やはり俺の戦姫絶唱シンフォギアはまちがっている。   作:亡き不死鳥

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マリアさん誕生日おめでとう!カッコいい、強い、アガートラーム!本編いいとこ無しでごめん!GXまで待って!

あとお気に入り3000人ありがとうございます。+5とかだと減ってライン切るとアレなのでお気に入りと評価ください。

それとキリがいいので返信再開します。感想に励まされてるので、頑張って返していきます。






Yes, just believe.

side小町

 

 

 

 

 

『小町ちゃんはお兄ちゃんと違って明るくていい子ね〜』

 

 

 

………生まれてから、何度言われただろう。近所のおばさんから、親戚のおじさんから、お母さんの友達から、私達を知ってる先生から、同じようなことをたくさん言われた。

 

人並みに明るくて人懐こかっただけにしては、随分と多く言われた気がする。もちろん少し大きくなってからは意識的にやっていた部分もある。でもたった二つ離れた兄と比べられた時は、いつだって褒められていた。

 

それを兄は喜んでいたし、「むしろ俺に似なくて嬉しいまである」と語っていた。兄妹間でそんな話題になった時も「俺って完璧な反面教師だろ?」とフヘッと笑いながら胸を張っていた。

 

………だけどね。私、お兄ちゃんを反面教師になんてしてないよ。

 

…当たり前に笑いかけてくれて、たまに雑だけど当たり前に優しくて、努力の方向性が間違ってるけど当たり前に頑張り屋で。

 

あ、カッコいいな。そう自然に思えるところを真似していただけ。

 

…そもそも告白失敗を黒板に書かれたりメールの返信を朝まで貰えなかったりと、どこをどう反面教師にすれば良いのかすら分からない失敗が多かったこともあるけど……。

 

…だけどやっぱり、小町にとってお兄ちゃんは自慢のお兄ちゃんで。今の小町の性格はお兄ちゃんが当たり前にしてくれた優しさを、可能な分だけ周りに同じ事をした結果だと思ってる。

 

されたら嬉しい事を他の人にも、されたくない事はしない。

 

当たり前で、当たり前の事をするだけで基本は良かった。大変なのは女子同士での噛み合いとか腹の探り合いとか、黒いところは、まあ、うん、慣れで。

 

………………だけど慣れないこともある。

 

…嘘をつかれるのが嫌い。隠すのも、誤魔化すのも、隠れて泣くのも、苦しさを紛らわせるのも別にいい。

 

……もう慣れたと、傷つく事を受け入れちゃう誰かさん達も、慣れたくないけどしょうがないなと受け入れられる程度にはなっている。

 

…それでもやっぱり、嘘をつかれるのは嫌だ。後に引きずってしまう。

 

嫌いたくないのに、嫌ってしまう。疑いたくないのに、疑ってしまう。傷つけたくないのに、傷つけてしまう。恨みたくないのに、恨んでしまう。叫びたくないのに、叫んでしまう。距離を取りたくないのに、距離を取ってしまう。困らせたくないのに、困らせてしまう。悲しませたくないのに、悲しませてしまう。

 

 

 

…信じたいのに、信じられなくなる。

 

 

 

大切な友達をそんな風に見てしまう。それは、悲しいよ。

 

だからお願い。嘘をつかないで。

 

誤魔化していいから、隠していいから。

 

尋ねるし、心配するけど、言わなくたっていいから。

 

言えないなら言えないって言って欲しい。聞かれたくないなら聞かないでって言って欲しい。それだけで小町は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………君は、私達を信じようとしてくれているんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………スッと、頬を撫でられた。添えられるように触れた指で、流れていないはずの涙を拭うかのように。

 

 

「………ふぇ?」

 

 

キョトンと、落ち込んでいた気分が戸惑うようにフワフワと浮き上がる。目の前には翼さんがいて、片手を頬に添えられている。さっきまで私が糾弾するように問い詰めていたはずなのに、まるで無かったかのように優しい笑みを向けられていた。

 

 

(…綺麗で、真っ直ぐな目)

 

 

覗き込む瞳は、力強く真っ直ぐで、それなのに暖かい。

 

……不思議と、目の乾きが薄まった。

 

 

「………嘘と断じられても仕方ないかもしれない。私達も比企谷が生きていたと知ったのはつい先日なんだ。行方不明の比企谷が姿を現し、しかしとある事情で語れなくなった」

「……それってノイズを倒したりするアレですか?」

「知っていたのか」

「……お義姉ちゃんがうちにいた頃に見たことがあって…」

「………なるほどな」

 

 

お義姉ちゃんが初めて家に来た次の日。河原で突如変身してノイズを倒したあの姿。お兄ちゃんも危ないと止めようとしたあたり、きっとお兄ちゃんは知っていたのだろう。

 

…絶対に普通じゃない。だけどそれについてあれ以降私は尋ねる事はしなかった。言えない事情があるなら、仕方ないと思ったから。

 

それを知っていたから、兄が行方不明になって響さん達が謝りに来た時に糾弾することをしなかった。怒りたかったし、叫びたかったけど、同じくらい悲しんでくれた人達に向けて、そんな事をしたくなかったから。

 

 

「…私も雪音も、そして立花も。ノイズの脅威から人を守ることを生業としている。始まりの理由は違えど、良き仲間としてな。…そしてノイズと戦いこそしないが、同じ志を持つ同士に比企谷がいた」

「………だからお兄ちゃんは…」

 

 

…お義姉ちゃんの事情を知っていたんだ。背中の傷、倒されたノイズ、気にするべき部分を当然として受け入れていた兄の姿が思い起こされる。

 

私の知らない場所でそんな危険な事に足を突っ込んでいた。…いや、そんな場所だからお兄ちゃんにも友達ができたのかな…?

 

 

「………ルナアタック。その日消えた比企谷の消息は、それこそ再び現れるまでたった一つの情報も掴めていなかった。そして現れた比企谷は…」

「………」

「…ああ、嘘はつかない。比企谷は記憶を失っていた。私達のことも、もしかしたら…」

「………小町のことも、ですか?」

「断言はできない。だが言及される事も、気にする気配もなかったことから、恐らくは」

「………」

 

 

…嘘をつかないで欲しい、そう願ったのに。聞けば聞くほど、嘘であって欲しいという願いが溢れ出る。

 

…忘れられているなんて信じたくない。

 

………だけど。

 

…………だけどやっぱり。

 

 

「……でも、生きてるんですよね?」

「…ああ」

「………ほんとに、ホントに!嘘じゃなくて。……生きてるん、ですよね?」

「………ああ」

 

 

…頬に添えられた手を握る。そうしないと頬か膝を引っ掻いてしまいそうだったから。行き場の無い感情が、人肌を通して飛び出していく。

 

……生きてる、生きてる、生きてる。忘れられてるかもしれない。昔のように撫でてくれないかもしれない。

 

………それでも、生きててくれてる。

 

 

「……良かった」

 

 

…………………。

 

 

……良かった、のに。

 

 

 

 

 

 

 

 

涙が出てこない。

 

 

 

 

 

 

………あれ、おかしいな。

 

嬉しくて嬉しくて仕方ないのに。感情は溢れそうな程に熱を持ってるのに。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「………よかっ、た…はは…」

 

 

………また嘘だったらどうしよう。本当はやっぱり死んじゃってて、私が聞いた事も全部思い込みで。翼さんが気を遣って優しい嘘をついているんじゃないかって。

 

翼さんの言葉が全部本当なら、嘘なんてなくて。翼さん達も最近まで知らなかったから言えなかっただけで、行方不明だったお兄ちゃんも生きてて。

 

記憶を失ってたって、死んでるよりは全然いい筈なのに。そっちの方が嬉しい筈なのに。

 

…もし嘘だったら。

 

………もしも全部嘘だったら。

 

……………もう一度お兄ちゃんの失ったら。

 

 

もう、耐えられる気がしない。

 

 

「………」

 

 

…大丈夫、きっと生きてる。翼さんを信じよう、翼さんを信じなきゃ。

 

……信じたい、信じさせて。

 

………………。

 

…私、どうやって信じてたんだっけ?

 

 

「………あ、はは。すみません、頭が混乱しちゃって!やーダメですねー小町!せっかく翼さんにお時間いただいてるのに!や、でもやっぱり頭が追いつかなくてですね!勝手で申し訳ないんですけど、小町今日のところはお開きにしたいかなーって…」

 

 

…あ、ダメ、ダメだ。()()()()()()()()()

 

このまま一緒の空間にいたら、当たり散らしてしまう。きっとこの事はお義姉ちゃんや響さんにも伝わる。この気持ちのままでいたら、私はみんなを疑っちゃう。

 

…頭を冷やさないと。冷静にならないと。

 

…せめて、誰にもぶつけないようにしないと。

 

言葉早めに、席を立とうとする。発していた感情は冷却され、そのまま蓋をするように沈める。浮かべる場所も、爆発させる場所も、せめて選ばないとみんなが傷ついてしまう。

 

立ち上がって、家の布団の中ででも気の済むまで喚き散らそうとして。

 

 

「………え?」

 

 

……立ち上がる寸前、手を掴まれた。

 

驚いて、気が抜けて、ポスンと座り直してしまう。

 

 

「……翼、さん?」

「…すまない。引き止めておいて、言葉が見つからないんだ」

「……なら、また今度…」

「それでも、今伝えたい気持ちがある」

 

 

………真っ直ぐで、斬られてしまいそう。瞳だけで思いの重みを伝えられて、行き場なく目を逸らす。

 

だけど逃げ出そうとした手前申し訳なくて、コクリと頷いて座り直した。

 

 

「………ありがとう」

「…いえ」

 

 

返事はしたけど、またあの真っ直ぐな目で見つめられるのが怖くてカラオケの機会に目を向ける。そこにはいくつかの歌のCMが流れていて、その一つに翼さんの姿が映る。

 

そして消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪逆光のフリューゲル

 

 

 

 

 

 

「………………え?」

「一曲、相手をしてくれ」

 

 

軽快でリズミカルな前奏が部屋を満たす。そりゃ元々そういうことの為の場所だから何もおかしくはないけど、え?…え?

 

 

「……え、えと?」

「…………やはりというべきか、私は歌でしか想いを伝えられないらしい。言葉が見つからない、それでも歌なら言葉を超えてこの胸の想いが伝わると信じているんだ」

「……歌で…」

 

 

歌で想いを。何を言っているのか分からない。言葉よりも歌で伝えようとする意味が分からない。

 

…分からない、けど。

 

……本気で伝えようとしていることだけは、伝わってきた。

 

 

「……じゃ、じゃあお願いします。あ、私先ですね」

「いや私が先に歌う」

「え!?でもそっちは奏さんのパートじゃ…?」

「だからさ。…一度も、歌った事がないんだ」

「………」

 

 

…そう言って画面を見る翼さんは、懐かしむように、噛みしめるように目を細めた。

 

たった一曲、カラオケでの歌なのに。歌への真摯な姿勢が、心を揺らした。画面に目を向けて、呼吸を整える。

 

…不思議と、腕に力が入ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

♪逆光のフリューゲル

 

 

 

 

 

 

 

「聞こえますか…?」激情奏でるムジーク

天に… 解き 放て!

 

 

…「聴こえますか…?」イノチ始まる脈動

愛を!  突き上げて!

 

 

遥か 彼方、星が

音楽となった 彼の日!

 

風が髪をさらう 瞬間、

 

君と僕はコドウ(うた)にした!

 

 

 

 

 

 

 

 

…横から響き渡る歌姫の声に圧倒されるように、そして吊られるように声を張り上げる。腹から声を出さないと申し訳なくて、必死に追いつかないと歌えなくなりそうで。体の中心から汗が吹き出してくる。

 

………ああ、ダメ!辞めて!せっかく抑えたのに!せっかく沈めたのに!隠して出てこないように蓋をしたのに!

 

…………さっき隠したばかりの感情が、歌に触発されて湧き上がってしまう。

 

…言葉にしないよう口を塞いだら、歌の濁流と共にせり上がってくる。感情が、音が、歌が、言葉が、溢れて止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そして夢は、開くよ!

 

 

……見た事ない世界の果てへ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ああ、止まらないよ。止まらない。涙で隠した悲しみが、笑顔で覆った傷跡が、たった一曲の歌声で毟り取られていく。

 

私は何がしたいの?こんな風に翼さんを問い詰めて、その結果信じられなくて疑って。本当にしたいことが全然見つけられてない!

 

……本当は。本当は私は………

 

…………歌い、流れ、次の歌詞が目に入った瞬間。

 

…全力で息を吸い込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Yes, ju…

 

 

 

《 《Yes, just believe(そう、信じてる!!!)!!!》》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………これはただの歌詞で、これはただの欲望で、きっと私は馬鹿をみる。だけどそうだよ。私がしたいのは……。

 

 

…ただ、みんなを信じたかっただけなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁっ、はぁっ…」

 

 

…その一言の為に、全部の呼吸を使ってしまって次の歌詞を歌えやしない。

 

そんな私の手を、翼さんが優しく包み込んだ。

 

 

「………誓いは、歌に。私の全てに賭けて、今までの言葉が嘘ではないと誓う」

「……っ、づばざざぁん…」

「…ああ。泣かせて、すまない」

 

 

渇いていた目が、いつのまにか洪水となって溢れ出る。枯れない涙はいつだってそこにあって、何度だって私の心を晒し者にしてしまう。

 

 

「………ひぐ、ほんどに!ほんとうに大変なんですよ!疑わないのって!疑わないようにするのって!」

「………ああ」

「……ほんとに!ほんとーに!!」

 

 

…………ああ、涙が止まらない。

 

 

 

 

 

「………信じるのって、大変なんでずがらぁ!!」

 

 

 

 

 

疑うことは簡単で、信じることは難しくて。

 

 

 

 

「………それでも」

 

 

 

 

楽な方に流されないようにするのは、本当に大変。

 

 

 

 

 

 

「………そんなに苦しむ程疑って。

 

……それでも信じてくれて、ありがとう」

 

 

 

 

 

………そんなに大変だって、信じたい人達がいる。

 

……だから私は、もう一度。きっと何度だって信じるんだ。

 

 

 







蛇足




今回の不安点、英訳大丈夫かな?
日本語入れないと雰囲気出なかったので、ほぼ直訳かつそれっぽいのにしたので不安。明確な意味合いがあったら教えてください。

俺ガイル3期始まってもちろん見てますが、まーカロリーが高い。言葉や仕草の一つ一つに感情を動かされますね。平塚先生なんで結婚できないんだろう。

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