やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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時折ギャグ小説のあの勢いと勢いと勢いだけの書き方をやってみたくなるけど、なんかギャグに振り切れてない小説しか書けてない悲しみ…。なんか、振り切れたい欲求。

最近PERFECT SYMPHONY無限ループしてるんですけど家にいるのに喉が枯れそう…。歌が良すぎる。そして未来へのフリューゲル聞いて終わった、いやまだライブが…と最終回に未だ抵抗してます。





やはり戦いからは逃げられない。

「………」

「………」

 

 

ネフィリムを持ったノイズが撃墜された時、足止めをするはずの俺が目の前の風鳴翼に足止めされていた。無線でドクターのやり取りを聞いていたので、アンチリンカーによって飛んでった立花響を含む三人が満足に力を出せないのは理解していた。

 

更にありがたい話だが、目の前の風鳴翼からは敵意…というよりも闘志に近い感情がぶつけられている。相手を打ち倒す、悪感情程ではない戦う人間が当たり前に持っているような感情。だがそれを鞘は力を上げるべき感情と受け入れているらしい。先程よりもフォニックゲインが高まっているのを感じる。

 

 

「………刃を交える前に、聞いておく。比企谷、お前は私達を覚えてはいないのだな?」

「…そうだな。個人的には俺があんたらと会ったのはライブ会場だと思ってるよ。けど俺のことを知ってるのも嘘じゃなさそうだ」

「……………ふっ、それを聞いて安心した。全てが偽りでないのならば、またその手を掴みに行ける」

「………ちなみに昔の知り合いのよしみで見逃してくれたりしないです?」

()のよしみで峰打ちで済ませてやろう!」

 

 

 

 

【蒼ノ一閃】

 

 

 

 

 

「容赦ねえな」

 

 

青い斬撃状のエネルギー波。それを鞘で薙ぎ払うことで軽々打ち消す。

 

アンチリンカーによる相手の弱体化、鞘の能力による自身の強化。戦力差は数値化すれば相当の差があるはずだ。打ち倒そうと思えば俺一人でも倒せると思うが、今はどちらかというとネフィリムを優先したい。

 

敵の一閃に招かれるように横合いから朝日が差し込む。マム達の視察は夜明けに戻る予定のはずなのでバッティングしてネフィリムを確保してくれていればいいが、それもどうだろう。

 

……赤い装者はさっきのミサイルでダウン。今の青い装者の出力なら全力で追えばネフィリムに追いつけるかもしれないが、アンチリンカーの効き目が切れた時に俺一人でネフィリムを守りながら黄色いのと合わせて装者二人を相手にできるだろうか…。ドクターは観戦モードでノイズ出して手助けもしてくれなそうだし。

 

 

『…………八幡、聞こえますか?』

「っ、マム。………あー、そのな…」

『分かっています。ネフィリムはこちらで確保しました。そちらの状況は?』

「…サンキューマム。こっちは交戦中だ、正直応援が欲しいレベル」

 

 

……というか今すぐ助けて欲しい。

 

 

「余所見とは余裕だな!」

「余裕が、欲しい、っ、な!」

 

 

アンチリンカーによって風鳴翼は出力の高い技を使えない。それは分かっている。しかし初めの一撃以降剣と鞘の攻防は、まったくの一方的になっていた。

 

単純な機動力でこちらが負けているし、技術を語ったらきりがない。それくらいには、風鳴翼と差が開いていた。

 

 

 

 

【者frivolous子person調】

 

【千ノ落涙】

 

 

 

鞘をサーフボードのようにして機動力を確保しようとすると、空から無数の短剣の雨が降り注ぐ。乗る以上初速を速くしすぎると身体がついてこれないので、そこの減速を狙い澄ますような攻撃。それに対応するため乗るのではなく傘のように防げば、今度は張り付くような接近戦だ。

 

横一閃、鞘を盾に。縦一閃、鞘を盾に。鞘を避けるように横から斬りかかろうとしてくるのでそれに合わせる。今度は逆側から回り込んでくるのでもう一度それに合わせて……っ!?

 

 

 

 

 

【影縫い】

 

 

 

 

「冗談だろ!?」

「甘く見ないでもらおうか!」

「全力だよっ!」

 

 

剣に合わせようとすると突如身体が動かなくなる。足元の影をみれば、縫い付けるように短剣が突き刺さっていた。青色の短剣は間違いなく目の前で今にも斬りかからんとしている相手がやらかしてくれたものだろう。忍者かよ。

 

 

「………ぐっ」

 

 

 

 

【full百of八lies嘘】

 

 

 

 

持っていた鞘を身の丈を超える大きさに巨大化させ、高速で回転させる。鞘の能力で出力が上がり、並みの装甲ならミキサーだ。その回転に剣を弾かれ、飛び去りながら距離を取る風鳴翼。

 

…その隙に短剣を鞘で弾き、ようやく身体の自由を取り戻した。

 

…………………うん。

 

 

(……つ、強え…)

 

 

………めっっっっちゃ強いんですけどこの人。ほんとに弱体化してますよね?たしかに一撃一撃が特別重いわけじゃない。だが無視できない物量、隙をつくような技量、歴然の差に感無量だ。

 

 

「………やはり戦闘は不慣れか」

「あ?」

「私達が比企谷の行方を追えなくなったのはおよそ三ヶ月前。それまでの比企谷は何の力もない一般人だった。今の戦い方は付け焼き刃だろう。……だがそれでも、お前は我々の協力者として尽力してくれていた」

「………そうか」

「シンフォギアなどお前は纏っていなかった!答えろ比企谷!その力、シンフォギアを持ってお前は何を為そうとしている!?」

「………。何を為そうと、ね」

 

 

剣を構えるだけで襲いかかるような敵意は感じられない。こういう時に鞘は便利だ。ちょうどいい、どうもまともに戦っても勝てなそうだし。今度こそ時間稼ぎをさせてもらおう。

 

チラリとドクターを見れば、『お好きにどうぞ』というようなポーズをとる。話してもいいということだろう。

 

 

「世界を救う、それだけだ」

「………世界を?」

「月がまた落ちる、それを止めたいだけだ。政府が隠してる情報を隠したまま解決する。都合のいいテロリストだろ?」

「……月の落下…」

「ああ。だから邪魔しないでくんねえか?足取り掴んで出動命令出ても、そっちは月の落下の阻止なんてできないだろ?こっちはそれなりに方法も準備も整ってる。俺もわざわざ戦いたくないし、そっちの黄色いやつも戦いは辞めようって言ってたじゃねえか。俺たちが戦わないだけで世界は救えて、怪我人も出ない。ほら、Win-Winってやつだ」

 

 

考えれば、俺たちが戦うなんて無意味だ。別にこいつらは世界を壊したいわけじゃないだろう。むしろキャロル以外にも世界壊そうとしてる勢力いたら正直ビビる。

 

……というか、正直きな臭さが鼻をつき始めた。今回の二課の襲撃のタイミングがあまりに都合が良すぎる。マムと装者三人がいない時にアジトが見つかり、帰ってきたタイミングが良過ぎたおかげてネフィリムが奪われなかった。

 

もし誘導されていたとしてアジトを暴かれた時点で方法を見つけ出すのは無理だろう。そして本当に手引きした奴がいるとしたらまあ、ドクターしかありえないわけで。

 

アンチリンカーや会話によって装者との戦闘を長引かせて、マム達の帰還タイミングと合わせたのだろう。エアキャリアにのってる誰かがここを見つけさせていたのならタイミング測れてないただのバカだ。

 

 

「軌道計算はそっちでだってできるだろ?それで真実がわかるはずだ」

「………」

「信じなくてもいいが嘘じゃないぞ」

「……確かに、比企谷と戦う必要はないのかもしれないな」

「分かってもらえたようでなにより」

 

 

……まあキャロル陣営に戻ったら今度こそガチバトル必至なんですがね。世界を壊す絶対悪。そこにいる以上悪を為す為に正義の仮面を脱ぎ捨てなければならない。

 

しかしそれまでは顔見知りらしい連中と協力でもできれば御の字だ。最終的に目的が達せられればそれでいい。

 

構えを解き敵意が無いことをアピールする。語りが真実かどうかの精査が終われば、不必要な戦闘を避けられる可能性は高い。

 

 

 

「勝手に話を終わらせないでもらおうか」

 

 

 

っ、……の、筈なんだがな。手に持つ鞘が、不必要に震える。その震えは、俺が自ら起こしたものだった。

 

…風鳴翼の針を刺すような敵意に、怯えてしまったのだ。

 

 

「………なるほど、全て真実だとしよう。戦う必要はない、刃を交える必要はない、血を流す必要などないと」

「……………あ、ああ。そうなるな」

「だがそれは、比企谷にしか当てはまらない話だ」

 

 

………鞘に意識を向ける。この鞘は相手の敵意、俺に向けられる悪感情を正確とまでは言えないが大雑把にでも伝えてくれるからだ。

 

なのに鞘は答えない。目の前で燃えるような敵意を放つ人間がいるのに、だ。

 

 

「……私達が比企谷の消息を掴めなくなったのは、ルナアタックの日。その日、今纏っているシンフォギアのアウフヴァッヘン波形が確認されている」

「………」

「我々の知らない時に、シンフォギアが起動されていた!起動し纏った人間を奪い去った上でだ!さらに奪われたお前は記憶まで失っている!その現状を正しいからと、世界のためだからなどという理由で受け入れるなどできるものか!」

 

 

…カチャリと音を立て、アームドギアを構え直す。どうやら風鳴翼の敵意は俺ではなく、俺の後ろにいる奴らに向いているらしい。それこそ今一緒にいる元F.I.S.の連中とかだろうか。…実態はともかく。

 

 

「月の落下、なるほど真実かどうか確かめよう。だが真実だろうと偽りだろうと、比企谷は連れて帰る!そしてその後にでも、あのルナアタックの日の下手人を突き止める!」

「………ぁぁ、そうなるのか」

 

 

…ルナアタックの日に行方不明。さらにその日にエクスカリバーの鞘、シンフォギアを起動。さらにさらにそんな野郎が記憶失って突然敵として現れた。そんな状況になったら、きっとそいつの仲間達を疑うだろう。

 

あまりにもタイミングやシチュエーションが揃い過ぎている。きっとシンフォギアを起動した奴を攫い、どんな方法か記憶を奪ったと。その後はシンフォギアという特異兵器を使って好き勝手、とかな。

 

………そして恐らく…。

 

 

 

 

 

(………間違ってないんだろうな)

 

 

 

 

 

 

笑った機械人形達を思い浮かべる。そしてその上で、それでいいと思った。

 

初めて親鳥を見る生まれたての雛のような刷り込みかもしれない。友と呼び、名前を呼び、仲良くなっていたという過去を、全く想像できなかったからかもしれない。

 

動き始めた時間は止まらない。そして既に俺はF.I.S.で止まらなくなった。罪を犯さない、悪人ではない比企谷八幡はもういない。加担した人間に、後戻りはできないのだから。

 

 

「………はぁ、やっぱなしだ」

「………なに?」

 

 

…静かに、鞘の先端を地面に埋めながらある場所に飛ばす。

 

 

「俺たちはやっぱなんでもない。ただの敵だ」

「………。それでも連れて帰ると誓った」

「悪いけどそっちも時間切れだ」

「なにを…?」

『ぶぐぅわ!?』

「!?」

「マム、頼んだ!」

 

 

俺の後ろから息を全て吐き出すような悲鳴が響く。それに気を取られた風鳴翼から距離を取るように鞘に飛び乗り、先ほどの悲鳴の発生源であるドクターを抱えながら高度を上げる。鞘の先端を飛ばしてドクターを打ち上げることで距離を縮めたのだ。

 

 

「………空中からヘリ、だと!?」

 

 

姿は突然に、音も突然に、気配も何もかもが突然現れたように中空から巨大ヘリが現れる。それは頼れるエアキャリア、こちらの持つ最大級のアドバンテージ。そこにぐったりとしたドクターと共に乗り込めば、もはや二課に追いつかれる心配はない。

 

 

 

 

 

「比企谷ぁぁあああ!!!」

 

 

 

 

 

 

……風鳴翼の、叫び声が聞こえる。下を向けば、悔しげに剣のアームドギアを地面に打ち立てる姿が見える。

 

…今だけは、無駄に良い視力が恨めしい。今だけは、無駄に良い聴力が恨めしい。初めて会ったライブ会場の時には、なにも感じなかったのに。言葉をかけられようと、その目に涙のような湿りが浮かぼうと、本当になにも感じなかったのに。

 

 

 

……今は少しだけ、胸にしこりが残った気がした。






………実は結構大事な話してるような気がしてきた。とっかかりのタイトルは【自覚】とかかな。

自分の小説って自分が書かないと進まないんですよね…。二日三日放っておけば続きができるんじゃないかと期待して時間が経つ日々がある。あるあるですよね。………ね?

【人と人が触れることで傷ついたって、手と手繋ぐ気持ち、いつも最後に愛は負けないと言える】。未来へのフリューゲル好き、ほんと好き。

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