やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
side響
クリスちゃんと翼さんの二人が開いてくれた活路。その目的であるデュランダルが私めがけて飛んでくる。私もデュランダルに向けて手を伸ばす。
……実を言うと、あの剣に触れるのは怖い。前に掴んだ時はクリスちゃんに向けて躊躇いなくデュランダルを振るってしまった。暗くて、黒くて、怖い力を扱いきれずに呑まれてしまったから。
今目の前にはクリスちゃんも翼さんもいる。また暴走してしまったらこの二人を傷つけてしまうかもしれない。
『………信じてるって言ってんだよ』
『………貴女を信じてるわ』
…それでも今私がデュランダルと向き合おうとしてるのは二人が信じてると言ってくれたから。身を呈して了子さんに立ち向かってくれた二人が信じてくれたから!
「ヴォオオオオオアアア……!」
デュランダルを掴んだ瞬間、また暗闇が襲いかかって来た。
『壊せ』
…壊さないっ!
『壊せ!』
……絶対に、こわさない…っ。
『壊せ!!』
……………壊サな……イ…。
………胸の中から溢れてくる、感情が止まらない。壊したくない、壊したく、ないのに…。それでも周りが、世界が、
…大切な人を殺してしまうノイズが怖い。
…大切な人を守れない自分が怖い。
…陰で私を嗤っている人達が怖い。
…陰で嗤っている人に何も言えない自分が怖い。
…石を投げてくる人達が怖い。
…石に怯えるお母さんやお婆ちゃんを助けられない自分が怖い。
…手を振り払ってしまう人が怖い。
…手を伸ばすことを躊躇う自分が怖い。
…この拳が誰かを傷つけるのが怖い。
…この拳は…この拳で…誰かを助けるために………
…この拳で…傷つけてくる世界を壊セバ…
……っ違う。私は……みんなを……。
「正念場だ!踏ん張りどころだろうが!!」
「…………し、しょう…」
……地下のシェルターから師匠や未来、何人もの人が飛び出してくる。
………みんな…。危ないよ…なんでここに…。
「強く自分を意識してください!」
「昨日までの自分を!」
「これからなりたい自分を!」
……緒川さん、藤尭さん、友里さん…。
「屈するな立花。お前が構えた胸の覚悟、私に見せてくれ!」
「お前を信じ、お前に全部賭けてんだ!お前がお前を信じなくてどうすんだよ!」
翼さん…クリスちゃんも…。
「あんたのお節介を!」
「あなたの人助けを!」
「今日は私達がっ!」
………みんなの声が聞こえる。守らなきゃいけない声が聞こえる。こんな危ない中、私に声を届ける為に危険を冒してくれてる。
…なら応えなきゃ。みんなを守るために…。
………壊さないと…
「ヴォオオオオオアアア!!!」
………守るための力はここにある。…勝つための力はここにある。
……後は振るうだけだから。そうすれば、怖いもの全部壊せるから…。
…だから、壊さないと…っ………。
「……………………ぇ?」
……頭に、不思議な感触が乗った。暗い中で、冷たい中で、何故かそこだけ暖かい。その温もりは一度、二度と揺れて、私を引き留めた。
「………八幡くん…?」
真っ暗な闇の中で、撫でられていた。柔らかい手が、優しい手で、落ち着かせるように揺れ動く。
「……なんで…」
ここにいないはずなのに、確かに繋がっていると分かる。この柔い手のひらに、心が繋ぎとめられていた。
「ーーーーー」
「…え、なに?」
…何か言ってる?…聞き取れない。…え、なんで手を離すの?どこに行くの?
「…待って!」
黒い破壊衝動を押しのけて離れて行く八幡くんに手を伸ばす。纏わりつく闇すら気にならないくらい、必死に手を伸ばした。
……行かせちゃダメだ…。八幡くんが遠くに行っちゃう。だめ、それはダメ!今ここで行かせたら、きっともう守れない…。
………居なくなった人は守れない。だから…助けないといけないのに…。でも…どうやればいいのか…わかんないよ………。
「ひびきぃぃいいいいいい!!」
「……っ!?未来?」
…さっきの八幡くんが暗闇を押しとどめる温もりなら、今度は暗闇ごと吹き飛ばすような衝動が心にぶち込まれてきた。
………未来だ。聞き間違えるわけない、私の親友、私の陽だまり。私の帰る場所。
…そうだ。私は私の帰る場所にどんな顔をして帰ればいいんだろう?どんな風に私は帰りたいのかな。
………笑って帰りたい。笑って「ただいま」って言いたい。そうすればきっと未来は「おかえり」って言ってくれるから。
…そうやって帰れる時は、きっと私は誰かを助けられたのだろう。そうじゃなかったら私は笑えないから。
…全部壊さないと?……ううん、全てを壊すことで救われるものなんてない。それは…とても悲しいから。
………ああ、そうだよ。なんで忘れてたんだろう。今になってようやく、みんなの声が本当に届いてきた。
『正念場だ、踏ん張りどころだろうが!!』
…そうだ、ここで踏ん張らなきゃ誰も守れない!
『強く自分を意識してください!』
…私は立花響。趣味は人助けの15歳!
『昨日までの自分を!』
…昨日まで、誰かの助けになりたいとずっと思ってた!
『これからなりたい自分を!』
…これからも誰かを、
『屈するな立花。お前が構えた胸の覚悟、私に見せてくれ!』
…分かってます!この拳に握った胸の覚悟を、見ててください!
『お前を信じ、お前に全部賭けてんだ!お前がお前を信じなくてどうすんだよ!』
…信じてくれてありがとう。絶対に、応えてみせるから!
『あんたのお節介を!』
…それが私だから!
『あなたの人助けを!』
…それだって私だから!
『今日は私達がっ!』
…みんなが支えてくれる私だから!
『…………』
「…………」
……………。もう大丈夫。なにも言わなくても、全部伝わったから。気持ちも、心配も、全部、全部貰ったから。
だから、笑って見てて。
…心の破壊衝動が消えて行く。だって必要ないから。みんなを守るのに、壊すだけの力は必要ない。私らしく守るために、私らしくあるために、私の中で眠っていて。
…でもその衝動も忘れない。それも間違いなく誰かを助けたいって気持ちだったから。
だからこそ、この衝動に塗りつぶされてなんかあげない。
「………ぉぉぉ。うぉおおおおおお!!!」
翼さんとクリスちゃんの二人に支えられながらデュランダルに力を込める。助けたい気持ちを。守りたい気持ちを。救いたい気持ちを。手を繋ぎたい気持ちを。仲良くなりたい気持ちを。込めて込めて、込めるたびにデュランダルから光の柱が立ち大きくなっていく。
…そして目の前の了子さんを見る。…了子さんも苦しんでた。恋心はまだわからない。だけどその中にも覚悟が宿っていたのは痛いくらい伝わった。
了子さんも自分の正義を信じて握りしめているなら、この拳で、私の信じて握りしめている正義で、伝えられるはずだから!
「……っ!その力、なにを束ねた!?」
「………響きあう歌声がくれたっ…
「
【Synchrogazer】
……振り下ろしたデュランダルが手の中で崩れていくのを感じながら…
……長い、長い戦いが終わった。
……決着。あえて細かい描写は省きました。なんかもう、書いてて言葉が蛇足過ぎて書き込めませんね。
スフォルツァンドの残響が神過ぎてガリィがゲスっててもキャロル陣営出せただけでニヤケてしまう自分がいる。