やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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ライブ延期…延期かぁ。まあ仕方ないよね…。また絶対死ねない期間が延びてしまった…。

感想返せてなくてごめんなさいね…。感想見てあ、これいいって本編に肉付けした事もあるから色々参考にしたいんですけど、本編書き綴ってると時間が…寝ちゃう…。






やはり知らず彼女達は思い悩む。

sideクリス

 

 

 

「………はぁぁぁ…」

「うわっ、すごいため息。お義姉ちゃんどうしたの?明日は待ちに待った文化祭でしょ?」

「……待ちに待つものかよ。準備から何から面倒ったらねえ」

 

 

秋桜祭の前日、変わらずうちに泊まりに来ている小町を相手に愚痴をこぼしていた。一人脱力しているあたしを尻目にソファーで寝そべって雑誌を読む姿を見て、ますます気分が落ち込んでくる。

 

 

「………こんなことしてる暇ないってのに…」

「ん?なんか言った?」

「なんでもねえよ」

 

 

小声を耳聡く拾われたが聞こえていないようなので切り上げるように言葉を閉ざす。ふーんと不思議そうな顔で見るだけで雑誌に目を戻し、ほーほーなるほどねーイギリッシュでガナッシュがベジタリアンねーなんて意味不明なことを零しながら足を揺ら揺らさせている小町を見て胸を撫で下ろした。

 

……ここ最近は少しずつ明るくなってきた。無理に明るく振る舞うのでもなく、自然体を思い出し始めたような小町。

 

……良いことだ。ホントに良いことだと思う。だけど確実にまだ傷跡は残っていて、完治には程遠い痛みがきっとあるのだろう。だけどその傷を、痛みを、苦味を、癒せるかもしれない機会が巡ってきた。

 

 

(……八幡)

 

 

だけどそれも簡単にはいかなくて。生きていてくれた喜びがあり、覚えていない姿に悲しみがあり、そして何もできなかった自分に苛立ちが蔓延る。

 

…一回目は、目の前のことを理解できずにただ狼狽えただけだった。二回目はそれこそ眠っていただけ。あいつを取り戻すために、あたしは何もできちゃいなかった。

 

………八幡の存在は機密情報だ。あいつだけじゃなくF.I.S.のテロリスト達はシンフォギアという異端技術を躊躇うことなく使用している。それらの露見を恐れ、あいつらのことを容易く周囲に教えることはできない。

 

…けれど、それでも、こんなに悲しんで苦しんだ小町にくらい、教えても良いんじゃないかと思っていたこともあった。

 

生きていると、生きてるんだと、死んでなんかないと、そんな言葉を言いたかった。

 

 

(……だけど、ダメだな。こんなんじゃ、言えるわけがねえ)

 

 

機密だからと正しいことの為じゃなく、ただ自分が八幡を連れ戻せる確信が持てなかったからだ。絶対に連れて帰る、その思いに嘘はない。それは絶対の絶対、どんな対価を払っても成し遂げてみせる誓いではある。

 

…それでも、知っている。現実は厳しくて、真実は残酷で、事実は我が身を引き裂いていく。覚えられていない現実が辛くて、何もできなかった真実は苦くて、隠し事から逃げ続けている事実が後ろ指を指してくる。

 

…………やっぱ、言えねえや。

 

 

「………ふー」

 

 

一つ息をついて冷蔵庫に向かう。そこから警戒色の缶を取り出し、慣れた手つきでプルタブを外した。口につけて傾ければ甘くて甘くて甘ったるい味が口と喉を潤していく。一口飲むたびに苦い思いごと悩みを払拭してくれるようで、モヤモヤした時は結構お世話になっていた。

 

 

「ぷはー」

「………豪快に飲むなー」

「お前も飲むか?」

「いらなーい。というかこんな時間に甘甘カロリーは女の子的にNG!」

「そんなもんか?」

 

 

時計を見れば短針が10を指した程度で夜中の入り口くらいにしか感じないが、良くないのかね。まあなんにせよ鬱屈した気分から脱せた以上、そっちの方が大事だ。

 

……そう、やることは変わらない。八幡を連れ戻す。今は小町に八幡が生きていることを伝えられなくても、首根っこ掴んで嫌でも信じられる状態になってからでも遅くない。

 

残ったマックスコーヒーの缶の中身を飲み干し、ほぼ専用となったゴミ箱に投げ入れる。スッキリついでに歯も磨かなきゃと思っていたら、いつのまにかソファーに座りなおした小町がこちらを見つめていた。

 

 

「………ねえお義姉ちゃん」

「ん?どした?」

 

 

じーっと、じーっと。穴が空くように見つめる視線に少したじろぐ。探るような目に隠し事がバレたのではという邪推をよぎらせて身体が硬くなる。

 

 

「…大丈夫?」

 

 

…けれどそんな姿も、心配するような顔をされたら何もできない。

 

小さな確信、きっと小町にはあたしが何か隠してるのなんかバレてるんだろうな。そもそも二課の事情を知らない小町からしたら、あたしは隠し事だらけだ。それでもこうして心配して、もしも困ってたら手を貸してくれるんだろうなと思える繋がりに愛おしさを感じる。

 

 

「………ああ、大丈夫だ」

 

 

可愛い可愛い妹分。近づいて軽く撫で回してやればされるがままに目を細める。なんかほんとに猫みたいだ。

 

誤魔化すような所作に不満気な表情、それにこちらはむしろ笑みで返す。そういう気遣いができるやつだから、あたしもこうやって何かしてやりたくなるんだ。

 

……うん、それでいい。それがいい。あいつ程頼り甲斐は無いかもしれないし、あいつ程溺愛はできないかもしれない。それでも、言葉にしないけど言わせてほしい。

 

 

 

……姉ちゃんに任せとけ。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

side未来

 

 

 

 

「………はぁ…」

「………」

 

 

夕食を響と一緒に食べながら、いつも美味しそうに食べるご飯をそのままに上の空を続ける姿を見つめる。お茶碗に半分くらい残っている白米はおかわりをするには程遠く、止まった箸が悲しくそれをつついている。

 

……どうやらこの親友はまた私に隠し事をしているらしい。マリアさんがライブ会場で大立ち回りを演じた日から、こんな表情をする日が増えた。

 

二課の協力者になってはいても、その全てを教えてもらえるわけじゃない。機密情報は伝えられないし、今回のような世界規模での事件では、私のできることもないと思うので教えられないことがあるのは仕方がないと思う。

 

それに響のことだから誰かの為に悩んでいるのだって分かる。悩んで溜め込んで、また困ってる誰かに手を差し伸べようとしているのだとも。

 

………だけど、それでもやっぱ気になっちゃう。ただ悩んでいるだけなら相談してくれるのを待ったり、そうでなくとも何か力になれればと思う。なのに響は悩むと一緒に、私の様子を伺ってくる。

 

気づかれないようにしているつもりでバレバレな視線には、どうしてか気遣うような後ろめたさが含まれていた。

 

 

「響。ねえ響」

「……………ん?未来、どうしたの?」

「どうしたの、はこっちのセリフよ。ご飯全然進んでないじゃない」

「…わ、ホントだ。やー未来のご飯は美味しいなあ!」

「もう、調子いいんだから」

 

 

話しかければ思い出したように動き出してパクパクとご飯を口に運んでいく。みるみるうちに白米やおかずを胃袋に収める響を眺めながら、ふと思い出してしまう。

 

何度も夢に見てしまうくらいに、辛かった二週間。今でも続く、悲しい四ヶ月。

 

ルナアタックと呼ばれた事件で消えてしまった響達三人、同じ日に行方不明になってしまった八幡。毎日のようにお墓参りに行っては涙を流したあの日々は、忘れられない記憶だ。

 

それから二週間経った日にまたノイズが現れて、それに恐怖を感じながらもノイズに襲われていた人の為に走った時。響達が助けてくれた事実は、涙が出るくらいの奇跡だとあの時の私は疑ってもいなかった。

 

死んだ人たちが生き返って、大切な人たちを失ってなんかいなくて、元の生活に戻れるんだと希望を持って。

 

………そんな姿が、親友を深く傷つけてしまったけれど。

 

 

『なら、八幡も無事なんだよね』

 

 

…みんなが帰ってきたから、全員が帰ってきたのだと思っていた。何か事情があって、必要なことがあって、きっとそれすら誰かの為で。だからその場にいない彼にもう一度会える、そんな期待が口から出てしまって。

 

 

『……ごめん…。………未来、ごめんっ…』

 

 

……返された涙で、その理由が分かってしまった。再会を喜ぶ私に、後ろめたさと苦虫を噛み潰したような顔をしたクリスと翼さん。

 

……謝りながら涙を流す響の存在が、たった一人帰ってこれなかった八幡を想起させて。それに気づいてしまったから、また涙が出た。

 

出会ってからたった数ヶ月で、それでも大切な友達だった八幡。不器用で、捻くれてて、それなのに傷つき方は響に少し似てて。ノイズに襲われた日に、ようやく友達になれた時はほんとに嬉しかった。…まあ、八幡にも友達と思ってもらえていたことはもう少し後に知ったのだけれど。

 

 

(……会いたいな…)

 

 

行方不明、きっと死んだわけじゃないと信じながら過ごしてる。それにあの時は響が悲しみに潰されてしまいそうな姿を隣で見ていたから、それを支えるのに弱さを見せなかった事もあった。

 

…私は二週間だけ先に悲しんだから。二週間分、響を全力で支えようと思って。

 

隣にいて、一緒に寝て、一緒にご飯を食べて。すぐ近くにいる、呼吸が聞こえる、体温を感じられる。そんな当たり前が当たり前にあるのだと伝えるように、隣にいた。

 

……だけどやっぱり、会えない人がいるのは寂しい。たまに会って、度々連絡して、当たり前のように遊ぶ未来を想像していたから。

 

……………。…もしも、もしも私があの時。リディアンで八幡くんと一緒に行動していたら…。

 

 

…それかもし、私が……シンフォギアを纏えたら………。

 

 

「………未来?…どうしたの?」

「……ううん、なんでもないよ響。おかわり、いる?」

「あ、うん…」

 

 

心配そうに見てくる響に顔を見せないように、お茶碗を受け取って炊飯器に向かいながら、響に背を向けて自分を戒める。私が心配そうな顔をしてたら響がもっと困っちゃう。

 

心配させないように、笑ってくれるように、ちゃんと悩んで答えを出せるように。……笑って、帰ってこれるように。私が支えないと。

 

………だけどまた、八幡みたいなことになったら。響が帰ってこれない何かに巻き込まれたら、そのとき私はまた何もできずにただ待ってるしかないのかな。

 

…もう二度と失いたくない。それでも守る力がないのは変わらなくて。痛みも悲しみも後悔も、どんな辛い過去だって抱きしめて包んであげられるような強さを持ちたいのに。

 

 

「……もう、遠くにはいかせない」

 

 

それでも強く、強く誓いを立てる。響を大好きな気持ちだけは、誰にも負けないから。私の大好きを二度と手放さないために。

 

………もう、二度と。

 







物販のキャロルイケメン過ぎません?いや装者大体イケメンなんですけどね。ただやっぱり転売とかありそうで確保できるか心配。

にしてももう一年以上書いてるのか。それなのにGすら終わらないのか…。取捨選択が下手過ぎる…。

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