ふたりは断罪黙示録 作:弐式炎雷
――それから十年後。
『アインズ・ウール・ゴウン魔導国』は建国から
モモンガ「ちょっと待って! 一気に時間飛ばし過ぎっ!」
たっち「我々の活躍が……」
ウルベルト「改めてカルネ村から始まる一大ストーリーを読みたい読者なんか居ません、という意味かもしれませんね。その気持ちは分からないでもない」
外の様子を調べる前にストーリーが終わってしまう。
モモンガは何が何やら分からず困惑する。だが、それよりも大事なことがある。
彼らは未だに
ヘロヘロ「この世界の攻略が済んだなら
ペロロン「ヘロヘロさん。上のは冗談ですよ」
ぶくぶく「お人好しの異世界小説なんて本当に
たっち「この作品の今後を読者の皆さんに聞いてみましょう」
第一、カルネ村に向かう一大ストーリーを再開すべし。二三票。
第二、このまま終われ。五七九票。
第三、そもそも赤評価じゃないから読まない、興味も無い。一二〇一七票。
第四、作者が『●●』なら続けろと言っていた。八七五一一票。
第五、作者が『●●●●●』なら以下略。一五二〇八八六票。
モモンガ「……圧倒的ですね。作者だけでここまで違うんですか?」
たっち「ご祝儀評価を受けられるメンツですから。しかし、同じ人気作者なのに差がありすぎる」
ウルベルト「『●●●●●』や『●●●●●●●』でも一〇〇万票に届きません」
モモンガ「あれ? ユーザーは二七万*2しか居ない筈ですよね? おかしくありません?」
たっち「非ログインユーザーも含めれば不可能ではありませんよ」
モモンガ「何、非ログインユーザーって!?」
玉座から一歩も動けない内に世界、というかストーリーは終わりを告げたようだ。その事にがっかりしたのはやはりモモンガ。
外の様子の報告がまだ来ていない。側にいる
気になる事がたくさん出始めたところなのに。
モモンガ以外の光りが無くなり、一人ぽつんと佇む。
モモンガ「あっ!? いきなり照明を落とさないでください」
伽藍洞の第一〇階層は一人で使うには広すぎる。まして仲間達の姿をかき消されると孤独感が猛烈に襲ってくる。当然、過度の感情の起伏は強制的に抑制される。しかし、それが一度で済む気持ちにはまだなっていない。
ここでウルベルトの姿が暗闇から浮かび上がる。
ウルベルト「演劇には必須の『デウス・エクス・マキナ』を使いますか?」
モモンガ「なんですか、それは?」
ウルベルト「物語が行き詰まったら助けてくれる『ご都合主義』の権化さんです。なんでもしてくれますよ。時間の巻き戻し。死者の蘇生。都合のいいストーリー展開とか」
天井付近が光り輝き、機械で出来た柱時計の様な物体がゆっくりと降下してくる。*3
世界を改変する
ウルベルト「……おっ、BGMが……。実際は音楽は流れていない事になっていますけど」
モモンガ「それよりなんでこれがここにあるんですか? 確か上位ギルドが所持していた筈じゃあ……」
ウルベルト「気にしない気にしない。……もう終わったゲームなんですから」
両腕を広げて笑う
いや、起こせなかった。
突如として出現した機械仕掛けのアイテムは地面に降りることなく滞空を続ける。
特定の
であれば一度使われた筈のアイテムが何故、ここにあるのかといえば再取得したからに他ならない。
二度と手に入らないわけではない。ただそれだけのことだ。
そして――
我々の冒険はこれから始まるのだ。
第一部完。
モモンガ「……勝手に終わってしまってますけど……」
ウルベルト「ここまでは才能の無い小説家の限界です。この程度でネタが尽きる奴は読者のまま好き放題批判していればいい。それよりも世界を意のままに出来るアイテムが目の前にありますが……、どうします? 元の生活に戻って苦しい人生を続けますか?」
モモンガには家で待っている家族は無く、確かに苦しい生活が続く。
ゲームの中に一生閉じこもることもまた出来ないと理解している。
出来る事なら幸せになれる方を選びたい。だが、その選択肢がモモンガには見えなかった。
モモンガ「皆さんと共にいつまでも冒険を続けたいです」
ウルベルト「大元のゲームはありません。……その筈です。これから始めるのは未知の領域。ゲームの知識はほぼ自分の能力のみに限定されます」
モモンガ「それでも、です」
気が付けば仲間達の姿は無く、モモンガの他にはウルベルトと腕を組んで佇むたっち・みーしか居ない。
側に居たアルベドの姿はいつの間にか消えていた。おそらく強制退去の弊害だと思われる。
ウルベルト「ですが今回は我々が主役です。モモンガさんは退場……とまではならなくともナザリックに留まってもらいたい。
モモンガ「……皆さんと共に居る事が出来るなら……」
ここで場違いなBGMが鳴る。小さく『……あっ』と言う女性の声が聞こえたがウルベルトは無視する。それから数秒も経たずに厳かな音楽が広い空間内に
聞き違いでなければ先程小さく発したのは『ぶくぶく茶釜』だ。
ウルベルト「モモンガさんは他の皆さんと交流なり、指揮でも取ってくれればいい。それとここはユグドラシルとは違い、モモンガさんの素顔は怖がられると思います。偽装は忘れずに。……それとも、その顔のまま現地の人間と触れ合う度胸があれば止めませんが……」
モモンガ「骸骨の顔は怖がられますか?」
ウルベルト「一般常識を持つ人間であれば十中八九」
自信を持って言うウルベルト。彼がそう断言するのであればそうなのだと理解するしかない。
骸骨顔はゲーム時代ではありふれたもので、キモイとは言われたことがあるが怖がられることは少なかった。
雑魚敵にありがちな顔だと自分では思っていたので。
モモンガ「……その前に疑問があります」
ウルベルト「んっ? 外に出ていないのにどうしてお前は外の様子を知っているかのような発言をしているんだ、ですって?」
モモンガ「………」
分かって言っているのであれば何も言うことは無い。
たっちもそうだったし、他のメンバーも
先の展開を知っている。
知らないのはモモンガだけ。
そうだとすれば自分が前に出るよりは楽が出来る。半面、冒険する楽しみが味わえない。
モモンガにとって難しい選択肢だ。しかし、ウルベルト達にとってはどうだろうか、と疑問に思う。
少なくとも
モモンガ「……上手く事を進められるのであれば文句はありません」
たっち「我々だって原作の結末を知らない身……。失敗だってあるでしょう」
ウルベルト「原作小説では転移前から既にカルネ村は襲撃される予定でした。……時間的にはそろそろ始まります」
モモンガ「何が? 村の襲撃イベント!?」
たっち「では、よーいドン、で……。救ってきますか」
ウルベルト「転移するには事前に村の様子を見る
モモンガ「……未知のイベントなのにもう把握していらっしゃる……。なにこれ『強くてニューゲーム』みたいな流れ? 周回プレイ?」
たっち「そう。周回プレイみたいなものですよ。数としては一〇〇〇作品間近*4ですから」
モモンガは訳が分からない。それと意識的に『
疑問がいっぱいだが主役がモモンガではなく、たっち達となるとあまり深読みしても仕方が無いのかな、と諦めが浮かぶ。
過度に不安になると強制的に平静な思考が蘇る。しかし、それを違和感と捉えて分析すればなるほど。アンデッドという種族の特性にある――
たっち「勝手な行動ばかりしては不安だと思います。まず第一目標としては地上に出て……、村に行きます。名称が予想通りとは限りませんが……、十中八九『カルネ村』でしょう。……の筈です」
モモンガ「はい」
たっち「ちなみに黙って地下に潜ったままだと帝国が攻めてきます。大きな国と戦う場合は必然的に人間の国全てを敵に回してしまいます」
モモンガ「……えっ?」
たっち「国を相手取るとはそういう事になるんです。勝手に来たものを追い払っただけ、という子供みたいな言い訳は通じません。アンダスタン?」
モモンガ「そ、そういうことになっちゃうんですか?」
たっち「なります。我々は異形種ですから。化け物とまともに交渉しようだなどと思う方がどうかしている。世間の一般常識ですよ」
ウルベルト「参考までに言いますと、異形種の国が存続していられるのは人間に偽装出るからです。少なくとも人間を理解している種族である、と世間的に認知されなければ出来ない事です」
一般常識を持ち出されてもモモンガには理解できない。いや、彼らが何を成そうとしているのかが理解できない。
襲撃云々はなんとなく理解できる程度だが、人間の国全てを巻き込む事になるとは思っていない。それなのにたっち達は巻き込む事になると言っている。
ゲームの事ならある程度の戦略として伸べられるモモンガもどう言い返せばいいのか――
ウルベルトの合図で
玉座に座ったまま慌てているモモンガに外の調査を依頼。その事で
既にメンバーの大半は自室に向かったり、地上の様子を伺いに行ったり――
モモンガとは対照的にアグレッシブに活動していた。
ウルベルト「ちなみに『ログアウトボタン』を願うと出てきます。……ボタンだけ空中に浮いたような感じになります。その場合、ゲームは終了しているので使った瞬間に二度とここには戻ってこれません」
モモンガ「マジで!?」
ウルベルトは頷く。
たっち「未知の世界を冒険する楽しみが無くなりますけど」
モモンガ「……あー。経過時間はどうなるんですか? 下手をすれば何年もここに居る事になるんですよね?」
ウルベルト「『時間停止*5』と『継続中*6』の二つを選べます*7。ただし、どちらも記憶には残りません。死獣天朱雀さん、ご説明願います」
ウルベルトの要望にモモンガの近くに現れる炎の化身。
大学教授という肩書を持つが出番が皆無だったギルドメンバー。
死獣天朱雀「あれ? 部屋に戻った筈なのに……。まあいいや」
モモンガ「……ウルベルトさん。こういう仕組みをいつ身に着けたんですか?」
ウルベルト「ノリです。変に悩むより楽ですよ。何故か色々な事が出来る。魔法と一緒です。何故か出来る、と理解している」
ウルベルトは一歩下がり、死獣天朱雀に説明を任せる。
動きや心情を省略できる台本形式において怒涛の如くセリフを書き連ねられるところが利点とはいえ、大勢の
特にストーリーの根幹に
全てのキャラクターを停止したままにも出来るが話しの都合上、動いている方が良い。特に趣味人は――
死獣天朱雀「我は紅蓮の堕とし子。不死の
両腕と背中の翼を広げて大仰に名乗りを上げる。
炎のエフェクトが一瞬だけ現れた。*8
モモンガ「は、はい」
死獣天朱雀「……ノリが大事って聞こえたんですが……」
モモンガ「すみません。なんだか色々と展開が早くて……」
死獣天朱雀「そうですか。……折角出番が回ってきたのに……」
落胆する燃え盛る鳥。
基本種族はペロロンチーノと同じく
死獣天朱雀は猛禽類にちなみ種族が調整されている。しかし、名前と種族がイコールである保証はどこにもない。ちなみにぶくぶく茶釜はゲーム初期時代の体型から今の名前を決定した。
死獣天朱雀「私の種族はweb版に出てきた『
モモンガ「……ウェブ版?」
死獣天朱雀「シンプルに『
モモンガの種族スキルも一部はオフに出来る*9。それと仕組みは一緒である。
モモンガ「それより何故、説明口調なんです?」
死獣天朱雀「台本形式の功罪です」
モモンガ「……タグには『脚本』としか書かれていなかった筈では? 台本形式が正式なんですか?」
死獣天朱雀「そこはまあ……、難しく考えない方が……」
セリフ中心の文章はえてして説明口調になりがちである。
空改行は見易さで開けても一行が限界だ。
記憶関連の話題について語るべく死獣天朱雀は話しを始めようかと思った。だが、モモンガが玉座から動けないようなので気を利かせて――
モモンガ「……すみません。分からない事が多くて」
死獣天朱雀「……まずは移動しましょうか。他の皆さんはとっくに自分の部屋に戻っているようだから」
現場に残っているのは気が付けばたっちとウルベルトを除けばモモンガと死獣天朱雀の四人のみとなっていた。
こういうところの描写不足は如何ともしがたい。いや、否めない、か――
主要キャラクターにスポットが当たっている間、他のキャラクターがフェードアウトする手法は暗幕を用いれば容易いのだが、それを文章と言う形で表現する場合は手抜きっぽくなる。
誰々がどういう動きで居なくなったのか、推理小説であれば抗議が来るところだ。
運がいい事に単なるファンタジー小説に堅苦しい規則は無いに等しい。
それぞれが納得したところで場面はモモンガの自室の『執務室』へと移る。
モモンガ「アイテムの使用を省略すると違和感バリバリですね」
死獣天朱雀「何がバリバリなのかは分かりませんが……。ウルベルトさん達が居ませんね」
わざとらしいが言っておかないとたっちとウルベルトまで執務室に瞬間移動してきてしまう。
別に居て悪いことは無いけれど、少ないキャラクターの方が脱線しにくくなる。
死獣天朱雀「……というわけなんです」
モモンガ「そうなんですかー、勉強になりますー」
死獣天朱雀が用意した『カンペ』を読むモモンガ。もちろん、詳細な説明は
それだけで事態を把握できたのはギルドの空気か、ノリなのか。
死獣天朱雀「……ちなみに本当に理解しました?」
モモンガ「いいえ。……無理です」
死獣天朱雀「大抵は今の言葉で説明を省きます。腕の無い小説家が使う手ですよね。しかも文章を減らすことを良しとする読者にも原因があると思いますが……。無駄な説明もまた味があるものと受け取ってほしいものです。……二次創作なんですから」
モモンガ「……それはどうでしょうか。というより二次創作談義は関係ないと思います」
死獣天朱雀「少しでも多くセリフを言いたいだけです。では改めて……。記憶について」
モモンガ「はい」
多くの疑問を呈する流れを省略し、モモンガは彼の言葉を優先させた。
いちいち突っ込んでいたら外に出るまでに五万字相当もかかるのではないかと。
死獣天朱雀「不可解な事態によって進んだ時間が長ければ無いほど
ライトノベルにもダークファンタジーが存在する。
広義の意味でライトノベルの解釈は膨大であり、小さくまとめるのは困難である。
例えば出版社が出しているレーベルによって違ったり、何処まで書いていいのか各社バラバラであったり。
下は幼年から上は老年まで。
分かりやすい区分で言えば表紙、挿絵がアニメ調。またはマンガ調。萌え絵と呼ばれるものであったりする。
死獣天朱雀「シリアス調の作品において勧善懲悪は若年向け。不幸な最期は一部の読者向け。ハードな内容を求めても最後だけハッピーエンド、では調子が良すぎます。その上でオバロはダークファンタジーを
モモンガ「オバロの内容はどうでもいいと思いますけど? 我々が元の世界に戻れるか、または戻った時にどうなるかの説明では?」
死獣天朱雀「だから。そうは言われますが。何度も申し上げております通り。……これを何度も言いますよ」
モモンガ「すみません」
融通の利かない相手が良く言うセリフである。否、対クレーマーへの常套句。
こちらの言い分が通らない場合は黙るに限る。それをモモンガは実践する。
言い返せば火に油を注ぐ事態になる、と本能に刻まれている程。
死獣天朱雀「シリアスでダークファンタジーっぽく、元の世界に戻る場合はここでの体験は全て消去。その方が健康的というものです。……勿体ないと思われますが、ディストピア出身の我々に明るい未来は似合いません」
モモンガ「……明るい未来になってほしいです」
死獣天朱雀「無理です」
死獣天朱雀は断言した。
たかがフルダイブ型オンラインゲームの延長線の様なストーリーだ。それで現実世界を変えられる筈がない。まして、この手のゲームは唯一ではない。
多く存在する中の一つに過ぎない。それを忘れてはいけない。
モモンガは主人公ではあるが世間一般から見れば特別な存在ではない普通のサラリーマンだ。
朝四時から会社に向かっていつもの生活が始まる。それを幸せだなどと思える環境になっていない。
彼らが幸せだと感じられるのは現時点でゲームの中だけだ。
モモンガ「地の文が急に容赦が無くなりましたね」
死獣天朱雀「本当の事だから。モモンガさんは現実世界で幸せになれそうな予感はありますか?」
モモンガ「無いです。……はい。断言してもいいくらい無いです。母は過労死しましたし。皆から小卒野郎って言われてます」
メタ発言も何のその。薄々とは感じていたこの小説の神秘。しかして先の展開や
と、その前に――モモンガはweb版では童貞を卒業した社会人設定になっている。しかし、書籍では小卒童貞だ。
趣味は『ユグドラシル』のみ。このゲームが終わったら無味乾燥な社畜人生の続きだ。
死獣天朱雀「我々はモモンガさんの回想シーンにしか出番が無い幽霊のようなもの」
おそらく最終巻になっても出ない筈である。
せいぜい子孫が出るかどうか、だ。
死獣天朱雀「明日への希望など夢物語……。むしろ憂いなく奇麗さっぱりと消える事こそ最善」
モモンガ「……それだと……。いえ、なんでもありません」
死獣天朱雀「まだまだ若いですね、モモンガさん。しかし、変に希望を持っても現実は厳しいままです。素晴らしい能力を獲得した主人公がファンタジー世界から現実世界に転移する、という馬鹿げた内容ではもはやオバロらしさが失われます。絶望の中の
モモンガ「ノリノリですね、死獣天朱雀さん」
今まで出番が無かったメンバーだ。その溜まりに溜まった気持ちの吐露かもしれない。
身振り手振りの描写を忘れるほど――
大仰な言い回しにて喋り続けているが彼はおそらく今の立ち位置を忘れてはいない、とモモンガは予想する。
ログアウト出来ないのは自分だけではない。であれば死獣天朱雀もまた何かしら不安を抱えていて、それを隠すための虚勢だとは言えないか。
いや、と――
意思疎通できる今だからこそ聞けることもある。
そう――
本来ならば彼らはナザリック地下大墳墓には居ないのだから。
説明を受けたものの記憶の保持が出来ないと言われると不安になる。とはいえ、モモンガとて覚悟を決めなければならない事は少しずつ理解し始めている。
あり得ざる事態が実際に起きたのだ。では次に何を成すか――
当然、外の調査だ。
しかし、今回の自分は墳墓内で待機し、たっちとウルベルトが出張る予定だとか。
モモンガ「戻る方法を見つける事を目的とすればいいのか。もしそうならば記憶と引き換えにしなければならない」
死獣天朱雀「それはあくまで可能性の話しです。それを決めるのは我々ではない」
モモンガ「……話しの流れではそんな気がしましたが……。違うのであれば希望もある……」
いや、とモモンガは疑問に思った。そこで
モモンガは天井に顔を向ける。眼球が無いので『目を向ける』という表現が適切か疑問に思いながら。
天井には光源となる電灯は無い。シャンデリアは部屋の中央付近に設置されていたがスポットライトのような光り方はしていない。であればこの強烈な光りは何なのか。
モモンガ「……この謎仕様も慣れなければならないのか」
早口言葉のようなセリフを言う。
惰性で喋っているが文字として見ると合っているのか不安になりそうな言葉の羅列だ。きっと『ゲシュタルト崩壊』を起こす。
モモンガ「あっ! 死獣天朱雀さんが消えた!? なんで!?」
主要キャラクターにスポットライトが点灯するという事は
だからこそ、これは別段――珍しい事ではない。
モモンガ「……一人にされると不安になるからやめてください。……あー、コンソールが出せないからメンバーの所在が分からない」
いわゆる『システムコマンド』を呼び出そうと試みるモモンガ。これは先ごろweb版を読み返して見つけた言葉である。
元々はそういう名称で、コンソールは後から呼称したシステムだ。意味が通じればどちらでも理解しやすい筈だが――
場面が切り替わり、外に出る予定のたっちとウルベルトは既に第一階層を抜けていた。
墳墓という拠点ゆえに出入り口は墓標のような様相である。墓石の様なギミックをずらすと下へと続く階段が現れる。
たっち「思っていたより説明が長くかかりましたね」
ウルベルト「初めてオバロを読む人に伝えなければならない事が多いですからね。これは作品が内在する情報量ゆえ仕方がない」
たっち「……本当によーい、ドン。しますか?」
ウルベルト「……得体の知れない存在が急に駆けつけて行っても混乱するばかりです。……ええ。是非、そうした方がいい気がしてきました」
従来の流れをぶち壊す。二次創作において定められた流れを破壊すれば新たなシナリオが出現する。
もし、ゲームシステムが生きていればイベントは急停止する。そうでなければ隠しシナリオとして続くことになる。
ウルベルト「でも、相手方の天使召喚を鑑賞する流れまで待っているのもつまらないですね。こちらも圧倒的な何かが欲しいところです」
たっち「……もっともっとハードモード? デスモード? タナトス級オーバーロード?」
ゲームの難易度は初級から上級が一般的だ。それより上は様々な名称になる。それぞれ決まった区分けではないが星座だったり、何かの例えだったり。
であればこれから始まる難易度はどのようなものであればいいのか。
――ここに選択はなされた。人類史上初となる極上の高難易度が出現する。
八八体存在する人類――主にプレイヤー――が討伐しなければならない
仮称個体『変異体
謎のアナウンス*11が墳墓内のみならず、たっち達ユグドラシルプレイヤーの聴覚に大きく響き渡った。
これには原作知識持ちを自負していたたっち達も驚きを
たっち「……コメディ調で進むと思ったら……」
ウルベルト「……これが抑止力ですか……。しかし……、慈愛に満ちた声でしたね」
たっち「……ええ。……おっと、聞き惚れてしまいました。……気を取り直して……。えー……、そう簡単にストーリーを進ませるほど優しくない作者だとは思っていましたが……。トンデモないモンスターを用意してきましたね」
ウルベルト「多分、レベルは一〇〇を超えているでしょうね。もう少し味方を
意気揚々と冒険の旅に出ようと思っていた二人は予定を変更し、即行動に移す。
味方と言っても戦闘に連れて行けるのは多くない。
基本、パーティは六人で一つ。それを一つの単位として複数でイベントボスなどに挑戦する。今回の場合は少なくとも三つ以上のパーティが必要になるかもしれないと予想している。
馬鹿正直に全員をプレイヤーにする必要は無く、シモベや傭兵モンスターでも構わない。
ウルベルト「……
たっち「……序盤は結果が見えているとはいえ……、先ほどのアナウンスは気になります。気を引き締めて参りましょう。……仲間を募ってから」
仲間の選定を整えて改めて墳墓の出口に立つ。この場合の時間飛ばしは実に有効的に働く。
基本はたっちとウルベルト。残りは脅威のモンスター出現時の控えである。
それでも一応の形は整った。よって第一部はここで終わる。
何処からともなく大きな幕が降りてきて、音楽は次第に小さく――
たっち「こらっ! 勝手に終わらせるな!」
ウルベルト「せめてカルネ村には行きましょうよ」
彼らの旅は――まだ続くようだ。全く、ご苦労な事である。
今、観客席から空き缶が放り込まれた。お前らの活躍よりアインズ様を出せと猛抗議が多数上っている。
何が楽しくて骸骨の活躍を書かなければならないのか。所詮マッチポンプにしかならないというのに。と、ここであることに気づく。
画面の右下辺りに