やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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前話を一旦削除しました。タイミング時にまた投稿します、

そして今回も大体原作通り。改変できる場所がない…。


羽撃きは鋭く、風切る如く

side翼

 

 

 

 

月を貫かんと放たれたカディンギルの一撃。それを雪音が絶唱により軌道を逸らして眼前の脅威は過ぎ去った。

 

…その成果を得るにはあまりに大きな犠牲を前に。だがそれに悲しむ暇もなく、目の前の光景にただただ戸惑うばかりだった。

 

 

「……立花っ!おい立花!?」

 

「ヴォオオオオオアアア!!!」

 

 

雪音がカディンギルの砲撃に飲まれ、悲しみの慟哭とともに立花の姿が黒く、黒く、黒く染まっていった。明るく笑う立花とはかけ離れた、まるで獣のように唸り怒りを露わにする存在に成り果てている。

 

 

「融合したガングニールの破片が暴走しているのだ。制御できない力は、やがて意識を塗り固めていく」

 

 

見るからにまともではない姿。暴走状態故に言葉も通じない。その目は、壊すべき相手を前に飛びかかる寸前でしかなかった。

 

立花は二足歩行すら捨て去り、四つん這いとなって大地にヒビが入り込むほど力を込める。暴走する原因となった存在、フィーネを破壊するために。

 

 

 

「ガァァアアアアア!!!」

 

「……ふんっ。もはや、人に非ず」

 

 

 

 

【ASGARD】

 

 

 

貯めた力を解き放つように突貫する立花の一撃を、フィーネはネフシュタンのムチ部分を網ように張り巡らして止めてみせる。厚い防御、だが立花は構うことなく真っ直ぐ、ただ真っ直ぐにフィーネへと牙を剥いた。

 

 

 

ビキッ!

 

 

 

ネフシュタンにより生み出された防御から異音が生じる。割れるような、崩れるような音。立花が真正面からフィーネの守りを突き破っているのだ。

 

ヒビ割れは広がり、それでもなおフィーネは不敵に笑い続けた。

 

 

「今や人の形をした破壊衝動か」

 

「ヴォオオオオオ!!!」

 

 

 

バキバキバギィ!

 

 

 

力尽く、その一言に限る。殴るのではない、蹴るのではない、斬るのでもなく、ただ衝動のままに嬲り抉る。その一撃はフィーネの喉元、それどころか上半身を臓器ごと上から下へ切り裂き潰した。

 

…確認するまでもない致命傷だった。人助けを求め、手を繋ぐと言った立花が躊躇うことなく人を殺す。その光景に、呆気にとられてしまう。

 

 

「……。…っ!立花、もういい!これ以上は聖遺物との融合を促進させるだけだ!」

 

 

だがそれも暴走だ。フィーネを倒した。だがフィーネは立花は破壊衝動に飲まれ、いずれ意識を奪われるのだと語った。

 

…それはダメだ。雪音だけでなく、立花までも失うわけにはいかない。だと言うのに…。

 

 

 

「グルルル……」

 

「……立花?」

 

「ガァ!!!」

 

「立花!?」

 

 

声が立花に届かない。それどころかフィーネを壊し、目的を失ってなおその暴走が解かれることはない。行き場を求めた破壊衝動に敵味方の区別はなく、こちらへその凶刃を振るい切った。

 

 

「…ぐっ!重いっ」

 

 

大雑把な一撃。だが早い、何より重い。聖遺物との融合により驚異的な破壊力が生まれ、それを制御することなく振るっている。いなす事はできるが、それもいつまで持つか分からない。

 

 

「……くっ、ふははっ」

「……っ!フィーネ…」

 

 

戦場に似つかわしくない笑い声。その発信源は、胸元を立花の爪によって引き裂かれたはずのフィーネからだった。現に肉は裂け、本来見えては行けない体の内部すら曝け出されている。

 

 

「……!?傷が…」

 

 

だがそれも一時的。まるで時間が遡るかのように離れた肉はくっつき、皮膚は繋がれ、臓器はあるべき場所へ帰っていく。そして最後には致命傷を受ける以前と変わらない姿をしたフィーネが残った。死ぬべき傷で死ぬ事、それすらも拒絶、超越したフィーネに怖気が走る。

 

 

「……人のあり方さえ捨て去ったか!」

「私と融合したネフシュタンの力だ。面白かろう?」

 

 

 

 

 

キュィィィィィィン!

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!?これは、カディンギル!?何故っ…」

 

 

耳に慣れない異音。だが聞き覚えのある音符。つい先程雪音が命を賭して外してみせたカディンギル。それが再始動するかのように再び稼働を始めたのだ。

 

 

「そう驚くな。いくらカディンギルが最強最大の兵器だとしても、それも一撃で終わってしまうのであれば兵器としては欠陥品。必要とあれば何発でも打てるよう、心臓部にはデュランダルを取り入れてある。それは無限のエネルギー、無限の心臓なのだ」

 

 

今回のリディアンを襲撃した目的、それこそがカディンギルであった。かつて雪音を使いデュランダルの強奪を試みたことがあった。その時は何事もなく終わったが、今回は巨大ノイズを囮に使いノイズに対抗できる存在をこのリディアンから隔離した状態でデュランダルを安全に確保したわけだ。

 

…どこまでも周到。常に一歩二歩先に行かれる感覚。目の前のネフシュタンを纏うフィーネ、そして暴走状態のまま此方は牙を剥く立花。まるで巨大な壁が幾多にも連なり道を遮るかのような錯覚にすら陥る。

 

 

……だが止まるわけには行かない。何よりも、雪音の犠牲を無駄にしてなるものか。

 

 

「…………立花。私はカディンギルを止める…」

 

 

……命を賭して大事なものを守りきる。胸をガングニールの破片に貫かれた立花を守るため、その命を燃やして歌った奏のように。

 

……嗚呼、ならば。この身一つ程度、安いものだろう。

 

 

「……………、立花」

 

「ガァァアアアアア!!!」

 

「……」

 

 

…変わらず、躊躇いもなくその手を血に染めんと突貫してくる立花。その瞳を見て、私は剣を地に突き刺した。

 

………暴走は雪音が空より堕とされたことが理由だった。共に歩み、共に遊び、共に肩を並べ、手を取り合った。短い時間であったとしても、その存在を失うということが立花にとってそれほどの悲しみを持つに足る苦しみだったのだろう。

 

………失った悲しみ、その号泣が立花の瞳に映る。たとえ涙を流さずとも、同じ痛みを、同じ悲しみを抱いていると分かるんだ。

 

……………立花。

 

 

 

「ガァ!!!」

 

 

グジュッ!!

 

 

 

…………。突き立てられた立花の爪が、私の胸に深々と突き刺さる。

 

…ああ、痛い。

 

…激痛が走る。だがそれに一つ構う間に、目の前の(立花)を抱きしめた。

 

 

 

「…アッ……」

 

 

 

………悲しみに震える友をどうして捨て置けようか。

 

………命懸けで世界を守る友の犠牲をどうして無駄にできようか。

 

………全命を賭した片翼の意思をどうして投げやりにできようか。

 

…重ねた手、繋いだ手。そのどれもが私にとって、()にとって掛け替えのないものであるというのに。

 

 

「………立花。この《手》は、束ねて繋がる力の筈だろう?」

 

 

…突き刺されていた手には私の血がこびり付いている。だが立花にそんな手は似合わない。剣でも手を握ると、私に友達になってほしいと言ってくれた言葉も、その手も。私は何一つ忘れてはいない。

 

なにより……。

 

 

「…奏から受け継いだ力を、そんな風に使わないでくれ」

 

 

私の大事な友から授けられた力。かつては奏のガングニールを他の誰かが纏うなんて我慢できなかったけど、立花ならきっと正しい使い方をしてくれると信じてる。

 

……貴方と手を繋いだわたしだからこそ、その輝きを信じてる。

 

 

 

【影縫い】

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

♪絶刀・天羽々斬

 

 

 

 

Ya-Haiya-セツナヒビク Ya-Haiya-ムジョウヘ

 

 

 

「………待たせたわね」

「……ふん、どこまでも剣ということか」

 

 

(立花)の落涙を背に、再びフィーネと対峙する。痛みはある。だがこの痛みが私が人であることを、手を取り合える存在であると思い出させる。あの日のライブで固めた決意を目覚めさせる。

 

 

「……今日に折れて死んでも、明日に人として歌うために…」

 

 

この身、この命。歌で繋がり、歌を伝えられる存在である誇りがある限り。剣を折られても、立ち竦むことはないのだと。静かに魂が叫んでいる。

 

 

 

「風鳴翼が歌うのは、戦場(いくさば)ばかりでないと知れ!」

 

「……人の世界が剣を受け入れることなどありはしない!」

 

 

 

…この身は剣。恐れることなどありはしない。

 

……そして、この身は人。この手に、この背に背負うものがある時。剣の私よりも強く踏み込める。

 

羽撃きは鋭く、風切る如く。フィーネの懐へ翼が参る。

 

 

「はぁあああ!!」

「こざかしい!」

 

 

【天ノ逆鱗】

 

【ASGARD】

 

 

巨大化した剣を空から地上のフィーネへ足蹴にして撃ち落とす。迎撃としてネフシュタンが網のように防御を張るが、好都合だ。

 

元より狙いはカディンギル。先史文明期から蘇る亡霊の執着を今度こそ断ち切る!

 

 

 

【炎鳥極翔斬】

 

「……くっ!狙いは最初からカディンギルか!」

 

 

両手に剣、その二つに炎を纏わせ足場にした天ノ逆鱗を飛び立つ。恐らく中腹を崩す程度では止まらないだろう。だからこそ徹底的に、瓦礫になるまで斬り荒ぶ。

 

…その為に空へ…空へ…、

 

 

 

 

 

「……ぐぁっ……」

 

 

 

 

 

………空へ。

 

…その頂に至る前に、フィーネのムチが私の体を捉えた。

 

無茶を通した体だ。撥ね付けられた二つのムチは適確に私のバランスを崩し、纏っていた炎は消え去った。

 

……後は、ただ重力に引かれて落ちるだけ…。

 

 

 

 

(………やはり…私では……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[翼、何弱気なこと言ってんだ?]

 

 

(…………かな、で?)

 

 

[私とあんた。両翼揃ったツヴァイウィングなら、どこまでも遠くへ飛んでいける。だろ?]

 

 

(………うん、そうだったね)

 

 

 

 

…目を瞑れば昨日のように思い出せる。

 

…そう言って笑ってくれた奏を、当たり前に頷いていた自分を。

 

 

 

(そう、両翼揃ったツヴァイウィングなら…っ!!)

 

 

 

【炎鳥極翔斬】

 

 

 

(どんなものでも、乗り越えてみせる!)

 

 

 

剣に炎を灯す。目を上に向ける。まだ飛べる。まだ羽撃ける。

 

……まだ、まだ、まだ!

 

私は乗り越える!立ち上がる!だから…っ!

 

 

 

 

 

「立花ぁぁぁああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

…世界へ向けて声をあげる。この声が立花に届くように。

 

…諦めるな。目を背けるな。悲しみに足を止めてくれるな。

 

…この身朽ち果てたとしても、貴方が立ち上がれると信じてる。

 

 

…地上から伸びるフィーネの妨害を受け続けてなお、天へ羽撃く両翼は止まらない。

 

…今度こそ、空へ、空へ、空へ。

 

 

………目の前のカディンギルへと。

 

 

 

 

 

 

 

「……………届いた」

 

 

 

 

 

 

 

……後は重力に引かれるがまま。下へ落ち続ける間に、斬り、斬り、斬り、また斬り。最下部の光のエネルギーすら斬り。

 

 

…最後は瓦礫の雨に埋もれながら、風鳴翼はそれでも笑ってみせた。

 

 

 

 

 

「……託した、立花」

 

 

 

 

 




前話お気に入りが一瞬減り傾向だったので見返したらほんと投稿タイミング違うと思いまして。

作者の勝手で消し出しすることになって申し訳ないです。
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