれを補強してくれた。

 

 

 

 

『『『きゃあぁぁああああ!!!』』』

 

「…っ!あっちか!」

 

 

 

悲鳴を頼りに走り出す。危険に飛び込む行為だが仕方ない。おばさん程じゃないが、手を引いて逃げるくらいはしてやろう。

 

 

「おい!大丈夫かって…お前らか」

「……え、ヒッキー?なんでここに…?」

 

 

声の先には、いつぶりかの三人組が固まっていた。蹲っている板場に寄り添うように寺島と安藤が寄り添っている。その先には……積み重なった灰…。このノイズの発生した地点での灰の元なんて、思い出すまでもないだろう。

 

 

「………後で説明する。とにかく避難するぞ。板場、歩けるか?」

 

 

目の前で人が死んだなんてトラウマものだ。だがトラウマも黒歴史も生きていなきゃ何にもならない。外を見るだけでノイズがいる空間なんていつ死んでもおかしくないのだ。

 

 

「………いや、いやぁ…」

「…無理か。寺島、安藤。板場担いでくから手伝ってくれ」

「あ、うん…」

「分かりましたわ」

 

 

なら引きずってでも場所を移さないといけない。もちろん引きずったりはしないが。二人に手伝ってもらい背中に板場を背負ってシェルターまでの道へ走る。少し遠回りになるが窓際を避けるように校舎の内部を通るように進んだ。

 

 

「………あの、結局比企谷さんは何故ここにいるんですの?その制服はいったい…」

「……まあこういう事態の対処をする機関の手伝いみたいなもんだ。近くにいて、できる事があった。それだけだ」

「…そんな理由で、こんな危ないとこに…」

「………ま、色々あってな」

 

 

 

 

 

 

 

バツンッ!

 

 

 

 

 

「…っ!停電!?このタイミングで!?」

 

 

走っている間、崩れ落ちる音が聞こえていた。校舎がノイズに破壊されていく音だ。たしかにあれだけ壊されれば電気が止まるのもおかしくはないのかもしれない。

 

だがここは二課の真上。言うなれば国の重要地点だ。停電に対する備えや対策は万全に施されているはず。今走っている廊下だけが停電になっているのならまだマシだが、この建物そのものの電源が落とされていたとしたら本格的にフィーネの侵略が始まったのかもしれない。

 

 

 

「………マジかよ」

 

 

 

………その上、どこまでもこの建物は俺たちを避難させたくないらしい。停電に加え、シェルターまでの道行きが瓦礫によって閉ざされている。

 

真っ直ぐ行くことは出来ない。そもそもシェルター自体停電で開閉できるか怪しい。そこまで行くにも遠回りに加えて施設の機能停止で行き来の自由が覚束ない状態だ。

 

……シェルターは諦めた方が良いかもしれないな。

 

 

「………この近くに地下にいける場所はあるか?」

「…え、うん。あるけど…」

「そこに行くぞ。崩落が多い地上にいたら潰されるかもしれないからな」

「わ、分かりました」

 

 

学校の見取り図を一瞬で覚えられれば良かったのだが、そこまでの知能はない。精々シェルターまでの道筋を頭に詰め込むので精一杯だった。幸い地下空間の崩落や損害は少なそうだ。

 

 

「………なんで?」

「………どうした板場」

「………なんで、こんな…。こんなの、アニメじゃないんだから…。なんでそんなに、落ち着いてられるの?」

 

 

背中から消え入りそうな声で問いかけられる。

 

…俺は落ち着いてるように見えるのか。汗はヤバイし鼓動もヤバイ。心臓なんて動き過ぎて止まるまであるし、肺は酸素が足りなくて縮こまりそうだ。

 

先導してくれる安藤や寺島の姿が角の廊下で消えるたびに心臓が掴まれるような錯覚に陥っている。

 

…間違ってないか。失敗してないか。考えを止めていないか。そんなことばかり考える。

 

 

「………落ち着いてなんかない、って言ってもアレだな」

 

 

……だって、一度失敗しているから。

 

…小日向を助けると決めた時、振り返れば振り返るほど失敗していた。

 

結果論で助かった事をあてにしてはいけない。次は成功する。次は失敗しない。だから考え続けて、成功するよう願っている。その理由は、あまりに馬鹿らしいかもしれないけれど。

 

 

 

 

「………ようやく『助けられる側』から、『助ける側』に立ったんだ。なら、助けたいだろ?」

「………わけ、わかんないよ」

 

 

 

 

……理由は一つ。

 

あいつらがいつもやってる、『人助け』だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




助けられる側から助ける側へ。そろそろ八幡も成長期始めても良い頃でしょう。

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