やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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さ〜あ、こっから更新遅くなるぞぉ。
原作踏襲しながらオリ設定垂れ流す作業は頭使う。でも楽しい。


愛など嬲ろう、愛など躙ろう、愛した贖いを。






やはり機械人形は笑う。

 

 

 

 

 

 

side………

 

 

 

 

「………………おい」

「はぁ〜い。いかがされました、マスター?」

「いかがも何もない。何だこいつは?」

「落っこちてたので拾ってきちゃいました☆」

 

 

広い、広い、大広間。存在感のある玉座に四つの台座。玉座の後ろにはパイプオルガンにも似た模型がその存在を強調し、玉座の存在に威圧感を与えている。

 

四つの台座には一つを除いて三つの人形。1/1サイズの人型は、よく見なければ本物の人間のようにポーズを決めながら静止していた。

 

 

「………思い出だけ奪って捨ててこい」

「まあまあマスター。ガリィちゃんもきちんとマスターのお役に立つと思って持ってきたんですって〜」

「…身に纏う聖遺物。シンフォギアを操れるのは見ればわかる。だが俺にはそんな凡愚一人など不要だ」

 

 

そして台座にあるべき人形の一つ、形式番号XMH_020。ガリィ・トゥーマーンは玉座の前に跪きシンフォギアを纏った比企谷八幡を、自らを製造した主人に献上していた。

 

…その主人の姿は荘厳な玉座に比べ、余りにも小さかった。赤い丈の短いドレスのような服に一見短く見える金髪を後ろで一括りに、その青色の瞳は目の前の機械人形を見下ろしていた。

 

 

「キャロル・マールス・ディーンハイムの錬金術は、世界を壊し、万象黙示録を完成させる。そのような男、雑音(ノイズ)でしかない」

「ええ、ええ。分かってますとも…。輝かしきマスター、その理想の為に私達は貴方に作られたんですから」

 

 

キャロル・マールス・ディーンハイム。四騎のオートスコアラーを作り出し、使役する錬金術師。見た目とは裏腹に数百年を生き、四大元素(アリストテレス)を自在に使いこなす天才。

 

…その才の全てを一つの目的の為に使い続ける少女だった。

 

 

『万象黙示録の完成』

 

 

錬金術の基本、分解し、解析し、再構築する。一般に言われる銅を金に変える、を想像すれば分かりやすいだろうか。その構造を分解し、解析し、再構築することでその存在そのものをも変える秘術。

 

……それを、この少女は比喩なく世界規模で行おうと歳月を費やしているのだ。

 

 

『世界全てを分解し、解析すればその全てを理解できる』

 

 

この少女が今いる場所もその為の建造物に過ぎない。

 

《チフォージュ・シャトー》。『夜ごと悪徳に耽った忌城』の名を冠した巨大装置。様々な聖遺物、または聖遺物由来となる異端技術のパッチワーク。

 

…未だ建造途中であるが完成すればワールドデストラクター、世界を破壊する装置としての機能を発揮する恐ろしい聖遺物。そこを彼女達は居城としていた。

 

 

「………ですがマスター。世界を壊し、万象黙示録を完成させる為には世界が万全であるべきとは思いませんか?」

「…何が言いたい?」

「マスターのお父様が残された『世界を識れ』という命題、それを世界全てを解析し世界を解明することだとマスターは解答されました。ですが今回の事象、フィーネによる月の破壊はその前提を破壊する危機だったかと」

「……………続けろ」

「マスターが世界を分解する前に誰かが世界を壊す、それは命題の遂行の失敗を意味するのでは?」

「………」

 

 

命題、その解答。キャロルとして聞き流せないそのワードを口にするガリィの言葉に耳を傾ける姿勢を見せながら、キャロルは静かに過去へ思いを馳せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャロルが万象黙示録を完成させる理由は、父親の遺言にある。

 

数百年前の欧州。まだ魔女狩りすら現役であった時代に、すでに錬金術は存在していた。キャロルの父親は錬金術師であり、その父親から錬金術のイロハを学んでいた。

 

…キャロルの父親は柔和な人だった。娘によく笑いかけ、人の為に、自らの為に、研鑽や浪費を惜しまず勤勉な人間だった。その背を追い続けたキャロルにとって、世界の誰よりも尊敬できる人間でもあった。

 

 

……転機は、間違いなく流行病が村に舞い込んだ時だったのだろう。

 

 

その時代、錬金術など間違いなく魔女狩りの標的である。だから父親とキャロルは人里離れた小さな家で二人で暮らしていた。

 

…自然に囲まれ、静かで、平和で。

 

…そんな父親だったから、近くの村で治療法のない病が流行ったと聞いてその治療法を模索することに躊躇うことはなかった。

 

錬金術を用いて、進んだ薬草学の知識を用いて、人体医学の秘術を用いて、キャロルとともに野へ歩き、机へ向かった。

 

夜が深まれば古いランタンを灯して研鑽を続け、手伝っていたキャロルが欠伸を噛み殺してはその手を引いてベッドに寝かせ、子守唄がわりの神秘(アルカナ)を語り寝かせた。そして自分はまた研究へ。

 

 

 

 

 

…薬は問題なく完成した。

 

病を治し、村の人も笑顔を取り戻していった。

 

 

 

『ああ、()()だ!』

『神よ、この()()に感謝します!』

『神の()()に祈りを!』

 

 

 

………人々は歓喜し続けた。この時代、災厄、病、事故は全て悪魔の仕業であるとされていた。病に倒れるのは悪魔のせい。不作が訪れるのは悪魔のせい。事故で死んだのはきっと悪魔に憑かれていたに違いない。

 

…ならばこそ、その悪魔の手を退けたならばそれは神の奇跡以外にはありえない。

 

…いや、《()()()()()()()()()()()》。

 

 

 

 

………誰も父親に感謝しない。誰も父親を褒めない。

 

………あんなに頑張ったのに。あんなに大変だったのに。

 

 

 

 

父親はそれで良いと笑った。子供心に、納得できなくても、それでも良いのだと思った。

 

………でも、納得できなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『良くなってよかったわ。なんたってパパが作った薬なんだから!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………その村の子供に、そう漏らしてしまったのは、仕方ない事だったのかもしれない。

 

 

 

 

…病は悪魔の仕業だ。

 

…病が祓われるのは、神の奇跡だ。

 

…悪魔を祓うのは神でなくてはならない。

 

…もしも。

 

…もしも悪魔を祓うのが神でないのなら。

 

…それは、別の悪魔にしかできないのでは?

 

…なら、病を払った男の正体は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………火が燃えていた。街の中心に位置するその場所で、男を柱に括り付けて火が焚かれていた。

 

………括られていたのは、キャロルの父親だった。

 

 

 

『それが神の『奇跡』でないのなら、人の身に過ぎた『悪魔』の知恵だ!』

『裁きを!浄化の炎で◾️◾️◾️◾️の罪を清めよ!』

 

 

 

…父親は悪魔とされた。病を払い、新たにこの村に訪れた悪魔だと。

 

…燃える父親に駆け寄ろうとするキャロルは周囲の人々に止められ、その父親が燃え尽きるまでを見続けるほかなかった。

 

 

 

『…キャロル。生きて、もっと世界を識るんだ』

 

 

 

…燃え続ける父親から、最期の言葉が送られた。

 

…燃えて、燃えて、燃え尽きて。最後まで娘に笑ってみせた父親の言葉を、その命題を、今もキャロルは追い続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………世界を識る。そのための世界は万全でなければならない、か。…一理あるとして、そこの男とどう繋がる?」

「そりゃもちろん色々使えるじゃないですか☆ほら、人間ですし」

「………」

「……今回のフィーネの件。パヴァリアの情報で付近の調査はできましたが、成果は0でなくても後手後手。フィーネが動き出した時には私だけじゃ止められない状態でした」

「……ん?俺はお前に調査など頼んでいないが?」

「………」

「………」

「…つまりですね、もっと内部へ入り込める人材が必要だとおもうんですよ!」

「………おい」

 

 

キャロルがガリィに指示していたのは騒ぎが大きくならない範囲で想い出を集める事のみ。未だシャトーが完成していない以上、騒ぎが表に出て問題視されるのはデメリットしかないからだ。

 

…そしてこのガリィ、仕事は完璧にこなしている。想い出の収集は順調に進み、足がつくこともなければ混乱も最低限。ガリィを除く三騎のオートスコアラーのうち二騎の起動にも成功していた。

 

性根の腐り具合や独断は多々あれど、残念なことにガリィは紛れも無いキャロルの最高傑作の一つなのだ。

 

 

「…で、ですね。そりゃあ短い期間にそう何度もポンポン世界が壊れるとは思いませんけどぉ、一度あることは二度あるかもしれないじゃないですか〜」

「…そのためにこの男を利用すると?…ふん、そんなのこの男が受け入れるわけが…」

「受け入れますよ?受け入れさせます。その為の、ガリィちゃん達なんですから☆」

「………何を企んでいる?」

 

 

うふふ♪と笑うガリィに整った顔を歪めてガリィを睨みつけるキャロル。

 

…ペロリ、とガリィが舌舐めずりをすると、更にその表情を歪めた。

 

 

「………都合の悪い想い出を奪ったか。性根の腐ったガリィらしい」

「嫌ですねぇ。マスターの為を思ってですよぅ。誰かにお願いをこ・こ・ろ・よ・く!受け入れてもらうために大切な想い出をちょ〜っと、貰っただけですって」

「………それは?」

「愛!ですよ!」

「………ヘドが出る」

 

 

聖杯の力を宿されたがガリィは想い出の扱いに長けている。他のオートスコアラー達に奪った想い出を分配するのもガリィの役目だった。

 

…それと同じように、八幡の想い出を舐め取り絡め取り、必要な想い出だけを抜き去った。

 

…愛された想い出を。

 

…愛した想い出を。

 

…愛を感じた想い出を。

 

…《愛》を、奪い尽くした。失恋の想い出やトラウマなどはしっかり残したが。

 

 

「……愛など、くだらない」

「ええ、そうですとも。ですがマスター?《愛》という感情が、人の原動力、また信頼、そして盲信すら生み出すことを、知らないマスターではないでしょう?」

「………」

 

 

跪いていた姿勢を解き、ガリィはキャロルへと近づいていく。玉座で歪めていた顔を撫で、耳元で囁くように口を開いた。

 

 

「…マスター。…愛など(なぶ)りましょう、愛など(にじ)りましょう。愛を与え、貴方の願いの礎へ焚べましょう。踏み潰された貴方の愛で、貴方の進む道へと…。…それでこそ、貴方の愛が満たされるのでしょう?」

「………っ!…もういい、そいつの事は好きにしろ。俺の足を引っ張るようなら、塵すら残さず消し去るからな」

「ええ、お好きなように」

 

 

ガリィの手を振り払い、キャロルは玉座から去っていく。その背中にニヤニヤと笑いかけていたガリィは、その姿が見えなくなると笑みを消して床に落ちている八幡へと目を向けた。

 

 

「………さーて、上手くいっちゃったわね」

 

 

…実際、ガリィとしては八幡は気紛れに過ぎない存在ではある。しかしキャロルの未来を案じていたのも偽りのない事実。その為にやる事が増えた。それだけに過ぎない。

 

 

「…ま、あたしの手に余るかは知らないけれど。あんた達も協力してよね?」

 

 

ニヤッと、小さく口角を上げて台座に飾られたオートスコアラーへと笑いかける。

 

 

「レイアちゃんにファラちゃん♪」

 

 

 

 

 

 

 







「愛!ですよ!」
「何故そこで愛!?」

この流れがなかなかできない。脳内に生きてるみんなが言ってくれないから仕方ない。本家本元まで我慢。

……困った。ガリィちゃん書くの楽しい。ミカちゃんはもう少し待ってね。

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