やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

86 / 122
10評価って実は9評価の3倍くらいの力ありそう。ランキングの順位への影響力全然違う気がする。




やはりアジトは暴かれる。

side響

 

 

 

「………こんな町のすぐ外れに、八幡くん達が潜んでいるなんて…」

 

 

夜も更けて瞼の重くなる時間帯。暗闇に混ざって私とクリスちゃんと翼さんの三人は廃病院の元へ訪れていた。司令達が掴んできてくれた情報で、ここに一週間前のライブ会場を襲撃した人達が潜伏している可能性がある可能性を掴んできたのだった。

 

 

『明日も学校があるのに夜間の出撃を要請してしまって申し訳ありません』

「いえ、それが私達防人の務めですから」

「それにあいつがいるかもしれねえんだ。落ち落ち寝てられっかよ」

「………うん!」

 

 

真っ暗だけど相手が潜んでいるかもしれないことを考えると、明かりをつけるわけにもいかない。閉じられた入り口をくぐれば風もないのに背筋を撫でられたように寒気が走った。

 

 

「………夜の病院ってやっぱり雰囲気ありますね…」

「なんだ、びびってんのか?」

「そうじゃないけど!………なんだか空気が重いような気がして…」

 

 

埃っぽくはあるけど、それだけ。その筈なのにどこか悪い予感のようなものが頭を過る。だからといって立ち止まるわけにもいかないけれど…。

 

 

「………意外と早いお出迎えだ」

「………………ノイズ!」

 

 

暗闇の中から極彩色なノイズが現れる。このタイミングで現れるってことは、やっぱりここには…。

 

 

「はっ、今更ノイズ!とっとと蹴散らしてやる!」

 

 

 

 

Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

 

♪Imyuteus amenohabakiri tron♪(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)

 

 

 

 

 

 

Bye-Bye Lullaby ♪

 

 

 

「開幕10割!食らいやがれ!」

 

 

【BILLION MAIDEN】

 

 

アームドギアをガトリングにコンバートし、迫り来るノイズに撃ち放つ。銃弾を受けた場所からノイズが炭素分解されていく。

 

 

「立花、雪音の援護だ!近づかれないように立ち回るぞ!」

「はい!」

 

 

射程の長いクリスちゃんを最後尾に、射程の短い私が一番前に、その中距離を翼さんが殲滅していく。今まで何度も戦ってきた相手。拳を握り、剣を持ち、弓を構えた三人なら…っ!?

 

 

「………今っ…!?」

 

 

向かってくるノイズに当てた拳の一撃。いつもだったら炭になる一発を当てたのに、まるで元に戻るかのように一部崩れたノイズが形を取り戻していく。

 

それに……。

 

 

(……身体が…重い…)

 

 

ここに来るまでは何ともなかったのに、戦えば戦うほど体に重しを巻きつけられるように動きが鈍くなってきている。それに私だけじゃない。クリスちゃんも翼さんもだ。二人とも顔をしかめてただのノイズを相手に苦戦している。

 

 

「…はぁっ…くっ、なんでこっちがズタボロなんだよ…」

 

 

…いつのまにか戦線は押され、クリスちゃんを守っていたはずが三人で背中合わせになっている。周囲をノイズに囲まれてしまっていた。誰もノイズの攻撃を受けたわけじゃないのに…。

 

 

 

 

 

 

「GRAAA!!!」

 

「何!?っ、おりやぁあああ!!」

 

 

重い身体、暗い部屋に明るいノイズ。そんな中で暗闇に紛れるような鈍い色の何かが襲いかかって来る。だけど真っ正面、近接だったらこの拳は届く。

 

飛びかかってきたのを避けつつも翼さん達の方へ向かわないように、膝でかち上げて殴り飛ばす。これもいつものノイズだったら炭になる程のパンチだ。なのにその物体は飛び退いただけで唸り声を上げ続けた。

 

 

「アームドギアで迎撃したんだぞ!?」

「………なのに何故炭素と砕けない!」

「…まさか、ノイズじゃない?」

 

 

 

 

 

 

「………ふっ、中々聡いじゃないですか」

 

「………!?…ウェル博士!?」

 

 

私達三人のものではない、だけど少し前に聞いたことのある声。ソロモンの杖を研究所に持っていく運ぶ護衛任務で行方不明になったはずのウェル博士が、まさしくそのソロモンの杖を持って現れた。

 

…それも今さっき私を襲った黒い怪物を小さな檻に仕舞いながら。

 

 

「………やはり今のままでは装者には勝てませんか」

「何をごちゃごちゃと!さっさと出すもん出しやがれ!」

「やれやれ。それがこの杖のことなのか彼のことなのかは知りませんが、無理な相談です。我々は為すべきことを為している。なればこそ、このソロモンの杖の所有者は今や自分こそが相応しい。そうは思いませんか?」

 

 

ウェル博士がソロモンの杖を振れば新たなノイズが生み出され、それがこちらへ向かって来る。迎撃しなきゃだけど、このギアの不調が重過ぎる。いったいどうして…?

 

 

 

「思うかよ!」

 

 

【MEGA DETH PARTY】

 

 

腰の部分から小型のミサイルを縦横無尽に撃ち放つ。ノイズどころかそこまで大きくない病院の壁を壊しながらウェル博士の元へ進んでいく。

 

だけど壁のように連なるノイズが阻み、その一撃は届かない。それでころか…。

 

 

「ぐぁぁあああ!!」

「クリスちゃん!?」

「雪音!?…いったいどうして…」

 

 

技を撃ったクリスちゃんの方が苦しんでいる。まるでギアそのものに蝕まれるように…。

 

 

「………アンチリンカーによるものですよ」

「……アンチ、リンカー?」

「対象の適合係数を引き上げるのではなく、生体と聖遺物の繋がりを阻害するものです。例えギアを負荷なく纏えるシンフォギア装者であろうと、適合係数が下がるほどそのバックファイアは身体を蝕んでいくのですよ」

「………なるほど。適合係数が下がった状態で出力の大きい技を使うのは自殺行為ということか…」

 

 

立ち上がることもままならない程のクリスちゃんを支えながら、ウェル博士の様子を伺い続ける。

 

アンチリンカー。奏さんの使っていたリンカーとは真逆の薬品。それだけであのライブ会場で奏さんの歌った絶唱が脳裏に蘇って来る。このまま無理を続ければ、クリスちゃんや私達の身体もボロボロになりかねないけど…。

 

 

「………っ!ノイズがさっきの怪物を持って!?」

「あのまま進めば…洋上に?逃すつもりか!」

 

 

新たなノイズを博士が出してこないと思っていたら、クリスちゃんがミサイルで開けた穴からさっき襲ってきた怪物の檻を空を飛ぶ気球のようなノイズが運んでいる。あれが何か分からないけれど、放っておいたらダメな気がする!

 

 

「………博士」

「…これ以上の抵抗をするつもりはありませんよ」

 

 

視線を向ければ手を上げて降伏のポーズ。だけどノイズとは結構な距離が開いちゃってる。もし追いかけても追いつかないかもしれない。

 

 

「…立花!雪音を頼む!」

「翼さん!?」

「あのノイズを追う!天羽々斬の機動性ならば追いつける!」

 

 

 

 

 

 

 

 

【言Falsehood嘘】

 

 

 

「………まあ、そう簡単に追わせるわけもないけどな」

「…っ!比企谷!」

 

 

無数の小型の鞘が病院を飛び出そうとした翼さんの進路を阻害するように地面に突き刺さる。そしてこの声、また八幡くんが立ち塞がっているんだ。

 

…私達の敵として。

 

 

「……。そこを通してもらうぞ!」

「こっちにも事情があるんでな。………あー、じゃあアレだ。俺の昔の記憶が知りたくて知りたくて仕方なくてな。話してかないか?」

「時間稼ぎに付き合うつもりはない!」

「秒で見破るなよ…。前回とは随分変わってんな」

「真意を伝えたければもう少しは目を逸らすことだ。私の知る比企谷が、そんな真っ直ぐな目で吐くセリフを持ち合わせている筈がない」

「………そりゃよくご存知なことで」

 

 

……聞くだけで分かる、心のこもっていない言葉。それが分かったから翼さんも嘘と切り捨てたのだろう。みんなこの一週間、八幡くんと戦うことについて考えてきた。

 

…正直私はまだ決断できていないけれど、翼さんとクリスちゃんは『とりあえずぶん殴って話を聞く』事にしたらしい。八幡くんの態度が本当に私達のことを忘れているのか、それとも忘れたフリをしているのかは分からない。

 

…それでも迷い続けたまま、八幡くんとの距離が離れ続けるのは嫌だから。

 

 

「………だったら私も加勢を!」

「……ばか、お前はあっちだ」

「あの怪物を…?でも…」

「…あいつが聞く耳持たねえなら、明かすのは鼻っ柱だ!」

 

 

 

 

【MEGA DETH FUGA】

 

 

 

 

「捕まれバカ!」

「クリスちゃんそんな大技はっ!」

「振り落とされんなよ!」

「……いや待ってこれミサイルじゃああああああああ!!!??!」

 

 

人が乗れちゃうくらいの巨大ミサイルを地面に並行するように構えたまま、クリスちゃんにそのミサイルにしがみつかされて発射された。

 

……発射された。

 

 

「なんでええええええ!?」

 

 

檻に入れられた怪物。八幡くんが足止めなら本命はたぶんあっちなのだと思う。思う、けど、これは、怖い!!あとこわい!!!

 

スレスレな地面から少しずつ高度が上がっていくし、これ真っ直ぐ突っ込んだらノイズに直撃コースだよね!?速いから追いつけそうではあるけど接触するの海の上だよね!?私も海に一直線だよ!?

 

 

「…いやアクション映画かよ!」

「…否定はできないが、お前の相手は私だ比企谷!」

「………っ、やっべ…。ネフィリム取られるは流石に擁護できねえぞ俺…」

 

 

微かに聞こえる八幡くんと翼さんの声すら置き去りに、なんとかしがみつきながらミサイルの上部分に場所を移す。

 

………………ここからどうしよう。

 

 

「………あわわわ。の、ノイズまであとちょっと…。どどど、どうしよう!」

 

 

もうすぐ目の前にノイズが迫っている。いや迫ってるのは私なんだけどそうではなくて!このまま乗ったままだと爆発で吹っ飛ばされちゃうし、じゃあミサイルから檻に飛びつこうとすればたぶん爆発の方が速くて海に放り出されちゃうし…。

 

 

『響さん!一度海に飛び降りてください!』

「えっ、緒川さん!?でもあの檻にはっ!」

『分かってます!ですが信じてください!』

「言ってること全然分かりません!でも飛びます!」

 

 

上部分にしがみ付いてたのを半回転して身体を下部分にしがみつかせる。そのままミサイルを足場にして下向きに、海に向けて飛び込んだ。そのまま向かえば海に真っ逆様だ。

 

…だけどその前に着地点の海が水ごと盛り上がってくる。見慣れた潜水艦。二課の仮設本部が目の前に浮かんできて…。

 

 

 

「………ふべっ!」

 

ドォォォォン!!!

 

 

 

……二課の仮設本部に顔面から叩きつけられたあと、爆発音が海に轟いた。クリスちゃんのミサイルが飛んでいたノイズを撃ち落としたのだろう。

 

 

「……いたた。…そうだあの怪物は!?」

 

 

鼻をさすりながら周囲を見渡す。爆発に飛ばされてしまったはずなので海に落ちてしまったかもしれない。せめてどこに落ちたか確かめないとっ。

 

 

 

 

 

キィン!

 

 

 

 

 

……硬い何かが弾かれるような音。その発生源を辿れば、人が海の上に立っていた。巨大な槍を足場に、片手にあの怪物が入った檻を掴み、黒いガングニールを纏っている。

 

 

「……マリアさん」

 

 

逆光が彼女を照らす。夜明けを象徴するように暗がりを晴らす明かりが海を満たしていく。

 

…そんな神々しい姿で、ガングニールの少女は降臨した。






クリスちゃんは今の一撃でダウンしました。ミサイル乗るの無印のクリスちゃん以外だとGX一話目が初なのかな?

原作分離ルートはここからかな。八幡とだけじゃなく装者同士にも友好(物理)を深めてもらわねば。

あとすみません、感想返し今度から時間が空いた時に少しずつしてくことにします。二日くらい寝落ちして完成してるのに本編進まないのは流石に申し訳なかったので。…返信しないのを癖にしないようにします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。