やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。 作:亡き不死鳥
結構トントン拍子で展開を進めたいところ。
「ふっ!」
風鳴翼が振るう一閃と共にノイズが炭となって崩れ落ちる。
最近は高頻度でノイズが出現するためこの工程が既に日課に近い形になりつつある。そもノイズの出現率は東京都に住む住人が一生涯で通り魔に襲われる可能性を下回るという計算が出ているのだ。この高頻度、普段通りを心がけて万全の状態で挑まなければならない。
……だが、全てが変わらない訳ではなかった。
「立花、ここは任せるわ!私は大通りの方へ向かう!」
「分かりました!せーい!」
そう、ほんの少しだけ。連携を取る、なんて上等なことは言えないけれど。少しだけ立花響という存在を受け入れられるようになってきたのだ。
いつもと違う。でも、悪くない。
「……。はぁー!」
【蒼ノ一閃】
☆☆☆
『ノイズの殲滅、完了しました』
「ああ、ご苦労。遅くまですまなかった。翼も響くんも今日は帰宅してゆっくり休んでくれ」
『了解しました』
『はーい!ね、ね、翼さん!ちょーとばかしお腹が空いちゃったので、ご飯食べに行きましょ!』
『悪いけど9時以降は食事を控えているの』
『おー、さすがトップアーティスト…。じゃあじゃあ!近場のカフェでお茶でもどうですか!?この時間でも空いてるとこ知ってるんですよー!』
『だから…』
ここでようやく通信が切れる。それまでのやりとりを見るに、どうやら立花は風鳴先輩となかなか良い関係を築けているようだ。
「………で、俺なんでここに呼ばれたんですかね?」
「んーもう!麗しい友情を前に無粋な事聞くもんじゃ無いわよ、八幡ちゃん!」
「八幡ちゃんて……」
知らぬ間に風鳴先輩と大立ち回りをかましたらしい立花から『上手く行ったー!八幡くんのお陰だよー!』という電話に『???』と首を傾げながら鮮やかに返答したのがもう何日前だったか。鮮やかってなんだっけ。
立花は言葉通りに風鳴先輩に正面からぶつかっていったらしい。その結果刺々しかった風鳴先輩が多少なりとも軟化したのは良かったのだろう。…ただその事実を知ったのは今日だったんですがね!立花には説明という概念が存在していないのか、上手くいった報告だけして内容に関してカケラも説明されてなかったので新手のイタズラ電話かと思ったわ。
「いやなに、八幡くんが今回の影の立役者だと聞いてね。直接お礼をと思ったのさ」
「何もしてないんですが…。というかそれなら『コレ』で良かったのでは?」
司令からの言葉に制服に忍ばせてある通信機を取り出す。そう、これは立花や風鳴先輩が持っているものと同じ、二課からの連絡を受け取れる、ここで働いている人なら誰しも持っているものだ。
「まあ電話では味気ないというのが一つ。それと、初めての時以来一度もここに顔を出してくれなかったからな。久しぶりに会いたかったのさ」
「…さいですか。二課の協力者の話はお断りしたはずなんですけどね………」
「で〜も〜。そうやってちゃんと通信機を持ち歩いてるあたり、協力するメリットは理解できちゃってるってことでしょ?」
「それは…まあ、こんな事態ですので」
……初めて立花と二課を訪れたあの日、シンフォギアや二課の説明。そして立花を支えるための協力者としての要請を、俺は断った。俺には立花のような誰かを助ける気持ちも、二課のような国の為という愛国心だって別にありはしない。
協力者の仕事だって避難誘導の補助や逃げ遅れた人の確保、及びその人達の避難先への説明などなど。はっきり言って学校から二課に出勤しているわけではない俺を拾って避難誘導など時間の無駄だ。立花のメンタルケアだってそれこそ小日向を当てれば良い。きっと立花のために進んで協力してくれるだろう。
……だがそれでも二課という存在を知り、そして現在のノイズが多発している現状がある以上、どうしても確保しておきたい安全があった。
「だーいじょうぶよ!ちゃんと妹ちゃんや親御さんの場所にノイズ反応が出た時は真っ先に教えてあげるから!」
「その際には二課の車を回して避難誘導しやすい場所まで送迎すると約束するとも」
「…どもっす。でもいいんすか?こんな特別扱い…。俺は協力者でもないってのに…」
「ハハハ、意外な家族愛に心打たれたとでも思ってくれ。妹くん達のためなら全力で協力する、みたいな顔をされてしまってはな。あくまでも協力はこちらからの要請だ。君自身が受け入れてくれなければ強制になってしまう。
子供にそんな真似するなんて、大人として格好がつかないんだよ」
……こうもストレートな格好良さはずるいと思う。だが間違いなく俺のしていることは子供の我儘に他ならないのだ。というかもうやってる事は協力者の仕事そのものなんだ。
普段はいつも通りの生活をして、俺が避難誘導に間に合う距離にいた場合のみ出動の要請がかかる。しかも出動といっても避難が終了した人達へのお茶汲みや近場のシェルターに一緒に避難するなど、一番安全な配置以外は絶対にしない接待具合。
その上俺がこうして協力していることを立花には秘密にしてくれている。いや別にバレたからどうこうするわけじゃ無いし、なんかここまでしてくれるならもう正式な協力者になってもいいかとか思わなくも無いんだけど!ここまで俺協力しないからオーラ出してここで手の平クルーはカッコ悪いかなーって。こういうところが子供なんだな、ちくせう。
「……まあ、それだけじゃないんだけどねぇ」
「うひぃ!?」
考えに浸っていると、櫻井女史に背中をツツッと撫でられる。こ、この人はこの人で変に距離の詰め方が強いから苦手だ。立花みたく正面からじゃなくて死角から近づいてくるのほんとヤメテ!
「さ、櫻井さん?な、な、何事でせうか…」
「やーん、
「か、堪忍です。そ、そのお仕事ってのは…?」
「それを調べるためにこんな遅くに来てもらったの!というわけで…とりあえず脱いでみましょうか?」
ワキワキと手を動かして近づいてくる櫻井女史から後退りしつつ、助けを求めて視線を周囲に投げかける。呆れる司令、苦笑いしてる友里さんと藤尭さん。み、味方がいない…。いつも通りだ…。
「な、なーんでー…」
☆☆☆
「も、もうお嫁にいけない…」
「大袈裟ねぇ。そんな大層な検査はしてないわよ」
パンツ一丁みたいな服装で機械にあちこちを見られまくる羞恥を受けてしまった…。とはいえ実際そんなに時間がかかることもなく1時間かそこいらしか経っていない。立花の時はこの何倍か掛かっていので、ほんとに簡単な検査なのだろうか。
「さて、本題ね。こうして貴方に検査を受けてもらったのはあの日、響ちゃんがシンフォギアを纏った時に起こっていた現象にあるの」
「現象?」
「ええ。これを見てもらえる?」
画面を映し出し、そこにあるのはよく分からない波形。なんかおっきくなったり小さくなったりしてる。
「これはアウフヴァッヘン波形。聖遺物やそのカケラが歌の力によって起動する際に見られる波形なの」
「はぁ、そうなんですか」
「そしてこれは聖遺物によって波形が異なるから、解析済みの聖遺物との照合に使われるわけ。それでね、少し見ていたら気になるところが見つかったの」
パッと画面がもう一つ付き、そこには先程と同じアウフ……波形が表示されていた。
「左のは響ちゃんの。そして右のは奏ちゃんのガングニールのアウフヴァッヘン波形なんだけど、何か気付くことはない?」
「気付くこと、ですか…」
そう言われてジッと見つめる。同じように動き、同じように収縮と拡大を繰り返す。そこに違いは無いように見えるが…。
「ここの部分。響ちゃんにだけ奏ちゃんにない僅かな波形が増えているの」
スッと指を指された場所をジッと見てみると、一瞬だけ現れる波の一つに一筋追加された。
……いやわっかんねえよ。5、6回収縮繰り返して一回だけほんのちょっと現れるだけじゃねえか。こんな違いとも言えない違いをよく見つけられたもんだ。それともこういう違いを見つけられるから科学者という職業をやっていけるのだろうか。
「はあ、それは分かりましたが。結局のところなんで俺は検査を受けたんですか?」
「それがねえ。この僅かな波形だけに対象を絞って調べて見たところ、あの日にこの波長に共鳴する反応があったのよ」
「……それが、俺だと?」
「だったら簡単だったんだけどねぇ。共鳴した波長は見つかれど場所の特定は出来ず。近場にいたからもしかしたらと思ったけど検査の結果はオールグリーン。異常は見当たらなかったわ」
「それは、俺からしたら良かったと言うべきですかね」
「私からしたら当てが外れちゃって残念、なんだけどね」
そう言って笑うと櫻井女史はコーヒーを一口口に運んだ。様になっている姿を見ながら、少しばかり考える。
もしかしたら、とそう思ってしまった。この歌が、歌だけが聞こえない耳をもしかしたらここならどうにかしてくれるのではないかと。国の管理下にあり、しかも聖遺物は歌によって起動するという事実。その上今まで聞こえなかったのに立花の歌のみ聞こえたと言う事実に、今回の増えた波形に共鳴したナニカ。
もしかしたら、もしかしたらだが。
「……あの櫻井さん。ちょっと話しておきたいことがあるんですが…」
誰が喋ってるか書き分けできてますかね?
Testament好き。