やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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……もう小説を書く事に集中した方がいい気がしてきた。感想の返信する前に寝落ちする弱小作者ですまねぇ…。

今回はガングニールvsガングニール。そこまでガングニール描写ないけど、四話の神バトル集をなくした以上頑張ってクオリティ上げてきます。





二つのガングニール

side響

 

 

 

「……マリアさん」

「………」

 

 

海上に槍を浮かべ、その上に平然と立ちながら檻に入った怪物を手に下げるマリアさん。その身には黒いガングニール、足元に控えるガングニールは何者をも貫き通す無双の一振りで。

 

………奏さんと、色は違えど同じギアだった。

 

…そして、私の胸にあるギアとも。

 

 

「………マリアさん!話し、合えませんか?戦わずに分かり合うことは、できないんですか!?」

「………っ!」

 

 

だからちゃんと話したい。同じギアを纏って、同じ胸の歌を携えている人間同士ならきっと分かり合えると信じてるから。そうやって手を伸ばし続けることで、最後の最後にでも想いを届けられた相手(了子さん)がいたからこそ。

 

……そう投げかけると、マリアさんは檻を上空に投げ上げる。するとまるで空気に溶けるように檻が姿を消した。

 

…それに驚く暇もなく、身軽になったマリアさんが跳躍する。その行き先は、私も乗っている二課仮設本部の上部。腕と足を綺麗に揃えて一回転。音を殺すように着地したマリアさんが手を挙げれば、それに従うように海面に浮いていたアームドギアが後を追うように掲げられた手に収まった。

 

 

「…ライブ会場でも似たような事を言っていたわね。戦う必要なんてない、と」

「そ、そうですよ!私達は言葉を交わし合える、同じ人間なんです!話して分かり合えば傷つける必要なんてないです!…それにこの力は、シンフォギアは誰かを助ける力の筈です!だからっ…」

「……………るな」

「………え…?」

「ふざけるな!」

 

 

言葉を紡ぐ。相手との距離を詰めようとする。だけど返ってきたのは、震えるような拒絶で…。

 

 

「…その拳を振るう相手を選び!

 

手を差し伸ばす相手を選び!

 

果てには拳を振るわない相手をも選びたいだと!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そんなもの!

 

力を持つ者の傲慢だ!」

 

 

 

 

 

 

「………ごう、まん?」

 

 

初めは凛としていて、その瞳は真っ直ぐで、ライブ会場でも人質を解放するような人で。だけど今目の前で浮かべる彼女は怒りを堪えるように吊り上り、武器であるアームドギアすら砕かんばかりに力が込められていた。

 

 

「………私達にはこの道しかない!悪に身を捧げようと成し遂げるべき正義のみでここに居る!帰る場所なんて存在しないのよ!止まる猶予も、語る言葉すらも存在しない。そんな相手に偽善を振りまいて、ヒーローにでもなったつもりか!?」

「…そんなっ。だったら、その理由を教えてくださいよ!マリアさん達の正義って、いったいなんなんですか!?」

「………そうね、教えてあげる」

 

 

ブンッと槍を天へと振り上げる。その穂先が指す場所は、朝日に混じって天に浮かぶ欠けた月。砕けた破片が月の重力で輪のような形を成した数ヶ月前のルナアタックで形成された異常事態。

 

 

「………私達の目的は、月の落下の阻止。落つる天の災厄より、無辜の命を救い出すことが私達の使命!」

「月が…?…だったらなおさら協力した方がっ」

「あなた達は政府直轄の組織でしょう?月の落下の軌道計算をしているのは米国政府。その繋がりを信用できない。なにより、私達がどこ所属の人間かくらいは調べがついてるんじゃないかしら?」

「………F.I.S.。確か師匠が米国の秘密組織だって…」

「なら分かるでしょう?私達はテロリストと国家機関、戦う定めにあると」

 

 

……月が、また落下する?マリアさん達が嘘を言っているようには見えない。でも、そうだとしたらあの時みたいに、いやもっとだ。月のカケラよりも大きな物が降ってきちゃったらもっと大勢の人達が死んでしまうことになる…。

 

 

「………それでも、私達だってみんなを助けたい!誰かを助けるために、助けようとしている人同士が戦うなんて間違ってるよ!マリアさんが他の理由で助けが必要なら私が…っ」

「くどい!今さら……失い終わった人間へ差し伸べられる手になんの意味がある!」

「……失い、終わった……?」

「………っ。一番助けてほしい時に、一番助けて欲しかった時に助けられなかった人間は!この手に残った力に縋るしかないのよ!」

 

 

再びその他にある槍を振り下げる。そして今度はその槍が狙いをつけているのは私自身だ。

 

…拳を握る。…戦いたくない、だけど。マリアさんの言葉が胸に刺さる。

 

……一番助けて欲しい時に差し伸べられる手。その有り難みを私はよく知っている。虐められていた中学時代、手を差し伸べてくれたのは未来だった。もし未来がいてくれなかったら、きっと私は今日に笑うことはできなかっただろう。そう思えるくらいに私を救ってくれていた。

 

…私だけじゃない。クリスちゃんも八幡くんが一番助けて欲しい時に手を差し伸ばしていたから、今日を一緒に進んでいられる。誰もが一番助けて欲しい時に、助けてくれる誰か。ううん、助けてくれなくても一緒に居てくれる相手を求めてる。

 

…………もしもマリアさん達が、一番助けて欲しい時に手を差し伸べられなかったのだとしたら……。

 

 

 

 

…やっぱりこの手を伸ばすことを、諦めちゃいけないんだ!!

 

 

 

 

 

 

♪烈槍・ガングニール

 

 

 

 

♪この胸に宿った 信念の火は!

 

♪誰も消す事は出来やしない! 永劫のブレイズ!

 

 

 

♪いま例えこの身を、焼き尽くそうと…

 

♪信ず我が道の為なら 天になってもいい!

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁあああ!!」

「………ぐっ!」

 

 

叩きつけるように払われた槍を避ける。だけど避けきれずに間に挟み込んだ腕のパーツが削られる。基本的に相手の方が武器の分リーチが長い。私にできるのは、近付いてぶん殴るだけ!

 

 

「おりゃぁぁあああ!!」

「ふっ!」

 

 

吹き飛ばされそうになる足を踏ん張り、逆に距離を詰めるように走り込む。拳を構えれば、マリアさんはマントを竜巻のように纏うことでカードを固めた。だったらマントの上から叩き込む!

 

 

キィン!

 

 

「うそぉ!?」

「遅い!」

「っ、とぉ!?」

 

 

正面から殴ったはずの拳がマントに受け流されてバランスを崩せば、今度はムチのようなマントが切り裂くように潜水艦に一本筋を刻みつけながら私を狙ってくる。その線上から逃げるように転がれば、獲物を逃したマントは元のマリアさんの背中へと戻っていった。

 

…守りは堅く、攻めは鋭い。その姿に押されぬよう、一層強く拳を握りしめる。

 

 

「………ふん」

「………強いっ」

 

 

 

 

 

 

♪闇に惑う夜には 歌を灯そうか…

 

♪聖光のセレナーデ! 力よ宿れ!

 

 

 

 

 

 

…力強い歌声。マリアさんがその手に信じて握りしめた正義は、それだけの重みがあるはずなんだ。槍を掲げ笑みを浮かべてなお、まるで翳り続ける夕立のような心の叫びに負けないほどに。

 

……だって…。

 

 

 

 

 

 

♪絶対に譲れない… 夢が吠え叫ぶよ!

 

♪【正義】の為に【悪】を貫け!

 

♪涙などいらない 無双の一振りよ…

 

 

 

 

 

 

「……こんなに、真っ直ぐな歌なんだから」

 

 

槍を真っ直ぐにマリアさんが突貫してくる。槍のアームドギアで私を貫く為に。それに合わせるように腕部のハンマーパーツを引き下げる。力を一点集中して押し切るために。

 

……槍じゃないけど、私にだって何者をも貫き通す(想い)がある!

 

 

 

だから!最速で、最短で、真っ直ぐに!!

 

 

 

 

 

 

 

♪《覚悟》を、今構えたら!

 

♪誇りと契れ!!

 

 

 

 

 

「一直線にぃいいいい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁっ、はぁっ」

「……はぁっ、くっ…」

 

 

 

……ギィィィィンと鈍い音を立てて、潜水艦に槍の穂先が突き刺さる。マリアのアームドギアの先端部分、衝突の衝撃で折れたものが飛んで行ったものだ。

 

それを横目でチラと見て響は思う。ああなっていたのは自分の方だったかもしれない。だけどそれを恐れたら自分を許せなくなるだろう。恐怖で手を伸ばすことを諦めるわけにはいかない。

 

…手を伸ばすことを躊躇うなと、『彼』に伝えた事も原因かもしれないけれど。

 

 

(少しでも、マリアさんの事を知りたい。…それに、だいぶ身体も軽くなってきた)

 

 

アームドギアの破損、それが与えたマリアへのショックは小さくない。その為僅かな停滞が起きていた。それは響の心を落ち着かせる、そして身体の不調の状態を把握する程度には役立っていた。

 

アンチリンカー。開発コードALi_model_K0068_G。ウェル博士の開発した無味無臭のガスは散布することで対象に気づかれずに投与できる反面、 閉鎖空間でないと予定の効果が期待できないという欠点も併せ持つ。

 

アジトであった廃病院はこのガスを散布するにはうってつけではあったが、今ここは海の上。アンチリンカーの効き目は目に見えて切れてきていた。

 

………その反面…。

 

 

(……ギアが、重い…)

 

 

マリアとて好きで戦闘を止めていたわけではない。融合者の響や先天的適合者の翼やクリスと違い、マリアは後天的適合者。リンカーという薬品によって無理やり適合係数を引き上げていたに過ぎない。

 

……リンカーの効き目なくしては、ギアを纏うことすらできないのだ。最後に投与したリンカーの効き目が薄まっているのを身体の不調が訴えているのだった。

 

 

「………」

「……っ」

 

 

……拳を構え、アンチリンカーによる不全が治ってきている響。片やアームドギアを手折られリンカーによる効果が消えつつあるマリア。この場の流れがどちらに傾いているかは明瞭だった。

 

 

『……マリア。適合係数の低下が見られます。ネフィリムの確保はできている以上、長居は無用。撤退なさい』

「………っ!時限式ではここまでなの!?」

 

 

そして戦況の傾きはエアキャリアによってマリアをここまで運び、檻に入ったネフィリムを回収したマムにも把握できていた。マリアをモニターしている画面には危険信号を灯すように【Coution】の文字が浮かんでいた。

 

……そして、その通信で全く別の衝撃を受けた者もいる。

 

 

「………マリアさん。まさかリンカーを…?」

 

 

かつて前ガングニールの奏者である天羽奏について、響も知っていることはある。翼から漏れた者だが、その生い立ちや奏がリンカーを用いていたこと。

 

………あの絶唱は、天羽奏が放った絶唱が適合係数が著しく低下した状態で放った故に、死体も残らないほどのバックファイアで塵と化した事。

 

 

…………戦場にガングニールの少女が二人。二度目の邂逅。互いの思いは、どこまでも入り乱れていた。







OKですガングニール!は省いたすまねぇ!入れる場所なかった。

キンスパの『「ありがとう」を唄いながら」聞いてたらまた変な事思いついてしまったけども!も!先が!長い!超いい歌!泣く!てかGXは命を燃やし過ぎてるよ…。いろんな意味で。

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