やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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表現力がぬるい…。前話の締めがアレだから一話で進めないとだから駆け足…。未来さんの時級の筆のノリが欲しかった…。


月の下、命は淡く雪のように

inリディアン女学院

 

 

 

 

 

「……フィーネ!」

 

 

リディアンに戻った響、翼、クリスはフィーネと相対する。

 

超巨大型ノイズを討伐し、喜んでいたのも束の間。響の通信機からリディアンが襲われたと知らせが入り、急いで駆けつければ目の前の惨状が広がっていた。

 

……元の建物の姿が想像出来ないほどの瓦礫の山と化し、生き残っている人達の声や姿もない。ただ一人、その瓦礫の山でこちらを見下すフィーネだけが明確な敵として立ちはだかっていた。

 

その瓦礫の向こうには幾何学模様の塔が元の建築物を押しのけるように存在感を醸し出している。 それこそが本命、これこそがカディンギル。地に屹立し、天にも届きうる塔なのだと。

 

 

「……こいつがカディンギル…」

「そうとも。これが荷電粒子砲カディンギル!」

「そいつでバラバラになった世界が一つになるってのか!?」

「ああ。今宵の月を穿つ事によってな」

 

 

満月を背に笑うフィーネ。その目に憎しみを携え、遥か昔を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィーネの口から語られるには、かつての人類には誰もが隔たりなく繋がれる言語があったのだという。唯一創造主とすら繋がれる言の葉が存在したのだと。

 

そんな世で、フィーネはその神に仕える巫女であった。神と語れる者であった。神と繋がれる者であったのだと。次第次第に向かう想いは強くなり、そして巫女は創造主に恋をしたのだ。

 

叶わなくてもいい。想いが遂げられなくてもいい。ただ告げられるだけでよかった。ただこの気持ちに触れてもらえるだけで良かったのだ。

 

 

『お慕い申しております』

 

 

その一言を告げる為だけに、シアルの野に天まで届く塔を建てようとしたのだ。乙女の恋、叶わぬ恋。だがその恋は、天より落ちた拒絶という落雷で失われる事になった。

 

人と並ぶ事などあってはならぬと。優しかったあのお方の明確な否定と共に、塔は大地に返された。それだけに収まらず、創造主と語り合える統一言語という唯一無二の言葉すら失われる事となる。

 

もはや塔を再現しようと想いは届かない。言葉が気持ちを届けてはくれないのだから。一世一代の愛を、どうしてあのお方に通じぬ言葉などで紡げようか。

 

 

 

『取り戻さねば』

 

 

 

取り戻さねば。言葉を、この呪いを解く方法を。この《バラルの呪詛》を消し去る力を。

 

そうすれば、あのお方に今度こそ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……月が何故古来より不和の象徴として知られているのか。それは、月こそがバラルの呪詛の源だからだ!」

 

 

バラルの呪詛などその時には分からなかった。何故なら言葉を失い、同じ人とすら言葉を交わせなかったからだ。だが時が経ち、幾年もの年月をただその為だけに使い続けた果てにようやく知る事となった。バラルの呪詛から、人類の楔を解き放つ手段を。

 

 

「人類の相互理解を阻むこの呪いを、今宵の月を破壊する事で解いてくれる!そして世界を再び一つに束ねる!」

 

 

そうすればまた天を目指せる。あのお方に近づける。何度拒絶されようと、この胸の想いを燻らせることなんて出来ないのだから。

 

 

 

 

キュィィィィィィン!

 

 

 

 

音を搔き鳴らし、カディンギルがエネルギーの充填を開始する。何年もかけて二課の地下をカディンギルとして作り上げ、その動力源に無限のエネルギーを放つデュランダルを添えた兵器だ。ものの数分もあれば、月を粉微塵に変えることができるだろう。千年の悲願が叶う現実に、フィーネの口の端が釣り上がる。

 

 

「呪いを解く?」

「ん?」

 

 

だが目の前にはそれを邪魔する者がいる。皮肉にもその身に纏う玩具を作り上げたのは他でも無いフィーネであったが。

 

 

「それは、お前が世界を支配するって事なのか!?」

 

 

一人は興味深い観察対象であった立花響。一人はこの身を覚醒せしめた立役者の風鳴翼。一人はイチイバルの適合者として自由に使える戦力として拾った雪音クリス。

 

その三人を睥睨してフィーネは苛烈に笑った。

 

 

「安いっ。安さが爆発し過ぎてる!」

「永遠の時を生きる私が、余人に歩みを止められるなどありえん」

 

 

フィーネもシンフォギアではない聖遺物を纏っている。かつて雪音クリスが纏っていた完全聖遺物、ネフシュタンの鎧。無限の再生を可能とする聖遺物。黄金の輝きと結晶のムチを両肩に伸ばすフォルムの禍々しさは健在だ。

 

それを使用するだけでなく、フィーネはこの聖遺物との融合を果たしていた。第一号融合症例である立花響という前例を活用した聖遺物との融合。無限の再生力を得てその猛威を三人に向けた。

 

 

 

 

 

 

Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

 

♪Imyuteus amenohabakiri tron♪(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)

 

 

 

 

 

 

ギアを纏い、フィーネへ襲いかかる。

 

 

「おりゃあぁぁああ!!」

 

 

遠距離からのガトリング、近距離からは拳と剣。手数は間違いなく三人の方が多い。しかし出力が違う。完全聖遺物と名の通り、内蔵しているエネルギー量が乖離している。

 

押し負けているわけではない。しかし押し切れない。戦闘経験の長い翼とクリスはそれをいち早く理解した。フィーネを戦闘不能にする前にカディンギルが発射されてしまう。ならば…。

 

 

((カディンギルを先に壊す!その為に…))

 

 

二人の間でアイコンタクトが交わされる。つい先程東京スカイタワーで通じ合えたばかりだ。クリスがエネルギーを溜め始め、翼と響は囮としてフィーネに突貫する。

 

 

 

【逆羅刹】

 

 

 

逆立ちと共に足のブレードを展開して回転。そのままフィーネに振り抜けば手数は単純数倍になり、フィーネも迎撃に走った。ネフシュタンの鎧のムチを回し、接近を封じる。

 

 

「はぁぁぁあああ!!」

 

 

その隙を、響が突いた。足を止めたフィーネに大振りの破壊力重視の一撃。防御を取らせて土煙が上る。

 

一連の攻防。たしかにフィーネの足を止めてみせた時間稼ぎ。充分だ。二つのミサイルの装填を完了したクリスが一発をフィーネに照準を合わせる。カディンギルを背に戦っていたフィーネを狙えば軌道を修正すればカディンギルを射抜ける。

 

 

「本命はこっちだ!」

 

 

 

 

 

 

 

キュィィィィィィン!

 

 

「……っ!(間に合わねえ!?)」

 

 

発射する直前、カディンギルの脈動が一層激しくなる。今にも打ち出せそうな程エネルギーが溜まり、カディンギルそのものが震えている。

 

………もし、この二発をフィーネに止められればこの砲撃を防ぐ方法はない。あの塔を壊そうとすればフィーネは虎の子を全力で守るだろう。あまりに確実性に欠けていた。

 

 

「……はぁぁぁあああ!!」

 

 

一発。一発だけフィーネに向けて発射する。その隙にもう一発をカディンギルに照準を合わせる。この一発で終わるならいい。だけどもし仕留めきれなかったら……。

 

 

「……っ!狙いは最初からカディンギルか!させるかっ!」

 

 

…発射。真っ直ぐ一直線に塔へミサイルを向けて撃つ。フィーネの気を引くための初弾はここから塔へ向かわせるには遠い。このままこの一撃を通してはくれないだろう。

 

そのミサイルに、クリスは飛び乗った。全員の視線がカディンギルへ向けたミサイルに向かっている間に、クリスはミサイルで空へ、空へと上がっていく。

 

 

「くっ!もう一発は…っ」

 

 

 

 

ギュィィィィィィン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪

 

 

 

 

 

 

 

 

……空へ舞う。フィーネの手も届かない高さへ飛び、カディンギルと月の直線上は割り込んだ。吸い込んだ空気の味さえ分かるくらい、全身を空へと投げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

♪Emustolronzen fine el baral zizzl♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……歌を歌う。嫌いと吐いた歌を歌う。好きだと思い出した歌を歌う。夢の為の、歌を歌う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪Gatrandis babel ziggurat edenal♪

 

 

 

 

 

 

 

 

……パパとママが目指した場所。歌で平和になった世界を作ってみせる。きっとあたしの歌は、その為にあるから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪Emustolronzen fine el zizzl♪(月の下、命は淡く雪のように)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……イチイバルの絶唱は長射程、広域攻撃。死角なく全方位への砲撃ができる。だけどそれじゃカディンギルの攻撃は抑えきれない。

 

…腰部のパーツからエネルギーリフレクターを周囲へ張り巡らせる。四方へ向かうエネルギーの方向を誘導することで一点収束を可能とさせる為だ。

 

溢れるエネルギーが周囲を駆け巡り、まるで一羽の蝶々のような様相を空へ浮かび上がらせた。そして両手には巨大レーザー砲で地上を狙う。

 

 

 

 

……大地から、超巨大光線が立ち昇った。

 

 

 

 

 

 

ギュィィィィィィン!

 

 

ギュォォォォォン!

 

 

 

 

 

 

 

カディンギルの一撃と、クリスの絶唱。二つの発射地点から伸びる二つの光線は拮抗するように空の半ばでその進行を互いに押しとどめた。月を打ち壊すエネルギーを、打ち消しているのだ。

 

 

 

 

パキッ

 

 

 

…手の中のレーザー砲から異音が鳴る。

 

 

 

パキッ……バキッ!

 

 

 

その音は収まることなく広がっていく。レーザー砲はヒビ割れ、それに合わせるように二つの光線の拮抗が崩れ始める。地上の光線が空へ空へと、クリスの絶唱を喰い千切るように登っていく。

 

 

(……ダメか…。でも、諦められないよな)

 

 

脅威が迫ってくる。死の脅威だ。だがそれ以上に、世界の脅威だ。あたしの歌じゃ、この一撃を止められない。

 

それでもこのまま月を破壊されたら、きっと世界の平和はなくなる。そうしたら、きっとあいつらは困るだろう?

 

 

(……歌、聞かせたかったんだけどなぁ)

 

 

エネルギーリフレクターを操作し、自身の周囲へ再配置する。周囲へ拡散、減衰をするために、できることは何でもしよう。たとえ僅かでも威力を抑えられるなら、自分はここから動くわけにはいかない。たとえ僅かでもその力を減らせるなら、最後の時までこの砲撃を辞めるわけにはいかないんだ。

 

 

砲撃が迫るたびに思い出す。大好きなパパとママの事。

 

いつのまにか大切な思い出になっていたあいつらと遊んだ事。

 

今でも気恥ずかしい、八幡と友達になった事。

 

 

 

…………そして今でも、悔いが残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……歌、聞かせたかったなぁ。ちくしょう…」

 

 

 

 

最後の嘆きを知る者は一人だけ。その嘆きすら、カディンギルは飲み込んでいった。

 

 

 

……目的である月。その端のみを壊すという、雪音クリスの爪痕を確かに受け止めながら。

 

 

 




抜くに抜けない描写は手が止まる。なのにいつもより早いのは何故なのかしらん?

まあ書いたら俺ガイル最新刊読むと決めてたからだけども。

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