やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
BD届くまで待つか悩んだけど先に進めるが吉と出た。読みにくくてごめんね。
inキャロルの部屋
「………地水火風、その四属性の性質。そして七つの音階と七つの惑星、ハーモニーにより通じる絶対親和。万象を知る事で通じ、世界と調和しようと試みたのが錬金術だ」
「なるほど、わからん」
古めなインテリアながら高級そうな洋風の家財。赤を基調とした薄暗い部屋。そこでキャロルから錬金術についての指南を受けていた。
「言葉だけで理解などできるものか。分解、理解、そして再構築。基本があるとはいえ錬金術には派生ばかりだ。俺なりのやり方で教えてやる」
「うす…」
「離れた位置への意思疎通についてはまず天体の運行力学から叩き込むぞ」
「なんて?」
指南といっても、やることと言えば勉強、勉強、また勉強。それに限る。知識こそが錬金術の最奥とばかりに叩き込まれる知識は知っているもの知っていないもの多々あるが、その結びつきで行使される錬金術には眼を見張るものがあった。
「精製術は比較的難易度が低いものだ。お前にはガリィが水の刻印を刻んだことだし、そちらの方で試してみるのがいいだろう」
「…つまり鍛えれば俺も水出せるようになるのか?」
「研鑽の浅い術ではたかが知れるがな」
教唆してもらいながら試したが大量の手汗と区別がつかなかったレベルでしか出てこなかった。ちなみにその間横でキャロルは手のひらに竜巻状に水を変形させて回していた。余裕の姿だ、回転力が違いますよ。
「通信術式は刻印にマナを通せば運用に問題はなかろう。術式への理解があればオートスコアラー単体への通信なら想い出を消費するまでも無い」
「……よく考えたら四六時中ガリィから話しかけられる可能性があるって事なのか…」
「……まあ、ガリィも想い出の無駄遣いはしないだろう。それに突然黒電話を大音量で流してくる輩よりマシだ」
「なぜそこで黒電話?」
というかキャロルは俺に教えながら全く別の錬金術についての知識を蓄えているようで、話している最中ですら手が止まっていない。それに難解で複雑な工程が多いが、キャロルは随分と教え方が丁寧だ。初歩の初歩の段階的な教え方が上手いと言えばいいのか。
「………」
「………」
…しばらくの間本とのにらめっこが続く。気遣われているのか日本語の本ばかりだが、新しい知識を拒む脳みそに情報を詰め込んでいくのはなかなかに疲れる。
「……疲れたなら休め。通信術式さえ覚えられれば後はお前にとっては蛇足だ」
「…まあ、普段触れられない知識だからな。興味はあるんだよ」
「………時間の無駄だ。闇雲に知識を取るのではなく一つの方向へ研究テーマは絞れ。あとそれは錬金術の本じゃないぞ」
そう言って読んでいた本を抜き取られた。っていうか錬金術と関係無いのかよ。いや降魔儀式とか書いてあったから正直ひたすら首ひねってたけどさ。
「……ちなみにキャロルの研究テーマは?」
「…さあな、曖昧だ。随分多岐に渡っているからな」
「想い出が云々じゃ無いんだな」
「……それも随分前のものだ。…ああ、そうだ。最初の時は、ノイズの分解機能についての研究をしていたか」
そう言って新しく本を山積みにするキャロルを盗み見ると、強気な表情は鳴りを潜めて陰鬱な目をしていた。ノイズという現在でも脅威である自然災害について調べていたということへの興味が膨らむ前に萎んでいき、何も言えずに黙り込んでしまう。
「……俺の父親が研究していたものでな。父の跡を継ぐ、と奔走していた幼少期。もう数百年も前の話だ」
「……」
………ああ、そういえば最近はファラやレイアとの戦闘ばかりで考える時間が少なくなっていたな。こんな風に沈黙がはびこる空間がひどく久しぶりに感じる。
そしてそういう時にこそ無駄な思考が回るのだ。さも自然に口にしているが、数百年という時間の重みは俺には想像できないほどの長さなのだと思う。
俺はまだ二十も生きていないが、一年以上前の感情を持ち越すという感覚が分からない。ハブられたり笑われたり罰ゲームにされたりと忘れない記憶はあるが、それすら今ではただの昔のことだ。それを理由に感情を爆発させたりはしない。
だがキャロルは数百年だ。その感情の理由が父親の死という特大の厄ネタだとしても、それだけの時間負の感情を持ち続けるのはどんな心持ちなのか。
「……………世界を知る、ね」
もっと世界を知れ、とキャロルの父親は残したと言っていた。それを命題だと。その答えとしてキャロルは世界をバラバラに分解してその全てを理解することを解としている。
…脳筋過ぎない?世界を知る(物理)て。むしろそれが正解ならキャロルパパさんそんな昔から世界ぶっ壊す算段たててたのかよ。
「……なんだ?」
「……いや、随分物騒な研究してたんだなーと思って…。何のための研究だったんだ?」
「…さあな。目的の物は開発した。だがそれが何のために必要とされたかは、分かっていない。ついぞ父親の目指した場所へ辿り着けなかった俺には、どんな意味があったのかなんて分かるものか」
「……え、世界全部を分解して壊す為のものじゃなかったのか?」
「パパがそんなことするものかっ。人の、人類のための研究をしていたあのパパの研究だぞ!?それにそれは誰かを傷つけるものではないと、昔パパが俺に告げたのだからな…」
「…………」
激昂と共に目に生気が戻り、燃えるような瞳で睨みつけられることで黙り込む。それと同時に強い違和感に襲われる。というより目に見える矛盾、キャロルの反応が父親に騙されてでもいない限り出てきてはいけないものだろう。
…というのも、命題を出すからには出題者であるキャロルパパにもその命題の答えがあったはずだ。その答えは分かっていないが、キャロルの『世界を分解して万象を理解する』という解答はキャロルパパを
で、あればだ。キャロルの命題への解答は間違いであると、キャロル自身が認めていることにならないだろうか?意識的にしろ無意識的にしろ、自己矛盾に陥ってもおかしくないのだが…。
「……なんだ?俺の顔色を見ようが知識は溜まらないぞ」
「…ああ」
…なんとも、素敵な顔色ですこと。瞳の奥底では暗く輝く何かが見えるが、表面で見ればどこにいるとも変わらない女の子だ。数百年、その幾年を葛藤や悩みで過ごしてきたのか。それとも命題の答えとやらを早々に見つけ出して研鑽を積み続けたのか、それは分からない。
だが目の前の御主人様は止まる気も躊躇う気も微塵もないらしい。そもそもだ、俺の行き先なんて何処にもないのに何を考える必要があったのか。浮かんだ想像は丸めてポイ、ポポイのポイだ。痛いの痛いの飛んでいけ、主に頭のイタさ。
…そうだ、その仄暗い真っ直ぐさで仲間になると告げたのだ。友ではなく、信頼もせず、ただ粛々と。任務達成とその成果を出す。それがここでの俺の立ち位置に他ならない。余計な感情は無くならないが、表に出ないそれはまだマシなガラクタとなる。
…もう言葉はいらない。教えられた知識、目の前の知識。できの悪い頭を使って最高のトカゲの尻尾にでも俺を錬成してやろう。与えられたタスクを全てこなすだけの人間になれるくらいに、な。
…沈黙が支配する部屋の中で、頭の限界まで知識を貯める。錬金術の表紙に触れただけだが、そこに嫌悪感はない。やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじと言うが、興味へは何も言われずとも人は動き出す。
…そのまま限界という時が来るまで、俺は机に向かい続けた。
………そして、そんな日々が続きながら、F.I.S.へ向かう日がやって来た。
☆☆☆
(……………久しぶりだな。部屋に人の呼吸が聞こえるというのは…)
キャロル、小町誕生日おめでとう!キャロル誕生日覚えてるのかとか、キャロルパパの誕プレ気になるとか色々妄想だけは捗ってます。
ていうか小町誕生日同じなの忘れててごめんなさい…。不遇ポジでごめんね!
ちなみに錬金術の内容は基本ノリです。描写もワードも足りてない。