やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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いろはす誕おめ〜。出せなくて本当に申し訳ない…。キャパが足りねえんだ…。切りちゃん誕生日に書き上げられなかったのも後悔。

戦闘描写慣れるつもりで書いたけど相変わらず難しいな。読んでる人の脳みそに直接妄想の映像を叩き込む機能が欲しい。

そろそろランキングに自分の作品が乗った通知とか欲しいな。ランキングから来ましたって言われたけどランキング載ったっけ?ってなる。

あと久し振りにみた逐一誤字報告してくれる某方久しぶりに見れてありがたかったです。なんか一番支えてもらってる気がする感謝。







やはり鞘は戦いには向かない。

sideウェル

 

 

 

 

 

 

「………ふむ。フォニックゲインの減衰機能、想像以上に厄介ですね」

 

 

手元の機会を弄びながらシミュレーターにいる二人のデータを検出していく。マリアはともかく、比企谷八幡のデータは今回が初めて。それ故にあらゆる情報を多角的にとらえる必要がある。……あるのだが。

 

 

「……フォニックゲインの数値がマリアと比べて4割程とは…。完全聖遺物のシンフォギアを纏っているとは思えない数字ですね」

 

 

どのような理由でフィーネこと櫻井了子がこの機能を付けたかは定かではないが、これでは響くものも響かない。

 

完全聖遺物とはその名の通り完全状態であり、その機能を十全に発揮する。しかしシンフォギアは聖遺物のカケラを歌で共鳴することでその機能を引き出している。その過程が無い完全聖遺物がシンフォギアよりも出力が低いというのはそうはないはず。つまりそれだけこの機能が効力を発揮していることに他ならない。

 

何より彼に宿っているのは仮にもアーサー王が使用していたと伝承される哲学兵装だ。生半可な力になるはずもない。

 

 

『一の英傑を打ち倒し、十の精鋭を薙ぎ払い、百の軍隊を討ち貫き、千の兵でも止められぬ』

 

 

そんな彼の武具。哲学兵装は言の葉より紡がれる呪い、それ故に依り代に心が宿ることは珍しくはない。観測されることは少ないが、意思を持つような記録もよくあることだ。

 

……もしかしたら彼の聖遺物の中にそれ程の何かが眠っているということなのか…。

 

 

「……なんにせよ、試してみなければ始まりませんか」

 

 

シミュレーターを起動する。兎にも角にもデータを取る。それから研究すればいいだけですので、彼らにはさっさと戦ってもらいましょう。

 

 

『まずは適当に戦ってみてください。思う存分に』

 

 

観測、計測、そこからの推測を重ねてまた繰り返す。それでこそ真理は姿を見せる。目の前の映像でガングニールとエクスカリバーを纏った二人が対峙、否マリアの突貫により勢いよく激突した。

 

…その瞬間…

 

 

 

ビーー!ビーー!

 

 

 

「………なるほど」

 

 

 

計測器が異変を知らせるアラートを鳴らす。だが危険なものではない。むしろ欲していた異常だ。

 

 

「……秘剣・エクスカリバーのフォニックゲイン、飛躍的に上昇…」

 

 

…その数値は、既にマリアの数値を上回っていた。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁあああ!!」

 

 

巨大な槍のアームドギアを構えたマリアが此方へ突貫してくる。全身的に黒く腹部や胸部のインナーだけが濃い赤色で構成され、身の丈程の槍とはためくマントが特徴的なシンフォギアだ。多分槍に刺されたら死ぬ。

 

…一方俺はファラやレイア以外に戦闘経験がない、というかその経験すら二ヶ月にも満たない微かな時間だ。

 

…だが今俺は不思議な感覚に包まれていた。

 

 

(……身体が、軽い)

 

 

胸の奥から力が溢れ出るような感覚、そしてその力をアームドギアへと繋がるイメージが明確に浮かんでくる。今なら鞘を自由に動かせる確信があった。

 

 

「……ふっ!」

「はぁ!」

 

 

マリアから少し距離を取りながら、鞘を回転させて投げつける。多少ブレの軌道修正をしながらマリアの元へ行き着いた鞘は、槍を振り抜いたマリアをあろうことかその勢いのまま弾き飛ばしてみせた。

 

 

「……くっ、重い!」

「………これが鞘の能力、敵意に反応して力を増してくってやつか」

 

 

鞘の能力を思い出してみれば、なるほどファラやレイアの時には感じられなかった力の漲りが身体を包んでいる。いや、それどころか…。

 

 

(……敵意の出所が、分かる)

 

 

意識を集中させればマリアから見える視線のような圧が真っ直ぐ伝わってくる。恐らくこれが敵意、ってやつなのだろう。その証拠になるかは分からないが、吹っ飛ばしたマリアからの敵意が更に高まっていく。

 

俺を全力で倒そうという闘志なのか、それともよくもやりやがったなという怒りかは分からないがその高まりが感じられる。ただの一合で理解が深まっていく。

 

知らなかった力、自分に秘められている力が少しずつ表出していくのは悪くない。キャロルの言う俺の聖遺物の情報を集める任務は順調と言えるだろう。

 

 

………そんな事を考えていると、前方から敵意が膨らんで近づいてきた。

 

 

 

「よそ見するほどの余裕を与えたつもりはないわよ!」

「……っ!」

 

 

さっきと同じ突撃ではなく何故か伸びるマントが黒いムチのようにしなりながら襲いかかる。形状が定まらずも此方の身体を引っぱたこうとするので鞘を盾に受け止めた。

 

 

「隙あり!」

「そこまでじゃねえ!」

 

 

 

 

【者frivolous子person調】

 

 

 

 

鞘の口部分からエネルギーを反射させる。口元を下にしておいたのでまるでロケットのように発射する鞘に掴まりながらシミュレーターの中空へ離脱した。そのすぐ後をマリアの槍が空を切る。

 

 

「逃げてばかり?随分と及び腰ね」

「ぼっちなんでな。人が近づいてくると逃げる習性があんだよ」

 

 

サーフボードに乗るように体制を立て直すが、ここからどうしようか。ずっと空に浮かんでいるわけにもいかない。というか空中での攻撃手段がそんなにない。鞘に乗るしか移動方法がないので攻撃に回したらただ落ちるだけだ。

 

……つまりこのまま攻撃するしかないわけで。

 

 

「う、らぁ!」

 

 

鞘に乗りながら今度はこちらからマリアに突っ込んでいく。鞘から出るエネルギーが思っていたより多くてバランスを崩しながらも、右、左とフェイントを混ぜる。

 

……後ろ、とった!

 

 

「はぁぁぁあああ!」

「メタナイト!?」

 

 

…するとマリアがメタナイトになった。いや丸くなったとかではなく、マントがまるで竜巻のように形状を変えた。大回転は前後左右全てを守るように攻撃を弾き返してくる。仕方なくマントの竜巻に突っ込んでみるも、軌道を逸らされてまともに当たらない。

 

 

「……槍の聖遺物じゃなくてマントの聖遺物じゃねえか!」

「そんなわけないでしょう!?これは私のガングニール、何者をも貫き通す無双の一振り!」

 

 

マントの竜巻から槍が飛び出してくる。距離をとってそれを避ければ再びマントが追いすがる。

 

……やっぱマントの聖遺物じゃねえか。

 

 

 

【full百of八lies嘘】

 

 

 

鞘を巨大化させ、尚且つ回転させる事で部屋の床を削りながら防御する。俺の身体を丸々隠せるほどの壁と化した鞘はマントを此方へ通すこともない。問題は相手の姿も此方から見えなくなる事なのだが…。

 

 

(……感じる。マリアの敵意………上か!)

 

 

マイターン(My Turn)!」

 

 

ミキサー状の鞘の上を飛び越えて槍を構えるマリアの姿をとらえる。場所は敵意が示した通り、全く同じ場所だ。場所がわかってれば幾らでも対処できる。

 

回転している鞘を掴み取り、刀のように落下してくるマリアに力任せに振り抜く。形は剣だが持ち手がないから気分は棍棒だ。聖遺物の効果で威力が上がっている一撃、空中となれば問題なくマリアとの距離が取れるだろう。

 

 

「甘い!」

「…受け流した!?」

 

 

マリアの身体ごと吹き飛ばそうと巨大化したままの鞘を振るったが、アームドギアである槍をわざと早めに鞘にぶつける事で自らを回転させながら鞘の軌道から弾かれるように飛び越えた。しかもその後はマントを鞘に絡ませる事で自分のバランスも整えている。マントの聖遺物の万能性に嫉妬しそうだ。

 

 

「……もう一度だ!」

 

 

 

 

【者frivolous子person調】

 

 

 

巨大化しているなら丁度いい。再び焼き増しのように鞘の口からエネルギーを噴射することで離脱する。瞬間のブーストにはついてこれないはず…。

 

 

「何度も同じ手は通じない!」

 

 

 

 

【HORIZON†SPEAR】

 

 

 

 

 

「ビーム!?」

 

 

マリアの槍が一部展開し、砲身となってエネルギー砲撃が追尾ミサイルのように迫る。さっきから近接はマントと槍で完全に技量負け、遠距離もビームがあってと隙のないシンフォギアに押されっぱなしだ。

 

……だけどビームなら、むしろやりやすい。

 

迫るビームに、巨大化していた鞘を元に戻しながら空中で構える。鞘の口をビームに合わせれば、鞘が吠えるように震えだした。

 

 

「………ぉおおおお!」

「………なにを…っ!?私のエネルギーが…っ」

 

 

震える鞘が口を大きく開いたと思うと、マリアのHORIZON†SPEARを飲み込んでいく。鞘の面目躍如というか、本来剣を収めるべき物である鞘で戦っているのがおかしいとしか言えないというかだが、鞘にはそこに相応のエネルギーを収められるのだ。

 

……ファラとの戦闘訓練の時はまるで容量不足のように弾けてしまったが、今の聖遺物はマリアの敵意によって性能が飛躍している。だからこれくらいなら、いける。

 

…そしてこんな物騒なエネルギーは、溜め込んだなら放つだけだ。

 

 

 

 

 

【舌double枚dealing二】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………まあ、当たっちゃくれないか」

「…あそこまであからさまにされちゃね」

 

 

 

…マリアのエネルギー砲を撃ち返したが、予測されていたように綺麗に躱されてしまった。どちらもそれほどの傷を負っているわけでもない。…仕切り直しか。

 

 

 

『そこまで。二人ともお疲れ様です』

 

 

 

………やったぜ。

 

 

「………はぁー、疲れた」

「お疲れ様。普通に戦えるじゃない」

「勘弁してくれ…。いっぱいいっぱいだよ…」

 

 

グデッと座り込めば、まだまだ元気そうなマリアさん。強い。というか聖遺物によるブーストがなければかなり早い段階でやられてるわこれ。

 

……逆に言えば聖遺物による強化があればある程度は戦えるという事。しかも今回はマリア一人によるものだったが、敵が二人三人と増えていけばその分俺も強くなれるはずだ。むしろそんな場面でこそ輝く能力と言っても過言ではない。

 

『多対一』。もちろん俺が一。オンリーワンでナンバーワン。言い換えればぼっちだ。他にもオンリーやソロリティとか英語だとぼっちすら格好良くなるから好き。

 

 

「………ねえ八幡」

「……ん?」

「八幡はいつから戦闘訓練を始めたのかしら?」

「………あー、二ヶ月前くらい?」

「………そう」

「………?」

 

 

その質問の意味が分からず視線を向ければ、既にマリアはギアを解除して出口へ向かっていた。

 

 

「………まあいいか」

 

 

俺もギアを解除して後を追おう。そう思った時、ふと耳元で囁かれるような声が聞こえた。

 

 

 

 

 

『羨ましい』

 

 

 

 

「………?なんか言ったか?」

「……いえ、別に何も言っていないけど?」

 

 

 

ここには俺とマリア以外に誰もいないのに、それでもたしかに聞こえたんだ。ドロっとした小さな不快感。まるで隠された臓腑から滲み出たような重みのあるもの。

 

 

 

 

『羨ましい』

 

 

 

 

………だけどその時は気にもしなかった。ギアを解除するその瞬間まで、向けられた敵意が消えていなかったことには。

 

…そしてそのまま、俺はその聞こえた言葉を忘れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『羨ましい』

 

 

 

 







敵さえあれば強くなれる!敵意が見えれば奇襲されない、敵意が聞こえれば相手が思う感情も分かる。これは最強(なお聞こえるのは悪意敵意のみなもよう)

というか槍マリアさん必殺技が少ない…。雑に必殺技連打して描写省く手段が使えなくて辛い。あとマントが強い。




蛇足:とばしてどうぞ


メックヴァラヌス完走しました…。お腹いっぱいに満たされた、嬉しい。リディアン三人娘の葛藤や改めて手を繋いでいく響達の真っ直ぐさがとてもよき…。あと金子語満載でここまでしていいのか…、というかセリフだけでよくここまで、と尊敬する。三人娘の歌も早く買いたいなぁ。

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