やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
エタるなら無印とGの間だと思ってたので続いて良かったです。感想も評価も過剰なくらいもらってるので答えられるよう頑張ります。
では戦姫絶唱シンフォギアG、スタートです。
開戦
ライブ当日
「…………いよいよか」
ライブ会場の通路で俺は壁に背中を預けて立っていた。既に開演まで残りわずか、大体の客は席について始まりの時を今か今かと待ちわびている。マリアから関係者用のチケットを貰うことで潜入しているが、疚しいことをしている自覚があるのでついつい他人の目を気にしてしまう。
それでも周囲からガヤガヤと聞こえる話し声をBGMに、耳につけた通信機に意識を向け続ける。ネフィリムの起動のためのライブ、そして俺たちという存在を世界に広める日。月が落ちてくることを隠し続ける政府に反逆の牙を剥く武装組織という演出の舞台。
「……まあ、テロリストみたいなもんだがな」
そうは言っても突然現れて「政府は情報を隠蔽している!」なんてマリアが騒いでも話題にはなるだろうが信じられないか、信じられても世界がパニックに陥るだけだ。だからまずはまさにテロリストとしてこの舞台で名前を売るのだ。
…そう、ソロモンの杖を使いノイズを操ることで。
ノイズは世界的大災厄であり、誰でも知ってる特異災害だ。それを自在に操れるとなればその行動には相当な注目が集まる。悪名は無名に勝るとの言葉通り、悪名によって世界へ認知させて俺たちの行動が実は英雄的行いであると知らせるというわけだ。
………ドクターの意向で。目立ちたくないんだけどなぁ。
「…………きたか」
『…八幡。聞こえますか?』
「………ああ」
ザザッと小さい雑音からマムの声が通信機から聞こえてくる。この通信が来たということはドクターは上手くことを運んだのだろう。
『ドクターによるソロモンの杖回収成功の旨が届きました。そちらへ直接向かうはずなので誘導をお願いします』
「了解。非常口から入れる場所をマリアに教えてもらったからそこに向かう」
ドクターがライブ当日にソロモンの杖の引き取り、そしてまさにそのソロモンの杖を使うことで自分ごとソロモンの杖を奪われたように演出する。杖の護送には日本政府のシンフォギア装者が居たらしいが誤魔化せたのか。相変わらず見かけによらずスペックの高いドクターだ。
『ドクターと合流後は彼の警護をお願いします。ネフィリムの起動の成否に関わらずノイズによる会場への襲撃を行います。無闇に観客を襲うことはありませんが、気取られる可能性も考えるべきでしょう』
「ノイズを操るドクター本人を狙われるかもってことか。風鳴翼以外の装者がこっちにこないとも限らないしな。警戒しとく」
『お願いしますよ』
ザッと通信が切れ、俺は違和感がない程度に早歩きで動き出す。
それと同時に、背後から歓声が鳴り渡った。
☆☆☆
sideマリア
………舞台に立つ前、私はいつも自分がなんなのかを言い聞かせている。
アイドル。………そう、偶像。
私は舞台で歌うアイドルにして、フィーネという亡霊に成り切る偶像でなければならない。ドクターの協力を受けるため、このフロンティア計画に説得力を持たせるため。私は偶像を演じ切らねばならないのだから。
「…………」
ウォオオオオオオ!!
舞台装置が私を広大な劇場への階段を上げれば、姿を見た瞬間会場中が歓声によって包まれる。目の前の全てが私の歌を聴きに来ている。その全てを、私は欺かなければならない。
(……狼狽えるな)
目を瞑り、自分に言い聞かせる。暴れる心臓を笑みの下に隠し、堂々とした演技で演じきる。
……この重荷は、私でなければ背負えないのだから。
『会場のオーディエンス、そして世界中の放送を見てくれている諸君!私のステージによく来てくれた!その序開として、私の歌を刻んでいけ!』
♪Dark Oblivion
♪Falling to pieces, a shattered dreamland, nothing but shadows now.
♪Open your eyes to a brand new nightmare. Try to escape, but how?
………歌いながら深く思う。作戦が歌ってから始まるもので良かった。全身の息を吐き出し、世界中の空気を吸い込むような呼吸は頭に痺れるような刺激を与えてくれる。躍動感をつける振り付けは身体の緊張をほぐし、その動きに合わせて観客が沸き上がれば私は意識を此処に留めておける。
…そう、これは戦いだ。世界を救う戦い、無辜の民を救済する戦い。昔のあの頃のように、
♪Stand up, stand up, come on, let’s go now.
♪We will never fall again.(Not again)
♪Fate will never begin to bind us in dark oblivion!
ウォオオオオオオ!!
一曲歌いきり、歓声に手を振って応えながら一度楽屋に戻っていく。この後は風鳴翼とのデュエット、それこそが世界最後のステージとなる。
オーディエンスを待たせるわけにもいかないので規定の場所へ真っ直ぐ向かえば、風鳴翼は既に準備を整えていた。青い長髪に勇ましい顔つき、着飾れば日本美人と誇れる程に美しい。
「いいステージにしよう」
「ええ、もちろんよ」
挨拶を交わし、風鳴翼が二つ持っていたマイクの片方を受け取る。形はまるでレイピアのようで、その尻の部分がマイクになっている。映える金色は程よい重量感と共に、なるほどアイドルの武器として装飾されている。
…とはいえ、この程度の装飾に負けるような歌声はしていないつもりだ。風鳴翼もリハーサルや過去のツヴァイウィングの歌を聴けば、トップアーティストの呼び名に翳りなしな歌声をしている。
………だから実を言うと、この日は別の意味で待ち遠しかった。重みではない、覚悟ではない、純粋にマリア・カデンツァヴナ・イヴとして風鳴翼と歌ってみたかったから。
…舞台装置に再び乗り、風鳴翼と共にポーズをとる。装置が上がり始めれば、そこはもう先程歌ったステージと同じだ。違う点は横に風鳴翼がいること。そしてこのステージに響く歌声が一つ増えることに他ならない。
シンフォギアによって雌雄を決する前に、歌唱の前哨戦だ。
『見せてもらうわよ。
♪不死鳥のフランメ
3
2
1
Ready go!
Fly!
…歌が始まれば観客だけじゃなく、そして自分だけでもない音が奔流する。風鳴翼の力強い歌声がまるで世界を飲み込むように響き渡る。それほどの音色に、私はそれすら圧倒してみせようと歌を歌う。
この歌は互い互いに歌う曲だ。それ故に常に風鳴翼との歌を比較し合っているような気分になる。風鳴翼から息を切らすなどあり得ない丁寧な歌が鳴れば、此方は芯の中心へ届くような歌を。あちらが会場中に広がる音を響かせれば、今度は一人一人殴りつけるような力強い歌を。
どれだけ素晴らしい歌が隣にあろうと、絶対に負けない歌を胸に歌い続ける。そうすれば不思議と相手とすら繋がっていくような歌声になっていくのだ。何故ならきっと、風鳴翼にも自分だけの絶対に負けない歌が胸にあるのだから。
歌い続ける風鳴翼に笑みを向ければ、あちらも不敵に笑みを返す。思っていることなど分かりはしないが、この一体感をたった一曲で燃え上がらせる歌にオーディエンスはさらに熱狂する。
この熱は引かない、引かせない!
燃えなさい! 人に…
運命―さだめ―などない!
飛びなさい! 過去を…
引き千切って!
行きなさい!アツく…
羽撃き合いッ
響き伝う! 奏で伝う!
絆ッ!(絆ッ!)
盛り上がりは最高潮。世界中の視線がここにあり、世界中の音を支配している!この瞬間は一瞬でも、この歌だけは永遠に響くような錯覚すらある。
それを偽りにしないためにも、最後の瞬間まで全力が弾け散るんだ。
そう涙ッ!
握りしめて!
背負った全部ッ!
握りしめて!
いま不死なる夢を羽根に…
願う明日を共に飛ばないか?
天を焦がせ!
………歌え!
Phoenix song!
☆
…………歌が終わっても、熱は引かない。そしてライブはまだまだ続いていく。
…………………本来なら。
『ありがとうみんな!私はいつもみんなから沢山の勇気をもらっている。今日は少しでも私の歌を聞いてくれる人に、少しでも勇気をわけてあげられたらと思っている!』
………目の前で観客に手を振っている風鳴翼も同じだ。だがここからは先程までの歌姫マリアではない。これからはテロリストであり、フィーネであり、世界の敵であるマリアだ。
『私の歌を世界中にくれてあげる!
振り返らない、全力疾走だ!
ついてこれるやつだけついてこい!』
……そう、私の歌はこれより世界を救うための歌になる。振り返ることも後悔することもない、その願いの先に歌を届けるとこの場の歌を聞いた人々に誓おう。
『今日のライブに参加できたことを感謝している。そしてこの大舞台に日本のトップアーティストである風鳴翼とユニットを組み歌えたでことを』
『私も素晴らしいアーティストに巡り会えたことを感謝している』
『………私たちが世界に伝えていかなきゃね。歌には力があるってこと』
『それは世界を変えていけるだけの力だ』
風鳴翼とのマイクパフォーマンスと握手をすれば歓声がまた会場に満ちていく。
……この喜びに満ちた会場。それが壊れた時に、始まりの重圧が襲いかかるのだろう。
『………そして、もう一つ』
煌びやかな衣装を一際大きくはためかせる。
…………それが、合図だった。
「ノイズだぁぁぁぁ!!!!」
会場から悲鳴があがる。先程まで歌い駆けていた舞台の上、観客が席にたどり着くまでの通路に大量のノイズが出現したのだ。
…ソロモンの杖、ノイズを操る完全聖遺物。人を殺す兵器が、人に向けられている。私の仲間によってだ。それは私がノイズを差し向けていることと変わらない。
……そう、人が死ぬのだ。私がこの先間違えるたび、救うべき人達が死んでしまう。…その全ての重みを、背負うのだ。
「助けてくれぇぇええ!!」
「やだぁ!来ないでぇ!!」
「………るな」
……えるな。
『狼狽えるな!!!』
…狼狽えるなッ。
この観客の叫びは、この恐怖は、これからいくらでも積み上がる未来だ。何の犠牲もなく、何の苦しみもなく世界を救うなんて思い上がるなッ。日本政府が、米国政府が、これから歯向かう相手にこの力を向けることもあればきっと巻き込む人間も、私自身が手にかける人間も出てくるだろう。
……その重圧を、恐れるな。
「……………マリア・カデンツァヴナ・イヴ。貴様はいったい…」
「……そうね。頃合いかしら…」
私の怒号に静まった観客、その全ての目が私に向けられている。
…そして私は、首元のペンダントを見せつけるように取り出した。
「……っ!?聖詠!?」
舞台衣装は消え、そして慣れ親しんだ烈槍・ガングニールのシンフォギアを身体に纏う。
さあ、前を向け。私は、私たちはF.I.S.の名を捨てて生まれ変わる。
『私は……私たちは【フィーネ】!
終わりの名を持つものだ!!』
新生武装組織【
Dark Oblivion和訳欲しいなぁ。あったっけ?ないよね?
というかカッコいいマリアさんが心象ダダ漏れのせいで初手からたやマ化しちゃってるの悲しい…。でも必要だし事実だしで複雑。
蛇足:飛ばしてどうぞ
原作通りって楽…。いや心象表現とか結構難しいし、オリジナル部分との噛み合わせ大変だけど楽しい。
………というわけでGスタート。原作進めながら仲間達との親交を深めていきます。原作壊しながら原作通りに進む、難しい。
なのでそろそろシンフォギア未視聴さんには分からない部分も多いと思うので見てないみんなシンフォギア見ようぜ!歌も書くけどやっぱ聴いて見て感じれば楽しいから!一期一話だけでも!
シンフォギアもう見た人は、ついて来れるやつだけついてこい!