ふたりは断罪黙示録 作:弐式炎雷
よくよく考えれば魔法のアイテムを利用するより空を飛べるメンバーに上空から捜索してもらう方が効率的ではないか。
――という案が出た。しかし、これは姿を晒すデメリットがある。
ゲーム時代であれば十分な対策を講じるのが常である。その辺りの描写に専念していると中々先に進め無くなる。
戦略が大好きな人にはご褒美かもしれないがストーリーが読みたい
先にも書いたように『冗長』となるので。
どんな小説も無から有を生み出す。予備知識がある読者と無い者とでは感じ方も違う。
ペロロン「そうだ。空を飛べばいい。……というセリフをいちいち言わなければ伝わらない」
種族特有の
本物の鳥類であれば人型の身体のまま空を飛ぶことは骨格からも難しいと言わざるを得ない。
まず必要な筋力。揚力が――
ペロロン「という小難しい理屈を無視できるのがゲームキャラクターの摩訶不思議なところです」
ぶくぶく「……ところで一〇〇〇字足らずの小説ってどういうものになるの?」
ぷにっと萌え「……どういう風になるんでしょうね。時間にして数秒というのは分かります」
獣王メコン川「……何だか本筋から逸れているような」
たっち「決まり切った二次創作はたくさん作られましたからね。今更ならあえて行かない事も一つの選択です。ただ単に喋りだけで終わることは無いと思いますが……」
ウルベルト「もう忘れられていると思いますが、今作は我々が主役になる
そうならないと困る。
タイトル詐欺という言葉があるくらいだ。
ぶくぶく「おお、弟よ。空は快適かい?」
ペロロン「……ゲームと同じだから新鮮味は今一つ……。だけれど肌に感じるものがあるのは確か……。その辺りを上手く表現できないのが残念な点かな」
無駄な
体感的なもの。それは個人個人違うものだ。人に言ってそのまま受け取るとは限らない。それに仲間達は殆ど違う種族だ。同じ感覚である筈が無い。
ブルー・プラネット「〈
ペロロン「そこは『
ペロロンチーノが指摘した魔法は
森と平地。合間に広い獣道が見えるだけで人の姿は無い。
人口の多い都市部育ちの現代人にとって近代的な建物が無いだけで新鮮な風景に映る。まして空が青い。
ブルー・プラネット「……この大自然をナザリック地下大墳墓に再現できないものか」
ペロロン「そういうシステムがあれば出来そうですが……。個人コンソールが出せない今は眺めるだけで我慢しましょう」
ブルー・プラネット「勿体ない。……でも、変に人工物にするよりはマシか……」
ゲームの世界は色合いが気持ち悪いものだったが、こちらの自然は人工的な気配がまるで無い。
ただ、それなのにゲーム的な機能が色々と使えるのが疑問だ。
相反する概念がある筈なのに――
真下から遠方へ視点を移動させるペロロンチーノ。彼の視力はゲームそのままであれば数キロメートル先さえも見通せる。
あまりにも良すぎる視力――視界――というのは脳に結構な負荷をかける。
いくらゲームに慣れているとはいえ、無理をさせれば異形種とて何が起きるか分からない。
ペロロン「地の文が心配してくれるのかい? だが、回復魔法があれば問題無い。こういう時、ゲームキャラの強みがありがたいと思う」
仮に墜落しても地面に穴が開く程度。身体が砕け散ることは無い、筈――
もし、姉――
なにせ、柔軟過ぎる身体だ。遠心力が付かない限りは地面に刺さることは無い、筈である。物理法則が生きて――
ペロロン「
ブルー・プラネット「我々の身体は意外と丈夫か」
ペロロン「そうだと思うよ」
ブルー・プラネット「ペロロン君はシャルティアと一緒に行けば良かったんじゃないか?」
ペロロン「……それは言われて気づいた。あいつも空飛べるし。……キャラが多いと把握するの大変そう……」
指摘されたからとて今更戻っても仕方がない。
こういう時は便利な魔法に頼る。つまり『
主の呼びかけに即座に応じるのはナザリック地下大墳墓の第一から第三階層までを守護する階層守護者『シャルティア・ブラッドフォールン』という
ペロロン「……その前に……。やっぱり以前から知っている筈なのに初めて気づくようなセリフはなんか……違和感ある」
ブルー・プラネット「……それが創作物の宿命さ。原作だって最初はいやに説明口調だった」
もし、説明口調ではない場合、完全に未知の情報まみれで始終続いてしまう。
知らないシステム。知らない魔法。知らないアイテム。それらで構成された状態で旅をする。
勝手に人が死ぬ現象も説明しない。傷が治る原理も。敵対する理由も。
未来の技術。聞き覚えのない単語。
余計な言葉を排し、特定の合図のみで動き出す面々。
それで何を理解しろと言うのか。
唐突な回想シーンも作者の中では予定に含まれているとしても誰もそれを理解することが出来ない。
というのばかりが続く作品が果たして面白いのか。
途中から視聴する宇宙戦争もののよう。
――という話しをぶった切り『
既に完全武装形態へ移行し、赤い
見た目は小柄な少女然としている。
色白の肌色に吸血鬼特有の赤い瞳。種族はアンデッド系の――
シャルティア「ペロロンチーノ様。ブルー・プラネット様。シャルティア・ブラッドフォールン、御身の前に」
空中にもかかわらず地上の時と同様の立ち姿で彼らに相対する。そして、スカートを摘まんで軽く会釈する姿勢を取る。
飛行する能力が無ければ出来ない芸当だ。
ペロロン「それはいいんだが……。天気のいい外に出て無事か?」
吸血鬼にとって日光は弱点の一つである。それはゲーム時代から設定された種族特有の仕様。これはペロロンチーノが施したものではなく、ゲーム会社によるものだ。
日の光りを浴びて消滅するような強力なものではなく動きが多少鈍くなる程度だ。
シャルティア「多少……気になる程度でありんす」
ブルー・プラネット「普通に受け答えした。……実際に聞くと驚かされるな。……というか、こんな声を出すんだな」
多くのNPCには声が無い。いや、あるにはある。設定による選択の中には。
実際にゲーム中に柔軟な受け答えをしないので生で声を聴くのはギルドメンバーからすれば初めての事に近い。
ペロロン「……多くの創作物では俺達のエピソードは結構ある筈だから今更感があるけれど……。初めて聞くという部分で言えば……、無難というか似合っているというか……」
もし、時代が時代であればどんな声が相応しいのか。
脚注に選んでもらおう。*4
昨今の声優業界は病死者が増え始めている。個性的な声は日本の宝として大事にしたいものである。
ただ意味も無くシャルティアを呼んだのでは勿体ないので命令を与えてみる事にした。しかし、どういう命令を与えるべきか、実は考えていない。
柔軟な対応を見せたことでド忘れしたからだ。
ペロロン「……機械的な動きじゃないからつい……」
ブルー・プラネット「……分かる。私もつい見惚れた」
頭では分かっている。正確には知識として理解している。それでも現実の事として脳が受け付けていないのか、新鮮な驚きに包まれている自分達を自覚する。
もうカルネ村なんかどうでもいいや、と思ってしまうのは
ペロロン「うん。よし、自害しろ」
シャルティア「え……? ……は!? えと、その……じ、自害でありんすか!?」
唐突な死刑宣告。NPCではない者が聞けば驚くのも無理は無い。しかし、NPCであるシャルティアは理解が追いつかないのか、驚きの表情と共に驚愕する。
顔の筋肉がアンデッドもんすたーなのに柔軟に動いたこともペロロンチーノ達を大いに驚かせる。
ペロロン「命令は絶対。即座に実行に移すのが
シャルティア「……い、いえ。滅相もあ……りんせん……。ペロロンチーノ様のお言葉通りで……」
それでもやはり理解できない。シャルティアは言い訳を考えようとした。
創造主であるペロロンチーノからの命令だ。それにどうして異を唱えなければならない。早く死ねばいいんだよ。そんな単純なことも出来ないのか。全く使えない吸血鬼だ。
ブルー・プラネット「……酷い地の文だ」
ペロロン「……本来なら『っていうのは冗談だよ』とでも言うと思ったか。生憎、俺は本気だ」
ブルー・プラネット「訂正する。ペロロン君ごと酷い文章だ」
モザイクモンスターは理不尽な命令を受けたシャルティアに顔らしき部分を向ける。
予想では人型のモンスターの筈だから。
ブルー・プラネット「いいか、シャルティア。死ぬのは簡単な事だ。だから、実際に死んで見なさい。そうすればこの頭のおかしい
と言いながらも心の中では『その前にシャルティアはアンデッドだから既に死んでるよね。だから、それを逆手に取った変な命令を……』と思った。
既に死んでいるから今以上に死にようがない。もし、あるとしても消滅だ。
命令では死ね、だ。消滅ではない。だが、それに気づいたペロロンチーノが次に消滅しろと言った場合はどうなるのか。それはブルー・プラネットにも分からない。
ブルー・プラネット「……きっと『スレイン法国』のせいだ。そう決めつけよう」
ペロロン「というのは冗談ですよー」
と、言うのが遅れたために自身を槍で貫いて見事に死のうとしているシャルティアの姿が――
というのは流石に飛躍しすぎか。
高レベルNPCであるシャルティアの自害はペロロンチーノ達が想像している以上に難しいものだ。
攻撃最強のNPCで完全武装形態になっている今の彼女は一撃では死なない。前述されている通りアンデッドモンスターでもある。
ステータス的にも難しい。
ペロロン「……命令を即座に実行しなかったのは……、やっぱり自我の影響か?」
まだ生きているシャルティアに語り掛けるように言った。もちろん、槍で自分を貫いてなどいない。
簡単に死ぬようなキャラクターでもない事を創造者が知らないわけがない。
シャルティア「……申し訳ありんせん……。私はご命令に従えない愚か者でありんす」
ペロロン「……逆に……。安易に命令を聞くようだったら本当に失望ものだった。正直な話し……、命令は本気だ。単なる興味本位と思ってもらってもいい。しかしだ、シャルティア」
シャルティア「は、はい」
創造主に声を掛けられるたびに身体に電撃を受けたように痙攣させる。
ゲーム時代はもちろんこのような怯えの様な表現は出さなかった。
ペロロン「創造主が命令したものを即座に従わなかったのは自分の身が可愛いからか?」
シャルティア「い、いえ。あまりにも突然の事でしたので……」
ペロロン「……そんなわけないだろう。命令だぞ。いいか、命令なんだ。何度も言うぞ。命令として与えた。命令、命令、命令。……はい、リピートアフターミー?」
シャルティア「め、命令……」
ペロロンチーノのしつこい言葉はブルー・プラネットには理解できた。
だが、予備知識が無い者にとっては何のことか理解不能の事態である。
この辺りが知識の有無による差かも。
空中で説教を垂れている事にペロロンチーノも薄々何してんだろう、とは思っていたが大事な事なのでやめるにやめられない。
これは確認作業だからだ。
どうしてそんなことを今、ここでしなければならないのか。
決まっている。
思い立ったら吉日だからだ。忘れない内に出来る事をするのが最善だと感じた。おそらく姉であるぶくぶく茶釜も同意してくれる筈。
ペロロン「……自害が即座に無理なら……。俺の背中に乗っかれ」
シャルティア「ひゃえ!?」
素っ頓狂な声を出すシャルティア。
声優が発するには奇妙奇天烈なものだが、良い仕事をしているとブルー・プラネットは感心した。
ただセリフを言えばいいというものではない。
時と場合、視聴者に声だけで感情を伝え、時には取り直しをさせられる。その時、一定のリズムで繰り返す技術は素人には中々できるものではない。
一度言い終わると二度目は楽をしようと早口になる。何度も繰り返せば飽きを感じる。けれども職業として
ブルー・プラネット「おんぶされなさい。命令としてオーケーが出たんだから。こんな経験は中々できないぞ」
特に大勢が見ている前では、と思いつつ。
感情の起伏はギルドメンバー間は何となく分かる程度だが、今のペロロンチーノはどういう状態なのか。苛立っているのか、興奮しているのか。
予想だけすると――意を決して最大級の危険行為に挑戦している為、頗る興奮しつつ即座に自害しなかった事に安堵しているが見た目では分からないくらい混乱している。
そうでなかったら急に性格が改変されて頭がおかしくなった、だ。昔からおかしいとは思っていた、とか言ってやろうかなと思いつつ黙って事の成り行きを見つめる。
ブルー・プラネットの優しい言葉に戸惑いつつシャルティアは小さな声で『し、失礼します』と言いつつペロロンチーノの背後に移動する。その時、手に持っている大きな槍『スポイトランス』が気になった。
元々この武器は相手のダメージの何割かを自分のHPとして回復させる効果がある。
だからどうしたと言われれば――シャルティアは現在正常な判断が出来ない。精神攻撃とは違うのに精神攻撃を受けたように混乱している。
行動の一つ一つにどうすればいいのか、と疑問ばかり湧いている。
ブルー・プラネット「……そろそろ助け舟を出してもいいか?」
ペロロン「ダーメ。こいつで遊んでいいのは俺の特権だから」
ブルー・プラネット「君にとっては遊びでもNPC達には本気と取られていると思うよ。……正直、こちらも驚いた」
いや、とブルー・プラネットは小さく否定する。
ペロロンチーノは確かに本気でNPCに向き合っている。だから、今の言葉は強がりである、と。
加虐趣味がある男ではない事は分かっている。
ゲーム時代では――
ゲーム時代では――
ゲーム時代では――
多くの思い出が詰まったユグドラシル。それらを無視して語ることは出来ない。*5
慌てつつも武器を収めたシャルティアはペロロンチーノの背中に覆い被さる。
ペロロン「……何だか……
自分は以前にも誰かを背中に乗せていた様な気がする*6、と。
このまま
そのようなフラグは立っていない筈だし、あり得ない現象でもある。けれども、それが本当に起こらないと誰が証明できるのか。ペロロンチーノは滞空しつつ不安を僅かばかり覚えた。
ペロロン「……プラネットさん。ナーベラルは
ブルー・プラネット「あれが二人も居るのか?」
ペロロン「……すみません。間違えました。現地に既に居る方の……。いえ、なんでもありません。様々な物語の悪影響でもあるのかも……」
自分でも上手く言葉に出来ないところを見ると様々な要因が脳内に渦巻いているようだ。
似たようなシチュエーションが
南方に向かう予定は無いので、
地図は無いが現在位置から北西、または
予想外の事態としてオバロ世界ではない場合については想定していない。そうなると原作自体が変わってしまうので、それだけはあり得ないと断言できる。
その後、無言のまま飛び続ける事数分から数十分は経過したか――
ペロロンチーノの超遠望の視覚に反応があった。
ペロロン「解説しよう。俺は鳥目だ。基本的に数キロメートル先まで見通せる。意識を集中することで標的の映像を明確にできるが視野は反比例に狭くなるのだ」
ブルー・プラネット「……という設定を原作が覆す確率は高いけどな。最近、予想外の新情報を巻き散らしやがったようだけど……*7。原作者の考えなんて分かってたら誰も興味を持たないわな。この作品だって色々と新情報を出しているのに誰も見向きもしないのと一緒」
ペロロン「……そだねー。実は書こうと思えば魔法を四五〇〇個出せるとかね*8」
作中ではおそらく採用されない話題を交わしつつ目標の地点まで移動する。
最初に見えたのは煙り。次に巨大な黒い物体だ。
遠距離でも見えそうなものだが現実は意外と見えない事が多い。地図上では平坦そうな地形でも実際はかなりの段差があったりする。
見間違えでなければ『
浮いているというか、現在進行形でペロロンチーノ達の方向に飛んできている、ようにしか見えない。