やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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週一ペース守れなかったぁ…。日常会話とか何気ない会話って文字数稼げないのに難しすぎんよ。

…前に先に関係ない場繋ぎ会話書けなくてエタった過去があるからそこから考えれば成長した、うん。


やはり彼女らは騒ぎ立てる。

 

 

 

F.I.S.。米国が保有する研究機関、と言いつつ既に指揮権やら忠誠やら薄っぺらな紙切れと化しているような施設。一に研究、二に研究、三、四が研究で五に研究というガリ勉集団だ。

 

故に基本研究以外興味もなく、拘束や行動に制限は施されていない。カリキュラムもまだ組まれていないので俺は完全に暇な時間を持て余していると言ってもいい。つまり、だ。

 

 

「おい起きろデス!目ぇバッチリ合ったデスよ!」

「じー」

 

 

………こんなちびっ子達に構っている暇はないんだ。

 

 

「…………後5年」

「死んじゃうデスよ!?」

「…切ちゃん、ゾンビは死なないよ?」

「ゾンビじゃないから、腐ってないから」

 

 

部屋に乱入してきた二人を無視して布団に包まってみれば、ユサユサユサユサとシェイク&シェイク。こんな起こされ方ありゃりゃ木さんくらいしか見たことないぜ。妹がリアルにいたらこんな起こし方してくれるのかしら。ちょっち憧れる。

 

 

「……てかなに、お前ら誰?」

 

 

布団から顔だけ出して改めてちびっ子達を見れば、割と可愛い子達が。金髪にバッテンの髪飾りをした喧しい少女に、黒髪ツインテールで大人しめな少女の二人組。流石に小学生ではなさそうだが、言動のせいで幼い印象が強い二人だ。

 

 

「…………調!」

「うん、切ちゃん」

 

 

……そんな二人が、ユサユサしていた布団からバッと退き背中合わせでポーズを決める。なにそれ、打ち合わせしてんの?

 

……最高にキメッキメのポージング、ムサシとコジローにしか見えない。ニャースが足りないでニャース。

 

 

 

 

 

 

「人に名前を聞くときは…」

「自分から名乗るデスっ!」

 

 

「あ、じゃあいいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いやちょっと待つデス!流れが違うデスよ!?」

「ちゃんとやって」

「なんだこいつら…」

 

 

………何かの漫画の影響でも受けたのか、『人に名前を聞くときは自分から』をやってみたいガールだったらしい。ていうかツインテの方無表情かましながらノリノリじゃねえか。

 

………だがこれ以上喧しいのも精神的によろしくない。リアル女子と長い時間話してるとだいたい精神を抉られるからな。…こいつらは比較的平気そうだが。

 

 

「………比企谷八幡だ」

「…月読調(つくよみしらべ)

暁切歌(あかつききりか)デス!」

 

「………」

「………」

「………」

 

「……切ちゃん、ここからどうするの?」

「…ハッ、名乗るまでしか考えてなかったデス。…えーと、確か…」

 

 

ポーズを決め、取り乱して自己紹介したと思ったら後ろに隠れて作戦会議。随分と気の抜ける奴らだが、陰湿な輩じゃなくて助かった。

 

胸元を見るにこの二人がナスターシャさん、もといマムが言っていた三人のシンフォギア装者のうちの二人で間違いないだろう。二人とも首からピンク色のギアペンダントをさげている。

 

……そしてレセプターチルドレン、フィーネの遺伝子を受け継いだ子供達でもあると。マムは幼少の頃から知っていると言っていたが、つまりそれだけ長い時間をこの施設の中で過ごしてきたわけだ。

 

……そう考えるといい情報源かもしれないな。

 

 

「……なあ」

「そうだ、決闘デス!」

「………バカなのか?」

「……ふっ、バカはいったいどっちデスかね?」

「お前だ」

「…そうこのあたし、……じゃないデス!決闘、決闘デス!デュエル、バトル、ロワイヤル!デス!」

「……八幡、切ちゃんをいじめちゃダメ」

「…だいたい自爆じゃね?」

 

 

ノリで話して軽く返せばたちまちおつむが大噴火。愉快痛快切歌くんの完成だったりしてる。あとロワイヤルやロワイアル単体に決闘に関連性のある意味はないぞ。

 

 

「……てかなんで決闘?」

「誤魔化しても無駄デス。その首飾り、八幡もシンフォギアを持ってるならこの決闘を受けられるはずデス」

「…黒いペンダント。珍しい…」

 

 

…隠しているわけではないので俺の胸元の黒いギアペンダントの存在は認知されていたのだろう。そも特殊な事情でこの研究所にいる三人、つまりシンフォギア装者である以上新入りの俺も装者であることは周知の事実だろう。

 

さて、どうしようか。

 

 

………マムがまた後でここでの生活について教えてくれるらしいから勝手にここから動けないんだよなぁ。

 

 

「…やめろ、俺たちが争うなんて無意味だ」

「問答もここまで、喰らうデス!」

 

 

宥め賺しも暖簾に腕押し。ギアも纏わずに突如手に持った何かを投げつけてきた。布団にこもって動けないので大人しく直撃を食らったが、別段痛くもない。

 

投げつけてご満悦の暁を横目に、ぶつけられた物を拾い上げるとむしろ待っていたとばかりにさらに目を輝かせた。

 

 

「…………拾った、デスね?」

「あん?」

「漫画で読んだデスが、ソレを相手に投げて拾ったらそれは決闘を受ける合図!そう、八幡はあたしからの挑戦状を受け取ったということデスよ!」

 

 

………ああ、またやってみたかった系デスか。決闘を行う際に相手に白手袋を投げつける、または相手の頬を引っ叩けば決闘という伝統的?かつお約束な行為。最近の先進国では決闘罪とかでお目にかかれないどころかお目にかかったら通報ものであるのだが、この無法地帯(仮)なF.I.S.では流行ってるのだろうか。

 

………いやそれよりも気になることがあるんだが。この手に持った布、白と緑の縞模様で随分と縦に長いどっからどうみても手袋には見えない一物。しかも仄かにあったかいのがなんとも…………。

 

 

 

……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………靴下じゃねえか!」

 

 

 

 

 

 

…よく見たら暁の片足だけ存在している靴下が異様な存在感を放っている。いやこれ脱ぎたて!?なに、俺はなにを試されてるの!?これどうすればいい!?

 

 

「…………八幡、顔がえっちぃ」

「エロくない、腐ってるだけだ。てか普通手袋だろ、なんで靴下相手に投げつけてんだよ!」

「…………あれ、違ったデスか?」

「あれじゃねえ、全然違うだろ…。手と足の差異がデカすぎるわ」

「…切ちゃん、手袋なんて持ってたっけ?」

「………うー、持ってないデス。指が分かれた靴下じゃダメデスかね?」

「靴下から離れてくれ…」

「ちょっと探してくるデス!」

「なあ、手袋の話だよな?靴下じゃないよな?なあおい…。聞いちゃいねえ…」

 

 

バタバタと入り口から外へ飛び出していく暁を止められるわけもなく、同じく取り残された月読と二人きりになった。しかもあいつ靴下の回収忘れてやがる。ほんとこれどうすればいいの?

 

 

「…じー」

「………」

「…じー」

「…………ん」

「…うん」

 

 

じー、じー、とガン見されてとりあえず靴下を渡しておく。女子の靴下ずっと握りしめてる男子とか絵面的にアレだしね。これでごく普通の男の子に早変わり、そしてついでに深呼吸。慌てない慌てない、一休み一休み。……解放してくれ。

 

 

「………じー」

「……まだなんかあるのか?」

「…八幡は、なんでここにきたの?」

「…なんでってのは?」

「…………ここは、良い場所じゃないから」

「…………」

 

 

………少し、意外だった。暁と一緒に楽しそうにしていたし、行動の自由がある程度存在するなら閉塞感も少なそうだったのに。だが月読は良い場所じゃないと断言した。あまり、とも少し、とも区切らずに。

 

 

「…実験、訓練、投薬、罰もある。…痛いし、怖い。小さい頃からいるけど、一緒にいた子達もバラバラに他の施設に行っちゃった」

「…………」

「…此処は、ずっと苦しいし、悲しい場所。切ちゃんやマリアがいるから寂しくないけど、でも……」

「…………ああ。なんとなく、分かった」

 

 

…回りきらない口が開ききる前に止めておく。その先を聞くのは、どちらにとっても良い気分になるものではないだろうから。

 

ああ、少し分かった。…振り回され騒がれて、考える余裕もないほど騒がしかった時間。それはきっと月読や暁、もう一人のマリアとやらの子供達がこの施設で過ごしきるための方法だったのだろう。そうでもなければ会ってすぐにこんな目の腐った男に話しかけになんて来ない筈だ。それ相応に、子供ながらに純粋な、打算が入り混じった事情がようやく透けて見えた。

 

…間違いなくシンフォギア装者は研究対象だが、その研究に苦痛が伴うことは研究者にとっては些事なのだろう。痛い、怖い、苦しい、悲しい。そんな感情を抱え込み、支え合いながら暮らしている。それもずっと小さい時からだ。その結束は、決して緩くはないのだろう。

 

だからたぶん暁や月読が絡んできたのはそう、『寂しくないように』、だろう。同じ施設で暮らす新しいメンバーだからと。自分達の苦しさを与えないようにという配慮なのかもしれない。

 

……それがなんで決闘になるのかは分からないけど。

 

 

「………八幡?」

「…あーそうだな…」

 

 

心配そうに覗き込む月読に反し、頭がゆっくり冷えてくるのを感じながら応対する。もしこのまま黙り込んでしまえば、せっかく閉じた口が開いてしまうかもしれないから。

 

 

「…俺はなんていうか、軽い記憶喪失でな。昔のことが曖昧だが、シンフォギアを纏えるからそれの研究、ってことで此処に放り込まれたんだよ」

「…………昔のこと、覚えてないの?」

「トラウマならバッチリなんだがな。家族とか住んでた場所とかの記憶はさっぱりだ」

 

 

キャロル達やパヴァリアの事は伏せながら伝える。現状記憶がない事はむしろ共有してもらうべきなので助かるまであった。外のこととか聞かれそうだし、誤魔化すのも面倒だしな。

 

…………で。

 

 

 

「…………この手はなんですかね?」

「……よしよし」

 

 

 

なぜなになんで?なんで俺撫でられてるのん?母性出ちゃった感じですか?バブみを感じる?おぎゃればいいの俺?

 

 

「…大丈夫。切ちゃんもマリアも優しいから」

「………え?…あ、おう」

「…大変だったね、えらいえらい」

「…………おう?」

 

 

…すっげえ優しい顔で撫でられてるんですが。いやたぶん同情されてるんだろうけど、こそばゆくて仕方がない。初対面の相手に気を使うにしてもなんでこうボディタッチを軽々しくできるのか。それとも相方がリア充感溢れるともう一人も感化されるのだろうか。

 

そう考えるとさっきの暁も必死に話しかけてくれていたのに話を広げられなくて申し訳なくなってくる。あまりに申し訳ないので迷惑かけないようになるべく話しかけないようにしよう、うん。

 

………てかこれいつまで続くんだろう。逃げても逃げても手が付いてくる。逃げ過ぎると近づいてくるので逆に逃げれないまであって不安定になる。

 

……だがむしろ、こうした小さな接点の積み重ねがこの施設の子供達の在り方なのかもしれない。支えどころを見つけあい、依存しあい、寂しさを紛らわす。

 

こんな僅かな関わりですら闇が見えてくる少女達の、本当の結束はどうなのだろう。もしもこれからこの施設から出て、そして?

 

…拠り所のない彼女らはどこへ辿り着くのだろうか。

 

F.I.S.がなくなれば帰る場所は無くなる。その先、その果て、その終着点は……きっと…。

 

 

「……八幡?」

「…………いや、なんでも」

 

 

…じっと見つめてくる少女から目をそらす。…その首元に、『自由』という怪物が舌なめずりする姿を幻視しながら。

 

 

 

 






マリアさん出せなくて悲しみ。文字数稼げてないし後半に突っ込めるかと思ったらそうでもなかった。

F.I.S.組の会話の参考にG見返してるんですけど一番ビビったのは切ちゃんがいきなり「でねー!」とか会話し始めたのでした。やさぐれ時代なのに幼くて手が迷走しました。調可愛い。

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