やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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予想以上に筆が乗ったので。というかこれ作者すら理解してない脳みその中身って感じ。

八幡以外にも物語を深めないといけないのが大変なところ。


やはり彼女には何もない。

side『■』と『■■■』

 

 

 

あの施設に連れて行かれたのが何歳の頃だったか『私』は覚えていない。

 

……ううん、違う。知らない、が正しい。

 

 

「………?」

 

 

周り一面の白い壁も、同じように連れて来られた子供達も、そして同じように存在している自分自身にすら理解ができずに辺りを見回す。

 

…何も覚えてない、何も分からない。

 

『私』の名前は?『私』はなんでここにいるの?『私』は、誰?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…自分の名前が分かりますか?」

「………わかんない」

「…何か一つでも覚えていることはありますか?」

「………わかんない」

 

 

………ここに来て、『私』について分かったことは一つ。髪が金色、それだけ。トイレについてた鏡を見て、初めて自分の顔を見た。

 

 

『………これが、私…』

 

 

ペタペタ、ペタペタと顔を触って納得した。この顔は、きっと『私』。ニヘッと笑ったり、ほっぺを膨らませて見たら同じように動く。だからこれは『私』だ。

 

……………だけど、わかんない。『私』は誰なんだろう。

 

 

「………貴方については、過去の記録という物が何もありません。記憶がない以上、貴方を確かとする物が存在しないと言ってもいいでしょう」

「…………?」

「…ですが貴方を識別するものはないと困るものでもあります」

「…………??」

「…………。貴方の名前は、【暁切歌】。誕生日は貴方が初めてここに訪れた【4月13日】でいいでしょう。それを貴方に与えます」

「………あかつき、きりか?」

「ええ…。それが、今日から貴方の名前です」

 

 

 

 

『私』が誰か分からない。そんな日が続いて、『私』に名前が付けられた。誕生日も貰った。

 

《本物》じゃないけど『私』のことで、《本物》じゃないけど『私』のもの。

 

金髪で、女の子で、『私』なだけの存在に、【名前】と【誕生日】が()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぺたり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビシィ!

 

 

「…ひっ」

 

 

 

この施設、F.I.S.の中は恐怖が溢れていた。怖い注射、怖い真っ白い服の人、怖い、怖い、怖い。

 

………だけど不思議と、『私』は痛みには耐えられていた方だと思う。

 

 

ビシィ!

 

 

「『切歌』、何度言えば分かるのですか。集中なさい」

「…ごめんなさい、マム」

 

 

…叩かれて、ムチの跡が腕に残る。でもそれは【暁切歌】が傷つけられただけで、『私』が傷つけられたようには感じなかった。

 

他の子達と同じ腕。そこに線が入っても、そこは【暁切歌】の傷だから『私』のものじゃない。

 

…ただ顔を叩かれた時だけは、『私』を傷つけられたような気がして涙が出たりもした。

 

 

「泣いている暇はありません。貴方たちにそのような時間は許されていません」

 

 

でも泣く子が増える度に、マムは叱責した。それを聞いてさらに泣く子もいたけれど、沢山いる子供の中で一際目立つ子が目に留まる。

 

 

「泣かないで頑張ろう!ね!」

 

 

そう言って目尻に涙を溜めながら《笑う》子を見て、他の子達も頷きあいながら不器用に《笑う》。

 

……不思議だった。だけど納得もあった。

 

 

きっとあの子は、《自分》をちゃんと持ってるのだと思ったから。

 

泣きたい時でも笑って、みんなを励まして、他の子達も一緒に笑う。そんな唯一な自分を持っているあの子。

 

 

………いいな。

 

 

……………羨ましいな。

 

 

 

……………………………。

 

 

 

 

 

「……えへへ」

 

 

 

 

みんなが()()()()()()()()()()()、『私』も笑った。

 

次からは『私』も、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぺたり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あの日から、みんなの《自分》探しを続けた。辺りを見て、見て、見て。そうすればみんなの《自分》がどんどん見つかってくる。

 

楽しそうな子、悲しそうな子、笑っている子、泣いている子。『私』にない《自分》が羨ましくて。そんな羨ましいを【暁切歌】に貼り付けていく。

 

 

 

 

「○○っていつも元気だよなぁ」

「それが俺だからな!」

 

 

 

 

………元気で、明るい。みんなを見ていれば、元気な子の近くの方が笑っている子が多い気がした。

 

 

「………よし、私も明るくなろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

ぺたり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「○○ちゃんの喋り方可愛いね」

「そ、そうですか?あまり分からないです…」

 

 

 

 

喋り方……?…そういえば、人によって違う気がする。『私』とは違う、《自分》の喋り方を持ってる子達は何人もいる。

 

 

 

「…………違う喋り方?えーと、うーんと、そう、です?デス?…………デスゥ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ぺたり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしのよ!」

「俺が先に使ってただろ!」

「僕はいいかな」

「わたしはちょっと……」

 

 

 

……喋り方に注意を払えば、今度はみんな違う名前で自分を呼ぶ、デス。俺、僕、あたしにわたし、自分の名前を呼んでいることもある、デス。

 

誰かに決められていないのに、自分を示すための呼び方がある、デス。

 

………いいな、デス。

 

 

 

「…………『私』。……切歌?……うーんと、『あたし』?………あっ、デス!」

 

 

 

……結局、最後は『あたし』になった、デス。たぶん最初にあった一人称ではなく『私』にない《自分》が欲しかったから、デス。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぺたり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………【暁切歌】に『あたし』を貼り付けて、貼り付けて、貼り付けて。そうして『私』を作っていく。付箋のような項目はもう数えきれなくて。

 

いつしか『私』は、『あたし』になっていったのデス。

 

 

「……おはよう切ちゃん」

「あはよーデース!今日はマムの機嫌はどうだったデスか?」

「悪くなかったと思う。…でも今日はリンカーの調整があるから…」

「げっ、リンカーデスか…。あれ痛くてあんま好きじゃねーデスよ…」

 

 

自然体な【暁切歌】。意識することも、もう自分探しをすることもない。それでもたまに鏡を見ると思い出す。

 

金髪で、女の子なのが『私』。あとは、『あたし』。

 

本当の名前も、本当の誕生日も、本当の性格も、本当の親も、本当の自分すら知らない『私』。

 

 

………だけど『あたし』は【暁切歌】デスから。

 

 

「それじゃあそんな痛いのちゃちゃっと済ませちゃうデスよ!あ、でも大変だったら言うんデスよ?調を守るのがあたしの役目なんデスから!」

「…うん、いつもありがとう切ちゃん」

 

 

 

明るく笑って、泣きたくても笑って、泣いてる子がいたら一緒に笑っていられるのが『あたし』。

 

……だけど変わらない部分もあった。

 

誰かが『私』にない《自分》を魅せる時に、思わず真似したくなる程の輝きを感じる。その輝きを見るたびに、『私』の価値が下がっていく。

 

だけどそれでいいと思う。誰かのために動ける人がきっと《いい子》だから。

 

明るい子が好かれて、《いい子》が好かれて、常識人が好かれて、笑っている子が好かれて、守れる子が好かれて。そんなみんなに好きになってもらえる《いい子》に『あたし』はきっとなれているはずデスから。

 

 

 

「…切ちゃん、大丈夫?痛くない?」

「え、えへへ。あんなのなんぼのもんかデス!」

 

 

 

大丈夫。痛くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………痛くない。辛くない。悲しくない。笑ってニコッてはっぴーにゃっぴーな『あたし』。だからいつでも笑うんデスよ。

 

誰かが泣いてる時なら笑ってはっぴーに変えてみせるデス。

 

誰かの涙が流れた瞳を見つめて、辛い時こそ笑うのデス。痛いところも話して笑って吹っ飛ばすデス。

 

 

 

…………だけど一人だけ。いつも笑ってくれない子がいる。

 

泣いている子の潤んだ瞳。そこを見つめればいつだって笑った『あたし』がいる。

 

…それなのに。

 

 

 

『あたし』に映る『私』が笑わない。

 

『あたし』の中の『私』笑わない。

 

笑わせたいのに、笑って欲しいのに。

 

……それが、《()()()》なのに。

 

 

笑うデス。笑ってよ。笑って?笑わなきゃ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………笑うデスよ…」

 

 

 

 

グイッとほっぺを引っ張ってみても、何度も目をこすってみても、流れ落ちない涙は止まらない。

 

…それが何故か。

 

『あたし』にはどうしても、()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 






side『私』と『あたし』。
自分でも分からないほどに切ちゃんの過去を遡った結果。何も持ってないし、自分ですらなかった時。


『アカツキノソラ』聞いて欲しい曲。成長した後ですら『いっそ自分が消えてみんなを守れるのなら』と思っちゃうくらいな切ちゃん。だけどようやくみんなからの思いに自覚を持って一緒に、懸命に生きようとする歌です。超好き。
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