やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
「はぁ〜。疲れたー」
「お疲れさん」
あの後メディカルチェックとやらで全身をくまなく調べられた立花は萎びた野菜のように脱力しきっていた。まあそれも仕方ない。ノイズと全力鬼ごっこをかましてコスプレパーティー、その後に連行されたと思ったら櫻井女史のセクハラと検査。1日の容量を軽く超えもするだろう。
「…でもありがとね、付き添ってくれて。やっぱ友達が一人でも側に居てくれたら全然違うよー」
「そりゃどーも。でも今度からは一人で行けよ?女子校に侵入する男子高校生とか不審人物でしかないし」
「やっぱそうなるんだ…。だけどもう遅いから説明はまた今度ーって言われても、これじゃ気になって寝れないよね!八幡君は気にならないの?」
「俺は立花が検査受けてる時に説明されたから別に」
「そうなの!?」
そう、立花がアレコレされている間に特異災害対策機動部二課とやらのこと、聖遺物だとか歌で起動するとかシンフォギアだとかの事についてはある程度聞かされた。
…実は結構ワクワクしたのは内緒だ。お、男なら多分全員そうだろう。異端技術とかいうワードがさも当然のように使われる会話におぉと慄いてもおかしくはないのだ。
ちなみに教員用の入り口の位置も教えられており、そこからなら人目につかず本部に行けるのだが、それについては立花には秘密だ。面倒なことにしかならなそうだし。
「じ、じゃあ私の事も分かったの!?」
「いやそれは流石にな…。それを調べるためのメディカルチェックだし」
「そっかぁ。あ、でもでも!説明されたなら何か協力してほしいみたいなこと言われたんじゃない?」
「あー、まあな」
「そうなの?やった!じゃあこれから一緒に…」
「断ったけど」
「なぁんでぇ…」
「な、泣きつかれても…」
というか何故自然に立花は二課で働くことを受け入れているのだろうか。働くってことはアレだぞ、働くってことなんだぞ!?そんなこと専業主夫志望の俺が受け入れられるわけないじゃないか!それに本部が国の機関な時点で半端なバックアップはしないだろう。つまりそこでは俺は単なる蛇足以外の何物でもない訳だしな。
……まあ立花のストレス発散の相手くらいは務めるよう言われたが。それくらいならと返答したが、立花には小日向という親友がいる。つまり俺、いらない子。仕事、しなくていい、やったぜ
「……まあ決めるのは説明聞いてからだし、立花も自分の好きなように決めろよ。俺はノーと言える日本人だから断ったけど、イエスマンは損するだけだぞ」
「うん、心配してくれてありがとね!」
「いや、別に心配とかじゃなくてだな…」
「あ、私の寮こっちなんだ。入り口はあっちの方だからここまでだね。おやすみ、八幡君!」
「おう」
ブンブンと手を振ってくる立花に軽く振り返し、人気のない校内を進んでいく。車で送ってくれると言われたが、どうにも今日は体を動かしたい気分らしいので二課が回収してくれていた自転車で帰ることにした。
薄暗い廊下。その先の入り口から出てみればもう真っ暗だ。きっと小町も心配して、いるといいなぁ。まあしていると仮定して。なんにせよ高校生がフラフラしているような時間でもない。それでも特に急ぐ気になれずにゆったりと歩みを続ける。
「シンフォギア 、か」
ポツリと口から出るのは今日の出来事の中心にあったもの。そしてどこまでも自分には関係のないものだった。関係ないのなら気にする必要もない。なのに、心に打ち付けられるように浮かび上がる。歌を歌いながら、戦場に立つ立花の姿が。
「歌、よかったな…」
誰もいない夜の学校。溢れ出た本音は誰にも聞かれずに溶けていった。
☆☆☆
-翌日-
「………まあ、そんなうまい話はないか」
時は既に放課後。学校から帰る間、俺はイヤホンを耳につけながら歩いていた。流している音楽は小町の許可をもらい携帯に入れてもらった風鳴翼のCD。昨夜立花の歌声が聞こえたので、もしかしたらこのよく分からない病気が治ったのではと推測したのだが、残念ながら聞こえてくるのはBGMのみ。本人の歌声は一語たりとも流れては来なかった。
「……ちょっと興味出てきたんだがな」
しかし現実は非情である。何故立花の歌声が聞こえたのかは甚だ疑問だが、本人に聞いても分からないだろう。それに流石はトップアーティストの歌う音楽。歌がなくともそれはそれでいい音楽だ。暫くはこれを聞いていてもいいかもしれない。
それにわざわざゆっくり聞くために自転車ではなく徒歩で通学路を歩いているのだ。どこかしら寄り道をしてもありかもしれないな。
「あれ?比企谷君?」
つい反射的に声のする方を見てしまう。そこにはこの間会ったばかりの女子生徒が、同じ制服を着た3人の女子と共に歩いていた。
「……小日向か」
「こんにちは。今帰り?」
自然にこちらに近づいてくる小日向に一歩だけ後ずさる。小日向といい立花といいなんでこんな短期間にエンカウントするのだろうか。君たち確か寮生活なんだからこんな方まで来ることってそんなないんじゃないの?
「そういや立花は一緒じゃないんだな」
「うん、響は用事があるらしくって…。比企谷君は何か知らない?」
「いや、わからん」
「そっか…」
小日向の様子を見るにどうやら立花はシンフォギアや二課については口外していないらしい。相談くらいはしているかもと思ったが、それもないようだ。
それに用事というのも二課の呼び出しなのだろう。いや先生の呼び出しとかの可能性も立花なら無きにしも非ずだが。
なんにせよ、俺がその用事を知っていたらおかしいどころの話じゃないからな。知らないフリ知らないフリ。知らない人のフリが出来なかったのはぼっちとしての反省点ですな。
「ねえヒナ、この人ヒナの知り合い?」
「うぉ…」
小日向と会話しているとぬるりと視界に知らない女子が割り込んでくる。しかもなんか近い。さっきまで離れてたのに気づかないうちにここまで近づかれるとは…。この世界には、貴方のような忍者が多過ぎる…!違うか、違うな。
「わー!この人すっごい!目がめっちゃ腐ってる!こんな変な目してるなんて、まるでアニメじゃない!」
「本当ですわね!その濁り具合、ナイスです!」
「腐ってるとか濁ってるとか、初対面の人にあんたらよくいうねぇ…」
「いやほんとな。え、つか誰?」
この杜撰な扱い、まあ慣れてるといえば慣れている。小中と散々な扱いをされてきたからこの程度でどうこういう訳ではないが、だからといってこの残酷が心地いいかと聞かれれば断じてNoと言わざるを得ない。なんで俺はマゾに生まれてこなかったのか。きっと最高の人生になったろうに。
「私たちはヒナの友達!これからフラワーのお好み焼きを食べようと思って来たんだ!」
「そうなのよ!ねえ、あんたも一緒に来なよ!どうやってその目に至ったかについてアニメ1クール分くらい語れるんじゃない!?」
「あ、いいですね!小日向さんのお友達ならきっと私たちとも仲良くなれますわ!」
「え、えぇ、と?」
え、なに?押し強くない?最近の女子高生ってみんなこうなの?パワーと勢いと流れで俺なにも出来ないんだけど?
…だが、まだ此方にも切れるカードはある。あ、ごめーん!これから用事あって〜作戦や今友達と待ち合わせしてて〜作戦など、俺が食らってきた相手を躱す作戦は108まであるぞ!ただその殆どが友達いない俺には使えない悲しい技だがな!
「ひ、ひや俺これから用で…」
「突然でごめんね、比企谷君。もし迷惑じゃなかったら一緒に行かない?」
「ほらほら、ヒナもこう言ってるし!」
ブルータスゥ!?小日向はむしろ俺が対人関係苦手なの察してくれてもいいんじゃないですかね…!ほら、会ってもう二日も経ったんですよ!一日なら赤の他人だけど二日ならむしろ友人超えて既にフレンズなまである。あ、僕のけものでした、残念!
「…ね?」
「……うす」
ああ、ノーと言えない自分が憎い…。
☆☆☆
inフラワー
「「「「いただきまーす!」」」」
「……ます」
結局ダラダラ話しながら歩いていると件のお好み焼き屋についてしまった。どうにか逃げ出せないかと機を窺ってたのだが、あれね。女子って会話の切れ目が全然ないよね。俺がなんか言おうとすると話が始まり、黙ろうとすると話を振られる。抵抗の意思を奪おうとしてるのかしらん?あ、このお好み焼きうめぇ。
「……それにしても、立花さんを助けてその流れで小日向さんともお近付きになられるなんて…。とても稀有な出会いですわね」
「ほんとほんと。あの子の生き様ってまるでアニメみたいだけど、比企谷もなかなかどうして、アニメみたいな生き方してるよね」
「いやアニメみたいって言われてもな…。立花みたく主人公ムーブしてないんだが…」
「あー確かに。ヒッキーって主人公っていうより、主人公を諌めるヒロインみたいだもんねー」
「いやヒロインでもないから。てか誰だよヒッキー…」
「え?比企谷って名字だからヒッキー。ハッチーとかハッちゃんの方がいい?」
「どれも嫌なんですが…」
引きこもり扱いされてるのか、それともペット扱いされてるのか分からないような呼び名は勘弁です。もちろんヒロイン扱いも当然No!断じてNo!それに俺が本当にヒロインならこの四人に絡まれている時に、「この人、私の連れなんで」とか言って救い出してくれる主人公(女)がいてもおかしくないのに!いやダメだ。逆にお好み焼きに誘われて「行く行く!」ってなってる立花が浮かんでくる。主人公が立花になってた…。
「あはは、安藤さんって人に
「…むむむ、仕方ないからハチマンでいいか。なんか既に渾名っぽいし」
ほう、ハチマンとはいい渾名だ。ヒキガエルとかヒキタニとか原形が消え去っていった小中学時代に比べれば全然マシだからな。最後はカエルになって俺要素皆無になったし。
「……にしてもこのお好み焼きうめえな」
「ふっふーん!でしょ?私が先輩から教えてもらったんだー!」
「今板場が威張るところあった?」
「ふふ。ですが実にナイスな情報でしたね。本当に美味しいです」
「ねー!これは是非ともビッキーに教えて自慢しなきゃ!あの子絶対に来たがるよ!ね、ヒナ!」
「…うん、そうだね。次は響も一緒に来たいな」
「それじゃあ響に教える用に沢山の種類食べなくっちゃね!おばちゃーん!追加の注文いいですかー!?」
……わちゃわちゃと会話をしながら騒がしい放課後の時間が過ぎていく。そしてそこには当然のように立花の存在があるらしい。俺と立花。同じ日に入学式があって、似通ったトラブルに見舞われたっていうのにえらい違いだ。俺と違って立花は新しい学校で新しい友達とやらを見つけられたらしい。……なんだ、やっぱり立花を元気付けるのに俺なんていらないじゃないか。居場所がある奴は、そこで元気にやっていく。
それに…。
「…ん?」
「いや、なんでも」
この
「ほらヒナもヒッキーもいっぱい食べな。今日帰れなくなるよー」
「わぁ…。どれだけ頼んだの…?」
「沢山!」
「大食いは立花さんを連れて来てからやるべきだったかもしれませんね…」
…あれ?というか呼び方戻ってない?
アニメを間に受けて何が悪いのよと言い張れる板場さん可愛い。
旋律ソロリティ好き