ふたりは断罪黙示録 作:弐式炎雷
全員が所定の位置につくかと思いきや――
たっち・みーが執事を自分が立つ筈の場所に放置して玉座に向かってきた。それに身構えるギルド
モモンガ「ど、どうしました?」
たっち「アルベドの設定は書き換えないんですか?」
そう言った後でウルベルトもモモンガのところに向かってきた。
慌てるモモンガ。咄嗟に自分の利き手に顔を向ける。確かに何も握られていない事に気づいて納得する。
異形種は表情が固まったままなので怒っているのか、呆れているのか、慌てているのかが分からない。
ウルベルト「それよりも『ギルド武器』を持ってきてませんよね?」
モモンガ「持ってきた方が……良かったですか? あれは円卓の……」
モモンガは尻切れ気味に尋ねる。一言一句間違えないように。相手を怒らせてしまったのか、そうでないのか疑心暗鬼気味に――
メインとなる人物以外は基本的に停止するものだが、アドリブをしてはいけない規則は無いので何らかの動きや相談事は
たっち「いいから持ってきて下さい。話しが進まないどころか、ここで終わってしまいますよ。いいんですか? 我々との冒険が台無しになっても」
顔を近づけて威圧するようにたっち・みーは言った。
性格的には短気ではない事は知っている。今は時間が差し迫っている上でのやむを得ない事情があり、その焦りがにじみ出た結果であると受け取る。
ウルベルト「……厳しい現実の方がいいとお思いならば……、それもやむなしです。しかし、やはり……」
ペロロン「……お~い。残り時間が差し迫ってるから早くしろよ~」
ぶくぶく「……時間を止めて~。進展あるまで。駄目?」
可愛らしい声でぶくぶく茶釜は天井辺りに向けて言った。しかし、見た目が桃色の
ヘロヘロも明日出社を控えている。
戦闘メイドの一人でヘロヘロが作り上げた。
全てを軽蔑する死んだ魚のような目をしている。性格は陰湿なもの。しかし、効果を発揮することは無い。
獣王メコン川の側にも『ルプスレギナ・ベータ』という褐色美女――
獣王メコン川「……全員分の説明を書いていくと……、途中で終わっちまうな」
チグリス・ユーフラテス「説明自体は時間経過しないと思うので」
ブルー・プラネット「それでも長大な説明になる。その間、我々は時間が経過していなくとも待ち続ける事には変わらない」
るし★ふぁー「どうせ場面転換で『カルネ村』だろ?」
ウィッシュIII「……それは無理がある」
テンパランス「『オーバーロード』の目玉イベントだし」
名前一覧を見たぶくぶく茶釜はフルネームで紹介されて羨ましいな、という
姉が『怒』、『喜』などのアイコンをコロコロ変えるさまを見ていたペロロンチーノは機嫌がいいのか悪いのか判断に困った。
見た目には大人しい卑猥な
たっち・みーとウルベルトの催促により、大急ぎでギルド武器を持ってきたモモンガ。
そこだけ見るとギルドマスターとは思えない単なるパシリだ。しかし、それでも『オーバーロード』作品の中では異色の存在である。しかし、『大虐殺』のエピソードによって一気に上昇していた好感度がダダ下がりしたのは記憶に新しい。
モモンガ「ま、まだ時間は間に合いますよね?」
たっち「……もう過ぎましたよ、と言いたいところですが……」
モモンガ「……たっちさん。そんなにせっかちな方でしたか?」
雰囲気的には催促するような人ではない。そうモモンガは思っていた。
実際の人となりは印象によって作り上げられるもの。モモンガの知らないたっち・みーという存在は様々な意外性を内包している――かもしれない。
ウルベルトも悪にこだわりを持つ、という印象が独り歩きしており、実は――という意外な性格が無いとも言い切れない。
その辺りを数秒間の内にモモンガは頭が空っぽの骸骨の姿で思索した。
様々なことに対応する役職についているので色々と考える事は得意な方だと自負している。ただし、それが結果に結びつくかは保証されていない。
ウルベルト「モモンガさんが玉座に座り、魔王の様な威容を発揮し、目が赤く怪しく光りました」
モモンガ「……モノローグが言うべきセリフですよね? どうしてウルベルトさんが喋るんですか?」
至極
単に多くのセリフを言いたいがため――
簡潔に答える黒い山羊の悪魔。
ウルベルト「作中のモモンガさんは……」
たっち「作中というのはあくまで例えです。決して原作知識持ちとか、これから起きるネタバレとかではありません」
と、言いながらたっちの背後が爆発し、『推定無罪』の大きな漢字エフェクトが現れる。
ウルベルト「……見事に雰囲気が台無しになる爆発エフェクトですよね、それ」
たっち「中々披露する機会が無くて……。あとこれ百種類ほどあります」
たっちが所有する文字やエフェクトは課金によって実装できる。その値段も漢字一文字ずつではあるが単価は安い。もちろん、画数が多いものは少しだけ値が張る。
『鬱』などはネガティブな印象を持たれるので使えないことはないが、仕様の乱用が制限されている。この辺りは運営の匙加減だが――多くのプレイヤーが遊ぶゲームなので自分一人の自己満足で全てが許される仕様にはなっていない。
ちなみに今出ている漢字一文字の値段は五〇円。大きさやフォント、色指定に動きも設定できる。
もちろん
ペロロン「……説明口調というか説明文だけで進行のスピードがぐんと減ったな……」
シャルティアは『階層守護者』という役職を持ち、
彼女を含めてレベル一〇〇は九人
その例外こそが『ルベド』ではないかと予想されるが『ガルガンチュア』かもしれない。
モモンガ「……ギルド武器良し。次はアルベドの設定の書き換えでしたか?」
アルベドの制作者である『タブラ・スマラグディナ』に顔を向けるモモンガ。不穏な言葉に対し、
ギルド武器は『
ウルベルト「大して使わないので省略です。さあ、そのギルド武器で専用コンソールを出してください」
モモンガ「……随分と
大体、どういう理由でアルベドの設定を書き換えなければならない、と憤慨するモモンガ。多少の抵抗を感じたため
この
意識を向けるだけで色々と出来る仕組みはモモンガ達の世界では当たり前の技術として定着していた。
ちなみにギルド武器は有料の『ツールアイテム*2』の機能を一部使用することができる。違いはギルド長が使うか一般プレイヤーが使うか、だ。
仲間とはいえ他人のNPCの設定をギルド長だからといって好き勝手出来るわけがない。もし、モモンガであれば抵抗と不快を感じる。
仲間だからこそ不和を起こさないルール作りは大切だ。そうでなければ全員が敵に見えてしまう。
多少の葛藤と戦いつつもアルベドの創作者であるタブラは特に否定の意見は出さずにウルベルト達の言葉に頷いていた。
タブラ「進行の関係であれば仕方がありませんね」
モモンガ「……随分とあっさりしてますね」
言葉尻からも勝手なことはするな、と言いそうなのに、と。
進行の都合は確かに関係していると思う。モモンガは少しばかり理不尽さを感じつつも彼らのやり取りを黙って聞いていた。
タブラ「最後だから。どうせ消えるから、という事もありますが……、多くのメンバーが引退した後の事なんて知る由もないし、知ったからとて……。アルベドを連れて行けるわけもない」
ゲームキャラクターはゲームと共に消える。それが自然の摂理である。
様々な設定の原本が自宅にあればゲーム内の設定が
最後まで見届ける者が全てを決めればいい。
タブラ「最後に残らなかったメンバーの事は気にしなくていいと思います。……今は残っていますけど……。あんまり固執し過ぎるのも精神衛生上よくないと思います」
モモンガ「……いいんですか、こんな流れで?」
タブラ「ゲームは楽しくあるべきです。過去の栄光を美化し過ぎですよ。それはそれで気持ち悪い」
ゲームは『ユグドラシル』以外にもある。それら全てを満足に終えたところで何が変わると言うのか。
しかし、それでもモモンガとしては美しく終わりたい。けれども終わりたくない。その葛藤が渦巻いている。
自分にはユグドラシルしか無かった。そんな気持ちが
モモンガ「自動ログアウトしたら全部消えるとしても……」
タブラ「多人数プレイのオンラインをオフラインで継続使用するのは個人では難しいですからね」
それが出来ないからオンラインのサービス終了は誰にとっても虚しいものだ、とタブラはしみじみと感情を込めながら言った。
その間、他のメンバーは小さな声で相談し合っていた。自分達の出番が来ないし、
タブラ「残り時間も差し迫ってますので、文章は一気に飛ばして最後から」
モモンガ「ええっ!? そんなあっさりと結論を出すんですか?」
タブラ「抵抗しても無駄です。それが創作物というもの……。それともこのまま自動ログアウトしますか? 何のための作品なのか分からなくなりますよ」
ウルベルト「……次の場面に行かずに終わりたくないです」
たっち「向こうに居るメンバーも不安がってますよ」
モモンガ「……そんなことを言われても……」
原作では自分で色々と決断してきたモモンガ。しかし、いざメンバーが――フルで――揃っていると中々前に進まない。
これはそれぞれ個性を持っているため、意見が出ると結論までに時間がどうしてもかかってしまう。大抵は言い争いになる。
すんなりと進む時は滅多に起きない。事前に進行を決めた後でならば別だが。
たっち「強制的に手を動かす、なんて事になりますよ」
半ば脅迫じみた事態にモモンガはたじろぐ。
ゲームの終わりを気持ちよく迎えたいのに実に慌ただしい、と焦りが募る。
全ての決定権を持っているモモンガとて抵抗を覚える。
これが本来の『アインズ・ウール・ゴウン』ではないだろうか。
そして、そのままフェードアウト。
混乱したまま終わることも一種のエンディング。
たっち「ここで終わるのは勿体ない」
ウルベルト「主役は我々なんですから。単なる喋りで終わってもらっては困りますよ」
ぷにっと萌え「さあ、幕を上げろ! 演劇はまだ続いている!」
広い空間内にぷにっと萌えの言葉が反響する。
他のメンバーも拍手したり、応援したり、様々な反応を示す。
通路が暗くなり、所定の位置に居るメンバーにスポットライトが当たる。ただし、側に置いたNPCには当たらず。
ぶくぶく「ギルドマスターに迫る正義と悪。果たしてアルベドの運命やいかに」
ペロロン「ビッチ設定を持つアルベド。
ブルー・プラネット「コメンテーターの死獣天朱雀さん。モモンガさんはどういう内容を書くと思われますか?」
死獣天朱雀「定番は『モモンガを愛している』ですが、さすがにもう古いでしょう。ここは『っていうのは全部嘘』は如何ですか?」
弐式炎雷「前文を無視してますよね、それだと。あと、存在全否定になってしまいますよ」
やまいこ「『この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません』」
餡ころ「それ大事よね」
あまのまひとつ「『ちなみに尿漏れが止まらない事で悩んでいる』」
ウィッシュIII「『ちなみに三日に一度は貧乳になる』」
フラット「『実は三人姉妹ではなく七人姉妹』」
音改「『興奮すると謎のオーラでダメージを受ける』」
ベルリバー「『ちなみに足が臭い』のと……。あと歯磨きしていないだろうから『口臭を気にする乙女である』を追加だ」
チグリス・ユーフラテス「『ちなみにフルネームは物凄く長くて書ききれない』」
ペロロン「『この続きが読みたければ課金してください』」
ぶくぶく「『声は渋い男性のものである』」
ばりあぶる「『ちなみに異世界活殺流の使い手である』」
ク・ドゥ・グラース「『言語機能に欠陥がある』……。そうでなかったりしちゃったりしてますでごさいますです……、みたいな。そうでやんす、とか。子供っぽい口調に変わって『ボクっ子』……」
タブラ「『ちなみに異世界や平行世界を行き来する機能が実装されている』」
ぷにっと萌え「『ちなみに物理法則を書き換えられる』」
ホワイトブリム「『う、宇宙の法則が乱れる……。という悪夢によく
ぬーぼー「『ちなみに誰かを憎んでいる』」
テンパランス「『ちなみに歌を聞くと悶え苦しむ』」
獣王メコン川「『三歩歩くと死ぬ』」
るし★ふぁー「『喘ぎ声しか言えない』」
エンシェント・ワン「『ちなみにヅラである』」
スーラータン「『中華料理には並々ならぬ思い入れがある』」
ヘロヘロ「……あー。全員分のセリフを書こうとするとこうなるのか……」
喋るたびにメンバー一人一人が画面いっぱいに映る。
アングルも全面、側面、背面に俯瞰など様々。
武人建御雷「……これ、アニメだったらもう、時間オーバーしてるよね?」
源次郎「時間経過はそこまで再現されないものですから、案外何とかなります」
ガーネット「……しかし、残りのメンバーはいつ頃判明するのやら。黒いシルエットが先ほどから色々と主張していますが……」
判明次第、スポットライトが点灯し、セリフも出る。それまでは単なる動く影に過ぎない。
ある意味ではフラットフットが一人何役も務めているように見える。