やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

5 / 122
ホワイト企業みたいな人間関係だけど、二課ってよく人死ぬから実質ブラックか。

ちまちまお気に入りや評価が増減してるの見てると投稿してる!って気分になる。


やはり特異災害対策機動部二課は騒がしい。

「あったかいもの、どうぞ」

「あ、あったかいもの、どうも?」

 

 

壁に垂直立ちしていたイケメンに連れられて工業地帯の外へ。そこには自衛隊と思しき人達や、逃げ遅れていたのか数名の一般人が集められていた。

なんでも今日見たことの情報規制が云々で署名が必要なのだとか。場合によっては罪に問われるとのことなので、口外する相手のいない俺は気にすることなくサインをした。ココア美味しい。

 

 

「あれ!?八幡くん?なんでここにいるの?」

 

 

…どうやら立花の方も一段落したらしい。母親らしき女性に抱きついている少女を尻目に、先ほども見たオレンジの不思議アーマーを身に纏っている。随分ぴっちりしている素材のようで中々のボディラインが浮き彫りだ。あ、ちょ、こっち来ないで。目のやり場に困る。

 

 

「……まあ、成り行きで」

「成り行き?」

「ああ。てか、お前のそれ、なに?」

「いやー、私にもよく分かんなくって。ノイズから逃げてたら急に歌が胸に浮かんできてね、そしたらなんかグオーってなったと思ったらこんな感じに…」

「全然わからん」

「だよね〜」

 

 

がっくしと立花が肩を落とす。どうやら怪我をしている様子もないし、元気なままのようだ。そこだけは素直に安心した。何もできない不甲斐なさは自己責任なので受け止めざるを得ないがな。

 

 

「……さて。俺はサインも終わったから帰るけど…」

「あ、待って!私も帰るから一緒に帰ろ!」

「ダメよ」

 

 

ズラッと黒服が列をなす。その中心にはこの黒服連中との親和性がカケラもない美人さんで。俺はその人物をつい最近知っていた。

 

 

「……風鳴翼?」

「……。あなたを、このまま帰すわけにはいかないわ」

 

 

一瞬此方に視線をよこしたが無視を決め込んだようだ。そりゃ超有名人が目の前に現れた時の一般人なんて相手したくないよな。俺が相手だからとかじゃないよね?目がとても冷たいんだけど。

……お邪魔ですか。はい、俺はいつでもお邪魔ですって。

 

 

「……えーと。じゃあ俺はこれで…」

「まってぇ!見捨てないで八幡くん!」

「いやこの人達間違いなく俺じゃなくて立花に用があるだろ!俺はお邪魔虫だしもう夜だしだから近いし近いいい匂い近いぃ!」

 

 

縋り付いてくる立花から距離を取るように動こうとしてるのにビクともしない。マジでビクともしない。え、力強くない?パワー?筋肉?力こそパワーなの?それとも俺が貧弱なだけ?そのくせ柔らかいとか反則だけど近い!

 

 

「……え?」

「……お?」

 

 

パァン!

 

 

突然立花が光り始めたと思ったら音を立ててコスプレ型アーマーが消え去った。腕の辺りとか完全に露出してたのに一瞬で制服がその肌を覆い隠している。早着替えとかのレベルじゃない。

……やっぱよくわからない原理があるのか不思議パワーなのか。間違いなく俺の関わるべきことじゃない。

しかも今ちょうど俺が向き合うべき問題が現れた。実はさっきまで中々立花を引っ剥がせないせいで、結構な力を込めていたのだ。それにもビクともしないのでやっていたことなのだが、どうやらあのパワーはコスプレ由来の筋力らしい。

…だって今、立花を引っ張りすぎたことでバランスを崩し、二人揃って重なるように倒れてしまったのだから。さっきまでほんと動かなかったのに…。

 

 

「…いってぇ」

「あぁ!だ、大丈夫?」

「も、もーまんたい…。あと近い…」

「っ!?ご、ごめん!」

 

 

なんとか立花の下敷きになれたが、その拍子に抱き合うような体勢になってしまった。不慮の事故だし結果的に立花が離れたので良しとしよう。……というか風鳴翼の目がそろそろヤバ目になってきたのもある。むしろメイン。あといい匂いだった。

 

 

「………悪いけど、此方も時間があるわけじゃないの。彼女は来てもらうとして、来るのか来ないのか決めてくれないかしら?」

「いや、だから…」

「はぢまんぐぅぅん…」

「ぐっ…。………わかったよ、行きますよ…」

「ありがとう!!」

「な、納得いかねぇ…」

 

 

最終的に泣き落としに負けてしまったのだが、行くといった途端涙が引っ込んで満面の笑み。女の涙は男性特攻持ちのくせに自由に操れるとか卑怯だ。

何はともあれ何処かに連れ去られることになったわけだが…。

 

 

「……え、なにこれ」

「すみませんね、貴方の身柄を拘束させていただきます。特異災害対策機動部二課に着くまでの辛抱ですので」

「どこすかそれ…」

 

 

ガチャンとかけられたのは鉄の錠。忍者のイケメンに流れるように拘束された今現在。冤罪で捕まる人ってこんな気分なのかな、なんて他人事のような感想を抱いたまま車の後部座席に詰め込まれる。

 

 

「な、なんでぇえええ!?」

 

 

俺の気持ちを代弁するかのような悲鳴を耳に、黒服ハーレムの車は発進した。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

パンパンパァン!

 

 

「ようこそ人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!歓迎するぞ、立花響君、比企谷八幡君!」

 

 

車に揺られて何故か立花が通っているリディアン音楽院に連れて来られた。女子校なのに男が入っていいんですかとか、絶叫エレベーターに乗せられるなら早く言えとか文句しかないところですがね?その先にこんな陽気な世界が待ってるとは思ってなかった。リア充の雰囲気が苦手なので今すぐにでも帰りたい…。

 

 

「あ、あのなんで初めて会う皆さんが私たちの名前を知ってるんですか?」

「我々二課の前身は大戦時に設立された特務機関なのでね、調査などお手の物なのさ」

「んふふ♪」

 

 

するっと現れたお姉さんが鞄と財布を持って現れる。ポッケを探ってみるといつのまにか空っぽになっていた。飯を食うだけだからと身軽で来たが、その唯一の荷物もいつの間にやら落としていたらしい。なんにせよ悪用されなくてよかったと思うべきか。

 

 

「あー!わたしの鞄ー!」

 

 

……鞄の中身を勝手に漁られた立花はどうだか知らんが。勉強道具だけならともかくプライベートの品も入ってるだろうに。

まあそれはともかく。

 

 

「……これ、外してもらえます?」

「…緒川さん」

「はい、大変失礼しました。痛みはありませんか?」

「ああ、ええ。大丈夫っす」

 

 

イケメンの忍者は緒川さんという名前だと判明し、同時に手錠も外してもらえた。拘束ようなので中々に重いのだ。閉塞感もあるし、ここに辿り着くまでは物々しさに耐えきれなかったので外してもらえるのは素直にありがたい。

 

 

「それにしても大変でしたね。無関係の方を巻き込んでしまったのは此方の不徳です、申し訳ありません」

「いえ、自分が勝手にやっただけなので。というか俺のこといつから気づいてたんですか?」

「工場地帯に着く前には。国の機関というだけあって地域の監視カメラの様子は全て把握できるんです。中でも、ノイズが暴れている方へ走って行く男の子とかは特に、ね」

「……お手数かけます」

 

 

つまりあのみっともない葛藤やら走る姿やらは此処にいる面々に晒されてしまっているわけだ…。さすがに音声までは拾われてないと信じたいが、ノイズとの戦闘が前提の場所っぽいし繋がってるんだろうなぁ。く、黒歴史ぃ!

 

 

「そ、それはともかく。結局此処の説明とかってしてくれるんですかね?機密があるなら俺は帰りますが…?」

「説明の方は司令から。此方は立花響さんに協力を要請する側ですので、詳細を話させていただきます。そしてもちろん、貴方にも」

「……言っちゃあれですがいいんですか?情報規制敷いてたってことは、そもそも立花や風鳴さんの姿とかってまんま機密事項みたいなもんですよね?俺ただの一般人ですよ?教えていい方向に転がることなんて無いと思いますけど」

 

 

ただ気まぐれにラーメンを求め、間抜けにも自転車を忘れてノイズを追いかけ、その結果何もせずに逃げ帰る一般人。いてもいなくても何も変わらない存在。

その上年だってまだまだガキだ。ここで働いている国のために、なんて心構えも何もない。そんな人間に内情を話す意味はあるのだろうか。

そんな葛藤を悟られるわけもなく、緒川さんは話を続けた。

 

 

「ええ、貴方は一般人です。そして響さんも一般人だ。翼さんのように小さい頃から訓練を受け、二課に知り合いも多い訳でもない。ましてや我々のように大人ですらない。貴方の言う通りこの仕事はそれ自体が機密であり、小さくないものを抱え込むことになります。…そんな彼女を支えられる存在は、とても大きいと思いますよ?」

「………そんなもんですかね」

「そんなものです。もちろん、彼女に断られたらそこまでですが」

 

 

…てっきり国の機密を知ったからには強制だー!的な流れを予想してたのだが、任意なのだろうか。どうにもここの人達からはいい人感が漂っているが、大人は嘘吐きだ。どこまで信用してもいいかわからない以上、自由があるなら断った方が良いのだろうが…

 

 

「………その要請する協力って人助けですか?」

「ええ、そう捉えていただければ」

「……なら、受けるんでしょうね」

 

 

半ば予想していたが、ノイズと戦えることが立花のしていたコスプレの最たる部分なのだろう。ならばそれを国が使わないわけもない。要請される協力がノイズを退治する事であるなら、それは立派な人助けだ。その人助けが趣味である立花が断るという事は無いだろう。…残念ながら。

 

 

「…彼女が心配なんですね」

「…まさか。会って1日の相手を心配できるほど人間できてませんって」

「会って1日の相手のためにノイズの元へ走る人間を、少なくとも僕はここに勤めてから見たことありませんよ」

「……それはアレっすよ。気が動転してたというか、ほら、ノイズとか見るのも初めてですし…」

「正気で無い時ほど人の本質は出やすいとも言います。自分の本質を考慮できる良い機会だったのでは?」

「………」

 

 

……ああ言えばこう言う。我儘とか屁理屈と言うよりはなんか子供を諭しているようでどうにもむず痒い。いや実際大人と子供なんだろうけども。イケメンだし若そうだしでなんか納得がいかない。

…こういう考えが子供なんだろうなぁ。

 

 

「………そういや緒川さんって忍者なんですか?」

「あはは、機密事項ですよ?」

「……へっ」

 

 

話題逸らしにもあっさり乗ってくれるイケメンスーツ忍者。会話というスキルは相手の信用を得たり、情報を得るのに使われる事も多々ある。常に笑みを絶やさず不快感を与えない会話術も持ってるとかこの人多才が過ぎないだろうか…。今度忍術の1つでも教わろうか。

 

 

『取り敢えず脱いでもらいましょうか♪』

『…だからぁ、なぁんでぇええ!!』

 

 

……あっちはあっちで多災が過ぎるな。マジで。

 




翼さんのアームドギアをちゃんと使った絶唱はいつか来るのだろうか。

月煌ノ剣好き。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。